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2013年2月26日

Vol.15 「BookLive」不況と言われる出版業界。 これからの一年は、今までとは大きく変わる一年になる 電子書籍ならではのサービスを提供し、世代を問わず本好きの 人たちに電子書籍を利用して欲しい

執筆者

執筆者

吉本 浩司

企業インタビュー
Vol.15 「BookLive」不況と言われる出版業界。
これからの一年は、今までとは大きく変わる一年になる
電子書籍ならではのサービスを提供し、世代を問わず本好きの人たちに電子書籍を利用して欲しい


今回は電子書籍ストア「BookLive!」、電子書籍専用リーダー「BookLive!Reader Lideo」などの事業を
展開し、電子書籍業界を牽引している株式会社BookLive 代表取締役社長 淡野 正氏に、今後の電子書籍業界、電子書籍専用リーダーの普及について話を伺った。


企業インタビュー

株式会社BookLive 代表取締役社長 淡野 正氏





----電子書籍を利用されている方はどのような方が多いのでしょうか。
電子書籍利用者の特徴ですが、書籍を読んでいる人が電子書籍を読み始めたのではなく、携帯ユーザーがコンテンツの一つとして利用されている場合が多いです。
利用されているデバイスはスマートフォンやタブレット端末が多いですね。
また、デバイスによって利用者数が違いますが、スマートフォンではコミックが多く、男性の利用者が多いですね。特に少年誌のコミックが圧倒的に多いです。
キャリア決済やプリペイドカードを提供しているため、10代の利用者は徐々に増えつつありますが20代~30代が多く占めている状況ですね。

昨今、出版不況と言われていて、その要因はいろいろあります。例えば、子供がお小遣いを携帯ゲームに費すようになったことや、中古書店やネットショッピングで書籍を購入する人が多くなったことが考えられます。
本を読む時間自体は、昔と比べてそんなに変化はないと思うのですが、中古書店やオンラインのマーケットプレイスで書籍に接触する機会が増えているため、この市場のユーザーに是非、電子書籍を利用してほしいと思っています。

紙の書籍ですと再販制度などの様々な制約がありますが、電子書籍ではそういったことが無いため、ポイントバック等、電子書籍ならではの売り方を考えています。
書店で本の表紙が見えるように置かれていることを平置きというのですが、電子書籍のストアでも、表紙を見せている書籍が売れています。書店ですと本棚に入って背表紙しか見えない状態の本が、なかなか売れないことがありますが、電子書籍であれば、本棚の作り方はいくらでも工夫ができるため、色々な形で利用者に書籍を紹介することができます。
例えば同じ書籍を購入された方が、他にどのような書籍を購入しているのかを紹介することで、リアル書店ではあまり売れていない書籍が電子書籍では売れる場合もあります。また、コミックなどシリーズものになっているものを、一気に購入されるユーザーも多い傾向にあります。

仕事半分と思って電子書籍を使っていますが、以前に比べて、圧倒的に読む量が増えました。小説も読んでいますが、この間は、集英社が出版しているコミックの「ONE PIECE」を読み、1週間で60巻程読みましたね。集英社とはいろいろ一緒に取り組ませていただいていて、よく話題に上がる作品ということもあり読み始めました。
シリーズもののコミックは、購入しやすい表示を心がけています。ユーザーの本棚に格納されているシリーズもののコミック表示では、未購入の続巻を半透明で表示し、購入を促すような仕組みを採用しています。半透明になっているとつい購入してしまうという方が多いですね。そういった電子書籍ならではの販売方法といった点も常に意識しています。


----電子書籍が伸びる時期はいつ頃だと予測されますか?
日本市場で紙とデジタルのシェアが変わるには、まだしばらくかかると思っています。
電子書籍業界は様々な企業の参入によって、多くのメディアで話題になり、言葉としての認知は高まりましたが、まだまだ紙の書籍で満足されている方が多いという状況だと思います。電子書籍に対してそこまで必要性を感じていないというのが、電子書籍の現状だと思います。

企業インタビュー


今まで書籍は、デジタル化による不正コピーへの不安や、紙の風合いを大切にしたいという声があり、なかなか電子化することが難しい状況でした。さらに、取次業者や書店への影響や出版社サイドにデジタル部門が確立されていなかったということも電子化が進まなかった理由だと思います。
従来は、紙で仕上がったものをデジタル化していましたが、最近では並行してデジタル化を進める等、書籍の電子化のスピードが上がってきているように感じます。
まだまだ紙の本がベースとなっている書籍市場ですが、変化を見せつつあり、出版社も最初から電子書籍を念頭に置いた本づくりを進めています。今までの一年とこれからの一年は大きく変る、転換期になると思います。

また、昨年、官民ファンドの産業革新機構は出版業界が設立する電子書籍事業会社「出版デジタル機構」に約150億円を出資すると発表しました。公的機関が投資や経営支援に関わり、大規模な書籍の電子化を進めるということで、コンテンツ数の増加が進み、今年の夏くらいからさらに伸びるのではないでしょうか。


----2012年に注力して取り組んだことは何でしょうか?
2012年はとにかく基本的な環境を整えました。
具体的には各種OSへの対応を始め、あらゆるファイルフォーマットにも対応し、提供するコンテンツ数も増やしました。
日本では以前から「.book」(ドットブック)や「XMDF」(ever-eXtending Mobile Document Format)などのフォーマットが主流でしたが、今後、世界標準となっていきそうなEPUBへの対応も進めています。

我々は、ストアや端末の利用のしやすさという点で電子書籍市場に新しい価値を提供しています。メーカーやキャリアには依存せず、自分が購入した書籍は登録しているどの端末でも読めるようになっていますので、様々な環境で利用してもらいたいと思っています。
暇つぶしのための携帯コンテンツとしてではなく、本を読むのが好きな方に読んでいただけるように準備をしてきました。
その一つの手段として、電子デバイスにあまり詳しくない高齢の方や読書量の多い方に読んでもらうためには誰にでも使える電子書籍専用端末を出したほうがいいという事で2012年12月に「BookLive!Reader Lideo」を発売しました。
現在は、三省堂、有隣堂、勝木書店、ツタヤの一部店舗で「Lideo」を販売しています。発売当初は男性の購入者が多かったのですが、今年に入ってから女性の方の購入も増えてきていますね。



----「BookLive!Reader Lideo」の特徴を教えてください。
「Lideo」はWEBと書店で販売しています。例えば、家電量販店での販売ですと、電子デバイスとして売り場に置かれてしまいます。「Lideo」は本を読むためのものとして作った製品ですので、書店で販売することで本好きの方に購入していただくことができますし、店員が「Lideo」で何が読めるかとう質問に答えることができます。

他のデバイスと比べると170gと軽量で、長時間使用しても疲れにくい重さになっています。また、文字サイズが5段階変えられるようになっています。
50代~60代の方の利用者が最も多く、購入されているジャンルは小説などの文字書が7割、コミックが3割と、主にスマートフォンやタブレットを利用する20代・30代の方とは購入される書籍の内訳が逆転している状況です。

また、電子デバイスに詳しくない方が購入されることを想定していますので、通信設定などしなくていいように簡単に使えるものにしています。「Lideo」は通信料無料のWiMAXを搭載し、通信契約が不要で、通信費を気にせず手軽に使える点が特徴です。
外出先のWi-Fiがない環境でもダウンロード出来ますし、3G回線に比べ、早く書籍をダウンロードすることが出来ます。パソコンに接続する必要もなく、通信料もかからないのでかなりお得だと思います。


企業インタビュー


----通信費を無料にするのは御社にとってメリットはあるのでしょうか?
通信費を無料にすることは正直コスト面では厳しいところではありますが、50代の方など無線LAN環境が整ってない方にとってはその設定によって敷居が高くなってしまいます。
私の両親と妻に、初期設定をしていない「Lideo」を渡したのですが、特に使い方について質問されることもなく使えているので、誰でも簡単に使えるのかなと解釈しています。

私は、利便性を追求すると電子書籍のほうがいいと思っています。今まで電子書籍が普及しなかったのは、便利ではなかったからだと考えています。
電子書籍専用リーダーを利用するにあたり、購入してまず通信設定をし、その後電子書籍ストアの会員登録など様々な手順があり、読めるようになるところまで行きつかず、利用することを断念された方も多くいらっしゃるかと思います。そういう不便をなくすためにも、当社は「Lideo」に関して、使いやすさをとことん追求していきたいと思っています。
どの世代をターゲットということではなく、本をよく読まれる方に使っていただきたいと思っています。
企業インタビュー


----今後の展望を教えてください。
「Lideo」を今夏までに10万台販売することが目標です。
電子書籍が普及するには3つの要因があると考えています。1つ目はデバイスが低価格で提供されること。2つ目は話題のコンテンツが紙より先か、または同時に、電子で発売されること。3つ目は「電子書籍はこんなことが出来るんだ!」という驚きのサービスを提供することです。その3つの要因が、電子書籍が普及する後押しになると思っています。

電子書籍は、一度利用すれば利便性を感じていただけると考えており、書籍の価格も消費者にとっては非常にインパクトのあるものだと思っています。
日本には再販制度があるので書籍・雑誌の価格を変えることは出来ませんが、電子書籍に関して再販制度は適用外ですので、当ストアでは99円コミックなどのキャンペーンや、ポイント制度など、紙より安くお買い求めいただける手段を用意しています。

去年の暮れからAmazonが電子書籍ストアの提供が始まり、今年からはApple社が電子書籍に参入すると言われ、プレイヤーも以前より増えてきていますので、今後はコミックやデバイスの価格を下げることだけではなく、こんなサービスがあったんだというサプライズやわかりやすいサービスを利用者に提供していくことが重要だと思っています。



【会社】株式会社BookLive

企業インタビュー
【サービス】BookLive



----編集後記(MMD研究所:妹尾 亜紀子)
2012年は様々な企業より新しいデバイスが発売され、話題になりました。

そんな中、BookLive社は、通信料無料、軽量化、マルチデバイスに対応した電子書籍を販売し、電子書籍の使いやすさを追求し、また電子デバイスに慣れていない世代を視野に入れた「Lidio」。
一部の書店でデバイスを販売するなど、今まで電子書籍に興味を持っていなかった世代に対し、様々な場所で電子書籍が普及する機会を創出しています。
本好きの人に利用して欲しいという同社の強い信念が、「Lideo」に反映されていると感じました。

先日当研究所が実施した調査結果では電子書籍への価格や品揃えに関する要望が多く、まだ課題は残っているものの、振り起せるマーケットだと感じています。

今後の電子書籍市場の動向が非常に楽しみです。



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