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2012年4月10日

Vol.6 「H.I.S.」スマートフォンアプリは 今後強力なチャネルになる

執筆者

執筆者

吉本 浩司

企業インタビュー
Vol.6 「H.I.S.」スマートフォンアプリは今後強力なチャネルになる

~店舗とオンラインは棲み分けないで、それぞれ成長をめざす~


現在リリースしているスマートフォンアプリのマネタイズは計画通りにできているかを調査したところ、「十分にできている」と回答した運営者がわずか4.2%であることがわかった。そこで、今回は海外格安航空券、格安海外ツアーなど旅行事業を展開する株式会社エイチ・アイ・エスにスマートフォンアプリとソーシャルメディアの活用について話を伺った。

企業インタビュー


本社 事業開発室 室長 山岡 隆志氏








----『H.I.S.海外航空券予約』iPhoneをリリースした経緯を教えてください。
『H.I.S.海外航空券予約アプリ』ではH.I.S.で販売している海外航空券の検索、オンライン予約、決済が出来ます。
Google 傘下の ITA software 社(本社:米国、以下ITA)が提供する航空運賃計算を採用しているアプリです。

国内旅行ではフィーチャーフォンだと売れるが海外旅行は販売が難しいというのが業界の認識でした。国内と海外を同じウエイトで販売している旅行会社では、どうしても売りやすい国内旅行に機能やサービスの充実がはかられてきました。H.I.S.は海外旅行の販売が主ですので、モバイルで海外旅行を販売するにはどうしたらよいかという課題を常に考えざるを得ませんでした。その結果、モバイルで海外旅行を販売するノウハウが溜まり、フィーチャーフォンからスマートフォンへとそのノウハウが生かされています。

海外航空券予約サービスについて、PCは多種多様な検索軸と表現が出来るので、どこまでアプリで出来るのかやってみようということになったのがアプリ開発のきっかけです。スマートフォンのWEBだけだと検索性を表現するのは難しかったのですが、アプリを使えば検索性を表現できるのではないかと考えました。

デザイン、システム、航空券を取り扱う専門チームを集め、社外と社内のエキスパートによるチームH.I.S.が結成されました。
費用は二の次で、究極のスマートフォンでの海外航空券予約販売の実現にこだわりました。

企業インタビュー


システム開発と同じくらいの規模のプロジェクトだったので、半年と時間をかけて作り上げました。
社運をかけてと言えば大げさになりますが、スマートフォンアプリは今後、H.I.S.の主要な商品である海外航空券の強力なチャネルになるはずだと確信したからです。
リリースから3か月近くが経ち現在では7万ダウンロードされています。航空券の予約数で言えば月間で100件を超え、多い日だと1日10件を超えています。

今はiPhoneのみ提供していますが、4月にはAndroidでの提供を予定しています。
お客様からの声をこまめに反映するために2~3週間に1度の頻度でバージョンアップをしています。

フィーチャーフォンの客層は海外ツアーがメインで20代~30代の女性が中心でしたが、アプリでは明らかに違う客層が使用していますね。
多くの方に知ってもらいたいというのがあり、アプリの告知活動は積極的にしたほうがいいと思いますが、インセンティブを付けてダウンロードしていただくのではなく、使う人が自分の意志でダウンロードする、そういうプロモーションを実施しています。
今までは当社がフェア・セールを実施する事で集客をするという弊社主導でしたが、観光を含め出張等の旅行を決めるのはお客様主導なので、今後はお客様主導で予約・購入するチャネルになっていけるようにしたいです。

----オンラインと店舗での棲み分けはどのようにされているのでしょうか?

特に棲み分ける必要はないと考えています。
オンラインは検索性に優れているので、お客様主導で膨大な選択肢からチケットを検索し購入したいと思っている方に利用されています。

店舗の場合は専任担当者がついて旅程のコンサルティングや細かいケアしていくことが出来ます。
価格を優先する、直行便で行きたい、フライト時間は短くしたいなど、お客様のニーズが色々ありますが、その様々な要望にオンラインは応えることができます。店舗ではお客様のニーズを聞いて丁度良い3つくらいの選択肢をオペレーターが用意します。
人間のイマジネーションを使って旅程がスムーズに組め、価格も抑える事ができるのはオペレーターならではのノウハウとスキルとなります。
オンラインは検索性に優れているので経験の浅いオペレーターだとオンラインに太刀打ちができないこともあります。オペレーターはオンラインよりスキルが高くなければ、存在価値がなくなってきます。
お客様の微妙なニーズに応えることが出来るのはオペレーターですので、スキルを磨いてコンサルティングの面で独自性をだしていくことが重要です。オンラインは検索やユーザビリティを追求し、自社のオンラインとオフラインが競合するのではなく、オンラインもオフラインもそれぞれ強化して他社が追いつけない優位性の確立を目指していきます。

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----ソーシャルメディアではどこにポイントを置いて運営していますか?
FacebookページH.I.S.のページでは、H.I.S.というブランドを訴求するための位置づけとして、弊社を理解していただくため、ソーシャルメディアでしかできないコミュニケーションの実現を目指しています。「専門店デスク」「専属担当者制」「チャーター」「海外支店」などH.I.S.ならではのリソースの情報を発信しています。
Twitter、Facebook、mixi、Google+上で初期段階からスピード重視で自社ページを開設して、試行錯誤の中、ユーザーと共にサービスとコミュニケーションを拡大してきました。企業側であれこれ決めつけないで、消費者の方のニーズや動向によって、求められるサービスを拡張していくことを心がけています。

賞金100万円と海外旅行が抽選で当たる海外動画投稿キャンペーンをソフトバンク様と共同で実施しました。動画投稿専用アプリを開発して、スマートフォンからでもその場で投稿してもらいやすい環境を用意しました。
我々が通常、旅行商品を紹介するために使用する静止画と違って、動画は見るだけでストーリーがあり、それが消費者発のものですので、生の臨場感があるコンテンツが集まりました。言葉で説明するより、こういった動画を見ていただくだけで、旅行の楽しさや魅力が十分伝わってくるものが多くありました。
これからの旅行販売の可能性をお客様に教えていただいた取り組みになりました。

また、Pontaというポイントサービスを弊社は導入しており、オンライン上での海外航空券、海外ツアー、海外ホテル、物販において、たまる・つかえるというサービスを提供しており、海外でPontaポイントがたまる事業も提供しております。
最初にリリースしたソウルでは、H.I.S.で海外航空券をご購入いただいたお客様のみに提供しておりますが、ハワイ、グアム、バンコクでは、H.I.S.での購入条件はなく、現地に訪れているすべての方にポイントがたまるサービスを提供しております。目先の利益を考えないで、長期的なお客様との関係性を重視した施策となります。

今回の旅では、弊社のサービスをご利用いただけなかった場合も、次回、海外に行く時にH.I.S.のことを思い出していただけるように、インフラやメディア事業を行っております。いずれH.I.S.のお客様になっていただけるものと信じております。
直接的に販売に繋げるのではなく、ソーシャルメディアやPontaなどの基盤を活用して間接的に長い目で見ていく。そういったサービスをしていくことにもっと力を入れていきたいですね。

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----今後の展望について教えてください。

今後はスマートフォンアプリを強化していこうと思っています。ただ、アプリのみではなく、スマートフォンを中心にオフラインやPCのサービスを考えていきたいです。
スマートフォンはオンラインとオフラインの中心的なデバイスにあると考えています。

ソーシャルメディアに関しては、販売をソーシャルメディア上で行うのではなく、集まった情報を活かしてお客様との「価値共創」を実現していきたいですね。ブランドの価値の向上や普通の媒体ではできない双方向コミュニケーションの場として、ソーシャルメディアを活用していこうと思っています。
ソーシャルメディアやWEB上の様々なサービスも早くからリスクを取って乗り出し、その中から大きな実績を生むものが生まれてきています。これからも、消費者の方とのコミュニケーションを活用して、業界を超えてどこも行っていないサービスを実現し競争優位を確立していきたいです。




【会社】株式会社エイチ・アイ・エス

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【サービス】H.I.S.




----編集後記(MMD研究所:妹尾 亜紀子)
同社が運営するソーシャルメディアではH.I.S. Japan(http://www.facebook.com/H.I.S.Japan)以外に国・都市シリーズがあり、販売をソーシャルメディア上で行うのではなく、各国のファンの方たちが集まるように、また情報交換の場になって欲しいというコンセプトで運営されているそうです。ソーシャルメディアへの取り組みについてコミュニケーションの場を提供し支援することに意義があると山岡氏がおっしゃっていました。

筆者は趣味が旅行なので、毎回同社でチケットを購入していること、またFacebookのファンページのファンでもあり、同社のソーシャルメディアとアプリへの取り組みについてお話を伺うことができ、取材後より親近感をもってFacebookページを見ていました。当研究所もFacebookページを運営していますが、今回取材を通じて学ばせていただいた点を今後の運営に活かしていきたいと思います。



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