インタビュー
2012年1月27日
Vol.2 スマートフォンコンテンツの成長は「OSの主導」がポイント ~キャリア軸からOS軸へ変化してきている~
執筆者
Vol.2 スマートフォンコンテンツの成長は「OSの主導」がポイント
~キャリア軸からOS軸へ変化してきている~
~キャリア軸からOS軸へ変化してきている~
2011年11月9日にMMD研究所より発表した「スマートフォンアプリに関する業界動向調査」でスマートフォンアプリビジネスの参入について調査したところ、「アプリ開発側として、参入している、または、参入経験がある」が22.2%、「アプリ発注側として、参入している、または、参入経験がある」が22.7%という結果となった。
そこで今回、スマートフォンアプリCMS「APPS」を共同開発したウェクシィマーケティング代表取締役社長の宮崎幹久氏とシステムソリューション部 部長の加賀康太郎氏、アキナジスタ取締役・事業部長の桐生直裕氏にスマートフォンアプリ業界と同社が提供している「APPS」の強みと今後の展望について聞いた。
Appsとは、アンドロイドでの動画・電子書籍の配信メディアの運営に必要な機能を全て備えたASPサービス。
動画・電子書籍の登録から会員登録機能・決済機能・ページ編集機能・DRM配信機能などのすべての管理をブラウザ上から行えるCMSである。
また自社コンテンツを持っていない企業向けに出版社やメーカからコンテンツを仕入れる取次も行っている。
ウェクシィマーケティングシステムソリューション部 部長の加賀康太郎(左)、ウェクシィマーケティング代表取締役社長の宮崎幹久氏(中央)とアキナジスタ取締役・事業部長の桐生直裕氏
----スマートフォンアプリCMS「APPS」を提供するに至った経緯を教えてください。
桐生氏:2010年よりAndroidが売れ始めてきたことで、スマートフォンメディアへのアクセス数は急増しましたが、当時スマホ広告を出稿しているクライアントが大手SNSや大手求人会社のみと少なく、メディアがあってもクライアントがない状況でした。
宮崎氏:iPhoneの登場によりお客さんのニーズがフィーチャフォンからスマートフォンアプリへと劇的に変化してきたので、フィーチャーフォンのWEBページの制作からCMSをアプリ化しなければいけないという課題を抱えている時に、話があったので合致し協業に至りました。
----開発にあたって苦労した点は何ですか?
宮崎氏:開発の手本や事例がなかったので、全てにおいて一から始めました。
また「早く・安く・良質に」をコンセプトに誰にでも使えるサービスを提供したかったので、使いやすくカスタマイズする事にとても苦労しました。
加賀氏:開発の事例がないことも苦労した点の1つですが、
スマートフォンへ向けた大容量コンテンツの配信という観点で言うと、フィーチャフォンのコンテンツ容量はせいぜい数MB程度に対し、スマートフォンだとGBレベルになったりします。そういった場合、主に回線(帯域)、容量、Disk-I/Oの3点に関して課題となります。
これらの要件を兼ね備えたインフラの確保が必要でしが、予算などの面で折り合いがつかず、最後の最後まで見直しが必要になったりと大変でした。
またコンテンツの暗号化(DRM)に関しても時間を要しました。というのも、音楽でも動画配信でもコンテンツ供給者は、著作権益を保護するためにファイルを暗号化する必要があったのですが、その暗号化及び複合化を兼ねた再生を実現するのに半年程かかりました。
Androidの場合、OSのバージョン及びスペック・機種仕様が様々と存在するため、このデバイスではOKでも、他の少し仕様が異なるこのデバイスではNGなどが起こり得ます。そういった点で非常に苦労しました。
他の会社様からも協力を頂き、様々な機種を使ってテストをしました。既にサービスは開始したものの、完全化するのに時間がかかりました。
----サービスインしてからの反響はどうでしかたか?
宮崎氏:当時スマートフォン市場に積極的に展開している企業様が少ない状態でした。商品自体が理解していただけてなかったと思います。
スマートフォンコンテンツの成功事例がなかったので、想定していたより反響は少ない状況でした。スマートフォンで書籍コンテンツの展開をすると言ってもノウハウや事例がなかったので、どこかが始めて成功したらスマホ化しようという考えの企業様が多かったです。
当時でも現状のサービスを維持するのでいっぱいだったのと、まだ早いという意識の企業様が多かったのも反響が少なかった理由だと思います。
しかし、2011年の夏の新機種、特に女性向けスマートフォンが投入されてから徐々に変化がありました。スマートフォンがユーザーに普及するにつれて企業の反応が変わっていくのがわかりました。
また問い合わせの内容も「何ができるか?」という漠然とした問い合わせではなく、「APPSを使ってこういったことはできないか?」というように徐々に変わってきました。
時代がスマートフォンに流れてきたので、企業も無視できなくなり、APPSが画期的だということに気づいて頂いています。今のところ、アプリのCMSは当サービスだけなので需要は高まっていますね。
桐生氏:サービスイン後はセミナーを3回開催し、プレスリリースをすることでサービスをPRしました。リリース当時は「どうやってスマートフォンで展開すればいいの?」という漠然とした考えの企業が多かったです。
最近では予備知識があって明確な目的がありスマホ化するのに貴社のソリューションは基盤にあっているの?という問い合わせに変わりました。
----サービスを利用しているクライアントの反応はどうでしたか?
桐生氏:効果測定ができる管理画面が使いやすいということをよく言われますね。
アキナジスタはアドネットワーク事業を展開しているので、そのノウハウを導入して、管理画面の使いやすさにこだわりました。
加賀氏:コンテンツの更新以外はアプリで動かすため、WEBページより早く動くことについてご満足頂いているクライアント様も多いですね。
----APPSの強みは何ですか?
宮崎氏:iOSだと書籍コンテンツの審査が通りづらく、時間がかかるので、マーケット出稿へのスピード面やコンテンツの可否リスクがないのでAndroidのみ対応しています。提供コンテンツには自信を持っており、書籍3万タイトル、動画については3000タイトルの提供が可能です。書籍コンテンツは数百タイトル、動画コンテンツは約百タイトルで毎月増えている状況で、今後もどんどん拡大を行います。
----新機種が発表されたことや新しい通信回線ができたことでインフラもまた変わってきたのではないでしょうか?
加賀氏:3キャリアでデバイスが揃いAndroidマーケットがプリインストールされているので、新しいビジネスを展開・支援していくのが重要な課題だと思います。
宮崎氏:やはり新機種の発表後は受注や問い合わせは変わりますね。全く違います。
キャリアの発展でサービスが向上できると私は考えています。新機種のリリースが早いのでそれよりも先にいかなければならないことも課題のひとつです。
----今後の展望は?
桐生氏:株式会社 ICT総研の発表によると2010年度の電子書籍コンテンツ市場は前年比約10%増の650億円で、内訳をみると2012年はスマートフォン・タブレット/電子書籍コンテンツ市場は310億円、2015年度の1,490億円と予測と言われています。
今まではコンテンツの成長(デコメール、書籍など)はキャリアが主導で成長してきましたが、今後はOSの主導による成長、つまりキャリア軸からOS軸へ変化してきています。
宮崎氏:私たちは2015年度の市場の10%、約150億円の売り上げを目指しています。
今後はiOS でも利用できるようにWeb対応、そしてWindowsを含めたすべてのOSで展開を考えています。
またその他の展開としては、同サービスをベースにスマートフォンによる動画配信という面で様々な業界へのサービス提供を考えてます。
現在は芸能系や教育系などの業種の方が動画を配信したいというニーズがあります。
例えば芸能の面だと、売り出し中のアマチュアバンドの楽曲をスマートフォンで世界中に配信する事も可能となります。教育面だと全国で塾の講義をスマートフォンによりどこにいても受ける事が可能となってきます。
モバイルがスマートフォンによりPCに近づく事により、提供できるサービスの幅が大幅に広がりました。キャリアの発展と共に私達が提供できるサービスも向上できると考えています。今後は動画のみならず業界を盛り上げられるよう様々なサービスを発信していくつもりです。まずはスマートフォンアプリでビジネス展開を考えている企業様に是非本サービスを活用して頂ければと思います。
【会社】 株式会社ウェクシィマーケティング 、 アキナジスタ株式会社
【サービス】 スマートフォンアプリCMS「APPS」
【関連調査】 スマートフォンアプリに関する業界動向調査
■MMDインタビュー バックナンバー
Vol.1「インターネット広告の健全化に少しでも役に立ちたい」(株式会社シップ)
この記事の執筆者
吉本 浩司(ヨシモト コウジ)
MMD研究所 編集長
MMDLabo株式会社 代表取締役