インタビュー
2012年4月24日
Vol.7 「KLab」ソーシャルゲーム市場は 2020年まで成長し続ける
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Vol.7 「KLab」ソーシャルゲーム市場は2020年まで成長し続ける
~コンテンツ体験のユーザーが市場をけん引していく~
mobage、GREEでソーシャルゲームを利用しているユーザーに利用アクティブ率を聞いたところ、「ほぼ毎日利用する」が40.5%、「週に数回利用する」が23.2%、「月数回」が12.2%、「年に数回だけ」が24.2%となり、4割のユーザーが毎日ソーシャルゲームで遊んでいることがわかった。
(「mobage、GREEのソーシャルゲーム利用者動向調査」より引用)
今回は戦国RPG「真・戦国バスター」キャバ嬢RPG「恋してキャバ嬢GP」等のソーシャルゲームを運営しているKLab株式会社の取締役 森田英克氏に今後のソーシャルゲーム市場について話を伺った。
KLab株式会社の取締役 森田英克氏
----今後のソーシャルゲーム市場の成長についてどのように予測されますか?
2020年くらいまで国内ソーシャルゲーム市場は成長し続けると考えています。
世間の予測からすると大分強気ですが、私はありえると思っています。
現在もプレイヤーの人口自体は増えてはいますが、プレイヤー人口増加は直近数年で頭打ちになると考えています。しかし、全体のARPU(一人当たり売上高)は向上していき、市場規模は拡大するという予測です。
まずはプレイヤー人口の増加についてですが、最近の大きいところで言うと、版権タイトルの増加とスマートフォンの普及がトリガーになっています。
今までゲームに興味を持たなかった層が、TVCM等で目にした版権タイトルの魅力でゲームをプレイするようになっており、新規のユーザー獲得に繋がっています。
さらに、スマートフォンの普及により、ネイティブアプリでソーシャル性の高いリッチなゲームをプレイするスタイルも徐々に普及しつつあるので、コンソールやPCオンラインゲームをプレイしていたコアゲーマー層の流入も考えられます。
次に全体のARPU向上についてですが、現時点で既にソーシャルゲームに慣れたユーザーが多く存在しており、加えて、スマートフォンへの移行に伴う表現力の向上によってゲームの深みや没入度が高いタイトルが増えていくと思われますので、結果、ARPUはさらに上昇していくと考えています。
また、別の側面として、現在のプレイヤーが年齢を重ねても、ソーシャルゲームで遊ぶ習慣が続く可能性は非常に高いと考えています。ソーシャルゲームはコンソールゲームと比較すると時間・場所・デバイスの制限なく、手軽にプレイできる環境にあるという点から、30代以上の方の生活スタイルにもマッチするエンターテイメントであるといえます。
現に、当社で提供している「キャプテン翼~つくろうドリームチーム~」のような、30代以上がターゲットとなる漫画の版権を使ったソーシャルゲームは、非常に人気を集めています。
このことからも、現在20代のユーザーが30代、40代になっても遊び続けて頂ける可能性は非常に高いということになります。年齢が高くなれば、ユーザー1人あたりのARPUも高くなる傾向があるので、全体のARPU向上に繋がり、市場規模の拡大要因になると考えています。
また、ゲームや漫画、アニメ、音楽などに囲まれて育った世代で、大人になっても楽しみ続けている方たちは非常に多いのではないでしょうか。ずっと楽しみ続けていなかったとしても、ソーシャルゲームのような手軽な形で提供されることがきっかけとなり、改めて楽しむことも多いと思います。10代、20代など、若い時代にソーシャルゲームというコンテンツ体験をしたユーザーが、さらに年齢を経てもプレイし続けていただける可能性は非常に高いと考えています。
----異なるプラットフォームやデバイスで展開をされていますが、成功の秘訣はなんでしょうか。
同じゲームを異なるプラットフォームやデバイスで提供したとしても、そこにいるユーザーは異なるので、その方たちにとっては新しいタイトルや内容に見えるはずです。ですので、プラットフォームやデバイスが変わる場合は、既存タイトルのターゲット層でリーチできていないユーザーがどの程度いるのか、という点がひとつの判断ポイントになっています。幸いにも、この点を見誤っていないと思われるので、収益的に大きく外すことなく、リリース・運営ができているのだと思います。
----デバイスがスマートフォン中心へ変更となり、どのような変化があるとお考えですか?
最近は、かなり普及が進んでいるので、リッチなビジュアルやUIが好まれてきています。今までのソーシャルゲームは少しでも多くのユーザーに遊んでもらいたいということもあり、出来る限り容量を軽く、シンプルに作られていましたが、スマートフォンは画面が大きい分、目にする情報が多いので今までのフィーチャーフォンでの表現では敬遠されていたリッチな表現も許容範囲に入ってきています。また、視認性の向上により、多少複雑な機能でも受け入れられ、コアなゲームも出てくるのかなと思います。
ユーザーが求めているのは新しい体験なので、過去既に存在しているゲームテーマでも、ゲームシステムを進化させ、新しい体験を提供できるのであれば、ユーザーへ楽しんでもらえると考えています。
実際、コンソールゲームでも、「ファンタジー」とか「戦国」とか、人気のジャンルはいつの時代になっても、常に新しいタイトルがリリースされていますよね。
----海外への展開については、どのようにお考えでしょうか。
「真・戦国バスター」や「恋してキャバ嬢」はやはり日本ならではのゲームなので、海外で同じものを提供するのではなく、日本で成功したゲームテーマは一度リセットして、海外で受ける新たなテーマを一から考えながら開発しています。
ゲームのテーマは引き継ぎませんが、日本で培ったゲームシステムやバランス等のアーキテクト部分やソーシャル性を使ってゲームに引き込んでプレイしてもらう仕組みは海外に応用できる点がたくさんあるので、その点は活かしていきたいですね。
ゲームシステム面で気をつけている点としては、日本で流行ったシステムをそのまま海外に持っていこうとは考えていません。例えば英語圏であれば、PCのfacebookでソーシャルゲームが多く存在し、その流れを汲んだモバイルのソーシャルゲームが多数存在しています。モバイル中心で進化した日本のソーシャルゲームとは違った系譜を辿って成長している市場なので、ユーザーのソーシャルゲーム・エクスペリエンスは日本とは異なっていることが前提となります。英語圏のユーザーのソーシャルゲーム・エクスペリエンスの延長線上に、日本で進化したソーシャルゲームのアーキテクトを上手く盛り込めるように、試行錯誤しているところです。
KLabはユニークで良質なデジタルコンテンツを自社で企画・開発し、時代の最先端を行くソーシャルプラットフォームやモバイルプラットフォームに提供し続けていきます。
【会社】KLab株式会社
【サービス】サービス一覧
----編集後記(MMD研究所:妹尾 亜紀子)
海外への展開では日本で成功したゲームテーマをそのまま使うのではなく、英語圏のトレンドを見て、新たなテーマを日本のゲームで成功した要因を組み込むことで、よりよいものを提供していくと森田氏はおっしゃっていました。国内外問わず、2020年まで成長し続けるソーシャルゲーム市場を楽しみにしています。
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この記事の執筆者
吉本 浩司(ヨシモト コウジ)
MMD研究所 編集長
MMDLabo株式会社 代表取締役