スマートフォン、タブレットを中心とした消費者動向や市場調査を無料で公開

リサーチのご相談

コラム

2021年8月24日

スマホ決済(QRコード/非接触)利用者の現状と今後

目次

■ スマホ決済の利用者の現状―コロナ禍で支払い方法は3強に
■ スマホ決済事業者の現状と動向
■ ポイント経済圏によるスマホ決済の囲い込み
■ まとめースマホ決済の今後の課題と可能性

 

スマホ決済の利用者の現状―コロナ禍で支払い方法は3強に

以前よりキャッシュレス決済の普及を目指していた日本ですが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて1年以上経ち、コロナ禍によって消費者の支払い方法にも変化はあったでしょうか?

まず、日本のキャッシュレスに対する動きをみてみましょう。

2018年、政府は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を約40%まで引き上げることを目標として掲げ、2025年には大阪・関西万博が開催される予定の年でもあるため、将来的には世界の中でも最高水準の80%を目指していくと宣言しています。

また2019年10月の消費税増税と共に2020年6月まで「消費者還元事業費補助」を行い、キャッシュレス決済を使用した消費者に2%または5%のポイントを還元し、過去の増税時に起きたような集客の低下を防ぐような施策を取りました。またこの時の目的としてキャッシュレス決済の普及も狙っていたため、利用できる店舗を増やすため、中小・小規模事業者がキャッシュレス決済事業者に支払う加盟店手数料の1/3を補助し、キャッシュレス決済導入店舗増加へと繋げていきました。

では実際に消費者のキャッシュレス決済利用状況に関してはどうなっているでしょうか。
MMD研究所では、2021年7月1日~7月5日の期間で「2021年7月スマートフォン決済(QRコード)利用動向調査」及び「2021年7月スマートフォン決済(非接触)利用動向調査」を実施しました。これらの結果の一部をご紹介し、スマホ決済の現状と今後について考えていきます。

最初に、普段の支払い方法についてみていきます。18歳~69歳の男女45,000人を対象に、普段の支払い方法について聞いたところ、最も多かったのは「現金」ではありますが、初めて9割台を切り86.0%となりました。次いで、「クレジットカード」が71.1%、「スマホ決済(タッチ式、QRコード式含む)」が42.5%という結果となっています。
(※2022年1月11日に「スマホ決済(タッチ式、QRコード式含む)」の数値修正しております。)

ここで注目すべきなのはやはり現金の利用が減ったという部分と、2021年1月の前回調査と比べてスマホ決済が10.9ポイントと最も利用が増加している点です。コロナウイルスの感染を懸念して店舗スタッフとの接触を減らすために現金の利用が減ったというのが要因として考えられますが、それであればクレジットカードを含むキャッシュレス決済全体が伸びると考えられるでしょう。ただ、前回調査と比べるとキャッシュレス決済の中でスマホ決済以外は大きな変化はなく、スマホ決済のみ増加となっています。

では実際にどんなスマホ決済が利用されているのでしょうか。
スマホ決済の中でもQRコード決済と非接触決済の2種類がありますが、18歳~69歳の男女45,000人にそれぞれの利用状況を聞いたところ、QRコード決済が35.3%、スマホ非接触決済は8.8%が「現在利用している」と回答しており、QRコードの利用がスマホ非接触決済よりも大きく出ています。

またスマホ非接触決済に関してはGoogle Pay、Apple Pay、おサイフケータイなどのモバイルウォレットと連携させて、アプリを立ち上げることなくタッチレスで簡単に店舗で支払うことができます。Google Pay、Apple Pay、おサイフケータイの状況を見てみると、「認知」はそれぞれ6割を超えており、おサイフケータイが最も多く77.4%となっていますが、「現在利用」は3サービスとも1割に満たない結果となっています。

2021年8月に「モバイルWAON」と「nanacoモバイル」は年内にもApple Payに対応させると発表しており、今後Google Pay、Apple Pay、おサイフケータイのさらなる普及にも期待できるでしょう。
スマホ決済全体の伸びとしては、キャッシュレス化の目標に対して大きく貢献していると考えられ、今や現金、クレジットカード、スマホ決済がメインの支払い方法といっても過言ではないでしょうか。このスマホ決済の伸びは、多くのキャンペーンの効果もあると考えられますが、クレジットカードやデビットカードなどのカードタイプは発効までに時間がかかることや、実際に店舗に行くことによる新型コロナウイルス感染の懸念が発生することも考えられます。2021年の通信サービスの調査でスマートフォンの所有率は86.9%とすでに大半の人がスマートフォンを所有していることから、手軽に即日利用開始できるスマホ決済を始めた人もいるのではないでしょうか。

 

スマホ決済事業者の現状と動向

続いて、スマホ決済事業者の現状と動向を見ていきます。利用者が多いQRコード決済の現在利用している人(n=23,406)に最も利用しているサービスを利用しているか聞いたところ、QRコード決済は「PayPay」が最も多く46.1%、次いで「d払い」が16.9%、「楽天ペイ」が14.8%という結果になりました。

・PayPay
シェアトップのPayPayですが、2021年8月4日のSoftBankの発表によると、PayPayのユーザー数は4,000万人を超えました。また8月17日より、328万カ所以上のPayPay加盟店のうち、ユーザースキャン方式の加盟店においてLINE Payでの支払いが可能になったことからも、QRコード決済市場の拡大に大きく貢献していると考えられます。
現在PayPayでは「飲食ネット注文で当たる!ペイペイジャンボ」と「電子書籍で当たる!ペイペイジャンボ」のキャンペーンを開催しており、対象店舗で決済を利用するとくじを引くことができ、当選すると支払い金額の全額もしくは一部が戻ってきます。そういった既存ユーザーへの還元の大きさもシェア1位の要因と考えられます。

・d払い
d払いは、2021年8月6日のNTT docomoの発表によるとユーザー数は3,735万人と前年に比べて約1,000万人増加していました。現在は「d払いをはじめよう!+50%還元キャンペーン」を実施しており、初めてd払いを利用したユーザーに上限1,000ポイント還元のキャンペーンを行っており、新規ユーザー獲得に積極的に動いています。他にもd払いは、2020年2月にメルペイと業務提携し、同年9月にメルペイと共通のQRコードで決済可能にするなどして、加盟店拡大を図ったことからも、ユーザー獲得に繋がっていると考えられます。

・楽天ペイ
楽天ペイは、2021年8月11日の楽天の発表によると、楽天ペイアプリにおいて今夏にリニューアルし、クーポンや店内チェックイン、ポイント運用や、金融サービスなどの機能を追加、楽天サービスのクロスユースを促進し、いわゆるスーパーアプリ的な機能を搭載すると発表しました。
ただ楽天ペイアプリ自体はかなり高機能になることが期待されますが、楽天ペイの機能だけでいうとモバイルSuicaと連携し、チャージ・利用することができるのを対応しているのがおサイフケータイが搭載されたAndroid端末のみが現状です。楽天ペイアプリの機能性だけでなく、AndroidとiPhoneでの対応可能の幅が広がることによってより利用者拡大につながっていくと考えられます。

また多くのQRコード決済が世の中に展開される中、消費者が混乱せずキャッシュレス決済をより普及していくために、2019年より総務省は「JPQR」普及事業を開始しました。これにより、統一のQRコードでどのQRコード決済サービスも利用可能となりました。2020年度の時点で約12,000店舗に導入されており、すでに2021年7月21日の段階では19のサービスが「JPQR」に対応済みとなっております。
今後「JPQR」の拡大によって、加盟店側も色々なQRコード決済を導入しなくても消費者に使っていただくことができ、消費者も自信が利用しているQRコード決済サービスを導入しているお店を選ぶことや会計時に支払い方法を迷うことなく、利用することができると考えられます。

 

ポイント経済圏によるスマホ決済の囲い込み

続いて、「2021年7月 スマートフォン決済(QRコード)の満足度調査」と「2021年7月 スマートフォン決済(非接触)の満足度調査」においてQRコード決済とスマホ非接触決済の12サービスメイン利用者に、サービスを使い始めた理由を聞いたところ、「ポイントがたくさん貯まるから」が最も多く32.6%、「会計がスピーディーに終わるから」が25.1%、「キャンペーンを知って興味を持ったから」が21.4%となりました。
結果を見てみるとスマホ決済利用者の多くが、ポイントを重視していることがわかります。

2021年7月に発表した「2021年 通信会社と利用ポイントに関する調査」で、ポイント目的で、活用しているポイントサービスと関連性が高い他サービスを積極的に利用しているか聞いたところ、「積極的に活用している」と「活用できる場合は利用している」を合わせて、すべてのポイントサービスにおいて約8割が積極利用を意識していることがわかりました。

現在、楽天ペイやPayPay、d払い、au PAYなどもそれぞれのポイントサービスと連携しているため、例えばスマートフォンを乗り換えた際にキャンペーンでキャリアと連携しているポイントを付与されたユーザーが新しくスマホ決済サービスを始める可能性はあると考えられます。そういった連携しているサービスのポイント付与によっても今後のスマホ決済の流入に繋がっていくでしょう。

 

まとめースマホ決済の今後の課題と可能性

今回のスマホ決済シェア調査では、スマホ決済の利用者は大きく伸び、キャッシュレス化に向けて大きく貢献していることがわかりました。
特にQRコード決済はJPQRとQRコードの統一にも力を入れだし、より実店舗での利用できる幅が広がることから、今後も少しずつ増加が見込まれるでしょう。

スマホ非接触決済に関してはシェア拡大に向けてモバイルウォレットであるGoogle Pay、Apple Pay、おサイフケータイの利用できる場所の拡大とモバイルウォレットに各サービスが対応していることがキーになるのではないでしょうか。モバイルWAONとnanacoモバイルがApple Payに対応していくこととなりますが、iPhoneとAndroidとで利用できるサービスの差がなくなっていくことが重要かと考えます。
現在は楽天EdyがまだApple Payに対応しておらず、アメリカン・エキスプレスのタッチ決済、Mastercardのコンタクトレス決済、JCBコンタクトレス決済などはGoogle Payに対応していないことからも、消費者にとって何が自身のスマートフォンで利用できるのか明確になっていない部分もあると考えられます。その部分を払拭することによって、モバイルウォレットを介してスマホ非接触決済の利用拡大にもつながっていくのではないでしょうか。

また今後のスマホ決済事業において、やはりポイントの存在も大きくかかわってくると考えられます。
店舗利用でのポイント還元や公共料金でのポイント充当などポイントとの関連が重要ではないでしょうか。例えばd払いは請求書払いができるがポイントが付かず、楽天ペイは楽天カードを使えばポイントが付くという同サービス内でのポイントの充当がある支払いとない支払いとがそれぞれのサービスにあります。ただ、店舗で支払い対応できる、オンラインショップで利用できるだけでなく、今後はポイントが付くか、どれくらい還元されるのかが利用者のサービス選択に影響してくるのではないでしょうか。

MMD研究所では、今後もスマホ決済に関して調査していく予定です。また消費者だけでなく、加盟店に対しても調査できますので、調査や今回使用した調査データへのお問い合わせなどございましたら、以下お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡くださいませ。

 

※本調査レポートは小数点以下任意の桁を四捨五入して表記しているため、積み上げ計算すると誤差がでる場合があります。
※回答者の属性は会員登録後に無料レポートよりご確認いただけます。

上記のリサーチに関するご質問等は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

≪本調査レポートのご利用について≫
MMD研究所にて無償公開しているWEBサイト内の文書、及びその内容についての無断転載等は原則としてご遠慮頂いております。
データの利用または引用の可否はその内容によりますので、まずは掲載範囲、用途・目的、メディアなどを記載してメールにご連絡ください。
追って担当者よりご連絡いたします。著作物の二次利用に関しては、以下の条件にすべてあてはまる場合、個別の許諾なしにこれをみとめます。

  • 営利を目的としないこと
  • それによって経済的な利益を得ることがないこと

※販促に利用されたい企業様はお問い合わせください。

会員登録をすると、
調査結果の詳しいファイルを
ダウンロードできます。