コラム
2025年7月3日
家族シェアからギガ売買まで! 価格競争だけに頼らないMVNOの成長戦略【第9回 MVNO勉強会】
MVNO業界の動向は、スマートフォンが生活必需品となった現代社会において、通信の選択肢をいかに多様化できるかを象徴するものです。2025年5月に開催した「MVNO勉強会」は今回で9回目を迎えました。
今回のMVNO勉強会ではmineo、イオンモバイル、そして今年新たに参入したメルカリモバイルの3社が登壇し、最新の市場データと自社戦略を発表、そして活発な意見交換が行われました。本コラムはイベントの一部まとめています。ぜひご覧ください。
目次
■ サブ回線需要と消費者の二極化
■ 各社が語る戦略と強み
■ ディスカッションで浮かび上がった業界の未来像
サブ回線需要と消費者の二極化
MMD研究所の2025年通信調査の最新データでは、MVNO市場の基礎構造の変化が浮き彫りになりました。主に注目されたのは「サブ回線利用者」の増加です。過去には全体の1割程度に留まっていたサブ回線利用者の割合が、今回は12.8%まで上昇しています。これは通信需要の多様化を象徴しており、複数台のスマートフォン所有需要やIoT用途、訪日・在留外国人向けの通信環境など、多岐に渡るニーズが背景にあると考えられます。
一方、データ使用傾向においては、ユーザーの二極化が進んでいるとの指摘もありました。調査では、月30GBを超える大容量のデータを消費するユーザーが一定数存在する一方で、1GB以下の小容量で十分な層も依然として存在しています。MVNO各社はこのギャップに応じて柔軟なプラン設計が求められています。
また、料金の低下傾向も大きなポイントです。政府の方針やオンライン専用プランの普及などの影響により通信費は下がりましたが、今後はインフレや人件費上昇を背景に再び価格が見直される可能性もあり、業界としては価格戦略とサービス価値の両立が課題となっています。
各社が語る戦略と強み
mineo
mineoは、2024年でサービス開始から10周年を迎えた節目の年となりました。ユーザーとのコミュニケーションを重視し、リアルイベントやオンラインコミュニティ「マイネ王」での双方向的なやり取りを通じて、ユーザー起点のサービス開発を実践しています。
特に注目すべきは、通信速度に応じた定額プランや、夜間フリー・パケット放題 Plusなどのオプション展開で、多様なニーズに柔軟に対応している点です。また、同社が実施した大規模リアルイベントでは、2,700人の現地参加者と延べ3万人以上のオンライン参加者を集め、mineoが単なる通信会社にとどまらず「共創するサービス」として定着していることを裏付けました。
イオンモバイル
全国200店舗の直営店を展開するイオンモバイルは、「生活者の近くにある通信サービス」としてのポジショニングを強化しています。最大の特徴は「シェアプラン」です。家族間でデータ容量をシェアできるこのプランは、現在契約者の約4割を占めており、特に費用対効果の高さで支持を集めています。
さらに、利用状況に応じてプランを細かく変更できる柔軟性や、店舗での無料スマホメンテナンスサービスも大きな強みです。イオングループの金融・小売事業との連携を強化し、独自の経済圏を活かしたユーザー体験の向上にも積極的に取り組んでいます。
メルカリモバイル
2025年3月にサービスを開始したメルカリモバイルは、MVNO市場において斬新な価値提案を行っています。最大の特徴は「ギガの売買」機能です。ユーザー間で余ったデータ通信容量を売買できるこの仕組みは、既に契約者の2人に1人が利用するまでに広がっており、フリマアプリ「メルカリ」のノウハウを通信に応用した先進的な試みとして注目されています。
価格は市場原理に委ねられ、平均取引価格は1GBあたり39円程度。取引成立までの平均時間も20時間以内と、CtoC取引としては非常にスムーズです。今後は通話定額オプションやau回線への対応も予定されており、今後さらなる機能拡充が期待されています。
※いずれも本勉強会時点(2025年5月23日)の情報になります。
ディスカッションで浮かび上がった業界の未来像
勉強会の後半には、登壇者によるパネルディスカッションが行われ、業界全体の課題や今後の見通しについて率直な意見交換が行われました。
パネルディスカッションの場では、物価高や人件費の上昇、大手キャリアの実質的な料金値上げが話題となりました。通信費は家計の固定費の中でも大きな割合を占めるだけに、利用者がプランの見直しを意識する機会が増えているといいます。MVNOの存在は、こうした見直しの選択肢として改めて注目を集めており、各社は単なる安さだけではなく、サービスの付加価値や安心感を提供することが求められています。
他にも、MVNO各社が大手キャリアとの価格差を維持しつつも、自社の強みをどのように生かすかが語られました。さらに新規参入企業の増加も、選択肢の多様化と業界の活性化をもたらす歓迎すべき流れと捉えられていました。
物価高時代の通信業界で、どのように“選ばれる存在”となるのか、MVNOの挑戦は続きます。
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MMD研究所(編集部員)