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コラム

2021年7月2日

コロナ禍での食材宅配サービス市場の現状と今後の事業者によるDX

目次

■ 食材宅配サービスの利用実態―普及の見通し
■ 食品宅配サービスのシェアと利用上位の事業者の動向
■ 食品ロスの削減を支援―オイシックス・ラ・大地による新サービス
■ まとめ―事業者のDXとユーザーの食生活の多様化へ

 

食材宅配サービスの利用実態―普及の見通し

コロナ禍であっても、食品の買い出しのための外出は避けられない場合が多いのではないでしょうか。
そんなとき頼れるのが食材やミールキットの宅配サービスです。
フードデリバリーサービスだけでなく、食材宅配やミールキットの市場も好調に推移しています。

また、食材やミールキットの宅配サービスの普及は一時的ではなく、アフターコロナとなっても利用者の増加が見込めると考えられます。

さらに、食品宅配サービスはフードテックの一環でもあります。将来の労働人口減少や高齢化に備えること、食品ロスの防止にも食品宅配は有効と考えられ、今後も盛り上がりを見せるのではないでしょうか。この先も企業から新たなサービスが続々と生み出され、私たちの食事方法が多様化していくことが予想されます。

MMD研究所では2021年5月17日~5月18日の期間で「食材宅配に関する利用実態調査」および「ミールキットに関する利用実態調査」を実施いたしました。その結果を一部ご紹介しながら食材宅配サービスの現状について見ていきます。

まず、現時点での生鮮食品の注文・配送の利用状況を見てみましょう。
18歳~69歳の女性10,000人のうち、日常生活において食材宅配のネット注文の利用経験を聞いたところ、全体では10.5%が過去1ヶ月以内に利用経験があると回答し、過去利用の経験者と合わせると利用経験者は全体で18.7%となりました。

年代別で見ると、ネット注文の利用経験で最も多かったのは60代(n=2,081)の21.9%となりました。
10代を除いたその他の世代も2割前後は利用経験があり、全世代で1~2割程度は利用検討している・興味があると回答しました。

※画像をクリックすると拡大画像が表示されます

一方、「2020年5月新型コロナウイルスにおけるEC利用動向調査」では、総合ECまたはネットスーパーを利用している1,836人を対象に、直近3ヶ月以内の商品の購入についてインターネットと実店舗どちらの利用が多いか聞いたところ、「食品」のインターネット購入は4.4%で少数の結果でした。

第1回緊急事態宣言発令中での結果と比べると、定期でネットを利用するとは限りませんが、今回の結果は食材宅配サービスが今後浸透していく可能性が見られ、とくに外出が難しくなったシニアにも有効活用されることが期待できる結果となりました。

 

食品宅配サービスのシェアと利用上位の事業者の動向

食品宅配サービスは、事業者の積極的な参入による業種を超えた競争の激化や、配送コスト・人件費などが収益を圧迫するなど共通の課題もまだ多くあります。

そのような環境下、現状のサービスのシェアはどれほどなのでしょうか?
各サービスの利用状況を見ていきましょう。

ネット注文で1年以内に野菜・果物や肉・魚など食材の注文・配送を利用したことがある人(n=1,356)を対象に、最も利用している食材宅配サービスを聞いたところ、「おうちCO-OP」が12.8%と最も多く、次いで「コープデリ」が12.4%、「イオンネットスーパー」が12.1%となり、生協系のサービスが上位の結果となりました。

一方で、事業者の動向も見ていきます。

・ネットスーパーの食材宅配サービス
西友は最も早く2000年に「西友ネットスーパー」を開始し、その後DeNAと提携したことでUIを刷新し、2013年に「SEIYUドットコム」のサービスを開始しました。2018年からは楽天と提携し「楽天西友ネットスーパー」と変更しました。
店舗からの配送キャパシティーが従来の課題であったため、楽天との協働運営を機に千葉県柏市に専用の物流拠点を設置し、センター型のネットスーパーとして強化しています。
その後も、物流センターを2021年1月に神奈川県横浜市で稼働させ、さらに年内には大阪府茨木市に新設すると発表し、当日配送枠の拡充・配送エリアの拡大に注力しています。

イオンは、2008年から「イオンネットスーパー」のサービスを開始しました。
店舗でピッキングから配送まで行う店舗型ネットスーパーではありますが、配送エリアは北海道を除く全国をカバーしています。
2020年にはdely株式会社と組み、クラシルアプリでレシピ・献立を決めたユーザーが必要な食材をイオンネットスーパーで買えるシームレスな通販環境を実現しました。このようにネット上のチャネルを増やす動きも見られます。
さらに、2019年にパートナーシップ契約を締結した英国のネットスーパー企業Ocado Groupの子会社であるOcado Solutionsとともに、2023年「次世代ネットスーパー」を展開する予定です。これまで店舗型のみの対応だったところ、AIとロボットを使った顧客フルフィルメント・センターを設立することでセンター型の対応も可能にし、利用できないユーザーの減少に努めています。

少しさかのぼり、「2020年5月総合EC・ネットスーパー利用動向調査」ではスマートフォンを所有する18歳~69歳の男女2,128人のうち、ネットスーパーを知っている人に利用経験を聞いたところ、最も多いのは「楽天西友ネットスーパー(n=798)」で11.2%(うち現在利用者は5.0%)、次に「イオンネットスーパー(n=1,328)が10.5%(うち現在利用者は4.2%)という結果でした。
今回と2020年の結果を比べると、いずれも利用者は増え、とくにイオンは生協のサービスを入れても3位となり、利用状況は好調であるといえます。今後、宅配システムのDXによって利便性を増すことでさらなるユーザーの獲得も期待できるでしょう。

・生協の食材宅配サービス
生協は共同購入という形でサービス提供開始し、1990年に個人宅配を全国生協で先駆けて始めたのがパルシステムでした。当初カタログと注文用紙を用いていましたが、2000年にはネット注文を可能にしました。ネット注文の開始はネットスーパー各社と近い時期ではありますが、食品宅配サービスを最も古くから継続して提供しておりサービスの認知は他サービスよりも、いまだに優位であるといえるでしょう。

2021年、日本生協連が全国120の地域生協の2020年度の供給高(売上高)をまとめ、宅配事業が2兆1,170億円(前年比114.9%)となったと発表しました。(※)コロナ禍で好調に伸びたことがわかっています。

今回の調査でも生協系サービスは利用1位・2位・4位を占めています。おうちCO-OPは配送エリアが神奈川・静岡・山梨に限られ、支払い方法も口座振替のみ、配達曜日を指定し配送に1週間を要するなど制限はありますが、今回1位となり、2位のコープデリも配送エリアは1都7県、支払い方法や配送の流れも同様です。このように配送サービスのバリエーションは減りますが、サービス提供の歴史があり、毎週注文するスタイルが習慣付いている方が多数なことは強みとなっていると考えられます。

今後の動きとしては、2020年3月から取り組んでいる「DX-CO・OPプロジェクト」にて成果が確認できた内容から導入を進めていくとのことです。
主な内容は、AIによるレシピ・商品の提案や、組合員のコミュニティ基盤を活かしたSNS活用、配達担当のためのデジタル・コンシェルジュサービスなど、コンテンツの充実を図る動きが見られます。
利便性だけでなく、デジタル化によって家族と豊かな関係を構築することや地域共同体のコミュニケーションを後押しするなど、生協ならではのコンセプトのもと、ネットスーパーとはまた違った位置を保っていくのではないかと考えます。

 

食品ロスの削減を支援―オイシックス・ラ・大地による新サービス

生協やネットスーパーとはまた違った特徴を持つのが自然食系の食品宅配サービスでしょう。
なかでもOisixは、1年以内にネット注文で野菜・果物や肉・魚など食材を購入した方の中で、最も利用しているサービスを聴取したところ6位でしたが、ネット注文で1年以内にミールキットの注文・配送を利用したことがある人(n=517)に最も利用しているサービスを聞くと17.2%で、2位のコープデリとは5.8ポイント差をつけて1位の結果となりました。
とくにオイシックス・ラ・大地株式会社によるブランドでは、食品ロスの減少を直接的に支援するユニークな商品を増やしており、他の食品宅配サービスとの差別点となっています。

・Oisix
2019年10月、廃棄されることの多い野菜の根に近い部分を使ったミールキット「畑まるごと Kit Oisix」を全14メニュー発売していました。
2021年5月には、緊急事態宣言による休業要請や時短営業、連休中の旅行控えなどにより余剰となってしまう飲食店の食品販売を開始しています。また、同月、品質が高いにもかかわらず廃棄せざるを得なくなった「江戸菜(えどな)」を使用したミールキットも販売しました。

・らでぃっしゅぼーや
2021年4月、「ふぞろいRadish」を創設しました。全国約4000軒の契約生産者によるサイズ・色・形・キズのあるふぞろいな食材や加工食品の販売を開始しました。
サイト内には、「ふぞろいレシピ」や生産者レポートの「ふぞろいが生まれる現場(海編・畑編)」などで食べ方のアイデアを提供しています。いわゆる、食に対して「意識が高い」消費者ではなくても、「今日から食品ロスに貢献したい!」と思えば、だれでもすぐに実践しやすい方法を提案・用意したサービスでもあると考えます。

これらブランドのターゲットとなるは、やはりネットスーパーや生協とはまた違い、価格よりも安全性やエシカルな消費を求めるユーザーと言えます。
また、オイシックス・ラ・大地のブランドのように食品ロス削減を直接的に支援する食品ECが出てきたことで、環境保全活動のハードルは下がり、多くの人に広がりやすくなったのではないでしょうか。

 

まとめ―事業者のDXとユーザーの食生活の多様化へ

今後、食材宅配サービス事業者は積極的にAIやICT技術の導入し配達の効率を上げ、配送エリアを増やしつつ、食材の鮮度維持を強化したサービスを取り入れていくでしょう。
実は、ネット注文食材宅配現在利用者(n=327)とネット注文食材宅配検討者・興味者(n=231)が回答した食材宅配サービスに求めることとして「食材の鮮度」がトップであることがわかっています。

また、食材宅配のデジタル化といっても配送の効率化・利便性追求だけでなく、生協のようにAIによるレシピ・商品の提案などコンテンツの充実を目指す事業者もいます。
他方、消費者にとっては店舗での買い物では諦めていた、本当は取り入れたい食材選びにおけるこだわりを追及しやすくし、自分らしい食事に近づけてくれる手助けになるかもしれません。送料や最低注文金額を気にしたくないなど、価格が第一優先の店舗ユーザーでなければ、ネットスーパー利用の習慣に変えてみると、食生活の満足度がアップする方もいるのではないでしょうか。

MMD研究所では、アフターコロナとなっても市場拡大が予想される、食材宅配・ミールキットに関するデータを集約したレポートを作成いたしました。

今後、食材宅配・ミールキット市場は各企業のDX加速や通信キャリアの参入によって競争が激化することも考えられます。そのような状況に備え、現時点における顕在ターゲット・潜在顧客を把握することの重要性は高いと考えられます。

本レポートでは、以下のような課題をお持ちの事業者様にお勧めの内容となっております。

  • 新規事業として食材宅配・ミールキットを検討している。
  • 食材宅配・ミールキットに関するメディア運営やサービスを展開している。
  • 食材宅配・ミールキットに対するユーザーインサイトが知りたい。

ご希望がありましたら、本レポートの下見をしていただくことも可能です。
下見や購入を希望される方は、下記お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせくださいませ。


(※)「全国の地域生協の総供給高が3兆円の大台に」 日本生活協同組合連合会のニュースリリース


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