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コラム

2022年10月31日

2022年シニアのスマートフォン・フィーチャーフォンの利用に関する調査の考察
シニアのスマートフォン活用を促進させるには?

目次

■ シニアに押し寄せるデジタル化の波
■ 通信キャリア4社の動きと戦略を紐解く
■ ヘルスケア・終活に関するデータとシニアのデジタル活用状況
■ シニアの生活の中にスマートフォンを根付かせるには

 

シニアに押し寄せるデジタル化の波

日本では、1994年に高齢社会、2007年には超高齢社会に突入しました。同時に、1990年代半ばからは、インターネットや携帯電話の普及にともなったデジタル化が急速に進んでいます。
総務省は、「誰一人取り残さない」デジタル化の実現に向け、デジタル活用支援推進事業としてオンラインによる行政手続き補助等を目的としてキャリアや地方自治体と連携し、取り組みを促進させています。

先日の調査ではシニア層(60歳~79歳)のモバイル端末所有率は94.0%となり、うちスマートフォン利用者が89.0%と前年比4.2ポイント増加し、シニア層にもデジタル化の波が押し寄せていることが分かります。

今回のコラムでは、先日実施した「2022年シニアのスマートフォン・フィーチャーフォンの利用に関する調査」から、シニア層へのスマートフォンの普及、利活用の促進について見ていきます。

ぜひご覧ください。

 

通信キャリア4社の動きと戦略を紐解く

まずは通信キャリア4社が、シニア世代のスマートフォン利用促進をどのように進めているのか見ていきます。

NTTドコモ
毎日開催されるスマホ教室では、ドコモ契約の有無に関わらず受講できる約40の講座があります。また、総務省が推進する「デジタル活用支援推進事業」の一環としてマイナンバーの申請、マイナポイントの申請、オンライン診療予約、行政手続きなど5つの講座が用意されています。
そして、シニア限定のプランではありませんが、3G回線からの乗り換える方が対象の「はじめてスマホプラン」が用意されており、月額料金を抑えてスマートフォンを使い始めることができます。

KDDI
auスマートサポート(会員制サポートサービス)では、月額利用料が必要ですが、端末購入前にスマートフォンをレンタルできたり、スマートフォン購入後に訪問・電話でのサポートを受けたりすることができます。またKDDIは渋谷区とともに高齢者の生活の質向上を目的とした実証実験を行っています。2021年9月から2年間渋谷区に住むシニアを対象にスマートフォンを無料で貸し出し、勉強会やサポートの実施を行っています。
NTTドコモ同様に総務省が推進する「デジタル活用支援推進事業」の一環としてスマホ教室を実施するほか、60歳以上で対象プランと機種を利用中の方向け「新カケホ割60」では毎月の利用料が税込1,100円引きになります。

ソフトバンク
総務省が推進する事業の一環で提供されているスマホ教室のほか、初めてのスマートフォン体験からフードデリバリーサービスの体験、プログラミングまで、幅広い講座を開講しています。
また、厚生労働省が取り組んでいる認知症高齢者等見守り事業の一環として、認知症高齢者の方による徘徊を全国横断的に見守る「オレンジセーフティネット」というスマートフォンアプリを提供しています。
さらには、「スマホなんでもサポート号」という名前の車で、公共交通が不便な地域へ出向いて、スマホ教室の開催、スマホの利用料金・情報変更などの相談受け付けを行うなどの取り組みを行っており、地域に住むシニアのデジタルデバイド(情報格差)解消が期待されます。

楽天
楽天モバイルでは、シニア向けプランの用意はされていませんが、ワンプランで分かりやすいのが特徴です。先日の調査でもスマートフォンメイン利用者の月間の利用データ容量が、3GB以下は67.4%と過半数を占めました。

最安値である3GBまでの利用で月額980円(税込み1,078円)は、シニア層のニーズをつかむことができていると考えます。
健康寿命の延伸サポートサービスの「楽天シニア」では、ヘルスケア、介護予防、医療、地域づくり、IT利活用、行動科学分野の6つの分野でライフステージに応じたサービス展開を行っています。動画やライブ配信などのオンラインスマホ教室のほかに、歩きながらポイントをためたりシニアに合ったイベント予約ができたりと、地域事業者や団体との連携でシニアのIT利活用による社会参加を促進させることを目的として実績を築いています。

シニア向けスマホ教室は各キャリアとも総務省支援のもと、取り組みの強化を行っていますが、それ以外にも各社様々なプランやサービスの提供を行っていることがわかりました。

 

ヘルスケア・終活に関するデータとシニアのデジタル活用状況

ここからはシニアの生活においてスマートフォンが活用できる分野として、「ヘルスケア」と「終活」に関して、調査を交えながらお話ししていきたいと思います。

今年4月に実施した「ヘルスケアとウェアラブル端末に関する調査」において、健康に関する記録はシニア層の記録が47.9%と各年齢層で最も高いことが分かりました。

健康に対する意識は他の層よりも高いものの、やはりデジタルを活用した管理は他の年代より低く、健康に関する記録をデジタル媒体で記録している(アナログとの併用含む)人が51.5%、健康に関する記録を行っている人のうち、ウェアラブル端末の所有率は9.1%となりました。
キャリアによっては健康管理アプリをだしており、それを使うことによってポイントが貯まるという仕組みがありますが、まだまだ普及していないのが現状です。シニアが「楽しく」「簡単に」デジタルで健康管理できるサービスに各社力を入れていくことで、シニアに対してスマートフォンを使うメリットを示すことができると考えています。

今年6月に実施した「デジタル遺品に関する調査」では、シニア層のデジタル遺品整理実施予定は14.0%と、各年齢層で最も高いことが分かりました。

ネット上で管理しているものを見ても、「友人や知人のメールアドレスや電話番号、住所などの連絡先」「写真・動画・音声などのデータ」についで3位に「ネット銀行・ネット証券・FXなどのオンライン口座」が入るなど、デジタルとの関わりが決して関りが薄いわけではないのです。
デジタル遺品整理は面倒な作業と思われがちです。ただ、ネット銀行・ネット証券の情報を一括管理したり、それをボタン1つで親族に共有できたりするスマートフォンアプリも存在します。そのように気軽にデジタル遺品整理をできるアプリを使えるのもスマートフォンの利点です。

健康管理や終活はシニア層が関心を持っているトピックではありますが、まだまだデジタルで実施するに至っている割合は少ないのが現状です。
健康管理や終活といった分野をデジタルで管理することの楽しさ・便利さを各キャリアが行うスマホ教室や総務省のデジタル活用支援推進事業のプログラムで伝えることで、シニアがスマートフォンを生活に取り入れる意義を見出すことができるでしょう。

 

シニアの生活の中にスマートフォンを根付かせるには

さて、これまでシニアの生活や通信キャリアの動きを見てきましたが、生活の中にスマートフォンの活用を根付かせるには何を考えていくべきなのでしょうか。

今年3月末にKDDIの3G回線の提供が終わりました。SoftBankは2024年1月、NTTドコモは2026年3月末に3G回線の提供が終わります。その日が刻々と迫っているなかで、フィーチャーフォンからスマートフォンへの乗り換えするユーザーを、いかに獲得するかが各キャリアの狙うところとなります。
先日の調査では、フィーチャーフォン利用者のスマートフォンへの乗り換え意向は44.0%でした。ただ、「いますぐにでも乗り換えたい」と回答したのはそのうち5.1%に留まりました。乗り換えを検討しているものの、今すぐに必要となるような状況ではないようです。

そこで最も効果的なのはスマートフォンの活用によって享受できるメリットの理解を促進していくことだと考えます。

先日の調査(第2弾)では、スマートフォン現在利用者の利用きっかけが「LINEを使いたいから」「外出先でインターネットを利用したいから」など、スマートフォンでしかできないことにフォーカスが当たっているのが特徴です。利用検討者が利用したいと思ったきっかけでも、スマートフォンならではの機能をきっかけとする回答がないわけではありません。しかし、利用検討者は「3G回線の終了」「世間のスマートフォン人口の増加」「3G回線終了に伴う対応の機能やサイトの減少」などの割合が高く、利用者と違ってスマートフォンを持つことで「できること」に焦点があたっていないのが現状です。
検討者を「検討の状態」から利用に至らせるためには、スマートフォンでしかできないことを伝え、それを「使ってみたい!」と思ってもらえる施策が必要だと考えます。

スマートフォンの利用後に期待するサポートを見てみると、現在利用者よりも「人に頼るサポート」である項目が上位に来ており、スタッフとの会話の中で不明点を解決していくことが期待されています。このデータはスマートフォン利用後に期待するサポートに関する結果ではありますが、現在スマートフォンを検討している人に対してはスタッフとの会話の中でスマートフォンを使うメリットを伝えることがより効果的だと考えています。
スマートフォンに興味がある人に対して、「スマートフォンでできること」そしてその中で「スマートフォンがある生活は楽しい」と思ってもらえるアプローチが今後の普及には必要なのではないでしょうか。

通信キャリアの取り組みや、ヘルスケア・終活といった側面から見たシニアの動向、スマートフォン現利用者と検討者の意識の違いなどを見てきましたが、シニア層のスマートフォンの活用を促進させるには、まずはシニア層にスマートフォンを持って楽しく・便利になる生活をイメージしてもらうことが大切です。
そういったイメージを伝えることのできる取り組みをできる事業者が今後の超高齢化社会に残っていく企業となるでしょう。

今後もMMD研究所ではシニアのモバイル端末の利用やヘルスケア、終活の分野にも力を入れていきます。

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