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コラム

2022年12月2日

大規模通信障害から見る課題と備え

目次

■ 通信障害による影響
■ デュアルSIMとeSIMの認知とメリットを知る
■ 通信障害のリスクへの備えが今後の課題

今年7月にKDDIで大規模な通信障害が発生しました。全面復旧までに約86時間を要し、音声通話とデータ通信を合わせて影響を受けた利用者は延べ3,091万人に上りました。

今回の通信障害による影響は物流、自動車、行政サービス、銀行、交通、電子マネーなどで産業界に波及、生活インフラに打撃を与えました。
私たちの生活に欠かすことの出来ないインターネット。通信障害へのリスクにどう対処し、備えるかが今後の課題と言えるでしょう。

 

通信障害による影響

MMD研究所では2022年10月18日~10月25日の期間で「2022年通信障害に関する意識調査」を実施しました。その結果を一部ご紹介しながら通信障害の現状について見ていきます。

通信契約をしているスマートフォンを現在メイン利用している6,020人を対象に、現在利用している通信会社の通信障害によって影響を受けた経験について聞いたところ、「影響を受けたことがある」が33.5%、「影響を受けたことはない」が50.0%、「わからない」が16.4%という結果でした。

通信障害による影響を受けたことがあるスマートフォン利用者660人を対象に、通信障害のリスクを踏まえ検討していること、検討者していると回答した346人に実施していることを聞いたところ(複数回答可)、いずれも「メインと違う通信会社をサブ回線として契約する」「デュアルSIMやeSIM対応の端末を購入」「最寄りの無料で繋がるWi-Fiスポットの確認」が上位にあがりました。

過去に数日にわたる大規模な通信障害を経験したことがないからこそ、改めてインターネットが使えない状況に対する対策の知識をつける必要があります。

 

デュアルSIMとeSIMの認知とメリットを知る

11月2日に開催されたKDDIの決算発表会では、代表取締役社長の高橋誠氏が、今年7月に発生した大規模障害以降、auとドコモ回線によるデュアルSIM運用を行い、障害があった時にも対応できるようにしていると明かしました。

2018年発売以降のiPhoneには、物理SIMとeSIMを併用したデュアルSIMに対応した端末を発売し、1台の端末で複数の回線を使い分けることができるようになりました。

では、実際どれくらいの人がデュアルSIMとeSIMについて知っているのでしょうか。

通信契約をしているスマートフォンを現在メイン利用している6,020人を対象に、eSIMの利用状況について聞いたところ、「現在利用している」と回答したのは11.3%でした。

※eSIM…これまでのスマートフォンは、SIMカードという契約者情報が記録されているカードをスマートフォンに差し込むことにより、電話やデータ通信を行えていました。
それに対してeSIMは、物理的なカードを差し込む必要がありません。通信サービスを乗り換える際も、SIMカードを差し替える必要がないので、SIMカードを受取に店頭に行ったり、SIMカードの配送を待つ必要がありません。

次に、これをファネル構造でみると、「認知」は50.0%、「内容理解」は33.9%、「利用経験」は16.0%となりました。
次に、eSIMの説明をしたうえで、eSIMのメリットで興味を持った項目を聞いたところ、eSIMへの興味を持った人の割合は63.6%となり、うち「SIMへの物理的なトラブル・故障がない」が48.3%、「SIMを紛失する心配がない」が47.6%、「オンラインで契約から開通まで完結する」が45.0%でした。

デュアルSIMについても、現在利用は7.4%となり、ファネル構造でみると、「認知」は49.1%、「内容理解」は32.8%、「利用経験」は11.0%でした。

※デュアルSIM…1台のスマートフォンに2枚のSIMカードを挿入(もしくは物理SIMとeSIMを利用)して、2つの携帯電話番号や料金プランを利用できる機能です。

eSIM同様にデュアルSIMの説明をしたうえで、デュアルSIMのメリットで興味を持った項目を聞いたところ、デュアルSIMへの興味を持った人の割合は53.9%となり、うち「電波状況によって繋がりやすい回線を選択できる」が54.4%、「スマートフォン1台で2つの電話番号を使える」が54.1%、「通話SIMとデータSIMの使い分けができる」が42.1%でした。

eSIMもデュアルSIMもまだ利用に関しては発展途上ですが、半数以上が興味を示していることから利用者ももっと増えていくのではないでしょうか。

 

通信障害のリスクへの備えが今後の課題

今回の大規模通信障害は生活インフラに影響を及ぼし、多くの機能不全が生じました。
ヤマト運輸では荷物の問い合わせシステムに最新の情報が反映されなくなり、ドライバーに電話がつながらないなどの不具合が生じました。

また、近年キャッシュレス決済の利用が増えてきています。通信障害が起こった場合、クレジットカードと電子マネーは利用できますが、QRコード決済は利用できません。
キャリアの通信障害時にはQRコード決済が利用できないという事象も発生しました。

総務省は今回の通信障害を起こしたことを受けて、設けた有識者検討会に対し、案を示しました。
災害や通信障害の際に携帯電話が利用できなくなる事態を避けようとローミングの導入に向けた検討を進めています。
非常時における事業者間ローミング等に関する検討会

社会に大きな混乱を与えた大規模通信障害ですが、これをきっかけに不可能と言われていた三社でのローミングが実現に向けて一歩近づきました。

現状の対策としては、メインで利用している決済方法がQRコード決済の場合は通信障害時に何も出来なくなってしまうため、複数のQRコード決済とクレジットカードというように異なるキャッシュレス手段を普段から利用または備えておくと、もしもの使えない状況でも代用することが出来ます。

同様に、通信もデュアルSIMやeSIMを使用して複数の回線やサービスを利用することで障害を未然に防ぐことができます。
事前の情報収集、事前準備をしておくことが重要になってくるでしょう。

普段当たり前のように使用しているインターネットですが、通信障害へのリスク連携を強化し、備えていくことが今後の課題です。

MMD研究所では今後も通信に関して調査を行う予定です。ぜひ今後のリリースも楽しみにお待ちください。
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