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【モバイル決済キーパーソン】アント フィナンシャルジャパン 田中豊人 代表執行役員COOロングインタビュー「アリペイ導入で日本の地域活性化に貢献」

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日付:2019/1/9

執筆者:坂本 有珠

【モバイル決済キーパーソン】アント フィナンシャルジャパン 田中豊人 代表執行役員COOロングインタビュー「アリペイ導入で日本の地域活性化に貢献」

【モバイル決済キーパーソン】アント フィナンシャルジャパン 田中豊人 代表執行役員COOロングインタビュー「アリペイ導入で日本の地域活性化に貢献」

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【モバイル決済キーパーソン】アント フィナンシャルジャパン 田中豊人 代表執行役員COOロングインタビュー「アリペイ導入で日本の地域活性化に貢献」




◆はじめに――モバイル決済キーパーソンの考えを知る


モバイル決済の注目事業者にインタビューを行う本連載企画の5回目をお届けする。2019年を迎えて初の更新となる今回は、グローバルパートナーを合わせたアクティブユーザー数が9億人を突破したアリペイに迫る。訪日中国人が年々増加していく中で、日本でも急速にサービスを展開しているアリペイ。いよいよ来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックに向けて、アリペイが思い描くビジョンについて、アント フィナンシャル ジャパンの田中豊人 代表執行役員COOに話を聞いた。

【目次】


◆はじめに――モバイル決済キーパーソンの考えを知る

◆日本にやってきたアリペイ――訪日中国人の増加、旅行スタイルの変化

◆お店と観光客を繋ぐ――日本の地域活性化に貢献

◆前年比50%増――どんどん増える訪日中国人のアリペイ決済額

◆日本と中国の橋渡しに――東京五輪の先も見据えて




◆日本にやってきたアリペイ――訪日中国人の増加、旅行スタイルの変化


――日本でアリペイのサービスを提供し始めたきっかけや、当時の経緯について教えてください。

日本におけるアリペイのサービス開始は2015年の10月です。2015年は訪日中国人が爆発的に伸びた年で、日本政府が発表したデータによると、約500万人の中国人が日本を訪れたそうです。前年の2014年が約240万人だったので、倍以上の伸びですね。

中国人にとって日本は最も魅力的な旅行先の一つです。距離も近くて気軽に行けるし、異国情緒を味わうことができる。そういった背景から日本を訪れる中国人観光客が増加していることを踏まえ、普段中国国内で利用しているアリペイを旅先でも同じように使っていただきたいと、日本でのサービス提供を始めました。2015年、初めにアリペイが導入されたのは上野のディスカウントストア・多慶屋です。多慶屋のように、中国人旅行者が数多く訪れる場所に導入してもらい、そこから徐々に広まっていっている、というイメージですね。

――中国にとって観光地としての日本の重要性が増してきたタイミングで、アリペイも日本での導入を始められたのですね。

おっしゃる通りですが、もう一つ別の事情もあります。2015年は中国人の旅行に対する意識が変わりつつある時期でもありました。中国人が旅行をする場合、以前は団体旅行が多かったんですね。あらかじめ旅程の決まっているツアー旅行がメインなので、買い物をする場所といえば空港や百貨店が主だった。しかし徐々に個人旅行をする人々が増え、現在では60%以上の訪日中国人が自分で旅程を組んだ個人旅行を楽しんでいます。つまり、中国人観光客が訪れる場所も多様化しているんですね。中小規模のお店や、個人経営のお店にも足を運ぶようになった。

そこで、我々は日本国内のお店の力になりたいと考えました。「是非訪日中国人に来てほしい」という飲食店や小売店にアリペイを導入してもらえれば、「アリペイが使えるならこのお店で買い物をしてみよう」という中国人旅行者の来店は増えるはずです。日本のさまざまな観光地にアリペイを導入することで、少しでも日本の地域活性化のお手伝いができればと思っています。

日本が中国にとって重要な観光地であるのと同時に、日本にとって中国人観光客は重要な顧客です。訪日中国人は2017年には700万人を超えました。人数としてみると訪日外国人全体に占める中国人の割合は25%程度ですが、訪日外国人の消費総額をみてみると、訪日中国人の消費額は全体の約40%にも及びます。2020年には東京オリンピック・パラリンピックも控えていることから、今後ますます訪日中国人は増えていくでしょう。2020年までには、日本のどこでもアリペイが使えるようになることを目指していきたいと考えています。


(免税店でアリペイを利用する訪日中国人。バーコードを読み取るだけで簡単に決済が行える。)


◆お店と観光客を繋ぐ――日本の地域活性化に貢献


――「アリペイの導入が中国人旅行者の来店に繋がる」というお話について、詳細をお伺いできればと思います。日本の店舗がアリペイを導入するメリットを具体的に教えていただけますか?

日本ではアリペイの決済サービスとしての側面が注目されることが多いのですが、アリペイは単なる決済サービスではありません。店舗にとってはマーケティングツールとしての側面もあります。たとえば、ユーザーの位置情報に基づいた効果的なアプローチをすることが可能です。北海道のすすきのを観光している人と、福岡の博多を観光している人では、当然求めている情報が違いますよね。

そこでアリペイでは、すすきのに滞在している人にはすすきのでアリペイが使えるお店の情報を、博多に滞在している人には博多でアリペイが使えるお店の情報を、というように、ユーザーが滞在しているエリアの情報を提供しています。アリペイが使えるお店の情報はもちろん、クーポンやキャンペーンのお知らせを送ることもできます。今お店の近くに滞在しているユーザーに対して、ピンポイントに欲しい情報を送信できるのは強みの一つですね。今後も順次プログラムを増やして、お店と観光客の橋渡しができればいいなと考えています。

――滞在している地域の情報をピンポイントに見ることが出来るのは観光客に対しても大きなメリットですよね。日本全国の観光地で導入を進められていると思いますが、各地方での取り組みについて、手応えはいかがでしょうか。

冒頭にも申し上げましたが、やはり、まずは訪日中国人が多く訪れる場所に広めていきたいと思っています。ただ、今後更にアリペイのサービスを展開していく中で、九州地方での取り組みはモデルケースの一つとして考えることができそうです。

先日、「九州キャッシュレス観光アイランド推進コンソーシアム」という団体の立ち上げに事務局として関与させていただきました。このコンソーシアムの狙いは、九州の観光関連企業や金融機関、自治体、その他団体等が協力し、モバイル決済を含むキャッシュレス決済のインフラを整備することで、訪日中国人などのインバウンド誘致に繋げようというものです。九州は温泉や自然、郷土料理などの様々な魅力にあふれていて、地理的にも中国に近いという利点があるにも関わらず、東京や大阪に比べると知名度が低い現実があります。

そこで、参画企業はそれぞれの強みを活かした商品・サービスの提供や告知活動を行って、訪日中国人に対して九州をアピールしていく。ユーザーも快適に日本での滞在を楽しむことができ、インバウンド需要が増えて九州地方も盛り上がる。コンソーシアムの活動を通して地域経済の活性化に貢献できれば良いと考えています。

――アリペイの導入が地域の活性化に繋がるということですね。

おっしゃる通りです。日本の様々な観光地を楽しむことができ、中国人観光客の方にも満足してもらい、地域経済にも貢献したいというのが我々の想いです。ただ、少しずつ課題も見えてきています。観光地の商店街などでお店の人に話を聞いてみると、アリペイを知らないという人も多い現状があります。まずはモバイル決済そのものを盛り上げていく必要があると感じますね。

また、飲食店や個店だけでなく、交通機関での実証実験も行いました。中国では買い物はもちろん、地下鉄やバスなどの交通機関でモバイル決済を利用できることは当たり前の状況になっているからです。実験は2018年6月から沖縄都市モノレール「ゆいレール」で実施させていただきましたが、もともと改札機がQRコードに対応していたため非常に使い勝手が良く、手応えのある結果を得られました。




◆前年比50%増――どんどん増える訪日中国人のアリペイ決済額


――これから更に加盟店を拡大させていくに当たって、戦略はありますか?

2018年8月末の時点で、日本でアリペイを使える店舗は5万店舗を超えています。今後も日本全国にアリペイを普及させていきたいと考えていますが、我々が47都道府県全てに出向いて広げていくのは現実的にかなり厳しい状況です。そこで、我々とともにアリペイを広めてくれるパートナー企業とも連携をしながら、地域や業態などの様々な切り口から多角的にアプローチを進めていければと考えています。

――また、伊藤園の自動販売機にアリペイが対応するというニュースも拝見しました。こちらも訪日中国人のニーズに応えた施策ということでしょうか?

観光地の公園や寺社仏閣など、周囲に売店がない場所に置かれている自動販売機もたくさんあります。中国人観光客にとって、慣れない日本円を使って自動販売機で飲み物を買うのは、かなり難しい作業と言えるでしょう。近くにお店がない場所でも快適に買い物ができるように、自動販売機への対応を進めることにしました。東京オリンピック・パラリンピックまでには日本のどこでもアリペイを使えるようにしたい、というビジョンにも基づいています。

――それでは、日本でアリペイを利用している訪日中国人の現状についてお聞かせください。ユーザー1人当たり平均でどれくらいの金額をアリペイで決済しているのでしょうか?

2018年の夏時点で発表したデータにはなりますが、日本円にすると約6万~6万5千円程度です。昨年に比べると50%程金額が伸びています。これは昨年よりアリペイを使える店舗が増加していることと間違いなく関係しているでしょう。今までは現金しか選択肢がなかったけれども、アリペイが使えるのであれば現金よりアリペイを選ぶ、という方が多いのかもしれません。

ちなみに、訪日中国人が日本滞在中に使う金額は、1人当たり平均22万円程度というデータを日本政府が発表しています。その数値に基づいて考えてみると、日本で使うお金のうち4分の1を超える額をアリペイで決済している計算になります。このデータからも、訪日中国人にとってアリペイがいかに重要な存在かお分かりいただけると思います。




◆日本と中国の橋渡しに――東京五輪の先も見据えて


――続いて、大きなテーマについてもお伺いできればと思います。日本と中国それぞれのキャッシュレス決済をめぐる状況について、どのようにお考えでしょうか。

我々が考えているのは中国人に人気の訪問先である日本で、その訪日観光客がいかにアリペイを使えるようにするかことなので、日本のキャッシュレス化についてコメントできる立場にはありません。また、国によってベースとなるインフラの整備状況も異なっているため、一概に比較はできないと思っています。

ただ言えることがあるとすれば、日本以外の国でモバイル決済が普及した理由は、「ATMなどが整備されておらず、現金取引が必ずしも便利ではなかったこと」「限られた労働力を効率的に使えること」「決済データをマーケティングやプロモーションに使えること」の三点にあるでしょう。日本でも労働力不足が顕在化していく中で、モバイル決済の需要は大いにあると感じています。

アリペイとしては、既に中国国内で7億人以上のユーザーにご利用いただいているプラットフォームを活かし、訪日中国人と日本の店舗の橋渡しをしていきたいと考えています。キャッシュレス決済そのものを普及していくというよりは、アリペイ導入をきっかけに訪日中国人を誘致することで、観光業を通じて地域振興に貢献していくようなイメージです。

――いよいよ来年開催となる東京オリンピック・パラリンピックに向けて、どのような戦略のもと取り組みを進めていきますか。

まずはきちんと良い事例を作っていきたいですね。「アリペイを入れたらこんなに良いことがあった!」という具体的な事例作りをして、みなさまにご紹介していく。その上で、地方の飲食店や商業施設など、まだアリペイの行き届いていないところにも商店街や地方銀行、商工会議所などを通じてアプローチを加速させていきたいと思っています。

また、「東京オリンピック・パラリンピックまでにアリペイをどこでも使えるようにしたい」というビジョンを掲げるとともに、我々はその先の展開も見据えています。アリペイで快適に観光ができる環境を整え、もっと多くの中国人に日本を訪れてもらう。一方、アリペイを導入した日本の店舗では訪日中国人の来店が増え、売り上げがアップする。このようなプラスの循環を作ることで、日本と中国の親善にも貢献していきたいと考えているんです。

日本と中国は、お互いにネガティブなイメージを持っている人達も少なくないでしょう。しかし、中国の人たちが実際に日本に旅行して両者が触れ合うことで、そのイメージを払拭することができればいいな、と思っています。日本を訪れた中国人が日本のファンになってくれれば、中国に帰った後も日本の製品を買ったり、あるいは再び日本に旅行したりすることもあるかもしれません。

アリペイは単なる決済ツールではなく、生活の導線に寄り添った総合的なサービスです。中国ではアリペイで映画やレストランを予約したり、タクシーを呼んだりすることができます。中国人のライフスタイルをカバーしたサービスなんですね。中国の方にもっと日本を楽しんでもらえるよう、日本でも更にアリペイを広げていきたいと思っています。




【編集後記】
日本では決済ツールとしての側面が注目されることが多いアリペイだが、中国におけるサービス内容は多岐に渡っている。アリペイ1つで日本でも不自由なく過ごすことが出来るようになれば、訪日中国人にとって日本という観光地はますます身近で魅力的なものになるだろう。



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この記事の執筆者

坂本 有珠(サカモト アリス)

坂本 有珠(サカモト アリス)

MMD研究所 編集部員

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