コラム
2025年5月15日
海外調査成功のカギはインタビューに! 海外ユーザーの本音を聞く秘訣【在留外国人の通信利用実態に関するユーザー座談会】
2025年4月4日に「在留外国人の通信利用実態に関するユーザー座談会」内にて、在留外国人3名の方にリアルタイムでインタビューを実施いたしました。今回は、実際に担当した弊社モデレーターからインタビューへの意識や工夫点、外国人ユーザーならではの注意点などを聞き、まとめています。
海外調査やインタビューを考えている方はもちろん、在留外国人ユーザーの通信契約についても分析していますので、通信事業者の方にも参考になる内容です。ぜひご覧ください。
目次
■ インタビュー全体の印象
■ 回答の引き出し方・インタビュー時の工夫
■ 発言の背景や意図の読み取り
■ 仮説から実際のインタビューで得られた気づき
■ 外国人ユーザーに対しての注意点
■ 海外調査を考えている方へ
<座談会ユーザー情報>
① 28歳女性
- 出身:香港
- 通信会社:Y!mobile
- 日本滞在歴:2023年から(約2年)
② 28歳女性
- 出身:中国
- 通信会社:ソフトバンク
- 日本滞在歴:2015年から(約10年)
③ 27歳女性
- 出身:中国
- 通信会社:楽天モバイル
- 日本滞在歴:2016年から(約9年)
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インタビュー全体の印象
今回の3名のインタビューを通して、全体としてどのような印象を持ちましたか?
今回のインタビューでは3名それぞれが利用している通信会社や、日本に来た時期・滞在期間などが異なっていました。共通して感じた印象は「最初にどの通信会社を選ぶか」において、知人の勧めや近くの店舗の店員の提案が大きく影響している点です。
特に日本に来たばかりの方は「とにかく通信手段が必要」という意識が強く、自ら積極的に比較して選ぶよりは、紹介された通信会社をそのまま契約する傾向が見られました。一方で、日本に10年以上住んでいる方は通信会社選びに慣れていて、料金などの条件を比較しながら自分の価値観に合った会社を選んでいる様子が見られました。
3名のインタビューを通じて、紹介キャンペーンなどの訴求が初期の通信会社選びにおいて特に重要な要素となっていると感じました。
共通して語られていたポイントや、逆に個人差が目立った点があれば教えてください。
今回のインタビューで共通して見られたポイントの一つは、「日本の通信会社の料金が高い」という認識でした。来日前からすでに感じていた方もいて、日本に来てからも同様に料金の高さを実感していたようです。初めての通信契約時には、必ずしも最安のプランを選んでいたわけではありませんが、その後に乗り換えを経験した方々からは「少しでも安くしたい」という思いが見られました。日本人・在留外国人を問わず、通信費に対する関心が共通して高いことを示しています。
また、料金だけでなく「繋がりやすさ」も共通の関心事でした。格安SIMに関する知識はあるものの、やはり大手通信会社やキャリアサブブランドのほうが安心して使える印象を持っていたようです。
他にも「対面での契約」を選んでいた点も共通していました。家電量販店やキャリアショップでの契約が中心で、今後オンライン契約を選んでも良いと答えたのは3名中1名のみでした。残りの2名は、やはり「対面のほうが安心」「説明を受けながら進めたい」と感じていたようです。中には友人と一緒にキャリアショップへ行き、その場で説明を受けながら契約を進めた方もおり、「とりあえずショップに行けば間違いない」と考えている傾向が伺えました。
一方で、利用している通信キャリアによって、満足・不満のポイントには個人差も見られました。例えば、楽天モバイルを利用している方は、無制限利用や料金面には満足しているものの、エリアによっては繋がりにくい点を挙げていました。Y!mobile利用者は「特に可もなく不可もなく、問題がなければ満足」という考えで、通信に対するこだわりが少ない印象でした。また、ソフトバンクを利用している方は10年以上日本に滞在していて、通信に慣れている分、料金の高さをはっきりと不満として挙げていました。
このように、日本での滞在歴や利用経験によって、契約に求めるポイントや感じる価値には違いがあるようです。
回答の引き出し方・インタビュー時の工夫
質問に対するユーザーの理解が難しい場面などはありましたか? その場合、どのように工夫して対応しましたか?
今回のインタビューでは、日本に来たばかりの方から10年以上滞在している方まで、対象者の滞在歴に幅がありました。そのため、「日本に来た直後の契約の流れや困りごと」について尋ねた際、直近に来た方は明確に答えられる一方、長く住んでいる方は記憶が曖昧で、回答に差が出る場面がありました。
例えば、10年以上日本に住んでいるソフトバンクユーザーの方には、最初の契約会社については簡単に確認し、むしろ「なぜ通信会社を2年に一度乗り換えているのか」「なぜ今またソフトバンクを選んだのか」といった直近の行動や判断の背景に重点を置いてヒアリングしました。対象者ごとに質問の深掘り度合いを調整し、無理に過去を掘り下げるのではなく、より最近の経験や行動に焦点を当てることで、より具体的でリアリティのある情報を引き出すことができたと感じています。
また、今回のインタビュー対象者はいずれも日本語が比較的堪能だったため、会話はスムーズに進みましたが、在留外国人の方を対象とする際にはいくつか注意すべきポイントがあります。特に日本語に不慣れな方に対しては、難解な表現や丁寧すぎる言い回しは避け、できるだけシンプルで平易な言葉を使うことが大切です。通信に関する専門用語「MVNO」や「MNP」などは、業界に詳しくない生活者にとって馴染みが薄いため、言い換えや具体的な例を交えて説明するよう心がけました。こうした言葉の選び方や説明の工夫も、インタビューを円滑に進めるための重要なポイントだと考えています。
具体的に話を深掘るために意識した聞き方はありましたか?
なるべく質問が長くなりすぎないように意識していました。質問が長くなると、対象者が「結局何を聞かれているのか分からなくなる」ことがあるため、できるだけ簡潔で分かりやすい聞き方を心がけていました。
インサイトが得られた瞬間はありましたか?
今回のインタビューで特に大きなインサイトが得られたと感じたのは、「なぜその通信会社を最初に選んだのか」「どこで契約したのか」といった、初期の選定理由と契約場所に関する部分です。
日本の通信事業者はさまざまなキャンペーンや営業施策を展開していますが、来日直後の在留外国人にとっては通信契約以外にも銀行口座の開設やカード発行など、多くの手続きが同時進行で発生します。そうした慌ただしい状況下で、通信契約は「最も身近な人のおすすめ」や「学校・法人からの案内」によって決まることが多いと分かりました。実際に今回の対象者の一人も、学校側のサポートを通じて契約を行っています。
また、初回の契約においてはオンライン手続きよりも対面契約を選ぶケースが多く、契約場所や導線づくりにおいてリアル店舗の存在意義をあらためて感じる結果となりました。
発言の背景や意図の読み取りについて
一見すると断片的な発言でも、背景に重要な要素が隠れていた会話はありましたか? どのように気付くのか、気付いた際の深掘り方などを教えてください。
今回の座談会ではインタビューの様子を事業者の方にも視聴していただき、そのうえで追加のご質問をいただきました。例えば、「『友人・知人のおすすめ』と『通信事業者が提示するキャンペーン』のどちらを信頼しますか?」というような質問があり、対象者の皆さんにどちらかを選んでもらいました。
一見すると、「Aです」「Bです」といったシンプルな回答に見えるのですが、その言い方の中に注目すべきポイントが隠れていることがあります。「絶対Aです」「私は迷わずBですね」といった“強い言い切り”があった場合、その人にとって通信会社を選ぶ上で非常に重要な価値観や判断軸が表れている可能性があります。
実際に今回のインタビューでも、日本に来られて2年ぐらいのY!mobile利用者の方が「絶対に友人のおすすめを信頼します」とはっきり答えていました。その理由を掘り下げていくと、Y!mobileを使い始めたきっかけ自体が「信頼している友人からのおすすめ」だったこと、そして現在も特に不満なく使えている前向きな経験があったことがわかりました。こうした背景があるからこそ、キャンペーンよりも“人からの紹介”を重視する判断に繋がっているのです。
回答のなかに感情がにじむワードや言い切りの表現が出てきた際には、それを見逃さずに「なぜそう思うのか」を深掘ることが重要です。
特定の言葉の使い方や表現で印象に残ったものはありますか?
印象に残った表現としては、やはり“感情がにじみ出ている言葉”がポイントだったと思います。今回の対象者のうち、10年以上日本に住んでいるソフトバンク利用者の方は、通信会社選びにおいて「キャンペーンを絶対に優先する」と強く断言されていました。
これは、先ほどの「友人のおすすめを信頼する」と語った在留2年の方とは、まったく逆の考えです。このソフトバンク利用者の方は通信会社の乗り換えにも慣れていて、何より「料金の安さ」を最も重視しているとのことでした。
「絶対です」「私はそれでいいと思ってます」「揺るがないです」「こっちの方が嬉しいです」といったような感情のこもった言葉は、本人の価値観や意思決定の軸が見える非常に大切なヒントだと感じました。
仮説から実際のインタビューで得られた気づき
在留外国人の通信に対する意識やニーズに関して、従来の仮説はどのようなものか教えてください。その仮説と違った点はありましたか?
元々在留外国人の通信契約においては、日本語学校や就職先の企業など、いわゆる“法人側”からのサポートが重要な契約導線になるのではないかと仮説を立てていました。
しかし実際にインタビューを通じて見えてきたのは、それ以上に「最初に属する身近なコミュニティ」の影響力が大きいという点でした。特に、知人や友人からのおすすめが通信会社選びに与える影響は非常に強く、即決に近い行動に至っている様子が見られました。
今回の結果から、どのあたりが価値のある内容でしたか?
やはり「初めて日本に来たときに、どの通信会社を選ぶか」が非常に重要だと改めて感じました。
今回の対象者3名のうち2名は乗り換え経験がありました。1人は10年以上日本に住んでいて、2年に1回のペースで通信会社を乗り換えながら「お得さ」を重視して利用している方でした。もう1人は、当初日本語学校の流れでauと契約したものの料金の高さを感じ、クレジットカードを取得したタイミングで楽天モバイルに切り替えた方です。
一方で、日本に来られて2年ぐらいの方は特別なこだわりがあったわけではなく、「知人からの紹介」や「店舗が近くにあった」といった理由から自然な流れでY!mobileの契約に至ったとのことでした。「現時点で不満がなければ、今後も乗り換える予定はない。手続きも面倒だから」と語っており、最初の選択がその後の継続利用に大きく影響していることが分かります。
では、どうすれば「最初に選ばれる」存在になれるかという点で、やはり先ほどの話にもあったように「知人・友人など、初期に属するコミュニティからの口コミ」が非常に大きな影響力を持っていると感じました。そうした意味でも、紹介キャンペーンの充実は非常に有効だと考えています。
また、今回のインタビューでは事前の仮説と異なり、日本語学校や企業などの“法人”による契約サポートよりも、個人の身近なネットワークからの影響の方が強いケースが多く見られました。ただし、一部の例では学校側から「この通信会社にしましょう」と案内されていたケースもあったため、今後は法人との連携による導線づくりも、あわせて検討する価値があると感じました。
さらにもう1点、重要だと感じたのは「契約場所」です。対象者3名ともすべて対面での契約を行っていました。中でも、家電量販店を選んだ方は「必ず中国語を話せる店員さんがいるから安心できる」という理由で、量販店を選んでいたのが印象的でした。キャリアショップでは日本語対応しかできない場合もあるため、言語の不安が契約場所の選定に大きく影響しているのだと分かりました。
今後は外国人ユーザーの増加を見据えて、キャリアショップ側での言語対応やスタッフ教育の強化も重要になると感じました。
外国人ユーザーに対しての注意点
今回、対象者の国籍や背景に応じて、特に配慮したことがあれば教えてください。
今回のインタビュー対象者は中国出身が2名、香港出身が1名でした。出身地域によって多様な文化や価値観を持っているため、考え方や通信に対する意識にも違いがあるのではないかと考えていました。
インタビューでは「中国ではどうですか?」のような幅の広い問いかけではなく、「◯◯さんが母国にいたときはどうされていましたか?」のように、個人の実体験に基づく聞き方を意識しました。その方の経験に焦点を当てることで、よりスムーズに、かつリアルな回答を引き出せたのではないかと思います。同じ国の出身であっても、地域や生活環境の違いによって価値観は大きく異なるため、聞き方の工夫は重要なポイントだったと感じています。
また、今回の対象者は経済的に余裕のある方が多かったこともあり、料金の話題については、極端に深掘りするよりは、通信の内容やキャンペーンの利用状況、ポイントの活用方法などに話を広げるよう意識しました。ただ単に「安ければいい」といった論調に偏らないよう、多角的な質問を行うことで、それぞれのユーザーにとっての“通信サービスの価値”を丁寧に引き出すように心がけました。
海外調査を考えている方へ
海外調査を考えている方へ、伝えたいことがあればお願いします。
MMDLaboでは今回のようなインタビュー形式の調査だけでなく、定量調査も多数実施しており、特に最近では海外を対象とした調査も積極的に取り組んでいます。
日本国内と海外で調査を行う際には、やはり大きな違いがあると日々実感しています。日本での調査では、私たち自身が日常的に接している環境である分、仮説を立てやすく、ある程度予測に基づいた結果が得られることも多いです。しかし、海外の方を対象とする場合は、事前に立てた仮説とはまったく異なる視点や結果が現れることが少なくありません。
これについては各国ごとの文化や価値観、考え方が日本とは大きく異なっていることが考えられます。現地の方々に直接お話を伺い、調査を通じて初めて見えてくることが非常に多く、「調査しなければわからない世界」があると強く感じています。
今回のような在留外国人の方を対象とした調査はもちろん、今後訪日観光客をターゲットとした調査や自社サービスを海外展開したいとお考えの企業様にとっても、こうしたインサイトの重要性はますます高まっていくはずです。
「海外調査って、どう始めればいいの?」「どんな国や属性の方にリーチできるの?」といったイメージがつきづらい方も多いかもしれませんが、弊社ではすでに多くの海外調査を実施してきた実績があります。少しでも「こういう人たちに話を聞いてみたい」「こういう国のニーズが知りたい」といったご関心がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。調査設計から実施、分析までサポートさせていただきます。
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