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2018年10月11日

【モバイル決済キーパーソン】楽天ペイ 諸伏勇人シニアマネージャーロングインタビュー「累計付与1兆ポイントの力からキャッシュレス化を推進」

【モバイル決済キーパーソン】楽天ペイ 諸伏勇人シニアマネージャーロングインタビュー「累計付与1兆ポイントの力からキャッシュレス化を推進」




◆はじめに――モバイル決済キーパーソンの考えを知る


「モバイル決済キーパーソン」と題し、モバイル決済の注目企業にインタビューを行う本企画も今回で2回目となる。前回のLINE Payインタビューから1ヵ月半ほどが経ったが、その間にもモバイル決済業界では様々なニュースが飛び交っていた。目まぐるしく変化を続けるモバイル決済業界。今回はその中でも、楽天グループの強みを活かした独自のサービス内容が評判を呼んでいる楽天ペイの諸伏勇人シニアマネージャーに話を聞いた。

【目次】


◆はじめに――モバイル決済キーパーソンの考えを知る

◆ECからリアルへ――街に飛び出す楽天ID

◆QR/バーコード決済NO.1の楽天ペイの次なる手――個人間送金

◆ユーザー体験の追求――野球場、音楽フェスなどへの導入

◆累計付与1兆ポイントの力からキャッシュレス化を推進




◆ECからリアルへ――街に飛び出す楽天ID


――2016年に楽天ペイのサービスを開始したきっかけや経緯を教えてください。

楽天ペイ(アプリ決済)は2016年10月に始動しました。当時から掲げている大きなテーマは「ECからリアルへ」というものです。
現在楽天IDは現在約9,900万にのぼり、楽天スーパーポイントの累計付与数も1兆ポイントを越えました。楽天市場などの自社サイトでの支払いはもちろん、他社サイトでも楽天IDを利用した決済が可能になったところで、今度はその楽天IDを利用して街でも支払いが出来たらいいのではないか、と。そのような思いから、オンラインだけでなく、オフラインでも楽天IDを利用して決済が行えるサービスを開始しました。

――楽天ペイの強みや特徴を教えていただけますか。

まず何よりもポイントですね。先ほども申し上げた通り、累計付与ポイント数1兆ポイントを超え、「最も貯めたいポイント」NO.1(※1)に選ばれている楽天スーパーポイントを街でも気軽に使えること。それ以外にも、楽天ペイには3つの利があると考えています。

1つ目は、先行優位性です。2016年という国内でも早い時期にサービスをローンチできたことに加え、楽天ペイを立ち上げる以前から、「楽天スマートペイ」という先行サービスで2012年から中小規模の加盟店を開拓していました。

2つ目は、プロダクトの利です。これはユーザーの視点になりますが、楽天IDをお持ちの方の多くは楽天カードを登録していて、たとえば楽天市場の売り上げも約6割が楽天カードで支払われています。すでに楽天IDに楽天カードが紐づいていれば、購入の際、いちいちカード情報を入力する手間がない。つまり、楽天IDさえ持っていれば、面倒な初期設定をする必要もなく、スムーズに楽天ペイを始められます。そのおかげか、楽天ペイを一度使ったユーザーの継続率は非常に高いです。Google PlayやApple Storeでも、楽天ペイアプリの評価は4を超えています(※2)。

3つ目は、楽天銀行との連携です。加盟店にとって、楽天ペイはキャッシュフローが非常に良いサービスになっています。楽天銀行に口座を持っている加盟店であれば、楽天ペイで計上した売り上げを翌日に振り込み手数料無料で受け取ることができるんですね。

――個人経営など、中小規模の店舗にとっては心強いポイントですね。

その通りです。締め日が月に1度や2度だと、売り上げ金は貯まりますが、欲しいときに引き出せない。楽天銀行を選んでいただければ、手数料もかからずに翌日に受け取ることができます。これは楽天ならではのコラボレーションです。
また、コラボレーションというところで言うと、こちらはユーザー向けの施策になりますが、年間流通額が1400億円(※3)に成長しCtoCで売り上げ2番手につけている「ラクマ」というサービス。今年の7月から、ラクマの売り上げも楽天ペイで使えるようにしました。自分が楽天で貯めたポイントや売り上げ金を、楽天IDひとつあれば街で使うことができます。

――「ECからリアルへ」というテーマをまさに体現されたお取り組みですね。



◆QR/バーコード決済NO.1の楽天ペイの次なる手――個人間送金


――楽天ペイはQR/バーコード決済で利用者数NO.1(※4)と伺いました。ユーザーに支持されている要因については、どのようにお考えですか。

外部の調査で、楽天ペイはQR/バーコード決済で利用者数がNO.1と出ました。あわせて、ここ1年間の利用者数の伸びで見ても1番だということが分かっています。NO.1を取れた要因は、やはり先行的にサービスを始められたことだと思います。実際に店舗へ足を運んでユーザーや加盟店の声を聴き、サービスを磨く時間を充分に取ることが出来ました。それがアプリの評価にも繋がっていると感じています。

また、楽天ペイを始めるハードルの低さも関係していると思います。楽天IDとクレジットカードの連携を、我々は20年かけて進めてきました。既にIDとカードを連携しているユーザーであれば、楽天ペイを利用するにあたっての初期設定は必要ありません。ここにも、楽天グループの強みが生きていると言えます。

――楽天ペイユーザーの支払い金額などについては、いかがでしょうか。

従来のクレジットカードよりも、楽天ペイアプリの方が支払金額は高くなっています。アプリではカードと違い、ポイントの情報が可視化されている。今自分がどれくらいポイントを持っていて、今回の支払いでどれくらいポイントが貯まったのかという情報が、来店の動機付けやモチベーションになっているように感じます。

「楽天ペイ」は200円利用ごとに1ポイントが付与されますが、「楽天カード」が楽天ペイアプリと紐付いていれば、200円の利用でプラス2ポイントが獲得できます。さらに、「楽天ポイントカード」や「楽天チェック」というチェックインすることでポイントが貯まるサービス等を導入している加盟店であれば、楽天グループだけでポイントの4重取りが出来るケースもあります。また、加盟店が発行しているポイントカードもあわせて使えるケースもあります。アプリなので、通知を送って来店への背中を押すこともできます。
最終的には、ユーザーの方に「楽天ペイを使いたからお店に行きたい」と思ってもらえるのが我々の理想ですね。ユーザーの来店が増えれば、加盟店のみなさまにも喜んでいただけると思うので。

――2019年には、新たに個人間送金の機能を実装されると伺いました。こちらの詳細もお伺いできますか。

楽天ペイが目指しているビジョンは「楽天IDで簡単に支払いができる」ことです。ECの世界を飛び出して、「街で簡単に支払いができる」ことは実現できましたが、今後は「個人間でも簡単に支払いができる」ことを実現させていきます。
個人間送金は2019年実装の予定ですが、あわせて楽天ペイというアプリを、楽天Edyや楽天スーパーポイントなど楽天のペイメントサービスを集約したプラットフォームにします。個人間送金が可能になるのは、この楽天ペイのアプリ上です。

――個人間送金を利用したユーザーに、送金額や回数に応じたポイントが付与されるといったサービスはお考えでしょうか。

そちらは今まさに企画・検討中の段階ではありますが、ユーザーのみなさまにワクワクするような体験をご提供できればと考えています。


(楽天のペイメントプラットフォーム構想。個人間送金は2019年実装予定。)

◆ユーザー体験の追求――野球場、音楽フェスなどへの導入


――先ほど伺った「ECからリアルへ」というテーマの通り、街の実店舗でも楽天ペイの加盟店は続々と増えている印象があります。その中でも、野球場や音楽フェスなど、ユニークな場所へ積極的に導入されている戦略を教えていただけますか。

今例に出たところだと、野球場はまさに楽天ならではの取り組みですね。東北楽天ゴールデンイーグルスのホームスタジアムである「楽天生命パーク宮城」の観客席の売り子の方に、QRコードが印刷されたポストカードサイズの紙を持ってもらっています。人が密集した野球場では、ビールを購入する際のお金のやり取りも大変でしたが、それがQR決済で非常に便利になりました。私も実際に球場へ足を運びましたが、とても評判が良かったです。
また、福岡県糸島市で開催された「26th Sunset Live 2018 - Love & Unity」というフェスでは、会場内のショップで楽天ペイが利用できるのはもちろん、福岡都心部から会場までのタクシーでも楽天ペイで支払いが可能でした。


(野球場などで導入されているプリント型QRコード。ユーザーはこのコードを読み込んで支払う)

――フェスの会場だけでなく、行き帰りの移動も含めた導線すべてで楽天ペイを利用できる環境だったのですね。

フェスの最初から最後まで楽天ペイでカバーできる環境を創出できたのは何よりです。さらに、担当者として今回嬉しかったのは、今回のフェスで初めて楽天ペイをダウンロードしたユーザーの多くが、フェス期間中に2回、3回と複数回にわたって楽天ペイを利用してくれたことですね。1回目の使用感が良くなければ、繰り返し使おうという発想にはならないはずなので。逆に言うと、楽天ペイは1回使っていただければ継続して利用していただけるサービスだと自負しています。
また、フェスに出店していたショップの方も、楽天ペイを工夫して利用してくれました。今回楽天ペイを使わなかったユーザーの方にも、お店の方が掲示していた楽天ペイのQR/バーコードが印刷されたポップは確実に目に入っているので、認知の拡大につながりました。

――フェスというエンターテインメントを提供する場で、楽天ペイという新たな支払いサービスを利用できるのは、ユーザーにとっても新たな楽しさがあるように感じます。

我々もユーザーの体験は重視しています。アプリの立ち上げ時間、支払いに要する時間などをスピーディーにし、「こんなに簡単に支払いができた!」という実感を味わっていただくのが一番だと思うので、今後もユーザー体験の時間や質にはこだわりを持っていきたいですね。

◆累計付与1兆ポイントの力からキャッシュレス化を推進


――日本のキャッシュレス化という大きなテーマについてお聞かせください。国内のキャッシュレス化の現状や、今後キャッシュレス化が広がっていく中で楽天ペイが果たすべき役割について、どのようにお考えでしょうか。

現状では日本のキャッシュレスの割合は18%前後だと言われていますが、キャッシュレスビジョンの実現に向けて国を挙げてどんどん動いていこうとう流れになっています。国がキャッシュレス化を後押しているのは我々にとっても追い風ですし、楽天としても、キャッシュレス推進協議会などに参加させていただき、意見交換をさせていただいているところです。
また、やはり我々には利用者数NO.1(※4)としてこのマーケットを拡大させていく責任があると感じています。今後も、ユーザーや加盟店の期待を越えるサービスを出していかなければと考えています。

――国内の競合サービスの動向についてもお聞かせください。他社の決済サービスでは、たとえば決済手数料を期限付きで0%にするなどの取り組みが目立ちます。楽天ペイとして、今後さらなる加盟店増に向けて、決済手数料についてはどのようにお考えでしょうか。

現在、楽天ペイの決済サービスは一律で3.24%の手数料を設定しています。楽天銀行との連携で翌日に売り上げ金を振り込み手数料無料で受け取れるなど、楽天グループの強みを活かしたサービスで、手数料以上のサービスをご提供できていると思います。今後も手数料を無料にするというよりは、加盟店の皆さまにご満足いただけるよう、より一層のサービスの向上に努めて参ります。

――今後さらなるキャッシュレス化の推進にあたって、心理的なハードルを感じているユーザーにはどのようなアプローチが有効でしょうか。

これは難しい問いですね。しかし、我々には楽天ならではのアプローチが可能であると考えています。先ずは何と言っても、楽天スーパーポイントを中心としたアプローチです。ポイントを貯めること、ポイントを使うこと。いずれもユーザーにとってはワクワク感があり、ある種のエンターテインメントになっていると思うんです。決済でポイントを貯め、貯まったポイントで決済を行う。そうなってくると、楽天ペイにおける決済そのものに面白さがある。何よりも、ユーザーに「楽しい」と思ってもらえることが重要だと感じています。

――「キャッシュレスにしよう」ではなく、「ポイントを使おう」という視点の切り替えですね。

その通りです。楽天ペイは、従来のキャッシュレス化の視点とは違う角度でアプローチをしていきたいと思っています。たとえば、楽天市場で貯めたポイントを、楽天ペイなら街のコンビニや飲食店で利用できます。あるいはその逆に、街で貯めたポイントを、楽天市場で使うこともできる。ECとリアルの循環が起きてくると思います。楽天スーパーポイントはユーザーにとって非常に使い道のたくさんあるポイントです。楽しんでポイントを使うことが、結果的にキャッシュレス化の推進に繋がるのではないかと考えています。

――最後に、今後の具体的な目標などがあればお聞かせください。

楽天のペイメントサービスは、想像以上のスピードで導入が進んでいます。現在、いずれかの楽天のペイメントサービスが使えるのは全国で約120万か所。今後は200万店舗を目指し、どこに行っても楽天IDで支払いが出来るような未来を作りたいと考えています。



【本文注】
※1…NRI「インターネットアンケート調査」2016年
※2…2018年9月現在
※3…2017年12月の流通総額参照
※4…マイボイスコム「【モバイル決済】に関するアンケート調査」

【編集後記】
諸伏シニアマネージャーは、楽天ペイが提供している様々な決済端末も見せてくれた。楽天ペイはアプリ決済だけでなく、カード決済が利用できる端末や、楽天Edyが利用できる端末など、豊富なラインナップの中から加盟店のニーズに合わせたサービスを提供しているとのこと。




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