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コラム

2023年4月18日

第8回MMD研究所主催MVNO勉強会レポート 「MVNO市場の“今まで”と“これから”の話をしよう」

MMD研究所は2023年4月6日、「MVNO市場の“今まで”と“これから”の話をしよう」と題して、メディア関係者向け勉強会を開催しました。この勉強会は、2015年の第1回から格安SIM/MVNOの業界認知向上に向けて報道メディアの皆さまに向けて行っておりましたが、MVNO市場シェアが1割を獲得し一定の市民権を得たことから、2018年の第7回を最後に終了。今回は、MNOのオンライン低価格プラン誕生、楽天モバイルのMNO参入、NTTグループの再編やエコノミーMVNOの発表など目まぐるしく市場が変化する中、コンシューマ市場で積極的に事業展開する独立系MVNO 3社にお声がけし、約5年ぶりの開催となりました。本記事ではそんな勉強会の様子をお伝えします。

今回ご登壇いただいたのは3社それぞれの事業責任者、mineoを提供する株式会社オプテージの福留康和氏、イオンモバイルを提供するイオンリテール株式会社の井原龍二氏、そしてNUROモバイルを提供するソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の田中直樹氏です。モデレータは、当研究所所長である吉本が務めました。

目次

■ 2023年最新のMVNO市場について~MMD研究所から最新の通信サービスのデータ発表~
■ 各社の最新サービスについて
■ MVNO3社によるパネルディスカッション
■ 各社からのメッセージ

 

2023年最新のMVNO市場について

はじめに、所長の吉本から、MMD研究所の2023年2月の通信サービスに関する調査データに基づき、MVNO市場の現在の状況について分析しました。


 

MMD研究所が行った2023年2月の調査からは、この1年間でRakuten UN-LIMITを含めた4キャリアのシェアはほぼ変化がなく、MVNOのシェアも2019年をピークに低下していることがわかりました。
ただ、2020年からUQmobileがKDDIのサブブランドになり、楽天モバイルがMNOへ進出しています。もともとMVNOだった2社とY!Mobileも合わせると、低価格帯のニーズが年々高まっており、3キャリア本ブランドのシェアは6割を切っています。

また、3キャリアのオンライン専用プランやサブブランド利用者と、MVNO利用者の使用容量を比較すると、ほぼ同じであることもわかりました。今後、割引キャンペーン終了などそれぞれの料金が上がったタイミングでMVNOへの流入もあるかもしれません。

 

各社の最新サービスについて

ユーザーとのつながりを重視するmineo

株式会社オプテージの福留氏からは、外出自粛による在宅勤務や物価高騰による節約思考など、お客様のニーズが多様化していく中で、それぞれのライフスタイルに合ったプランを選択いただけるように提供していくことが重要だとお話いただきました。mineoとしては、各社の価格競争が激化し従来よりもプランの見直しや乗り換えが活発化している状況の中で、ユーザーと一緒になって独自のサービスを展開していきたいとの考えを示しました。

現在9年目を迎え、契約回線数は約125万回線となったmineoですが、独自のコミュニティサイト「マイネ王」の運営をはじめ、オフ会や座談会、格安スマホ相談会も実施し、ユーザー同士だけではなくユーザーとスタッフのつながりも重視しているとのこと。ユーザーがスタッフと共にmineoの事業に関われる「アンバサダー制度」、ユーザー同士の譲り合いで通信混雑緩和を実現する「ゆずるね。」などの事例もご紹介いただきました。

今後もユーザーと心を通わせ、様々なライフスタイルへ対応したプラン展開で、他社との差別化を図っていきたいと語りました。

福留氏(mineo)

商人が作った通信サービスのイオンモバイル

イオンリテール株式会社の井原氏からは、まず利用後のお客様からの評価も高いイオンモバイルの特長として、シンプルかつ無駄のない料金プランの魅力をご紹介いただきました。さらに、数字で見るイオンモバイルの変化としては、70代以上のユーザーが増えている点や、2021年4月の料金改定以降、20GB以上のプランが大きく伸びている点が、他社との大きな違いであると述べました。

またプレゼンの中では、以前より問題となっていた端末の転売問題に関して、2019年以降の法改正の影響についても触れました。端末の購入を条件とした通信料金の値引きが禁止され、端末の単体販売については値引き上限額が定められていなかった結果として、短期解約の急増に繋がったことを示すデータも紹介。MVNOとしても大きな被害を被っていましたが、公正取引委員会からも動きがあったため、今後の改善に期待しているとしています。

イオンモバイルとしては、スマホメンテナンスの開始、コミュニケーションサイト「イオンモバイルのひろば」の開設、経済圏を意識したWAON POINTの増量などを行い、今後もグループシナジーを活かしたイオンモバイルにしかできないサービス展開を軸に進めていきたいとのことでした。

井原氏(イオンモバイル)

新プラン展開や機能拡充を進めるNUROモバイル

ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の田中氏からは、今年3月8日に発表された新プラン「NEOプランW」など豊富なプランについてのご紹介や、NUROモバイルの戦略についてお話しいただきました。

約半年単位でそれぞれ特徴を持ったプランを発表することで、好調に推移しているNUROモバイルですが、MVNOとしての柔軟性を活かし、ソニーグループのAI技術を応用した帯域利用の効率化や、MNOと同等レベルの通信品質の追求、トリプルキャリア対応など新たな価値への挑戦も続けているとのこと。このような独自の取り組みを進めることで、2年間で2倍以上契約者数が伸びています。
またNEOトライアルの提供開始により、NUROモバイル契約の際にまず格安プランであるバリュープラスをご利用いただいている方や、バリュープラスから高品質プランであるNEOプランへの移行も視野に入れている方にも、「NEO専用帯域」の通信品質を体験していただくことで、お客様の不安を払拭できるという点も特徴的でした。

今後もユーザーの声を反映した、独自性のある多様なプラン展開に期待してほしいと述べました。

田中氏(NUROモバイル)

 

MVNO3社によるパネルディスカッション

今回のMVNO勉強会では、主に4つのテーマについて、3社の登壇者のみなさまから率直なご意見をいただくパネルディスカッションを行いました。

この1年を振り返ってのMVNO業界やユーザー変化の印象は?

福留氏:2021年の春以降、MNO各社の新料金プラン発表もあり、ユーザーのライフスタイルに合わせたプラン選択が可能になった。また国による乗り換えの円滑化施策、物価高騰で節約志向の高まりなどもあり、携帯料金の見直しや事業者間の乗り換えが活発になっている印象。

井原氏:ユーザーの変化自体はあまりない。通信障害や楽天の0円撤廃もあったが裾野は広がっておらず、MNOユーザーはMNOを使い続けている。店舗に立っている印象としては、大手の格安プランユーザーが少しずつMVNOに興味を持ち始めているのではないかと思う。

田中氏:新料金プランの出初めから、顧客の流動化が激しい。NUROモバイルにとっては、コロナ禍の外出制限により、オンライン志向が高まることで、買い物やスマホ契約をオンラインで行うことに心理的ハードルが下がり、追い風になった感じがある。今年に入り、社会活動が再開したことによる新たなニーズも捉えていきたい。

 

コロナ期間はプラスに働いたか?

田中氏:ユーザーがより各社のプランを比較検討するようになったことがNUROモバイルにとってはプラスだった。

福留氏:mineoはもともとWebでの獲得が9割なので、あまり影響はない。

井原氏:イオンモバイルはリアル店舗での契約が9割以上であり、イオン自体はコロナ禍でも店舗が開いていたため、大きな変化は無かった。

今後の業界変化やユーザー変化をどう捉えているか?

田中氏:社会生活が戻ってきているため、スマホの使い方がさらに変化していくのではないか。単なる通信手段としてだけではなく、MVNOとしてユーザーのニーズにマッチした、自由度の高いサービス展開をしていきたい。

井原氏:今はまだアダプター層で乗り切っているMVNO業界。ユーザーの乗り換え欲求を阻むさまざまな壁をクリアするために、MNOのオンライン専用プランを経た移行、MNPやキャリアメールの引継ぎについての周知など、ハードルを下げる動きを随時していきたい。

福留氏:激しい価格競争は今後も続くと思う。価格や機能だけのベースの価値だけではなく、他社にはない魅力を高めていくことで独自路線を開拓していきたい。

 

障害対策や副回線、MNOでの相互回線に関する見解

福留氏:利用者が安心して使える取り組みだという認識。通信障害や災害に備えてバックアップ回線を求める方も増えている。実際に、mineo新規ご契約者の3割は複数SIMを選択しているので、トリプルキャリア対応やeSIM提供を通じて、様々なキャリアの回線を提供することで、バックアップ回線を求める方含め様々なお客様ニーズに対応していきたい。

井原氏:ユーザーにとっては必要だが、インフラというよりは事業戦略的な取り組みという印象。複数SIMという使い方ができるのもMVNOの良さだと思う。

田中氏:ユーザーの利便性向上としてはいい取り組み。MNO間で話し合いがされている中、MVNOに対してどのように提供されるのかに関心がある。それを踏まえてまた新しい価値提供ができるのではないかと考えており、NUROとしては現在メイン利用が多いが、サブ回線需要として今後提供を開始するeSIMの利用などにも注目していきたい。

 

「1円スマホ問題」についての影響や、今後の対策

井原氏:個人的には以前より1円スマホは独占禁止法における不当廉売に当たるという認識を持っていて、イオンモバイルとしても注意喚起を行っていた。この問題の背景としては、通信と端末の分離や、MNOだけだった市場にMVNOや端末の小売りもでてきたことで起きた環境の変化が挙げられる。
公正取引委員会から適切に報告があり、これによって今後調査など大きな動きも出てくるのではないかと期待していて、今の時点でも転売はかなり減ってきている。1円スマホの存在により、端末メーカーの企業努力が報われない。もちろん安く買えること自体が悪いことではないので、我々としても努力を続けていきたい。

 

各社からのメッセージ

今回の勉強会、ディスカッションの内容を踏まえて、最後に各社からコメントをいただきました。

mineo:福留氏
引き続き、他社にはない独自の価値・独自サービスを追求することでオンリーワンのポジションを目指していきたい。特に今年はファンファーストを徹底し、ファンの声だけでなく潜在的な不満を解決するサービスを作っていきたい。お客様の生活の今まで以上の感動と安心感をもたらしていきたい。

イオンモバイル:井原氏
お客様のリアルの声、そして市場のニーズを捉えながら、我々ならではのサービス・サポートを提供していきたい。さらにグループのシナジーも活かし、イオンユーザーはイオンモバイルというような形を作っていきたい。

NUROモバイル:田中氏
3月8日発表の新プランはスマホをアクティブに使う方にとってちょうどいいプランだと思う。NUROモバイルとしてもトリプルキャリア化を進めることで利便性を高め、プラン展開も豊富に用意している。今後もお客様にフィットしたご契約をしていただける環境を作っていきたい。

 

今回の勉強会が、MVNOの現状と今後について考えるきっかけとなりましたら幸いです。
MMD研究所では、今後もMVNO市場をより一層盛り上げていくため、さまざまな調査やイベントを実施していきます。MVNO市場はもちろん、通信サービス全般に関して、「こんなことが知りたい」「こんなデータは無いか」など、ご質問やご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

また、本勉強会にご参加いただいた皆様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。

上記のリサーチに関するご質問等は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

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