コラム
2022年7月22日
「楽天モバイル0円廃止」による通信業界の影響と今後
目次
■ 話題になった「楽天モバイル0円廃止」
■ 活性化する流入先はオンライン専用プランかMVNOか
■ 楽天モバイルの経済圏への影響
■ 通信業界の今後の予測
話題になった「楽天モバイル0円廃止」
2022年5月13日に楽天モバイルから新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」が発表されました。この新料金プランは2022年7月から開始されています。
「Rakuten UN-LIMIT VI」利用者は自動的に7月から「Rakuten UN-LIMIT VII」へ移行され、さらに月額基本料が変更されることとなりました。話題にもなった“楽天モバイル0円廃止”です。
2020年の開始当初である「Rakuten UN-LIMIT」は1年間300万名対象で通信料金が1年間無料、2021年には「Rakuten UN-LIMIT Ⅵ」として1GB以下0円と打ち出していました。2022年7月以降も10月末まではポイント還元で実質無料となりますが、楽天モバイルで無料利用できるプランはなくなっています。
MMD研究所では楽天モバイルの0円廃止発表後に楽天モバイルユーザーへ乗り換えの有無や乗り換え先などを聴取しました。
今回のコラムではその調査を紹介しつつ、楽天モバイルについてお話していきます。
活性化する流入先はオンライン専用プランかMVNOか
楽天モバイルが0円廃止発表後、MNOのオンライン専用プランや一部のMVNOへの流入や問い合わせが増えたという話がありましたが、実際の乗り換え・継続意向はどれほどの割合だったのでしょうか?
Rakuten UN-LIMITメイン利用者の半数以上は継続利用意向が高い結果となりました。サブ利用者は継続・他社乗り換え・解約いずれも約3割であまり差はありません。また、メイン利用と違いサブ利用では1GB以下の利用や利用していない人も多く、解約検討を見るとメイン利用の約6倍の結果です。
では、サブ利用者の無料利用・有料利用の継続・乗り換え・解約意向はどうなのでしょうか?
有料利用者の約半数は継続利用意向の結果に対し、無料利用者では3割に満たない結果となりました。サブ利用として無料だから契約していた人が多かったのかもしれませんね。
さて、メイン利用・サブ利用ともに約3割とあまり差のなかった他社乗り換えですが、他社乗り換えを考えている人はどの通信サービスを検討しているのでしょうか?
メイン利用・サブ利用ともにpovoが1位となりました。povoでは3ヶ月に1度は何かしらトッピング購入で料金を払う必要があるものの、それ以外の月の基本料や乗り換え時の事務手数料がないことが大きな理由になっていると考えられます。
楽天モバイルの経済圏への影響
楽天モバイルユーザーの多くは楽天経済圏で生活している人ではないでしょうか?ここからは楽天経済圏での楽天モバイルの関り方を別の調査(「経済圏のサービス利用に関する調査」と「経済圏の意識に関する調査」)から見ていきましょう。
全国の18歳~69歳の男女に最も意識している経済圏、最も今後意識していきたい経済圏を聞いたところ、ともに楽天経済圏はトップとなり、その強さが伺えます。
楽天といえば「楽天市場」をイメージする人が多いかと思います。楽天市場は1997年よりサービスを開始した国内最大級の総合ECサイトで、食品や日用品など幅広い商品の購入ができます。この楽天市場でのポイントアップ条件の1つが楽天モバイルの利用です。
最も意識している経済圏で楽天経済圏を選んだ人の利用しているスマートフォンの通信会社はRakuten UN-LIMITが1位となりました。とはいえ、僅差でdocomo、auと続いており、楽天経済圏を意識しつつも楽天モバイルは楽天経済圏の中でも訴求力が弱いことが伺えます。楽天経済圏は通信サービスではなくECが核としてできているので、楽天経済圏内の楽天モバイルのシェアを確固たるものにするのは時間がかかりそうです。
では、楽天モバイルユーザーが意識する経済圏はどこなのでしょうか?
先ほどは2位とあまり差がない結果でしたが、楽天モバイルユーザーが意識する経済圏は楽天経済圏が断トツであることが分かりました。楽天モバイルユーザーが増加すれば楽天経済圏内の楽天モバイルのシェアは上がると考えられるため、ユーザー獲得が大きな鍵となりそうです。
通信業界の今後の予測
楽天モバイルの値上げによる流出先はpovoが人気であることが調査からも分かっています。しかし、2022年7月2日~7月5日にかけてKDDIの大規模な通信障害があり、実際に乗り換えた人の中にはその被害を受けてKDDIから乗り換えた人、SIMの複数持ちを検討した人もいたことでしょう。
また、楽天モバイルでは約2年間無料の期間があり、MNOはもちろん、格安で提供してきたMVNO事業者も苦戦を強いられていたかと思います。
この無料期間には通信業界でさまざまなことがありました。
2018年の菅元官房長官による携帯料金の4割値下げ発言により、2020年に総務省はモバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プランを発表し、NTTドコモとソフトバンクからはオンライン専用プラン、Y!mobileとUQ mobileの値下げの発表がありました。
2021年にはKDDIからオンライン専用プランの発表と楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT Ⅵ」の開始、MVNO各社では相次いで料金プランの値下げ発表がありました。各オンライン専用プランの開始もこの年になります。さらに、SIMロックが原則禁止となり、より他社への乗り換えが容易になりました。
コロナ禍により在宅時間が増えたことでWi-Fiの利用からモバイル通信量を調整したり、安い料金プランや通信キャリアに変えたり、自分に合ったものを選ぶ人が増えたのではないでしょうか。楽天モバイルの0円廃止発表後も継続意向を示している人は自分に合ったものを選んだ結果だと考えられます。
今後の通信業界では他社乗り換えのしやすさもあり、楽天モバイルユーザーだけでなく、他社のユーザーも魅力的なサービスやプランを打ち出している事業者への乗り換えを検討することが多くなるでしょう。
MMD研究所では引き続き通信キャリアのシェアや流入・流出先など定期的に調査を行っていきます。調査データへのお問い合わせなどございましたら、下記お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
※本調査レポートは小数点以下任意の桁を四捨五入して表記しているため、積み上げ計算すると誤差がでる場合があります。
※回答者の属性は会員登録後に無料レポートよりご確認いただけます。
上記のリサーチに関するご質問等は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
≪本調査レポートのご利用について≫
MMD研究所にて無償公開しているWEBサイト内の文書、及びその内容についての無断転載等は原則としてご遠慮頂いております。
データの利用または引用の可否はその内容によりますので、まずは掲載範囲、用途・目的、メディアなどを記載してメールにご連絡ください。
追って担当者よりご連絡いたします。著作物の二次利用に関しては、以下の条件にすべてあてはまる場合、個別の許諾なしにこれをみとめます。
- 営利を目的としないこと
- それによって経済的な利益を得ることがないこと
※販促に利用されたい企業様はお問い合わせください。
MMD研究所(編集部員)