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コラム

2021年11月16日

ヘルスケアアプリ未利用者の意向から探る―デジタルヘルス普及のヒント

目次

■多方面で市場拡大中のヘルスケアサービス—背景と動向
■医療・ヘルスケアアプリ未利用者の意向とは?
■まとめ—ヘルスケアサービス、デジタル化の今後

 

多方面で市場拡大中のヘルスケアサービス—背景と動向

コロナ禍を経て、自分の健康を以前よりも気にし始めたという方は多いのではないでしょうか?
実際、本コラムでご紹介する「ヘルスケアアプリと医療DXに関する調査」では、医療・ヘルスケアアプリ利用経験者の541人を対象に、医療・ヘルスケアアプリの利用を開始した時期を聞いたところ、約4割が新型コロナウイルス流行期に利用を始めたと回答しました。感染対策のための健康への注意だけでなく、外出自粛からフィットネスへの関心の高まりはヘルスケアアプリ利用を促進したのではないでしょうか。
このように、新型コロナウイルスを機に医療のデジタル化が進みやすい土壌となったのではないかと思います。

また、新型コロナウイルス流行とは別に政府も医療のデジタル化を進めようとしています。
国内では若年層の減少と高齢者人口割合の増加による、将来の労働力減少が継続して懸念されており、65歳以上の人口は2020年には28.7%となり、2040年には35.3%になると見込まれています。(※1)それにより、今後の社会保障給付や医療費の増大が予想されることから、政府としてもヘルスケア産業の創出を図っています。

他方、異業種のヘルスケア事業への進出が目立ちます。
国外では近年GAFAがヘルスケア領域への参入を進めています。例えば、Googleは2019年にFitbitを21億ドルで買収すると発表し、2021年1月14日に買収完了しています。
AppleはApple WatchやiPhoneにてスマートヘルスケアのプラットフォームとしての成長を図っています。将来(早ければ2022年に)ヘルスケア機能を搭載したAirPodsも発表されるようです。これらのウェアラブルデバイス等から得たユーザーデータの蓄積は診断を助ける材料の一つとなり、サービス提供する企業や医療機関にとって財産となるでしょう。

国内では例えば、通信大手4キャリアのNTTドコモ、KDDI、SoftBank、楽天モバイルは新たなライフスタイル戦略を提案しており、ヘルスケア領域もその一環として各社の経済圏に組み込めるようサービスを充実させていくのではないでしょうか。

ITヘルスケア事業の拡大が各所で進む昨今、私たちに身近なサービスとしてはヘルスケアアプリとなって現れてくるのではないでしょうか。
そのため、医療のデジタル化が進めばスマホアプリを使う機会も増えると考えられます。

ただ現時点では、18歳~69歳のスマートフォンを所有する男女5,984人のうち医療・ヘルスケアアプリの現在利用は24.2%で、それほど浸透しているとはいえない状況があります。
とくに、健康を心配する人とそうでない人が分かれやすいと考えられる30代は現在利用が3位の一方、「全く知らない」が1位となり両項目で多数の傾向にありました。

本コラムでは、医療・ヘルスケアアプリ未利用者が今後アプリを利用するにあたりハードルや要望などがあるのか?調査結果をもとにみていきたいと思います。

ヘルスケアアプリと医療DXに関する調査」の結果は以下よりダウンロードいただけます。

調査概要や調査項目が分かる資料を
PDFでご用意しています。
下記よりダウンロードください。

データをダウンロードする

医療・ヘルスケアアプリ未利用者の意向とは?

まずは、医療・ヘルスケアアプリ未利用者2,603人に聞いたアプリを利用しない理由を年代別にみていきます。

40代と60代以外のすべての世代で「利用するきっかけがなかったから」が1位の理由となりました。
また、「利用するメリットがないと思ったから」も60代以外(表外ですが20代は「利用するメリットがないと思ったから」も3位同率の15.3%)の世代では共通して上位にあげられています。

この結果から、アプリを利用するきっかけづくりやメリットとして例えば、dヘルスケアのように歩数や体重記録がdポイントとなって貯まるなどの機能は重要になってくるのではないしょうか。とくに「健康にこだわりがないから」が3位となった10代、20代には、ヘルスケアアプリを使ったときのお得さや記録する過程の楽しさや達成感、UXは事業者にとって重視すべき項目でしょう。
そう考えると、他サービスやポイントの恩恵を生み出しやすい経済圏を持つ事業者は有利かもしれません。

他方、ランク外の「健康データをアプリに記録しておくことが心配だから」は全世代で1割にも満たず、ヘルスケアデータの運用に関してプライバシーの点でのマイナスな意見はそれほど持たれていないのではないかと考えられる結果となりました。
この点では、ヘルスケアアプリの普及や医療のデジタル化を進めるにあたり致命的なデメリットはなさそうに予想されます。

次に、アプリ未利用者が利用してみたい機能についてみていきましょう。
医療・ヘルスケアアプリ未利用者のうち、医療・ヘルスケアアプリで利用してみたい機能があると回答した1,772人に、どのような機能を利用したいか複数回答で聞き、年代別に上位3位に入った項目を抜粋すると以下の図のようになります。

※10代(n=48)、20代(n=215)、30代(n=282)、40代(n=415)、50代(n=419)、60代(n=393)

「健康管理(バイタルサイン)」は全世代、「ダイエット・美容」は60代以外で3位までにランクインしました。「メンタル(ストレス)ケア」については就労・就学している人が多い10~40代に望まれるサービスであることがうかがえます。

単独の世代でランクインした項目は、50代が「処方薬の管理」、60代が「オンライン診療」と「予防医療」でした。50歳以上はヘルスケアというよりも医療に近いサービスへの関心度が高いことがわかります。

この結果をまとめると、記録する楽しさやポイント連携のお得さがより求められるのは、「健康管理(バイタルサイン)」や「ダイエット・美容」ではないかと考えます。
「メンタル(ストレス)ケア」のアプリ・サービスは、日々の仕事や勉強で忙しい若年層をターゲットにするのも良いのではないでしょうか。
「オンライン診療」や「予防医療」はシニアからの関心が高いため、アプリの使い方のわかりやすさや医療機関と連携時の利便性がより求められるのではないかと考えます。利用のきっかけづくりとしてスマホ教室などのようなリアルな場で、これらアプリ・サービスの使い方を伝えられるイベントを実施していくのも良いのではないでしょうか。

 

まとめ—ヘルスケアサービス、デジタル化の今後

ヘルスケアサービス拡大を促す背景と市場拡大の予測をみると、今後も医療のデジタル化は進むと考えられます。その時に私たちに現れる変化として医療におけるスマホアプリの使用場面・頻度が増えることが考えられるでしょう。
事業者は、ヘルスケアアプリの未利用者がまだ多い現状を考慮し、未利用者の意向を汲み取りながらサービスを拡大していく必要があるのではないでしょうか。今回の調査でヘルスケアアプリ未利用者は端末で自身の健康データを記録していくことにそれほど抵抗はないとわかったことは企業側にとって安心材料にもなるのではないかと考えます。また、他サービスとの連携を図りながら経済圏の一環としてヘルスケア事業を成長させていくことは異業種としても有効であると考えられます。

消費者にとっては医療・ヘルスケアアプリの利用に現在から慣れておくと、今後、医療のデジタル化が進んだ際も生活の変化に対応しやすくなりサービスを使いこなせるようになるかもしれません。

MMD研究所では引き続き、ヘルスケアや医療のデジタル化に関する調査を継続して実施していきます。
本調査データへのお問い合わせなどございましたら、下記お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡くださいませ。

(※1)「統計トピックス No.126 統計からみた我が国の高齢者」 総務省

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