インタビュー
2016年8月22日
Vol.47 手軽に出品・購入ができるフリマアプリ「メルカリ」のプロモーション戦略とは
株式会社メルカリ シニアマーケティングスペシャリストの鋤柄 直哉氏にプロモーション戦略と今後の展望についてお話を伺った。
----■鋤柄さんの担当している分野について教えてください。
僕は主に日本のマーケティングを担当していて、テレビCMの出稿やリアルイベントの開催などのオフラインマーケティングとFacebookやTwitter広告をはじめとしたオンラインマーケティングの両方を担当しています。
----■テレビCMも実施されていますよね。CMの意図やオンエア後の反響を教えてください。
CMクリエイティブはサービスの市場での認知度によって意識的に変えてきました。一回目のCMでは多くを詰め込んで訴求しすぎても視聴者に伝わらなくなってしまうので、「フリマアプリ」と「売り買いができる」ということにフォーカスしていました。その後認知度が上がってくるにつれて、「メルカリを知ってはいるが、ダウンロードはしていない人」に対して「メルカリを使うことによるメリット」を具体的に見せることで、ダウンロードのアクションを起こしてもらおうということを意識しています。
直近のCMは「メル狩リ族」というメルカリを使う謎の狩猟民族をテーマにしたCMで、渡辺直美さんとブラザートムさんを起用しました。渡辺直美さんは元々、実際にメルカリを使ってくださっているユーザーさんだったんです。さらに、メルカリがメインターゲットとしている女性、F1層やティーンからの人気も抜群というのもありますし、ネットでの影響力もあります。総合的に考えて、CMに出演していただきました。
また、メルカリが開催するPRイベントにも来ていただいたりメルカリが制作したテレビ番組に出演していただいたりと、いろいろ取り組んでいます。
今回のCMでの新たな取組は、アプリ内キャンペーンをCMクリエイティブ内で訴求したことです。
CM放送記念として、メルカリのアプリ内でも総額1億円分のポイントがあたるキャンペーンを実施しました。2回目は3億円と金額を増やしました。
アプリ内のキャンペーンをCMの最後に訴求することで、新規ユーザーだけでなく、休眠ユーザーやの掘り起こしや既存ユーザーのさらなるアクティブ化も意識しました。
----■最初のテレビCMを始めてから2年経ちましたが、ユーザーさんの傾向はどうでしょう。例えば、サービスイン当初は出品ユーザーが多かったが、2年経った今は購入する人が多くなったなどの変化はありますか?
今も昔も大きくは変わっていないですね。元々、メルカリのユーザーは「売る」「買う」どちらも行う人が多いんです。買ったことのある人のうち、3分の2は売ったこともある、というデータがあります。
デモグラフィックでいうと変化はありますね。サービスを開始したばかりの頃は、女性ユーザーが多く、マーケティング戦略でも若い女性層をねらっていました。ユーザー数が増えた現在では、ユーザーの層もかなり広がっていると感じます。テレビCMのクリエイティブでも男性をターゲットとしたものを制作するなどして、今では男性のユーザーも増えてきています。
----■プロモーションから男性のすそ野も広げていくみたいなイメージを持たれているのでしょうか。
サービスに関しては、すでにすそ野は広げています。最近ですと車の出品も可能になったのですが、車やバイク、釣りやゴルフなどの趣味のグッズなどは、主に男性をターゲットにしていますね。
実際に取引額も増えていますが、まだ市場の認知として男性向けにも使えることがあまり知られていないので、プロモーションでも徐々に男性にリーチしていくことを意識しています。
実際、オンライン広告では男性向けに制作しているスニーカーや、バイク、車、アウトドアグッズなどでとても効率よくユーザーを獲得できていたりします。
----■女性ユーザーと男性ユーザーでメルカリの使い方に特徴ってあるんですか?
もちろん個人によりますが、男性はコメント等のやり取りを最低限にして取引完了する方が多いかもしれません。
一方で女性は売り買いのコミュニケーションを楽しむ方が多いですね。
メルカリでよく商品を購入している社員がいるのですが、購入した商品と一緒に手紙が入っていることが多いと言っていました。
例えば、「お買い上げありがとうございます。また良かったら買ってくださいね。」みたいな一言書いたカードを添えてあげたり、包装もすごくかわいく包装してあげたり(笑)そういう楽しみ方は女性に多いですね。
----■これからプロモーションを強化していきたいことはありますか?
色々ありますが、特に「らくらくメルカリ便」の認知を広げたいと思っています。
「らくらくメルカリ便」はヤマト運輸とメルカリが連携して提供する配送サービスで、商品を出品する際に「らくらくメルカリ便」を選べば、匿名で商品を配送できたり、全国一律の安い料金で送れたり、補償もついたりとメリットが大きいんです。さらに「集荷」を選べば、ヤマト運輸のセールスドライバーが自宅まで商品を取りに来てくれます。とても便利なサービスなので、この魅力はもっと伝えていきたいと思っています。
CtoCのサービスやネットで何かを買うことに不安があったり、配送の部分を手間に感じてメルカリを使うことを避けている人もまだ多いと思うので、「らくらくメルカリ便」を通じてこの辺りを解消していきたい思いはあります。
----■匿名で配送できたり、通常料金+30円で集荷に来てくれるって、すごく便利ですね。
はい、その認知を広げるため、CMでも匿名で配送できることを表現したクリエイティブを制作しました。CMで配送方法について言及するのは結構珍しいと思うのですが、メルカリでは配送関連に力を入れているので、もっと多くの方に知っていただきたいと思いCMにも盛り込みました。
あとは、「不安を取り除く」ことを強化していきたいと思っています。
以前、メルカリを使ってことがない人へのアンケート調査を行ったのですが、「なんとなく不安」「住所や名前などの個人情報が知られることが怖い」という声がありました。「名前は知ってるけど、詳しくはわからない」というざっくりとしたイメージで使っていない人も多かったので、より丁寧に「メルカリはどんなアプリなのか」「なぜ安心なのか」を伝えていくのは大事だなと思っています。
----■話は変わりますが、メルカリで実施されているPRイベントやフリマのようなオフラインのイベントは、CPIでは測れませんよね。イベントの効果測定はどのようにお考えですか?
イベントを開催したことでアプリ内にどう変化があったかというところはそこまで細かくは見ていません。どちらかというと、イベント自体が盛り上がったのかという指標を見ていますね。
フリマのイベントだったら来場者数や出店者数で見たり、PRイベントだったらTVやweb記事などの露出がどれだけされたかなどを見て善し悪しを判断しています。
「イベントの効果測定が難しくて予算がとりづらい」と言われる会社さんの話も聞いたりはしますが、メルカリはCPI重視の広告だけではなく、イベントなど効果の測りづらいPRも必要、という姿勢です。
メルカリの場合はの上層部がそこを理解してくれているというのは、すごく感じています。獲得系だけやっていてもどんどん枯れていってしまうので、獲得に至る前の認知を得るため、露出やタッチポイントを増やすという意味でPRイベントは効果的だと思っています。
----■すごくチャレンジャーな考え方をされる社風なんですね。
メルカリではミッションを達成するための3つのバリューを設けているんです。
『Go Bold 大胆にやろう』
『All for One 全ては成功のために』
『Be Professional プロフェッショナルであれ』
『Go Bold』と書いたTシャツを社員が普通に着ていたり、社長を含めみんながことあるごとに『Go Bold』って言葉を、使いますね。『Go Bold』な施策をどれくらい出来たかということが評価されますし、チャレンジングなことにどんどん挑戦したほうがいいみたいな社風は間違いなくあります。
弊社はベンチャー企業なので、人数も多くないですし、「普通のことだけやっていたら勝てない、失敗してもいいから新しいこと、尖ったことをやろう」という社風なんです。
なので、次の施策ではこれを試してみよう、というのは考えやすいですね。チャレンジできる環境にいるというのはすごく会社として魅力的だなって思います。
----■今の課題や今後の取り組みを教えてください。
今後、プロモーションでより取っていきたいのはM1ですね。20代・30代の男性にも、もっとメルカリを使っていただきたいです。
他にも休眠ユーザーの掘り起こしはテレビCMやオンライン、ウェブでもやっていきたいですね。最近メルカリのウェブの方でも出品や購入をできるようになったので。
現在国内では3000万ダウンロードを超え、メルカリというサービスの名前や、売り買いができるアプリだということの認知はかなり高まっていると思っています。
それを知った上でまだメルカリをダウンロードしてない方は、メルカリに魅力を感じていないか、もしくは何か懸念があってダウンロードしていないと思うんですね。その障壁を丁寧に、ひとつひとつクリアしてくというフェーズになっていくかなと思います。ですので、プロモーションでも 「売り買いができるアプリです」ということを打ち出すだけではなく、その一歩先の「らくらくメルカリ便っていう安心な機能があるんです」とか「安く買えるアプリです」とか、具体的なメッセージを出していけたらと思っています。
編集後記:スマートフォンが普及したことによりデジタルネイティブにとって手軽に商品を出品・購入ができるフリマアプリは身近で浸透しやすいサービスであった。
またヤマト運輸と連携した配送サービスやリアルイベントの開催など独自のサービスを展開することで市場がより活性化し、更に幅広い年代にも受け入れられるサービスになるのではないだろうか。今後の展開に期待したい。
セノオ アキコ(セノオ アキコ)
MMD研究所 編集部員