コラム
2025年7月16日
深いインサイトを引き出すためのモデレーション術【大好評!ユーザーインタビュー体験セミナー第8回 利用者爆増中のポイント運用・投資のユーザーに聞く、事業成長のヒントを掴む顧客インサイト】
2025年6月5日のセミナー「大好評!ユーザーインタビュー体験セミナー第8回 利用者爆増中のポイント運用・投資のユーザーに聞く、事業成長のヒントを掴む顧客インサイト」内にて、ポイント運用・投資ユーザーにリアルタイムでインタビューを実施いたしました。実際に担当した弊社モデレーターからインタビューへの意識や工夫点、仮説検証などを聞き、まとめています。
インタビューを考えている方はもちろん、ポイント運用・投資活用についても分析していますので、金融・証券事業者の方にも参考になる内容です。ぜひご覧ください。
目次
■ 「ポイ活」が資産運用への入り口に? インタビューの検証ポイント
■ インタビューの流れを円滑に! 核心の質問に至るための工夫
■ 質問で価値観や感情を深掘りするテクニック
■ 対象者に合わせた臨機応変なインタビュー術
■ 表情や声のトーンから引き出す感情の深層
■ 若年層とシニア層の投資マインドの違いを探る
■ 少人数でも得られる深い理解とその活用法
<座談会ユーザー情報>
①50代男性
- 資産運用利用:なし
- 利用しているポイント運用サービス:PayPayポイント運用、Vポイント運用
- 利用しているポイント投資サービス:Vポイント投資
②20代女性
- 資産運用利用:あり
- 利用しているポイント運用サービス:PayPayポイント運用、楽天ポイント運用
- 利用しているポイント投資サービス:楽天ポイント投資
「ポイ活」が資産運用への入り口に? インタビューの検証ポイント
今回のインタビューの目的、背景を教えてください。
今回のインタビューの目的は、ポイント運用サービスを利用するユーザーがどのようにその体験を通して資産運用に興味を持ち始めるのか、また実際の行動につながるのかを探ることでした。背景には、ポイント経済圏の拡大や、いわゆる「ポイ活」の一般化があります。これまで買い物のおまけのように思われていたポイントが、運用という形で活用され始め、ユーザーの金銭感覚や投資への関心にどのような変化をもたらしているのかを可視化したいという意図がありました。
今回のインタビューで重視した仮説と検証ポイントはありますか?
インタビューにあたり、特に重視した仮説は「ポイント運用の体験が、資産運用への第一歩となり得るか」という点です。これまでの定量調査や情報収集からも、ポイント投資を経て資産運用に踏み出す人がいることは示唆されていました。その仮説のもと、ユーザーがどのような意識変化を経験したのか、実際に行動に移すまでにどんな思考のプロセスがあったのかを丁寧に検証しました。
インタビューの流れを円滑に! 核心の質問に至るための工夫
インタビューの質問項目はどのような流れで組み立てましたか?
質問項目は、ポイント運用、ポイント投資、資産運用とテーマを明確に分け、混同しないように設計しました。それぞれのサービス利用に関して「きっかけ」「現在の状況」など、時系列でユーザーが思い出しやすい流れを意識しています。また、3つの領域を話題として扱う際には、それぞれを個別に立てて聞く構成にし、ユーザーが混乱しないよう配慮しました。
導入部分ではどんな工夫をしてユーザーの緊張をほぐしましたか?
インタビューの冒頭では、ユーザーの趣味や仕事といった日常的な話題から入ることで、緊張を和らげるよう努めました。サービスと直接関係のない話にも見えますが、対象者の価値観やライフスタイルを知る上で重要な情報です。こうした雑談的な会話が、後の本題にスムーズに移行する助けにもなります。
核心的な質問にスムーズに入るために意識した点はありますか?
核心を突く質問は、唐突に尋ねるとユーザーが驚いたり、構えてしまう可能性があります。そこで、まずは広い話題から始めて、徐々に焦点を絞っていく形で進めました。たとえば「資産運用に興味がありますか?」という問いの前に、「ポイント投資で面白かったことは?」など軽めの質問を挟むことで、自然な流れで深い話に導いています。
質問で価値観や感情を深掘りするテクニック
どんな問いかけで、ユーザーの内面を深く掘り下げていきましたか?
ユーザーの発言をそのまま受け止めるのではなく、使われる言葉のニュアンスにも注目しました。同じ「楽しい」「面白い」でも、言葉の選び方には個人差があります。「なぜそう感じたのか?」「その理由は?」といった問いを重ねることで、言葉の奥にある感情や価値観を丁寧に掘り下げていきました。
無言や沈黙が続いた際にどのように対応していますか?
インタビュー中に沈黙が生じた場合、それを無理に埋めようとはせず、考える時間として尊重しました。ただし、時間が限られているため、悩んでいる様子が続いた際には選択肢を提示するなどして、回答を引き出しやすくする工夫も加えました。「AとBならどちら?」と方向性を示すことで、話を再び進めることができました。
対象者に合わせた臨機応変なインタビュー術
今回の対象者に合わせて、質問の言い回しや順序を変えた点はありますか?
2名のインタビュー対象者は、それぞれ情報の出し方に違いがありました。1人は質問に対して多くの情報を語ってくれましたが、もう1人は最小限の回答にとどまる傾向がありました。そのため、スクリプト通りに進めるのではなく、相手の発話内容に応じて臨機応変に質問を省いたり追加したりしました。
対象者の年代や職業、性格によってインタビュースタイルを変えることはありますか?
若年層とシニア層では、話し方や受け答えのスタイルに明確な違いが見られました。シニア層は話す量が多く、エピソードも豊富なのに対し、若年層は簡潔にポイントだけを述べる傾向がありました。また、相手のテンションや雰囲気に合わせて、自分の話し方も柔軟に調整しました。
今回でいうと、どのようなインタビュースタイルになりましたか?
今回のインタビューでは、シニア層は感情がそのまま言葉に出るタイプ、若年層は一度自分の中で言葉を整えて話すタイプと、明確にスタイルが異なりました。そのため、出てくる情報の質や量も違い、質問の仕方や掘り下げ方を調整しながら対応しました。
表情や声のトーンから引き出す感情の深層
表情やトーンなど、非言語的なサインから情報を読み取りましたか?
言葉だけでなく、対象者の表情や身振り、声のトーンにも注意を払いながらインタビューを行いました。特に印象的だったのは、シニア層の方が「ポイ活」を語る時のテンションの高さです。言葉以上に、その熱意が伝わってくる瞬間でした。
非言語情報が語るメッセージをどう分析に生かしていますか?
非言語的な情報は、記録やレポートにはしにくいものの、インタビュー中の深掘りには非常に役立ちます。テンションが上がる話題、逆に慎重になる話題などを見極めることで、対象者の本音や感情の動きを読み解くヒントとなりました。
若年層とシニア層の投資マインドの違いを探る
特に印象に残っている回答やシーンはありましたか?
特に印象に残ったのは、若年層の対象者が「ポイント運用にはもっと選べるコースがあった方が面白い」と語った場面です。資産運用では自分で選択できる楽しさを感じているからこそ、ポイント運用にも同様の柔軟性を求めているという姿勢がうかがえました。
今回の対象者に特有の傾向や発見はありましたか?
両者に共通していたのは、「リスクが低く、長期で取り組める資産運用」に関心があることです。ただし、若年層は「若いうちだからこそ楽しんで投資する」マインドがあり、シニア層は「興味はあるが一歩を踏み出せない」慎重さが目立ちました。年齢や人生設計による価値観の違いが如実に表れていました。
仮説と照らし合わせてどう感じましたか?
仮説通り、若年層の対象者はポイント運用から資産運用にスムーズに移行していましたが、シニア層は知識があっても実際の投資には至っていませんでした。ポイント運用がリアルな資産運用へのステップになるには、個人の心理的ハードルも大きく関係していることが明らかになりました。
少人数でも得られる深い理解とその活用法
今回のインタビューで、次回に活かしたいと感じた点はありますか?
ポイント運用と資産運用の違いを明確にする意図はあったものの、話題の移行時に混乱が生じる場面がありました。今後は「ここからは○○について話します」といった明確な区切りを設けることで、対象者にも分かりやすい進行ができると感じました。
次回に生かしたいモデレーションの工夫はありますか?
今回のインタビューでは、対象者の人生観やライフプランにまで踏み込むことができた点が大きな収穫でした。サービスそのものだけでなく、それを利用する背景や価値観に目を向けることで、より深いインサイトが得られると実感しました。
最後に、企業の皆様へメッセージをお願いします。
インタビュー調査は、少人数であっても非常に濃密なユーザー理解を可能にする手法です。数字だけでは捉えきれない「なぜそう思うのか」という部分に迫ることができ、自社サービスへの示唆が多く得られます。定量調査と併用しながら、ぜひ活用を検討してほしいと思います。
▼もっとインタビュー調査について詳しく話を聞きたい、相談・質問したい方はぜひお気軽にご連絡ください
※インタビュー調査自体についてはもちろん、今回のセミナーのインタビュー内容についてでも構いません
上記のリサーチに関するご質問等は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
≪本調査レポートのご利用について≫
MMD研究所にて無償公開しているWEBサイト内の文書、及びその内容についての無断転載等は原則としてご遠慮頂いております。
データの利用または引用の可否はその内容によりますので、まずは掲載範囲、用途・目的、メディアなどを記載してメールにご連絡ください。
追って担当者よりご連絡いたします。著作物の二次利用に関しては、以下の条件にすべてあてはまる場合、個別の許諾なしにこれをみとめます。
- 営利を目的としないこと
- それによって経済的な利益を得ることがないこと
※販促に利用されたい企業様はお問い合わせください。
MMD研究所(編集部員)