コラム
2022年5月26日
ヘルスケア意識とウェアラブル端末の相関性と今後の予見
目次
■ ヘルスケア意識における人々の行動
■ ウェアラブル端末利用におけるヘルスケア意識
■ ウェアラブル端末未利用者が期待していること
■ シニアのヘルスケア意識とウェアラブル端末の利用
■ ウェアラブル端末にとってのヘルスケアとは
ヘルスケア意識における人々の行動
新型コロナウイルスが流行し、外出自粛やテレワーク生活が続く中、人々の運動不足が問題視されました。そんな中、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」では健康維持のために必要な屋外での運動や散歩に関しては外出自粛の対象外となっています。
いったいなぜ、運動不足がそこまでが問題視されるのでしょうか。
スポーツ庁によると、感染症対策による活動制限・運動不足の長期化による影響として、「ストレスの蓄積」「生活習慣病の発生・悪化」「体力の低下」「腰痛・肩こり・疲労」などが挙げられています。最近では、新型コロナウイルス禍によるストレスなどを背景に痛みと発疹を伴う「帯状疱疹」の患者増加も問題視されていますが、とくに問題なのが「生活習慣病」です。日本での死亡原因の約半数が生活習慣病と深いかかわりがある癌や心疾患、脳血管疾患であると、厚生労働省の調査では発表されています。
※(出典)厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より
MMD研究所では2022年4月4日~4月6日の期間で「ヘルスケアとウェアラブル端末に関する調査」を実施いたしました。本コラムでは人々の日々のヘルスケア意識だけではなく、ウェアラブル端末とヘルスケア意識の相関性を見ていきます。
まず、健康に関する意識についてみていきます。
自身が健康だと思っているか聞いたところ、24.2%が「健康だと思う」と回答し、「どちらかといえば健康だと思う」を合わせると74.0%が健康だと思うと回答しました。ただ、同様に健康に関して悩んでいることがあるか聞いたところ、73.7%が悩んでいると回答し、健康だと思っている一方で悩んでいる人も同程度いることがわかりました。
では、一体どのくらいの方が普段健康に関する取り組みをしているのでしょうか。
健康に関する取り組みについて聞いたところ、8割が何かしら健康のための取り組みをしていると回答しました。つまり、自身が健康かどうか悩みがあるかにかかわらず、日常的に健康に関する取り組みをしている人は多数いるのがわかります。反面、8割が取り組みをしているものの、それを記録している人は39.6%と健康管理までには至っていないのが現状です。
ウェアラブル端末利用におけるヘルスケア意識
ウェアラブル端末市場は年々拡大しており、特にヘルスケア意識から購入する人は少なくありません。今回の調査でもウェアラブル端末の購入理由としては、「歩数などの運動量を測定したかった」「心拍数や睡眠などを測定したかった」「ランニングやサイクリングなどの運動を測定したかった」など健康に関する項目が上位に来ています。
また実際に利用している機能を見ても、「歩数を測定できる機能」が67.3%、「スマートフォンと連携して通知などを見られる機能」が66.3%、「ウォーキングやランニングの記録をしてくれる機能」が62.0%とこちらも上位1位と3位に健康に関する機能が入っています。
ただ、健康に関する記録者のうち6割以上がデジタル端末で記録していると回答している中、ウェアラブル端末の利用率は10.1%と少ない結果となりました。
実際の利用者にとってウェアラブル端末でのヘルスケア意識は重要な点であり、利用する目的にも値します。しかし、健康への悩みがある人や取り組みをしている人の利用率はまだまだ少なく、そういった層の獲得が今後のカギとなるのではないでしょうか。
ウェアラブル端末未利用者が期待していること
健康に関して悩みや、実際に記録を付けているユーザーが多くいる中、なぜウェアラブル端末の利用者は少ないのでしょうか。
未所有者にウェアラブル端末の興味を聞いたところ、46.4%が「興味がある」と回答しています。興味がある機能を細かく見てみると、「歩数を測定できる機能」が40.3%で最も多く、次いで「ウォーキングやランニングなどを測定、記録してくれる機能」が35.7%、「睡眠の質を測定してくれる機能」が34.3%とやはり健康に関する項目が上位の結果となっています。
では、ウェアラブル端末未所有者の所有しない理由も見てみましょう。
「必要性を感じないから」が21.3%おり、ウェアラブル端末の必要性を見出せていない人も一定数いました。ウェアラブル端末に対する項目では、「価格が高いから」が19.4%で最も多い結果となり、次いで「わざわざつけるのが面倒だから」が13.4%、「自分では使いこなせないと思うから」が11.3%となっています。
やはり、価格の部分はユーザーにとってネックな部分ではあり、今回の調査で最もメイン利用している端末で挙げられていた「Apple Watch」は現在、最新のApple Watch7が48,800円(税込)と手軽に購入できる価格ではないのがわかります。
未所有の理由に上がっている「わざわざつけるのが面倒だから」に関しては、実はApple Watch以外のウェアラブル端末利用者は常に身に付けたままが4割以上おり、つけていても邪魔にならない点やつけていても違和感がないという点から、未所有者が感じている懸念点を払拭できるのではないかと思います。
ただ、「2022年5月スマートフォンOSシェア調査」で、iPhone利用者が44.1%いることがわかっており、iPhoneを使っているのでApple Watchを利用したい人は少なくないのではないでしょうか。
そうなるとやはり価格の部分がネックになるので、ヘルスケア意識がある人には低価格の端末でもしっかりと健康管理ができ、ウェアラブル端末の活用によって生活習慣病防止につながることを周知させることが大事だと考えられます。
シニアのヘルスケア意識とウェアラブル端末の利用
改めて健康に関する記録の重要性を見てみましょう。
日本の2020年の死亡原因を見てみると、トップは「悪性新生物(腫瘍)」が来ているものの、次いで「心疾患」と生活習慣病が密接にかかわってくる要因が来ています。
(※厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より)
とくに50代以降は心疾患とともに脳血管疾患も上位に来ており、生活習慣病への対策がいかに重要かが感じられる結果となっています。
では、冒頭でお話した健康意識と悩みについても年代別で見てみます。
年代別に見てみると、「健康だと思う」と「どちらかといえば健康だと思う」を合わせて健康だと思うと回答した年代は70代(n=2,554)が最も多く78.9%となり、次いで60代(n=2,463)が75.8%とシニア世代が多い結果となりました。健康に関する悩みがあるかについても年代別で見てみると、50代(n=2,612)が最も多く77.9%となり、次いで60代(n=2,463)が77.0%と年齢が上がるにつれて健康だと思う反面、悩んでいるユーザーが多いことがわかっています。また健康に関する記録の有無についても見てみると、70代(n=2,554)が最も多く54.0%、次いで60代(n=2,463)が41.7%となり、10代(n=570)や20代(n=1,917)が約3割なのに対し、記録の有無に関しても年代が上がるにつれて高い結果となっています。
シニア世代はとくに健康に関する意識が高いことがわかりましたが、健康に関する記録をしている60歳~79歳のウェアラブル端末所有率は3.7%と1割もありません。ウェアラブル端末を利用することによっていつでも歩数や心拍数を測ったり、体温や血圧、血中酸素濃度を把握することができる機能で、より生活習慣病の防止につながります。Apple Watchでもヘルスケア機能には力を入れており、不規則な心拍になった際は通知が飛んだり、心電図アプリケーションによってユーザーの心臓の健康に関する重要な情報が得られるようになっています。またAppleが現地時間2022年4月26日米国特許商標庁(USPTO)において、ヘルスケア関連製品に温度検知するための機構を組み込む特許を取得しており、これにより体表面の温度、心拍数、水分量などの測定がApple Watchでも可能になるかもしれません。次のApple Watchに搭載されるかは未定となっておりますが、計測・管理できる機能が増えれば、より生活習慣病の対策としてApple Watchを意識する人が増えるのではないでしょうか。
ウェアラブル端末を利用してもらうにはシニア世代の健康に関する悩みを吸い上げ、ウェアラブル端末が簡単に使え、とくにどの機能を使えば生活習慣病に役立つのかを伝えていく必要があると考えられます。
ウェアラブル端末にとってのヘルスケアとは
今後、生活習慣病の予防や治療おいてもウェアラブル端末は欠かせない存在となると考えられます。
またウェアラブル端末のデータは医療においても重要な役割を今後果たして行くのではないでしょうか。
例えば、神奈川県真鶴町では、血中酸素飽和度を測る機能がある腕時計型のウェアラブル情報端末を使った自宅療養者への新たな支援を始めており、計測値は自動的に診療所へ送信されることによって数値が低下した場合はアラームが鳴り、診療所の医師がテレビ電話や訪問診療で対応しています。
診療所とウェアラブル端末が連携することにより、心拍で心疾患の早期発見や心音などで呼吸器の異常などを見つけることが期待されます。
上記の取り組みを広めるためにはウェアラブル端末を用いて、自身の健康状態を蓄積・比較することで防げる事例の認知拡大がカギになると考えられます。なんとなく健康管理しているユーザーや、生活習慣病から考えられる病気を知らないユーザーに対して、ウェアラブル端末の利用で防げる病気の認知を挙げることによって、ウェアラブル端末の機能がより求められるのではないでしょうか。
MMD研究所では、ヘルスケア意識とウェアラブル端末利用の把握をはじめとしてユーザーが求めているヘルスケアサービスは何なのか、ウェアラブル端末の普及のためにはどのような訴求法及び機能改善が効果的なのかを把握するためのレポートを作成しました。
本レポートでは、以下のような課題をお持ちの事業者様にお勧めの内容となっております。
- シニアも含めた各世代の健康意識の違いを知りたい
- ウェアラブル端末を利用していている人の属性やニーズを知りたい
- 世代間でのウェアラブル端末の利用方法の違いを知りたい
- ウェアラブル端末をなぜ持たないのかという理由を知りたい
- 各世代における効果的なウェアラブル端末の訴求法を知りたい
ご希望がありましたら、本レポートの下見をしていただくことも可能です。
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MMD研究所(編集部員)