コラム
2018年7月2日
キャッシュレス拡大のカギを握るのは「金融リテラシー」か? モバイル決済拡大のカギは「面倒くさがりなせっかちタイプ」にあり
はじめに
世界で普及が広がるモバイル決済だが、2025年にはキャッシュレス比率を40%に拡大し、将来的には80%を目指すと経産省が発表して注目を集めている。それでは2018年現在、消費者は電子マネーやモバイル決済に対してどのように考えているのか。
その実態を把握すべく、MMD研究所では2018年5月に全国の15~69歳を対象とした「モバイル決済 利用者・未利用者比較調査」を実施した。本調査では、「交通機関以外でモバイル決済を利用している人」、「興味はあるが利用したことがない人」を対象にした利用者/未利用者の比較だけでなく、人口20万人以上の都市を「都会」、東京を除くそれ以外の都市を「地方」として地域の差も比較できる調査となっている。
◆カードタイプで利用している電子マネー 都会トップは「交通系」63.6%、地方トップは「WAON」46.3%
都会在住のスマートフォンを所有する15~69歳男女3,852人、同じく地方在住の4,104人(計7,956人)を対象に、利用しているカードタイプの電子マネーを聞いたところ、何かしらのカードタイプの電子マネーを利用していると回答したのは都会で81.4%、地方で71.6%だった。
都会の方が電子マネーの利用率が高いが、利用しているサービスの内訳に注目したい。カードタイプの電子マネー利用者6,071人に利用しているサービスを聞いた(ここでは上位5サービスのみ表示)。
都会では交通系電子マネーの利用が6割を超えるが、地方では4割に満たない。一方で、WAONや楽天Edyでは地方の方が利用率が高い結果となった。「その他」に書かれていたフリー回答を見ても地元スーパーが発行しているご当地の電子マネーの名前があったり、もしかすると、地方の方が生活により身近なところで電子マネーが使われているのかもしれない。
◆「現在モバイル決済を利用している」16.9%に拡大
スマートフォン所有者に、モバイル決済の利用状況を聞いたところ、現在利用者は16.9%だった。まだまだ普及しているとはいいがたい数字だが、以前と比べてどのくらい伸びているのか。
昨年の12月に日常で利用している決済手段を聞いたデータがある。こちらは、複数回答で利用しているものを聞いているが、「スマートフォンを利用した決済サービス」「QRコード決済」を合わせても9.4%だ。対象者や聞き方が異なるので一概には比較できないが、約半年の間に倍近くの数字にまで成長していることがわかる。
◆モバイル決済の利用シーン トップは都会、地方ともに「コンビニエンスストア(駅以外)」
モバイル決済を利用したことがある、または興味がある都会在住の2,466人、地方在住の2,482人(計4,948人)に、モバイル決済を利用するシーン、または利用したいと思うシーンを聞いた。下のグラフでは、利用したいと思うシーン「特になし」という人を除いて集計している。
両地域ともにトップは、「コンビニエンスストア(駅以外)」となり、全体的に都会の方が利用意向が高い。では、地方で高い項目は何か。それは、「コンビニエンスストア(駅以外)」、「ショッピングモール」、「ガソリンスタンド」である。駅以外のコンビニエンスストアには面白みがないが、「ガソリンスタンド」の高さは実に興味深い。
地方の利用意向を見ると「交通機関」が低く、「ガソリンスタンド」は高い。公共交通機関を使って駅やその周辺の店舗を利用する都会と、車メインで行動し駅ビルではない大型複合施設=ショッピングモールを利用する地方という、両者の生活環境の違いを反映した結果となっているのではないだろうか。
また、モバイル決済利用者に限って利用シーンを聞くと、最も多いのは「コンビニエンスストア(駅以外)」で58.2%だった。昨年の12月に行った調査では、最も多いコンビニエンスストアでも47%と、今回の調査に比べ10ポイント以上低かった。その他の場所でも昨年と比べ、今回の方が数値が伸びているので、利用者だけではなく利用する場所も着実に増えていることがうかがえる。
MMD研究所(編集部員)