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インタビュー

2026年6月17日

【デジタル給与導入企業パイオニアインタビュー第4弾】人手不足の時代、“給与の受け取り方”も選ばれる時代へ
サカイ引越センターが、いち早く給与デジタル払いに踏み出した理由

引っ越し運送をはじめ、リユースやリサイクル、ハウスクリーニングなど、暮らしを支える幅広いサービスを全国で展開するサカイ引越センター。同社は2024年11月、PayPayを通じた給与のデジタル払いを開始した。背景にあったのは、繁忙期を中心とした人手不足という課題と、「変化に挑戦していこう」という会社の方針だ。導入は現場の声を起点に進み、経営層がそれを後押しした。今回は、給与の支払いを担当する総務部の宮本優子氏に、検討の経緯や現場の状況、今後の見通しについて話を伺った。

目次

■ 「人手不足の解消」が出発点
■ PayPayの指定から本格稼働まで ── 自社システムだから動けた
■ 「銀行振込にプラスする」発想 ── 大きな不安はなかった
■ ハードルになったのは「システム改修」と「本人同意」
■ 「変化に挑戦していこう」── 現場の声を、会社の方針が後押しした
■ これからの期待 ── 上限額と、外国人雇用への広がり
■ 導入を検討する企業へ ── 「小さく始めて、広げる」

 

「人手不足の解消」が出発点

まず、宮本さんのお仕事と、給与デジタル払いに取り組むことになった背景を教えてください。

弊社は引っ越し運送事業を中心に、全国でサービスを展開しています。今は引っ越しだけでなく、リユース、クリーンサービス、電気工事など、あらゆる方面で生活を支えられるようなサービス展開を進めています。繁忙期は多くのアルバイトの方に働いてもらう必要があるので、私は総務部にいるのですが、その人材確保や、人手不足をどう解消したらいいのかというところを考えて動いている中で、給与デジタル払いに着目し、検討・導入を進めました。

宮本氏は総務部で給与の支払いを担当し、人事部門と連携しながら今回のプロジェクトを進めてきた。引っ越し業は春を中心に需要が大きく動く。繁忙期に多くのスタッフを確保し、長く働いてもらうための一手として、給与の受け取り方を増やすという発想にたどり着いたという。

繁忙期のスタッフ確保や定着をねらい、給与の支払い方法の選択肢を増やそうとデジタル払いを検討された、という理解で合っていますか。

そうですね。できるだけ多くの選択肢を準備した中で、どれを選ぶかは本人の自由だと思います。一人でも多く働いてもらうことに着目すると、いち早くこうした取り組みを行っている会社というのは、企業のブランドイメージ向上にもつながりますし、色々なことにチャレンジしている会社だなと、新卒採用などにも良いイメージを与えられたらと思い導入しました。

PayPayの指定から本格稼働まで ── 自社システムだから動けた

給与デジタル払いの検討から、2024年11月の開始までは、どのような流れだったのでしょうか。

2024年の9月ごろから、実際にPayPayの担当者と話をさせていただきました。事前に「こういう流れがある」という情報自体は、6月か7月ごろにいただいていました。2024年8月にPayPayが給与デジタル払いに対応する資金移動業者として指定され、そこから本格稼働で動きだしました。

PayPayが指定を受けてから導入までは短期間だった。サカイ引越センターでは、引っ越し業務を通じてPayPayとの取引が以前からあったことも、話が早く進んだ一因だという。

対象を日払い・週払いに限定したのは、どうしてですか。

今回はアルバイトの日払い・週払いの支払い対象者のみに限定しています。正社員の給与にまで踏み込めなかった理由としては、振り込みの上限額が、PayPay払いで20万円というのが上限であるからです。日払い・週払いで20万円を超える振り込みはないので、まず日払い・週払いで導入し、今は様子を見ようかという状況です。

いち早く導入できた背景には、システム面の事情もある。宮本氏はこう続ける。

日払い・週払いの支払いシステムも、もともと自社で構築・運用しているので、改修が比較的しやすかった。それが導入の一番のきっかけでした。

上限の範囲に収まる対象であったことに加え、自社で持つ仕組みを活かせたことが、スピード感のある導入を後押しした。

「銀行振込にプラスする」発想 ── 大きな不安はなかった

導入にあたって、不安や懸念はありましたか。どんな点を魅力に感じましたか。

銀行振込がなくなるという話ではなく、銀行振込がメインで、プラスとして給与デジタル払いという方法が増えるだけなので、特に不安材料はありませんでした。その上で、振込手数料の負担が軽くなるという話もありました。現状、日払い・週払いの支払い対象者には、振込手数料を本人に負担してもらっているので、その負担が軽くなるのは従業員にとってもメリットになると思い、従業員にも共有・発信しました。

受け取る側の負担が軽くなる点は、従業員にとって分かりやすい利点といえる。

ハードルになったのは「システム改修」と「本人同意」

仕組みを変えることで、業務が増えるといった懸念はありませんでしたか。

業務が増えることへの懸念はあまりなかったのですが、自社のシステムを改修しないといけないので、その改修には社内でかなり協力してもらいました。また、申請する従業員一人ひとりから本人の同意を取らなくてはいけないので、そこに手間がかかってしまうというのはあると思います。労使協定を取る必要がある点も足踏みする原因になっているのではないかと思います。

制度変更に伴う手続きの負荷は、導入を検討する企業がためらう要因になりやすい。サカイ引越センターでも、システムの改修と、労使協定や本人同意といった手続きは必要だった。自社のシステムだったからこそ社内で改修を進められた面もあり、こうした前提を整えられたことが、前向きで素早い導入につながったといえる。

「変化に挑戦していこう」── 現場の声を、会社の方針が後押しした

社内では、どのように話が進んだのですか。

部署の中で「進めた方がいいんじゃないか」という声が多く上がり、前向きでした。総務から経営層に対して上程すると、すぐに「そこはやってみてもいいよ」とお声をいただいて。そこからシステム改修や、各本部への声がけ、運用の協力を仰ぐ形になりました。

導入の起点は、トップからの号令ではなく、現場・部署から上がった声だった。それを経営層が即座に後押しし、短期間で実現に至っている。

手数料以外で、どんな効果を期待していましたか。

取り入れるタイミングがすごく大事だと思いながら動いており、「どこの会社よりも早く導入しよう」という意識が社内でありました。一番に導入したことで新聞やテレビ取り上げられました。色々なことにチャレンジしなさい、変化に応じなさいというのは社長からよく言われているので、そういう企業イメージを立てたい。それが採用活動などにもプラスに働けばいいなと思い、動いていました。

宮本氏のこの言葉どおり、導入は会社の方針と重なる取り組みとなった。採用や企業イメージへの波及も期待されている。

すでに働いている従業員からは、どんな反応がありましたか。

アンケートで定量的に取っていないのですが、電話で何件か聞いたことはあります。実際に利用した従業員に「どう?」と聞くと「やっぱり便利だよね」と。給与デジタル払いを使えない正社員からも「会社としてそういうことをやり出したんですね」という前向きな声が届いております。

宮本氏には、外部へのイメージだけでなく、すでに働いている従業員に対しても「変化に挑戦していこう」というメッセージを送りたいという意図があった。色々な働き方を今後認めていけるような土台を整備していく。そうした姿勢を社内にも示したかったという。利用は本人の希望に委ね、会社としては受け取り方の準備を整え、使いたい人が選べる状態をつくることを重視している。

これからの期待 ── 上限額と、外国人雇用への広がり

中長期で期待している点はありますか。

給与のところで、PayPayの上限が20万円というのがハードルが高いなと思っています。正社員の給与支払の場合、100万、200万ぐらいの上限がないと対応できない。そこがどうなるのかは、興味を持って動向を見ています。

上限額が広がれば、アルバイト以外、正社員への適用も将来的に検討したいという。一方で、安全性や残高の上限といった点は詳しく見ていく必要があると、慎重な姿勢もみせる。それでも宮本氏は「前向きに考えたい」と話す。

利用の幅を広げるうえで、課題に感じていることはありますか。

PayPayで他の口座を持っている方の場合、給与デジタル払い用の専用口座を作ってもらう必要があるのですが、その作成が少しややこしい点です。違う支店を申し出て振込エラーになってしまうこともあり、案内の部分はまだ行き届いていないのかなと思っています。また、外国人雇用を進めていますが、外国人の方が給与デジタル払いの口座を作るときに制限があると伺っていて、そこを何とかできれば、将来、ギグワーカーや外国人の方が一日だけ働く際に給与デジタル払いを使うという流れが浸透できるのではと思っています。

サカイ引越センターでも外国人スタッフは増えているといい、口座名義の関係で銀行振込がエラーになるケースも少なくないという。家族が母国にいる場合の送金でも、デジタル払いの方がやりやすい場面があるのではないか――宮本氏は、運用がもっと楽になることに期待を寄せる。

導入を検討する企業へ ── 「小さく始めて、広げる」

これから導入を検討する企業に、先輩企業としてアドバイスをお願いします。

マイナスな面から言うと、システム改修にあたって、弊社は自社で改修ができましたが、これを外部と連携するとかなりコストがかかるのではないか。そのコスト面をまず見て、導入の効果と比較してから取り組むべきだと思います。ただ、メリットも大きいと思っていて、選択肢が増える、つまり従業員に寄り添った会社だ、という発信ができる。導入後は、流れに乗り、発信を強化すれば良いと思います。最初は対象を限定し、弊社のような日払い・週払いだけでやってみて、ニーズを見ながら広げていく形の方が、受け入れやすいと思います。

社内で合意を得るうえで決め手になったことを、宮本氏はこう振り返る。

変化に挑戦していこうという経営層のメッセージが大きく、そこに寄り添えたのが一番、求めるものが出せた。意向に添えたプロジェクトだったのかと思っています。

取材の最後に、伝えたいこととして宮本氏が挙げたのは、社長の言葉である「変化への挑戦」を続けている会社であること、そして従業員に寄り添える会社であること。給与の受け取り方を増やすという一手は、その方針を現場から形にした取り組みだといえる。

株式会社サカイ引越センターについて

サカイ引越センターは、引っ越し運送事業を中心に全国でサービスを展開する企業。近年は引っ越しにとどまらず、リユース、クリーンサービス、電気工事など、暮らしを支える幅広い領域へとサービスを広げている。給与デジタル払い(PayPay)は2024年11月に開始し、日払い・週払いの支給対象者を対象としている。

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