インタビュー
2026年6月12日
【デジタル給与導入企業パイオニアインタビュー第3弾】新しいものを、まずやってみる。西武グループのシェアード会社が給与デジタル払いを導入した理由
―検討開始から半年。“既存システムでできる”が導入の決め手だった―

西武ホールディングスを持株会社とし、不動産・ホテル・鉄道などの中核会社からなる西武グループ。その中で、経理・出納・給与計算といったコーポレート業務(バックオフィス業務)を集約するシェアードサービス会社として2023年6月に営業を開始したのが、西武プロセスイノベーションだ。設立から日が浅い同社は、週休3日制やフレックス制、リモートワークなど、グループに先駆けた柔軟な働き方を打ち出している。その同社が2025年2月、グループ内でいち早く導入したのが、PayPayによるデジタル給与払いである。検討開始からわずか半年、しかも既存の給与システムを活かして実現したという。今回は、導入を担当した、アドミニストレーションユニット兼DX・BPRユニットマネージャーの塙慶太氏に、検討の経緯や現場の状況、今後の見通しについて話を伺った。
目次
■ グループのシェアード会社として――「新しいものをどんどん試す」
■ きっかけは経営トップ。デジタル給与に感じた可能性
■ 決め手は“既存システムで実現できる”という確認
■ 半年で運用開始。PayPayの手厚いサポートが後押し
■ 現状の利用像は「子どもへの送金」と「オートチャージ代わり」
■ これから導入する企業へ
グループのシェアード会社として――「新しいものをどんどん試す」
改めて、御社の事業やお取り組みについて教えてください。
当社は、西武グループの経理や給与計算といったバックオフィス業務を集約するシェアードサービス会社として、2023年6月に営業を開始しました。
グループ会社から単に業務を受託するだけでなく、新しい技術や便利な仕組みを自ら積極的に吸収し、付加価値としてグループへ還元していくことを会社のポリシーに掲げています。
社長の強い意志も推進力となり、まずは自社が先陣を切って新しいものを消化させ、より良いサービスへ繋げていく。そうした挑戦を続けることで、グループ全体の未来を支えていきたいと考えています。同社はグループのバックオフィス業務を担うシェアードサービス会社でありながら、便利なもの・新しいものを積極的に取り入れ、付加価値として還元していくことを会社のポリシーに掲げる。組織が小規模で新しい分、グループに先駆けてさまざまな取り組みにチャレンジできる――そうした立ち位置が、後のデジタル給与導入の素地となっていた。
きっかけは経営トップ。デジタル給与に感じた可能性
デジタル給与の導入は、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。
話が来たのは、いわゆるトップダウンでした。2024年の夏ごろですね。社長はもともと新しいもの好きで、ニュースなどでデジタル給与のことは把握していたようです。柔軟な働き方など色々チャレンジしている中で、「デジタル給与にも訴求性があるのではないか」と。ちょうどPayPayがデジタル給与を始めるという話が出てきたタイミングと重なったんです。
最初にお話を聞いたとき、どう感じましたか。
私はDX・BPRのユニットのマネジャーも務めていて、会社のDXを進める立場でもあるので、抵抗感は特にありませんでした。会社としても2024年度から生成AIを全従業員が使える環境を用意するなど、新しいものをどんどんやっていこうという方針でしたし、チャレンジをさせてくれる会社です。やるというなら、本当にできるのかどうか、早速検討しよう、と。

経営トップは、デジタル給与に会社としての可能性を見ていた。デジタルの浸透が進むなか給与の面でも対応し、設立間もない同社が独自の先進性を示し、人材獲得の訴求力を高める――そうした手段として適していると考えたのだ。一方、DXを推進する立場の塙氏に、新しい仕組みへの抵抗はなかった。具体的な検討は2024年夏に始まり、約半年の準備期間を経て、2025年2月に支払いを開始している。
決め手は“既存システムで実現できる”という確認
導入の決め手は何だったのでしょうか。
当社は検討当初、まだ100名に届くか届かないかの規模で、給与の支払対象になるのは当社籍の従業員で、当時はまだ20人ほど。小回りが効く組織ですので、スモールスタートでPoC的にやってみよう、と考えていました。給与計算や支払いの担当者とも距離が近いので、具体的な方法をすぐ相談できました。また、PayPay社のご担当者様から「通常の銀行口座と同じように第二口座を開設できますよ」と聞いて、「あ、これも物理的に第二口座を使えばいけるな」と。それまで当社は給与振込の第一口座だけで、第二口座の仕組みはなかったのですが、機能を確認したら物理的に使えるとわかった。特段の投資をしなくても、既存のシステムの中で実現できそうだと確認できたのが、やっぱり一番大きかったですね。
もともと同社の給与は第一口座への振込だけで、“第二口座”という受け取りの仕組みはなかった。それがデジタル給与の検討を機に生まれた格好だ。組織が小規模で対象も当社籍の20人ほどと少なく、スモールスタートで意思決定も速かったことが、導入を後押しした。
半年で運用開始。PayPayの手厚いサポートが後押し
検討開始から運用スタートまでは、どのくらいの期間でしたか。
半年です。「早くやれ」と言われていたので(笑)。新しい制度をつくるので、社内での意思決定や届出、規程類の整備といったタスクは当然たくさん出てきます。ただ、PayPay社のご担当者様が「こういう手続きを、こうすればできます」と具体的なステップまで示してくださったので、あとはそれを当社のスケジュールに落とし込むだけでした。道筋を立てていただけたのは大きかったですね。
管理部門の人数が限られるため、専任のプロジェクトチームは組まず、通常業務の合間に対応したという。実務は塙氏ともう一名が中心となり、給与計算や支払部門の担当者も含めて、5名ほどが関わった。給与口座の設定は通常の給与システムの設定で済み、新たに必要となる届出も既存の届出に加える形で、規程改正も通常の手続きの中で対応できた。告知は2024年冬に説明会を開いて全社員に取り組みを案内し、年明けの2025年1月には、希望者向けに申請手続きの説明会を実施している。
現状の利用像は「子どもへの送金」と「オートチャージ代わり」
実際に、どのような方が利用していますか。
正直、最初は私も含めてイメージがなかったんです。普段からPayPayを使っていて、給与で使えると便利だと思う方が手を挙げてくれればいい、という感覚でした。蓋を開けてみると、20代ではなかったですね。お子様へのお小遣いとして、PayPayで送金している方が複数いました。中高生のお子様だと現金よりPayPayの世代なので、給与の段階で自分のところに入ってくれば、そこから分配するだけでいい、と。あとは、第二口座がPayPay口座と紐づいているので、給与日にオートチャージ代わりに定額が入ってくる、という使い方をしている方もいました。
現状の利用は子育て世代が中心で、子どもへの送金や、オートチャージ的な使い方が見られる。同社は給与の一定割合を振り分けるのではなく、あくまで支払い手段の選択肢を一つ追加する位置づけで案内している。「全員やってください」ではなく任意のため、従業員から不安の声は出なかったという。
これから導入する企業へ
今後、このデジタル給与をどうしていきたいですか。
特にこれにスポットライトを当てるというより、フレキシブルな働き方など、柔軟性を高める取り組みの一つとして、第二口座として普通に案内できるくらいのスタンスでいければと思っています。社員からすれば、選択肢を増やすうちの一つですから。当社グループの中で新しいことにチャレンジし、いいものを共有していくのが私たちのミッションなので、この動きがグループ各社に広がっていけばいいな、と考えています。
── これから導入を検討する企業に、伝えたいことはありますか。
大したことは言えないのですが…従業員にどんな選択肢を示せば皆さんのためになるか、そこをぶらさずに進めたのは、結果的に良かったと思います。「便利だから入れろ」だと、若干ハレーションが起きると思うので。あくまで「選択肢を一つ増やしました」と淡々と、他の施策と合わせてメッセージを出せたのは良かったですね。当社はたまたま人数が少なく、給与システムもシンプルだったので、比較的コストをかけずにできましたが、規模の大きい会社ほど、システムの改修や、従業員への説明といった負担は上がるのではないかと思います。
同社のケースでは、システムの改修は発生しなかった。標準の給与システムに、ユーザー側の設定で第二口座を追加できたためで、もし改修が必要であれば導入のハードルは大きく上がっていただろう、と塙氏はみる。利用者を増やすこと自体を目的とするのではなく、働き方の選択肢の一つとして用意し、淡々と示していく――それが同社の現在のスタンスである。
株式会社西武プロセスイノベーションについて
株式会社西武プロセスイノベーションは、西武ホールディングスを持株会社とする西武グループのシェアードサービス会社。グループ各社の経理・出納・給与計算などのコーポレート業務(バックオフィス業務)を集約・受託する。2023年6月に営業を開始。週休3日制、フレックス制、リモートワークなど柔軟な働き方を推進し、2025年2月よりPayPayによるデジタル給与払い(第二口座方式)を導入している。

MMD研究所 運営チーム(エムエムディーケンキュウジョ ウンエイチーム)
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