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インタビュー

2025年4月23日

「この工場のことは、このAIが知っている」──“ベテランの勘と経験”の推論を再現するソフトクリエイトのAIとは

「このやり方が一番効率的でいいんだよ」
そんなベテラン作業員の言葉には、長年の現場経験に基づいた説得力があります。一方で、その“やり方”を数値化し、誰かに引き継ぐことは簡単ではありません。製造現場ではこうした「暗黙の知」が積み重なり、DXを進める上での大きな壁となっています。「“なぜこの工程なのか”を言葉にできない。それが、人材育成や業務改善の足かせになっている」
そう語るのは、ソフトクリエイトの畠山氏。同社は、こうした現場の声を受け、感覚的なノウハウまで分析・指摘できるAIの開発に取り組んできました。

<こんな方には是非読んで欲しい>

  • AI活用に興味を持っている 
  • そもそもAIを使ってどんなことができるか分からない、知りたい 
  • ざっくり解決したい悩みや課題がある

目次

■「なぜうまく回っているのか、誰にも説明できない」──それが現場の“本音”だった ソフトクリエイトのAIができるまで
■言語化できない知見をAI に翻訳させたい、という思いから「可視化+推論」ができるAIを開発 実際に現場では”見えなかったものが見える”瞬間の価値体験が評価を生んだ
■「AIは魔法の箱ではない」AIは何にでも使っていくのではなく、課題に対して手段として活用していくもの AIのプロフェッショナルとして、「よくわからない」状態から手助けをする

 

「なぜうまく回っているのか、誰にも説明できない」──それが現場の“本音”だった ソフトクリエイトのAIができるまで

そもそも、ソフトクリエイトの理念や事業概要、そして事業開発部長である畠山様ご自身のお取り組みはどういうものでしょうか?


ソフトクリエイトは、創業40年を超えるIT企業で、パソコン販売から始まり、現在はクラウドやネットワークインフラ、DX支援など、幅広い領域で企業のデジタル化を支えています。
私は2022年に入社し、最初はDX支援を担当。その後、自社プロダクト開発部門の立ち上げに関わり、現在は生成AIを活用した製品の企画・開発・展開を担っています。

その中でも「Safe AI Gateway」という製品が生まれた背景について教えてください。


当社には、もともと製造業や流通業のお客様からご相談をいただいていました。「人手が足りない」「属人化していて業務改善が進まない」「現場がなぜ回っているのかわからない」──そんな声に対し、何か根本的なソリューションができないかと模索していました。
私が入社して間もない頃に、役員の方と話す機会があり「こういった研究開発部門が必要ではないか」と話したら、それがきっかけで「じゃあお前がやれ」と(笑)。言い出しっぺが担当になりました。

その中で、生成AIを“単なるチャット”ではなく、「業務における暗黙知の可視化」「作業の推論支援」などがわかる”推論エンジン”として活用できるのではと考えたんです。
定性的な情報から推論し、結論を導き出す。そして、定量データと組み合わせて推論結果をより精緻にする。そういった使い方を想定していました。
最初は社内向けに安全なAI活用環境として作り始めたのですが、これが非常に効果的だったため、外部提供を見据えて改良を重ね、「Safe AI Gateway」という製品として形にしていきました。

「安全に使えるAI環境」からスタートされたというのがユニークですね。


AIって、社内で使いたくても「情報漏洩が怖い」「何を学習されるかわからない」といった不安が大きいですよね。まずは自分たちが安心して使える環境を整備することが、外部への展開にもつながると考えたんです。
「Safe AI Gateway」は、簡単にいえば“企業がAIを安心・安全に業務へ取り入れるための橋渡し”です。

 

言語化できない知見をAI に翻訳させたい、という思いから「可視化+推論」ができるAIを開発
実際に現場では”見えなかったものが見える”瞬間の価値体験が評価を生んだ

製品開発の過程では、多くの試行錯誤もあったかと思います。どのような取り組みが印象に残っていますか?


正直に言うと、最初は手探りの連続でした。しかし、その中で見えてきたのが、「やっぱり現場の課題に寄り添えるAIが必要だ」という点でした。
特に製造現場のように「明確な正解が存在しない」環境では、経験や勘に頼っていた業務が非常に多いんです。

ベテラン作業員が「ここの工程、順番変えた方がスムーズ」と言った時、その“感覚”を他の作業員に伝えるために、言語化・数値化するのは非常に難しい。私たちはその“言語化できない知見”をAIに翻訳させたいと考えています。

実際、生成AIを活用した現場支援はどのように行われているのでしょうか?


一番わかりやすいのが「作業動線の最適化」や「異常検知」の領域です。
実際の導入現場では、まずAIカメラを設置して、作業員の動線や所要時間を記録します。これらのデータをもとに、AIが「この配置だと無駄な動きが多い」とか、「B工程とD工程を入れ替えると効率が上がる」といった具体的な提案をしてくれるんです。
たとえば、ある自動車部品メーカーでは、AIカメラで作業員の動きを分析し、どのポジションにどの人を配置すれば効率が良くなるか、あるいは何が作業の遅延原因になっているかを、データから推論しています。特にその工場では、作業フローに「無意識のムダ」が多く、見過ごされていた部分がありました。たとえば、「移動距離は短いけど、そのたびに方向転換が多い工程」が非効率だった、というような。こういう細かな気づきは、普段は見逃されがちなんですよ。

たとえば、安全に関する指摘事項として「通路が2メートルと狭く、作業時に機械の間を横断する必要があり、転倒リスクがある」という、ごくシンプルな情報を入力しただけだったんです。
それでもAIは、これまで蓄積された作業データを再集計して、的確なリスク分析結果を返してくれたんです。
こうした“ちょっとした気づき”でも、AIが裏付けをもって返してくれるのは大きな強みだと思いますね。

その“見えなかったものが見えた”瞬間が、ものすごく価値ある体験として伝わったようで、即座に「正式導入したい」とご相談をいただきました。

これまではベテランの経験や勘に頼っていてなぜうまくいっているのか説明できない部分を、AIが言語化し、再現可能な知識にしてくれる。
さらに、単なる可視化ではなく、生成AIが「AとBの配置を入れ替えましょう」といった改善提案をしてくれるのです。
まさに「可視化+推論」の組み合わせです。現場のベテランが過去に“なんとなく”言っていたことを、AIが客観的に分析し、再現してくれるんです。

「可視化+推論」というのは、製造現場との相性が非常に良さそうですね。導入のしやすさもポイントなのでしょうか?


お問い合わせいただいてから早ければ2週間ほどで、現場のヒアリングにお伺います。課題が明確であれば、短期間でテスト的に始めることが可能です。
我々が提供するのは、要件定義からいきなり大規模開発をするものではありません。まずはお客様と同じ目線で「一緒に試してみましょう」というスタンスで始めるものです。
最近は、「他社ではどう使っているか?」という、より具体的な活用方法について聞かれるようになってきました。製造業向けでは、「最適な組立工程を改善したい」「異常検知の仕組みを構築したい」といったテーマが多いですね。

気になる価格ですが、大体どれくらいなのでしょうか?


現在提供しているPoC(概念実証)は、3ヶ月単位・約500万円(AIカメラ設置・インフラ込み)で小さく始められる導入しやすいスキームです。
「とにかく早く試してみたい」「でもいきなり何千万円も出せない」という企業ニーズに応え、多くの反響をいただいています。
また、分類AIと生成AIを適切に使い分けて課題にアプローチすることで、「生成AIだけ」の浅い導入ではなく、実効性のある成果創出につなげられる点が大きな特長です。

 

「AIは魔法の箱ではない」AIは何にでも使っていくのではなく、課題に対して手段として活用していくもの AIのプロフェッショナルとして、「よくわからない」状態から手助けをする

「とりあえずAIを入れる」ではなく、「何の課題をどう解決するか」が大切ということですね。


「AIを入れたい」とご相談をいただいても、実際には「課題が明確になっていない」ケースが多いんです。
でも、そういう“ふわっとした悩み”こそ、私たちが一番力を発揮できる部分だと思っています。「何かうまくいってない気がする」「見える化したいけど、どうしたらいいかわからない」そんな状態でもまったく問題ありません。私たちはそういう企業にこそ来てほしいと思っています。

まずは現場を見させていただいて、どこにボトルネックがあるか、どのデータが使えるかを一緒に探していきます。
そのうえで、AIをどう使うかを決めていく。AIは手段であって、目的ではありません。

では、今後ソフトクリエイトとして目指していきたいビジョンを教えてください。


今後は、より多くの業界・業種にこの仕組みを展開していきたいと考えています。現在、力を入れているのは「ファインチューニングされたAIモデルの内製化」です。
生成AIでは“トークン制限”や“文脈保持の限界”がボトルネックとなり、1日〜1週間分といった大量のデータを一度に扱うのが難しいという課題があります。これを乗り越えるために、私たちは「この工場のことはこのAIが熟知している」という状態、つまり工場専属の“10年目のベテランAI”を育てるような発想で取り組んでいます。
この専用AIが実現すれば、「昼と夜の工程を入れ替えたらどうなるか」といった未来予測も可能になり、作業効率だけでなく、安全性や設備保全といった複合的なテーマにも応用が広がります。
最終的には、AIを社会のインフラとして根づかせるために、技術力だけでなく“使いやすさ”や“現場への寄り添い”も大切にしていきたいと考えています。

最後に、これからAIを業務に活かしていきたい企業様へメッセージをお願いします。


「AIは魔法の箱ではない」と、まずお伝えしたいです。
それでも、今現場で感じている「なんとなくの違和感」や「人手が足りないけど育成が間に合わない」といった課題は、AIだからこそ気づける兆しがたくさんあります。「AIで何ができるかわからない」「誰に相談したらいいかもわからない」そんな方にこそ、私たちの話を聞いていただきたいです。AIは、課題を発見し、改善を支援する“ともに走るパートナー”です。課題が曖昧でも、データが揃っていなくても構いません。私たちは、現場に寄り添って、一緒に考え、試し、改善していくチームです。
ぜひ、気軽にご相談いただけたら嬉しいです。

 

株式会社ソフトクリエイトについて

ソフトクリエイトは、お客様の変革に不可欠なベストパートナーを目指し、企業向けの総合的なITサービスを提供しています。クラウド、セキュリティ強化、AI・DX支援、ITインフラ構築を主要な事業とし、最適なテクノロジーを通じた「価値の提供」でお客様のビジネスを支援します。40年以上にわたり、お客様と共に培った経験を生かし、日本全国の企業へサービスを届けていきます。

ソフトクリエイト×MMD研究所 セミナー

株式会社ソフトクリエイトと共同で「製造業におけるAIの利用実態調査」を実施しました。
本調査の関連セミナーを株式会社ソフトクリエイトと予定しております。

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