インタビュー
2022年10月27日
【クライアントインタビュー】レコチョク事例 サービス改善の鍵は「顧客ニーズの把握」 音楽ファンのNFT調査から機能改善を実施
レコチョクとは定量調査を中心に、これまで複数のサービスに関する調査のお取組みをさせていただいております。
直近では、音楽ファンの実態、NFTの認知や利用状況について定量調査を行いました。
今回は、NFT・メタバースを中心とした新領域の事業を検討・推進する次世代ビジネス推進部 第1チームで主にNFTをご担当されている、リーダー 小南様に、これまでのMMDLaboとのお取組みについての感想をお伺いしてきました。
※2022年9月にレコチョク本社にてお伺いしてきました。
まずは、レコチョクの理念と、小南様ご自身のお取り組み内容を簡単に教えてください。
当社のミッションは、「音楽市場の最大活性化」です。体験が多様化していく中で、トレンドにしっかり追従する、あるいは開拓するという意志を持って各事業に向き合っています。
僕個人としては、新規サービスを担当することが多く、現在はNFT関連の企画に注力しています。 現在は、当社が音楽業界に向けて立ち上げた「murket(ミューケット)」というECソリューションサービスで、レコード会社さんやマネジメントさんが、デジタル商材とCDなどのフィジカル商材の両方を取り扱えるECの仕組みを提供していますが、その中の商材のひとつであるNFTに関して、「murketでNFTを売るためにどうするか」「お客様がNFTを購入したときどう楽しむか」の2点を検討しています。
ありがとうございます。トレンドへの追従や開拓するという強い意志を持ちながら業務に向き合われているとのことですが、小南様が関わられているmurketはどのようなサービスなのでしょうか?
murket自体はECサイトではありますが、NFTをはじめとして裾野を広げ「音楽ファンに向けたビジネスを広げたい事業者様を入口から出口までサポートできるようなソリューションサービス」を目指しています。
我々はもともとプラットフォームという場所を提供して、お客様に楽しんでいただいたり、アーティストがなにか取り組みできるように支援することが多かったんです。murketは、最近海外で活発なDirect to Fan (D2F)といわれるビジネスなども踏まえて、よりニーズに応えるようにモデルを再構築しています。
なるほど、murketはレコチョクのミッションがよく表れているサービスですよね。では、Direct to Fanサービスとしてmurketをスタートする中で、レコチョクがNFTに目をつけたのはなぜですか?
アーティストとお客様を取り巻く「情緒的な部分」からNFTに注目しています。コンテンツを届けるという意味では、従前の販売方法でも行えますが、例えば、ファンの中の貢献意識とか、気持ちに関する部分は、なかなか商品や体験に落とし込めていなかったんですよね。それをNFTでうまく表現できるんじゃないかなと考えていました。
NFTの投資的な一面というよりも、自分がファンであることの自信とか、アーティストがファンを大事にしてくれる証明のようなもの、というスタンスでNFTをサービスに落とし込みたいという思いがあります。
確かに、ファンとしては「自分だけがこれを持っている!」というのはかなり愛着も湧きますよね。ただ、世間的にはまだNFTって馴染みがない方も多いかと思いますが、そういう方のためにmurketがアピールするポイントはどこになるのでしょうか?
やっぱり円で買えるというのは一番大きいかなと思っています。
一般的に、NFT自体は実際に購入するまでに、ウォレットの作成や暗号通貨の購入など思ってもみない準備が必要です。そんなハードルをできるだけ下げるという意味で、当社が発行するNFTは円で買えるということはストロングポイントになっていると思います。
あとは、音源や肖像をお預かりしてお客様にお届けしてきた、というのが会社としての歩みなので、これからもいい意味で今までのやり方にのっとって、サービスを展開していきたいです。当社のこれまでの歩みや文脈を理解してくださる皆様から、引き続きコンテンツをお預かりすることも多いです。
ありがとうございます。では、ここからMMDLaboとのお取組みについてお話を伺えればと思います。改めて直近の音楽ファンの実態やNFTの認知について定量調査を実施されるにあたり、どのような課題を感じられていましたか?
僕らが本格的にNFTをやるぞ!となったのがちょうど1年半前で、海外では話題になっていたのですが、日本国内ではそもそもの部分が理解されておらず、日本語の記事すらほぼないような時期でした。
NFTの検討を進めるうちに、我々の中では知識が増えていくんですが、一方で購入を検討しているお客様と話したときに「NFTって調べるといきなり英語のサイトが出てきて怖い」というようなお話もまだまだありました。そうした状況を踏まえて、お客様とのモチベーションのギャップを確認するというのが、直近のお取組みの目的でした。
NFTのある種ゴシップ的なニュースばかりが世に広まってしまったというか。正しい情報が伝わっていないような感覚でしょうか。
そうですね。アーティストの皆様にはマーケットニーズをご紹介してNFTを提案していくことが多いんですよ。
ただ、新しいプロダクトを出すときって、我々も一生懸命作っていますが不安なこともあります。そういうときに「心配ないですよ」という裏付けのひとつとして、調査結果は非常に活用させてもらっています。
調査をご活用いただけているということで、ありがとうございます。では、定量調査を実施する際、なにか仮説はお持ちでしたか?
まだNFTに対して懐疑的な人が多いだろうな、っていうのはある程度想定していましたね(笑)。同時に、ニュースで騒がれているほど、盲目的な人も多くはないだろう、という仮説もありました。このあたりは調査結果で確かめることができて安心しました。
NFTのデジタルアート(デジタルデバイスを使って作られたアート作品)が何億円に、というようなニュースはキャッチーではありますが、我々の方では、これまでの形で売ってきたものがNFTという別の形だから何億円になる…ということではないだろうという見解がありましたので。
仮説を調査で立証していただけたのですね。
そうですね。あとは、お客様は、新しいサービス・商品の入口でニーズを把握しようとしても受動的な方が多いなと毎回感じます。
というのも、サービス・商品に対して「あれが直ったらいいのに、こうなったらいいのに」という思いはあるのに、いざ「不満は何ですか?」と聞いても、不満を伝えてくれる方はあんまりいなくて。時代が変わったり、新しいサービス・商品が出ようと、お客様の求めるものは案外変わらないんだなっていうのは毎回感じています。
新しいサービスはイメージをお持ちいただくのが難しいのでしょうね。
そうですね。僕は、お客様がどれだけアクティブになっていただけるかが、サービスとしての価値の本質だと思っていて。よく言っているのは、家に帰ってご飯を食べて、寝るまでの暇な時間に、どれだけサービスを使ってもらえるか。あのタイミングが一番、価値のある時間だと思うんです。
通勤や通学中に使ってもらうのも嬉しいですが、家のソファでゴロゴロしているときに使っているサービスの方が、エンタメ感があって僕は好きなんですよ。出すサービスが変わっても、そのシーンを大切にする思いは変わらずに持って企画しています。
「お客様がどれだけアクティブになっていただけるか」ということですが、お客様の積極的な意見、先ほどお話があったような「お客様の不満」も明らかにするために調査結果を深掘りされたいとは思いますか?
例えば、「アーティストのサイン欲しいですか?」をyes or noで聞くと、答えはそりゃyesになってしまう、というようなことってあると思うんですよね(笑)。それを鵜呑みにしてしまうと、調査としての価値は半減、というかほぼ活用できていないと思いますので、MMDLaboさんには毎回クロス集計を作成いただいています。
直近の調査では、現場のスタッフも集まってひざを付き合わせてディスカッションしました。かなり意外な結果が出ていて「マジで?!」と盛り上がったり(笑)。なぜこの結果になったのかを何度も何度もいろいろな人と会話していっています。インサイト的なところまで、仮説として僕らが生み出していけるように努めています。
データをご活用いただき、ありがとうございます。レコチョクとはこれまでも定量調査を多く実施させていただいていますが、毎回の調査でディスカッションはされているのですか?
僕の所属している部署ではエンジニアが多いのですが、すごく気にしますね。自分たちのサービスがどのように受け入れられているのか、自分たちはどんな人たちに向かって何をしているのか、みたいなところは、ポジティブな好奇心として知りたがります。
直近の調査では10人ぐらいでディスカッションしました。各自にレポートも展開していて、読みたい人は本当に長い時間をかけて読んでいますよ。「こういうものも知りたい・ああいうものも聞きたい」みたいな、そういうアイディアをスタッフみんな持って、調査データを拝見しています。
嬉しいエピソードをありがとうございます。では、これまでお取り組みをさせていただいて、良かった点、不満点があれば教えてください。
まず、良かった点は、ただアンケート配信・データ集計をご依頼するだけではない、オペレーターとしての存在を超えて対応いただけている点ですね。「こういう思いでこういうことを聞きたいんですよね。言葉になっていないけど」という時点から並走してくださるんですよ。
例えば、設問を作成する段階で、何度も調査目的や意図のすり合わせのお時間をいただいているので、こちらの目的とギャップのない設問が一回目で出てきます。設問だけではなく、最終アウトプットのレポートも、想像していたものに近い状態で毎回ご納品いただいていて、すごく助かっています。
ありがとうございます。直近のNFTの調査ですが、結果を今後どのような形で活用されていくご予定ですか?
我々がちゃんとマーケットのことを考えてサービスを作っている、という姿勢を示すために活用したいと思っています。今は、スピード重視でNFTサービスを出している事業者も多いように見えるので、そこは差別化できる重要なポイントとして考えています。
直近のストーリーとしては、調査をして、それを踏まえた企画をして、機能を作ってリリースするということを、順番に繰り返していく。「この機能はこういうデータをもとにしている」とクライアントにもご説明できると、我々も「やれるだけのことはやった」っていう自信を持ってサービスを出せるので。
あとは、調査を通して、やっぱりNFTはアーティストがしっかりファンに向けて企画し、お届けされるべきものだという、確信のようなものを手にすることができました。
「NFTが二次流通(転売)されて、価格が上がるとお金が入ってくる」ということに対するお客様のモチベーションは思ったより高くない。二次流通ありきで購入を決断されるというよりも、しっかり「ファンとしてどうあるべきか」みたいなところが重要視されているという印象がありました。
二次流通など投資的なのイメージがある中で、レコチョクとしてはファンの方のアーティストに対する想いや、ニーズに合ったものを出していくことを重要視されているのですね。
では、率直に、今までMMDLaboと何度もお取り組みいただいてる理由はどういうところにありますか?
スマートフォンとかインターネットサービスに対して、MMDLaboさんは知見があると感じているからですかね。音楽好きを集めて聞くだけであれば、たぶん他の選択肢もあると思うんですけど。デジタル周りを担当する僕らが使いたいデータを効率良く手にしていきたいなと思うと、MMDLaboさんにご相談するという選択肢は今後もあるだろうと思います。
最後に、murketがこれから目指していく姿や、レコチョクとして取り組んでいきたいことを教えてください。
今僕らが思っているNFTの価値の本質は、持っている人にどう思ってもらえるか、持っている方の体験として居心地がいいものかどうかが重要だと思っています。NFTを持っている人の“ファンとしてのリア充さ”をどれだけ機能や商品に落とし込んで見せていくか、という点を当面はこだわっていくと思います。
あとは、NFTを「NFT」として打ち出せる期間ってもうあまりなくて、今後何かしらの商品名がついて、「裏側は実はNFTでした」というタイミングが、この3年もしないうちにくると思うんです。我々としてもできるだけ早く商品として上手に見せてあげたいですね。
それによってファンの体験が今より質の高いものになればいいですし、あんなこともできる・こんなこともできるみたいな期待感にはこだわっていきたいです。そのタイミングまで、適切なコミュニケーションをお客様としないといけないなとは思っています。
お客様とのコミュニケーションを重視されていくとのことで、レコチョクのNFTサービスにもその考えが反映されているかと思います。
そうですね、レコチョクがリリースしているNFT(次世代ビジネス推進部/Web3.0関連サイト)みたいな潮流って、これまでもサービスがお客様の消費行動を変えてきたように、どっかがコロッと変われば一気に浸透する気がしています。これからも、常にお客様やトレンドを意識し、調査も実施しながら、最良のサービスを提供していきたいと考えています。
【編集後記】
レコチョクは新サービスの開発にあたり、利用者の声を拾い上げながら、新サービスを客観的な視点で検討されています。調査はマーケットのニーズに合わせたサービス提供の根拠としてご活用いただいているとのことです。弊社とは過去にも複数のお取組みをしていただいておりますが、調査の事前のすり合わせを密に行うことで、ご意向に沿った設問を提出できている点などをご評価いただきました。
弊社では皆様のご状況に応じて調査やコンテンツ制作などの解決手法をご提案させていただいております。どんなお悩みでも構いませんので、何か解決したい課題や調査に関してご相談、ご依頼がございましたらお気軽に下記お問い合わせフォームよりご連絡ください。
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MMD研究所(編集部員)