スマートフォン、タブレットを中心とした消費者動向や市場調査を無料で公開

インタビュー

2021年3月10日

エイベックス・エンタテインメント株式会社 ライヴ事業本部 中川敦雄 GMインタビュー「オンラインライブならではの、リアルではできないような施策が大切」

エイベックス・エンタテインメント株式会社 ライヴ事業本部 中川敦雄 GMインタビュー「オンラインライブならではの、リアルではできないような施策が大切」




2020年、新型コロナウイルスの影響でリアルでのライブやイベントの中止が相次いだ中、様々なアーティストのオンラインライブ開催が着目された。
総合エンタテインメント企業であるエイベックスも、毎年行っているa-nationを初めてオンラインで開催し、オンラインならではの施策でライブを届けた。
そこで昨年のオンラインライブを行うまでの経緯や、今後のオンラインライブ配信について中川ゼネラルマネージャーに話を聞いた。


新型コロナウイルスの影響でリアルでのライブが相次いで中止になったかと思います。その中で多くのオンラインライブ配信プラットフォームが提供を開始したと思うのですが、御社の昨年のオンラインライブに対する取り組みや、当時のオンラインライブに対する考えを教えてください。


コロナ禍において、リアルでのライブの数が減りました。そんな中、我々のグループにはエンタメ×テクノロジーに特化した会社があり、ネットでの生配信を開発していたチームがあったので、コロナ禍と相まって急速に技術を開発していきました。
オンラインライブの例でいうと、a-nationというフェスを毎年行っていたのですが、コロナ禍でリアルでの実施が難しいということもあり、昨年はオンラインでのa-nationに踏み切りました。弊社ではmu-moショップというECサイトを持っているのですが、そこで開発していた「mu-mo LIVE」というプラットフォームを使って、a-nationの配信をしました。有料の配信でいうと約4万人、無料ではYouTubeとLINEでのライブも行っていたのですが、そこも含めると約160万人という同時接続の視聴で無事に終えることができました。

a-nationをオンラインでやろうと考えていたのが2020年4月末くらいなんですが、その時にはまだオンラインライブのフェスを打ち立てているところがどこもなく、0からのスタートでしたね。a-nation自体が昨年の開催で19回目、今年でいうと20回目の節目なので、この歴史を途絶えさせてはいけないと思い、「リアルでできない分オンラインで行うしかないよね」となりました。そこからプロジェクトチームを作り、私たちのライヴ事業本部とグループ会社またがってテクノロジーチームや、企業とのアライアンスを組んで行っているチームと一緒に実施した感じですね。
今年の夏もどうなるか分からないですが、このオンラインライブはリアルと並行して主流になっていくと思うので、この年の夏もさらにブラッシュアップさせて行っていかなければならないと考えています。


オンラインになって視聴する層はリアルのライブから変化がありましたか?


ライブを観る層が変わったというよりは、オンラインライブはスマホやPCで観ることができ、リアルのライブよりも価格がお手頃だったり無料のものもあったりするので、いつもライブを観に行っている方々に加えてライトに楽しみたい方が観てくださっていると思います。



オンラインライブはリアルのライブに比べてお手頃なので、お試しで観てみようとする人にとっては入りやすいですよね。


オンラインライブからライブに接してみようと思う層が格段に増えていますね。ただ、マネタイズの部分ではチケット代をそこまで高く設定できていないという点と、オンラインライブで使う機材やインフラの部分にかかるコストのバランスがオンラインライブはとりにくいので、今後マネタイズをどう成り立たせるのかという課題はあります。


a-nationでは3つの有料ステージと2つの無料ステージの全5ステージで開催や、オンラインライブと一緒にグルメをお得に楽しめる「a-nation×Uber Eats」を行っていたかと思いますが、オンラインライブを行う上で最も需要があると感じた施策等ございましたら教えてください。


昨年のオンラインライブに関しては手探りの部分が多くあったので、実施できていないこともありますが、やはりUber Eatsなどのオンラインならではでやれることを、オンラインa-nationは作るべきだと思って実施しましたね。本当はアーティストがライブをやっているときにアーティストのグッズをオンラインでそのまま購入できたりとか、観ている人が好みで会場の背景選べたり、好きなアーティストだけをフォーカスして観れるマルチアングルなどがあればいいと思っています。「オンラインならではのことができたらいいよね」とはなったのですが、技術的なところや開発のコストの部分で断念した事が多いです。ただ、このコロナが長く続いている中で、オンラインライブのテクニカルの部分での知識や実績も増えてきたので、今後行うオンラインライブには、オンラインで見ている人たちがリアルではできないような施策とかが増えてくるだろうなと思います。IoTが現在進んでいっているとも思うのでそれを絡めたフェスとか、エンタメみたいなところを行っていくべきだなという想像はあります。あとは、本当にマネタイズなどのビジネス的側面でどこまで施策をつなげられるかという部分の課題は多いにあるなと感じています。


オンラインライブならではの工夫をしているアーティストなどいらっしゃいましたら教えてください。


うちのアーティストでいうと、SKY-HIは自宅から両親と一緒にライブ配信をしていましたね。オンラインライブはどこからでもできる、というところにいち早く目をつけて自宅から届けていました。こういったライブは、オンラインであれば一人でも完結できることを証明したのかなと思います。
アーティストによっては見せ方にこだわり、ARなどを使って画面上で魅せる工夫を行っている方もいます。

後は、観せる側としてはどういう観点で楽しんでもらうのかという部分ですよね。
オンラインライブとリアルライブでは似ている部分もありますが、その場にその人がいるかどうかってやはり違うと思うので、オンラインでは見せ方や空気感を変えるべきなのかなとは思います。なので、オンラインライブにおけるいい点、悪い点は蓄積分として感じていく必要はあるなと感じています。



今後、オンラインライブは世の中にとってどのような存在になると考えていますか?


オンラインライブは3~5年後、あるいはもっと先になるかもしれないですが、いずれ無料化していくと思っています。まだ人々の私生活にすごく溶け込んではいないですが、5Gは今後人々の私生活に必ず溶け込んでいくと思います。そうなった時に、オンラインライブをもっと簡単に楽しめたり、動画の容量を気にせずに観られたりするようになっていくと思います。そうなるとオンラインライブって快適にすぐ観られる存在になっていき、無料で観せるという人がたくさん出てくると思うんです。なので、未来予想図でいうと、いろんなオンラインライブが無料で観られるものが多くなっていくのかなと思っています。

ただ、オンラインでやるものは手に入りやすい価格や、極端に言うと無料で観ていただける分オンラインライブを観る人達に、チケット代ではないマネタイズをどうやっていくのかを考えていくべきと思っています。
その一方でリアルライブのチケットの価値は逆に上がり、例えば人数制限をしてプレミアムチケットとして販売するなどが出てくると考えています。実際に会えるという部分の価値が高騰してリアルのライブとオンラインライブ、それぞれの価値のバランスができると思います。

また最近だとYouTubeで「踊ってみた」とか「歌ってみた」とかがあるように、アーティストと一般の人との垣根が変わってきていると思うんですね。ライブで表現するものが無料で表現できて、それを楽しむ人がどんどん増えていくのではないかと。ライブというものがオンラインによって形は変わっていないけれど多様化し、進化していくだろうと思います。ただ、リアルライブはアナログで空気感を一緒に共有するというところは変わらず、リアルライブとオンラインライブで見せ方とか表現の仕方とかがずいぶん変わっていくのではないかなと思っています。


【編集後記】
オンラインでしかできない楽しみやUber Eatsとのコラボをa-nationというフェスで実施し、オンラインライブの価値を確立していっている。今後5Gが世の中に浸透していった際に、オンラインライブでのアーティストの方の表現方法は拡大し、もっと手軽に簡単に楽しめるものとなっていくのではないだろうか。

会員登録をすると、
調査結果の詳しいファイルを
ダウンロードできます。