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インタビュー

2015年4月15日

Vol.34 日本初の業務用スマートウォッチアプリをリリースした 東大卒の女性起業家が狙う位置情報活用の勝機

世界的にライドシェアと言われる車の相乗りサービスが拡大する一方、規制の厳しい日本ではLINE TAXIの登場やUberの上陸もありタクシー配車サービスが活気を見せる。今年、タクシー事業者側の登録数が1万社を突破したタクシー配車アプリが「たくる」だ。この「たくる」を提供する株式会社オンラインコンサルタントは今年、動態管理や日報の作成などが可能な日本初の業務用スマートウォッチアプリ「Smart動態管理」をリリースした。今回は、位置情報活用で先を行くこの株式会社オンラインコンサルタントを率いる女性社長、後藤暁子氏にお話を伺った。






事業者に捉われないタクシーインフラ

タクシー検索「たくる」はまだガラケーが主流だった5年前から提供しているのですが、始めたきっかけは私の不満からです。名古屋が実家なんですが、タクシーを呼びたいときに呼べないということに、すごく不便を感じていました。東京では昼間多くのタクシーが走っていてすぐに捕まえられますが、名古屋だとそこまでではないんです。本当になぜこの世の中でタクシーだけがこんなに不便なんだろうと思っていました。

去年11月には終電をなくしたときに周辺のホテルや漫画喫茶が探せる「終電なくしたくん」というサービスを追加し、多くのメディアに取り上げていただいたことでユーザーさんも伸びたのですが、このサービスも実体験が元になっています。

私自身、終電をなくすことが多くて、タクシー乗って帰る、漫画喫茶でも行って過ごす、男の人だったらカプセルホテルに泊まる、色んな選択肢がある中で、いちいち色んなサービスを使って探さなくてはいけないのがすごく面倒だなと思っていたんです。

時代が進んでインターネットの世界の中のことはずいぶん便利になったと思いますが、どこかからどこかに移動したり移動させたり、より早くネットで買ったものを受け取ったり、そういった物理的な距離を縮めるということが、今もなかなかできていないという点が一つの課題だと認識してサービスの提供をしています。

たくさんのタクシー配車アプリが出てきている中で、登録事業者1万社を突破できたのは、そのほか多くのタクシー配車アプリと決定的に違う点があるからだと思います。タクシー会社が提供しているアプリでは、その会社のタクシーしか呼ぶことができないんですね。ほかのタクシー会社が入りにくく、入る場合には手数料を払ってシステムを使わせてもらうという形です。

タクシー会社さんからすれば、ライバル会社に当たる会社に今自分のタクシーがどこにいるかというような情報が全て筒抜けになってしまうことがネックになり、UberやHAILなど外国から来たタクシーアプリに関しても、加入するタクシー事業者さんは高い手数料を払わなくてはいけないことが、加入のハードルを上げているようです。

我々の場合はタクシー事業者ではない、一ベンダーとしてインフラだけを作り、あとは参加してくださいという形で提供しているので、その点が一番の差別点になります。

今はタクシーを呼ぶユーザー側が使うアプリもタクシードライバーさんが使うアプリも無料ですが、今後タクシーに乗るときは「たくる」だよね、ということになれば、近くの宿泊施設の広告をアフィリエイトで出したり、クレジットカード決済の機能を付けて決済の手数料を取る、そういったことを考えています。



規制に守られるタクシー業界

「たくる」は典型的な鶏と卵ビジネスで、タクシードライバーさんもお客さんも、どちらもお互い必要としてはいるんですけれども、タクシーに乗りたい人と比べてタクシードライバーさんのほうが需要は少ないかもしれないです。まだまだタクシードライバーさんは流していればつかまるという認識が根強いんですね。

最初は1000台規模の大きなタクシー会社と取り組めたらいいなと思っていたんですが、タクシーの業界って非常に規制に守られていて、ライバルが増えることもなければ乗客が急激に減るわけでもない。こういった新しいことをわざわざやってまで売り上げ増やさなくてもいいやという会社さんが残念ながら多いんです。

なので、最初は地味に横浜駅前に停まっているタクシーに一枚一枚ビラをまいたりもしていました。タクシードライバーさんからは「スマホ持ってないからね」「アプリって何?」なんて言われながら。でも、そうやって実際にタクシードライバーさんと話しをすると何をどう使いたいのかというのが見えてきたことが多いので、話す機会は今もなるべく設けるようにしています。

苦労した分、弊社のようなタクシー会社ではない独立系が運営しているタクシーサービスでは、我々が一番成功していると思います。実際に配車アプリを持っているタクシードライバーさんが一番多いのが私たちのサービスです
今は「たくる」を導入してくれているドライバーさんからはけっこう電話があると言う声を非常に聞くようになったので、それがすごく嬉しいですね。



位置情報サービスの勝ち組に

「たくる」で位置情報アプリをやり始めると、こういう仕組みがほしいという話が意外と複数の運送会社などから出てきたんですね。そこで、位置情報を活用した動態・運行管理に日報機能なども付けた「Smart動態管理」というサービスを2012年から始めました。

このSmart動態管理は今、運送会社さんで主に使っていただいているんですが、そういった業界って驚くほどIT化されていないんです。最初は彼氏彼女の居場所を追跡するっていうアプリを使う方も多かったくらいです。

もちろん、そういった業界向けにシステムを使っている大手の会社さんはたくさんあるんですが、1000万円-2000万円規模のコストがかかってしまい、中小の会社さんが導入するには非常に難しいものになっています。

「たくる」もそうなんですが、業界的に非常に深刻な人手不足なんです。80歳の長距離トラックドライバーさんなんかもいらっしゃるくらい。バスの運転手さんが睡眠不足で事故を起こして、社会問題になったこともあるので、IT化することでより効率化し、中小の運送会社さんの役に立ちたいなという気持ちがすごくあります。

大きい会社に太刀打ちできるのは、小回りが効くとか、新しいところにチャレンジしていくというところだと思うので、弊社としてはとにかく新しいことをやっていこうと思っています。スマートウォッチに対応したアプリも、弊社が業界で初めて作ったんですね。業界のパイオニアという自負を持って行動していきたいと思っています。

ドローンなど去年になって新しい技術がたくさん出てきて、位置情報を使った技術というのは非常に脚光を浴びてきていると思います。位置情報を使ったビジネスというのはまだどこも勝ち組がいないんですね。弊社はそれになれたらいいなと思います。


技術者が輝ける会社を日本から

東大の経済学部を卒業したときは就職氷河期で、ぜんぜん就職できなかったんですよ。50社くらい履歴書を送って20社くらい面接を受け、やっと就職できたのがモトローラという会社だったんです。

そこで営業の仕事していたんですけれども、といっても携帯電話の基地局の営業なので、携帯電話会社さんにひたすら契約書を作ったり、電波を出す鉄塔とか装置を色んなところに埋め込んだり、それに関係することをなんでもやる、というような仕事を4年くらいしていました。携帯電話が世の中に普及するタイミングでインフラ作りをしていたので、それは非常に楽しかったですね。

でも結局、モトローラという会社はなくなってしまい、私もリストラで辞めました。ただその時は私24歳くらいで、退職金もいっぱいもらえたのでカナダに遊びに行ったり、充実したリストラライフを送っていました(笑)

モトローラという会社にいてよかったことは、日本の会社とは少し違う、ダイナミックな風土に触れられたことです。古いことはすぐに捨てちゃうんですね。新しいことをすぐやろうという気概があって、そういった会社を自分でも作りたいなと思っていました。

次の会社は社長さんや経理の方が何をやっているのか、自分で見ることができるくらいの小さな会社に行こうと思い、イギリスのソフォスというセキュリティの会社で4年くらい営業をしました。その会社も今では世界に1000人規模の会社に成長していて、やはりソフトウェアって面白いなと感じたんですが、なぜ日本からはいいソフトウェアが生まれないのかという疑問がありました。ソフォスはカナダやイギリスに開発拠点があったので、実際にそこに行かせてもらうと、そこで働いている人たちはみんな夜の6時には仕事を切り上げていて、今日はBBQやるから帰るみたいな感じで楽しそうに働いていたんですね。



そういったクリエイティブな環境を見るうちに、私もそういう会社を作りたいという気持ちが一層強くなり、オンラインコンサルタントという今のYahoo知恵袋のようなQ&Aサービスを開始し、受託でホームページ制作のお仕事もいただけたので、これなら独立できるかなとひょいっと起業してしまった感じです。

私の大学時代の友人にmixiを作った笠原くんがいて、なにか同じようなことができるかなと勘違いしちゃったところもあるんですが、ほかにも会社を経営してらっしゃる先輩方がたくさんいらっしゃったので、起業に対してはそんなには抵抗感はなかったですね。
私、ゲームなど何か考えて結果に反映されるというのが好きなので、世の中で一番面白そうなゲームは起業かなと思ったりして(笑)

一番苦労した時期は、やはりリーマンショックがあった年とその次の年で、受託の単価がものすごく落ち込んで弊社も景気が悪くなりました。最悪の事態は免れましたけれども、社員さんのお給料も出すのに一苦労という感じでした。その時は本当につまらない願掛けをしまして、景気が悪いうちはミネラルウォーターを買わないぞと。水道水飲めばいいものをミネラルウォーター買うのは贅沢だとあるときに気づいて、自分でもミネラルウォーターを飲める日まで頑張ろうと願掛けしていた時期があります。飲めるようになったときは感慨深かったですね。

国内のIT事情を見ると、SEとかプログラマっていう職業は3Kみたいなこと言われていて、残業も多いし、若いときしかできないとか、給料も安いし報われない職業というようなイメージがすごくあったので、そういったところを払拭するような、技術者が主役であって、世界に日本のITの技術を誇れるような会社にしていきたいと思っています。


[取材後記]

Apple Watchの登場で、ウェアラブル端末と位置情報を連携させたビジネスは一層活性化するだろう。その領域に果敢に挑戦しようとするオンラインコンサルタントでは今、優秀なプログラマを募集しているところだとのこと。日本を代表するようなソフトウェアを開発したいという方は、ぜひ門をたたいてみてはいかがだろうか。

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