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Vol.33 「クラウドファンディングは投資・寄付ではなくマーケティング」 GREEN FUNDINGはマーケティングを再定義する。

インタビュー

日付:2015/3/24

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Vol.33 「クラウドファンディングは投資・寄付ではなくマーケティング」 GREEN FUNDINGはマーケティングを再定義する。

Vol.33 「クラウドファンディングは投資・寄付ではなくマーケティング」 GREEN FUNDINGはマーケティングを再定義する。

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様々なプロジェクトの実施に必要な資金をインターネット上で不特定多数から集めるクラウドファンディング。プロジェクトの内容はアイドルの写真集発売のための資金調達から最先端技術を活用したロボット開発費用の調達まで多岐に渡り、アメリカを中心に世界的な広がりを見せている。日本においては東日本大震災後に復興支援のための「寄付」的な要素を含んだプロジェクトが注目され広まったクラウドファンディングだが、今、資金繰りにあまり困っていないはずの企業もクラウドファンディングを通じて製品やコンテンツを世に送り出し始めている。クラウドファンディングはどこへ向かうのか―。
今回はモール型クラウドファンディング「GREEN FUNDING」を運営する株式会社ワンモア代表取締役CEO沼田健彦氏にお話を伺った。



モール型クラウドファンディング

クラウドファンディング自体は、金融型投資型、購入型購買型、寄付型と大きく3つに類型されると言われています。金融型は従来のファンドみたいなものをインターネットを使って募集しようというもの、寄付型は24時間テレビをインターネット上でやるようなイメージで、見返りは特にありません。

購入型は受注予約のようなイメージで、お金を先払いするリターンとしてモノやサービスが得られる、すなわち起案者側からすると売上のキャッシュを先に得ることによって資金を調達できる手段です。購入型では、ある期限までに目標の金額まで予約が伸ばせないと受注予約がキャンセルされてしまうという「オールorナッシング形式」の仕組みを採用しているサイトが多いです。

GREEN FUNDINGもこの購入型のプロジェクトを掲載しています。購入型のクラウドファンディングサイトは海外ではKickstarter*1)が著名で、日本でも数多く運営されていますが、「モール型」というパートナーとの協業を重視した戦略をとっているのがGREEN FUNDINGの特徴です。

普段、皆様には「クラウドファンディングの楽天を目指している」という説明をさせていただいるのですが、1つ1つのプロジェクトを個別に掲載する直営サイトを持つ一方で、メディアや出版社など21のパートナーさんにフランチャイズ的にシステムをお貸出しし、一つの大きなポータルサイト=モールを作っています。会員データを共有していますので、どのパートナーのサイトでプロジェクトを支援してもGREEN FUNDINGの会員となります。新たにクラウドファンディングサイトを立ち上げようとしている事業者にとってはリーズナブルにサイトが構築できる・モール全体の会員にアプローチできるというメリットがあり、複数のプロジェクトを起案したりする起案者にとっては手数料が安くなる*2)、というメリットがあります。弊社としてはパートナーの皆様のネットワークや資産を活用できるメリットがあります。

*1) Kickstarter...2009年にアメリカで開始された、世界最大規模のクラウドファンディングサービス。
*2)購入型のクラウドファンディングでは集まった金額の10~20%を成果報酬手数料とするモデルが一般的




実際、様々な購入型クラウドファンディングサイトで5個も6個もプロジェクトを立ち上げている方が出てきているんですが、そういう起案者にとってみると毎回20%も手数料を取られるのはコストなわけです。ある程度ノウハウも溜まっていますから、弊社のパートナーになってある程度DIY*3)で起案することで手数料が半分で済むというのは魅力的だと思います。また様々なプロジェクトのコーディネーターみたいなことができる事業者や社内にある案件とクラウドファンディングを掛け合わせて新規事業に取り組もうという企業にパートナーになっていただくケースも多いです。パートナー様へのサービスプランは、弊社のノウハウをご提供し共同でサイトを運用していくプランと、CMSだけお貸しだしするプランをご用意し、直営サイトでの単発での起案相談と合わせて幅を持ってサービスを展開しています。

*3) DIY...「Do It Yourself」の略


日本のクラウドファンディングの手数料は20%が標準なので、10%くらいが標準であるアメリカに比べて高いと言われるんですが、Kickstarterなどは本当にシステムを貸しているだけなんですね。全部起案者が自分で素材を準備し、自分たちだけで考えてプロジェクトを起案していかなければならず、オンラインでのサポートしかないDIY精神が強い欧米らしいドライなサービスです。日本はどちらかというと起案者から総合的なソリューションの提供を求められているように感じます。プロジェクトのプレゼンテーションの仕方、リターンの設計の仕方、支援者とのコミュニケーション、それらをしっかりサポートして欲しいというニーズがあり、GREEN FUNDINGの直営サイト含めた一部の日本のクラウドファンディングサイトは担当者がこういった部分までしっかり入って起案者をサポートしています。

サイト側がそういったサポートをやらないことが一般的なアメリカでは、クラウドファンディングの起案専門コンサルのような会社が独自に立ち上がっていて、そういった会社が初期費用+成果報酬、完全成果報酬型で起案を手伝うというエコシステムが出来上がっています。

クラウドファンディングはマーケティングである


たぶん、日本で購入型クラウドファンディング市場の伸びが遅いのは震災後、一部の人々の間で購入型でもあるにも関わらず、クラウドファンディング=寄付であるという誤った認識が定着してしまったことにあると思います。震災後の日本では、一万円で買えるものがお礼の手紙というような、支援金額に比べて得られるリターンの経済価値が少ない社会貢献系のプロジェクトに支援が集まりやすかった、ということがあったかと思います。単発で支援者は集まるかもしれないけれども支援のほとんどが既存の活動支援者であったり、社会全体への広がりが起きにくかったのだと思います。

GREEN FUNDINGではもちろん社会貢献系のプロジェクトも取り扱っていますが、プロジェクトのプレゼンテーションやコミュニケーションデザインに創意工夫をすることを意識しています。
単なる寄付の代替と考えると結局マーケット規模も小さくなってしまいますが、社会貢献性のある商品開発とか、或いは皆がワクワクするような創造的なプロダクトやコンテンツ開発ととらえると市場は無限で、起案者も支援者も大勢いるはずです。

よくクラウドファンディングでは良いアイディアを思いついてサイトに乗せたら驚くようなお金が集まった、というような、魔法の杖のような話が語られるんですが、実際はそういうケースは多くないです。規模の大小や分野は関係なくやはり想いが込められていて信用がある人やグループが中心となっているプロジェクトに支援が集まります。

さらに、今、大手企業である日産さんと究極のBBQカーを開発するプロジェクトを始めているのですが、使い方でいうと限りなくマーケティングプラットフォームとして進化してきている実感があります。

マスで数億円かけてプロモーションしてマスでマーケティングしているのに失敗した、或いは売れない、と言われることがあります。でもそれってもしかしたら当たり前のことかもしれないですよね。アメリカの成功しているベンチャーキャピタルのワイコンビネーターや500Startupsが、5億円を1社に投資するよりも500万を100社に投資したほうが投資効率が高いって言っていることにヒントがあるんじゃないかと思います。

最近、システム開発もウォーターホールからアジャイルが主流になっているように、プロジェクト・プロダクト・商品開発においても大きなお金をかけて一発勝負するのはリスクが高いということなんだと思います。そんな状況だからこそ、クラウドファンディングを通じた共創みたいなことが大切になる、と鋭い人は少しずつみんな気づきはじめているのかもしれないですね。

たとえばプロトタイプを作った時点で一回クラウドファンディングあげてみると大体、思ったより集まらないぞとか、思ったよりいいぞとか、ダメな原因は価格かもしれないとか、商品そのものにニーズがなさそうだとか、そういった可能性が見えたりします。でも、本部長決済で2億円の予算がつきましたとなると、2億円をもうその場で使うことが決定するので、その商品を出すことありきになってしまう。製品やコンテンツの作り方がクラウドファンディングなどをはさみながらアジャイル化していくというのは、世の流れでいうとあるべき姿なのかなと思います。



最近は、この「金額が集まらなかったら作りません」というよりも、より良い展開をするために起案をするという形が増えています。これこそマーケティング的な使い方かと思うんですが、そういう使い方が海外も含めて増えてきていますね。

ちなみにマーケティングという言葉は、日本では広告みたいなことと同義になってきちゃっているように感じるんですけれども、本来の意味は「マーケットに対して購買活動を工夫する」という意味ですよね。クラウドファンディングは、いわゆるマーケティングという言葉の原義そのものなのではないかと私は思っています。なので、クラウドファンディングとは何ですかといわれれば、「新しいマーケティング」だと答えています。
クラウドファンディングはリサーチであり、プロモーションでもあり、ダイレクトな販売でもあるからです。

AKB商法の考え方がマーケティングの主流に?


クラウドファンディングで支援をしてくれるコアな部分の人たちについて、私もすごく考えていました。クラウドファンディングのプロジェクトには、たとえばハイテクとか映画とか写真とかバイクとかアイドルとか、趣味領域にあたるもの、いわゆる“オタク要素”が強いものが多いのが事実です。
「オタク」という言葉にアレルギーがある人にとっては趣味領域に多額のお金を投じる人たち自体がまだまだ色物で、普通に考えるとネガティブなものと捉えられる傾向があると思うんです。


でも私は、そういった今起っていることに目を向けて理解していくことこそが、真ん中のマーケティングを変えていくことになるんじゃないかと思っています。昨今のオタク消費の盛り上がりのきっかけって何かと考えると、秋元康さんが考えたAKB48なのかもしれないですよね。AKBを応援し、たくさんのCDを買っているファンたちって、もちろんCDそのものやグッズにも価値を感じていると思うのですが、何より「参加」「承認」「特別感」にお金を投じているんだと思います。
一緒に成功の階段を上っていくような感覚、本気で「ありがとう」と言ってもらえる体験、早くから才能を見出したいたことへの満足感。そういったものにお金が払われている、ということだと理解しています。

クラウドファンディングの分野に関わらず、今、AKB商法と言われていたような新しいマーケティングが実は一般的なマーケットでも有効であることが分かってきていて、広まっているように感じます。カメラマンがトークイベントをやって写真集が売れる、或いはセリフを一緒に絶叫しながら見る映画が局所的にヒットするみたいなことが多く見られます。

GREEN FUNDINGでは会員数2万人をめでたく超えたところです。アプリとかだと100万ダウンロードとかになっても、実際にアクティブな人はそこまでいないかもしれませんが、我々のユーザーは、クラウドファンディングを通じて、心をこめてお金を本当に出してくれた人たちなので、継続的なビジネスを可能にしてくれる濃いコミュニティになってきていると思います。

支援をしてくれた人だけに特典が付与されるというクラウドファンディング特有の特別感みたいなものが更にコミュニティを刺激して、起案者(企業)と支援者の濃いコミュニティができあがり、プラットフォームにものれんが生まれていく。

今後、おそらくマーケティング研究者みたいな方がそういったコミュニティを活かしたマーケティングを「○○モデル」と綺麗な言葉でくくってくれるのかなと思います。クラウドファンディング的、或いはAKB的な、リアルな接点を持つことを含めた新しいやり方が今の時代にとって主流なんだよということが浸透していく気がします。

何かを売り出していくときにCMを打つお金はないから100万円かけてコンセプトムービーを作り、クラウドファンディングにあげましょう、いったん反応を見て、確信がもてたらさらに開発や制作を進める。そして初期の支援者が中心となり、ファンが自発的に広げてくれる、みたいなことが主流になっていくことは、十分にあり得ると思っています。

最初はある種「オタク」マーケットから始まった手法であっても、効果が認められて一般的なマーケティング活用が進めば、今後さらに加速度的にクラウドファンディングの活用事例は増えていくでしょう。



エコシステムの構築とCCCグループとの提携


日本の市場が盛り上がるには、クラウドファンディングのプロジェクトをしっかりと取り上げてくれるメディアが必要だと思っています。Kickstarterが盛り上がっているのって、実はテックランチやギズモードなど、日本でいうとヤフトピ並みに巨大なトラフィックを持っているメディアが頻繁にプロジェクトを紹介するからなんだと推測しています。ギズモードに掲載されると一発でドカンと支援が集まるんですよね。クラウドファンディングも定量的に見れば結局トラフィック×コンバージョンで支援額が決まっています。要は何人がプロジェクトを見に来てくれて、どれくらいの確率で支援が入るのか?という構造ですね。ですので、ヤフトピ級とは言わないまでも、日本でも今後どんどんトラフィックがあるメディアが育ち、そういったメディアがクラウドファンディングのプロジェクトを紹介してくれるようになると、クラウドファンディングサイトのほうにも自然にトラフィックきやすくなるかなと。

我々自身の課題としては、のれんを強化していく必要があると思っています。大きな資本を持っているサイバーエージェントさんや、或いは朝日新聞さんなども協業モデルでこの市場に参入してきています。大手企業が入ってきてくださったことで信頼性が出てきて恩恵を受けている一方、脅威も出てきています。莫大な資金と営業パワーなどはないからこそ、GREEN FUNDINGはこれまで続けてきたさまざまな企業さんとのパートナー戦略をしっかりと広げつつ、自らののれんをさらに強化して差別化していかないといけないと考えております。

その戦略の中心になっていくのが1月に決まったCCCグループ(TSUTAYAグループ)との業務提携です。具体的な内容は近々にプレスリリース予定ですけれども、この先の展開としてCCCグループが持つ5000万人のT会員データと連携したレコメンドを中心に、Tポイント連携、T-SITEを使った販路開拓支援、クリエイターへの新しい投資戦略みたいなことも検討しています。

クラウドファンディングってグーグルなどで検索して支援するって方ほとんどいないので、いわゆるメディアと連携したビッグデータに基づいたレコメンドが大事になってくるだろうと考えています。


例えばある俳優が好きであれば、その俳優が出演する映画のプロジェクトをレコメンドすると支援してくれる可能性が高いので、会員の嗜好に合わせたニュースを流す中でネイティブアドのような形でクラウドファンディングへの支援を促す、というようなことをやっていく予定です。

その足がかりとして、まずはCCCグループさんと共同でクラウドファンディングに特化したオウンドメディアをリリースします。将来的には代官山や湘南にリアル店舗がありますので、支援者限定のイベントですとか、その後の限定セットの販売みたいなことも実施してみたいですね。それ自体ニュース化してもう一回、ぐるっとまわすみたいなことも可能かと思っています。

面白いのは、今まではインターネットはすべて検索からスタートし、暇つぶしにヤフーニュースやMSニュースを見ていたと思います。しかし今、電車に乗るとほとんどの人が暇つぶしでソーシャルメディアを見ている。ソーシャルメディアへの接触ってテレビのながら見と感覚が近いように思います。なので、いわゆるSEOやリスティングというのは、マーケティング的に言うと検索こそが全ての時代であったからこそ、限定的に賑わいましたが今はクラウドファンディングに限らず、Facebookやtwitterで流れてきたときにクリックさせられるかっていうところも大きな勝負どころになってきていますよね。

クラウドファンディングでは、動画を載せた方がお金が集まるといわれているんですが、おそらく動画が小さなCMのような役割を果たしていて、動画があることでプロジェクトの魅力度を高められるからだと思います。つまり動画があることでシェアされたりシェアされる先の人が見に来てくれるようになる。単なるお金集めのプレゼンでは広がりませんよね。

マーケティングの世界では当たり前でしたが、そういうコミュニケーションのデザインまで考えるクリエイティビティというものが求められてきている気がしています。今後はクラウドファンディングを成功させるために、プレゼンテーションに小さい投資をし、クリエイティブにお金をかける、というような時代になるのは間違いないです。

GREEN FUNDINGのこれから


僕自身は「クラウドプロデューシング」って心の中で言っているんですが、そういったコンテンツ作りやプロダクト作りのフロー全体をバックアップしていくようなサービスにしていきたいと思っています。
あとは日本が持つコンテンツやプロダクトの海外市場向けクラウドファンディング起案ですね。今はKickstarterとIndiegogoへの起案サポートという枠組みでやっていますけれども、将来的にはアジアなどに自分たちで出て行くことも踏まえて、決済システムを整えたりしながら、海外の人からも支援していただけるようにし、海外のサービスともパートナーシップを結んで、案件の交流をできるようにしていきたいと思っています。


[取材後記]

クラウドファンディング市場は今、右肩上がりの成長を続けているが、日本人は投資意識が低いと言われるし、資金が集まらなかったときにどう保障するかなど、課題もある。
でも、世の中を変えるようなサービスなりプロダクト作りに自分も参加できるとしたら、ワクワクしないだろうか。
GREEN FUNDINGからそんなイノベーションが生まれることを、期待したい。



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