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インタビュー

2015年3月2日

Vol.31 いよいよ始まるIoT時代、世界初の後付スマートロック「Akerun」を開発したフォトシンスの挑戦

2015年、IT業界における注目ワードの一つが「IoT」(Internet of Things)だろう。インターネットとモノが繋がることで、生活がより便利になる-そんな理想が今やっと現実になりつつありそうだ。
今回は、スマートロック「Akerun」を開発する株式会社フォトシンス代表取締役社長河瀬航大氏にお話を伺った。


----Akerunについて教えてください。

すごく簡単に言うとスマートフォンで開け閉めができて、スマートフォンと連携することで様々なデータを取得することもできるスマートロックです。


ただ、私たちはInternet Of Thingsからさらに進化させて、Soul Of Things、全てのモノに魂を宿らせるというミッションを掲げて取り組んでいます。
Akerunにしても、ただインターネットと繋がる鍵であるとか、ドアに付けるガジェットということではなくて、たとえば僕が帰ってきたときに、いつもその曜日のその時間に見ている番組を自動でつけてくれたり、お風呂もいつものタイミングで沸かせてくれたり、スマートフォンとつながることで、その人専用にカスタマイズされたアクションを促す制御装置みたいなものになればいいなと思っています。

今は価値検証のための実証実験をたくさんさせていただき、本当にお客様が価値を感じるところはどこなんだろうということを追及しながら精度を上げていっている段階です。

Akerunによってなくせるものがたくさんあると思っています。たとえばアルバイトのタイムカードもなくせると思いますし、社員がランチのときにもぶら下げているICカード、あれもスマートフォンとAkerunで代替できてしまいます。
あとはホテルのフロントも鍵の受け渡し業務と決済しかしていないのですが、決済はもうwebでできるし、鍵の受け渡しも、もはやAkerunがあれば必要なくなります。

不動産でも、オーナーがいて管理会社さんがいて、仲介業者さんがいてエンドユーザーがいますが、内覧をサポートする役割の仲介業者さんは内覧をさせる度に、管理会社に事前に鍵を受け取りに行かなくてはいけません。今はwebサービスによって家がどこにあるかなんてユーザーは分かっているわけで、鍵のやり取りをスマートフォンでできるようにすれば、仲介業者様のお仕事も減らせるかもしれません。こうした取り組みは今、Home’sさんと始めているところです。

----なぜ鍵に着目したのでしょうか?

一番は、ユーザーとして不便さや課題を感じていたことが大きかったと思います。自分のカバンを見渡しても最近はノートもペンも持ち歩いていなくて、それこそ全部Macでいいし、Kindleがあれば本も持ち歩かなくていい、音楽もスマートフォンで聞けるという状況の中で、鍵だけがずっとあの形で必ず鞄に入っている。取り出すのが大変だったり、ドアで必ず一時停止をしなければいけないという不便さを解決できないかなというところから入りました。

タイミングとしては、インターネットで色んなデバイスをハックするというのが一般的になってきて、電気とか家電を制御するというのは当たり前になっていましたが、電源が入らない鍵、ここはまだ誰も手をつけていなかった。その時に、ちょうどBLE*1)という規格ができて、比較的数年単位でもつくらい、電池を消耗しなくてよくなり、後付型も実現可能になりました。
テクノロジーが変わってきた瞬間に、それを生かして課題を解決するには今しかないと思ったんです。勝手に責任感を感じて、先陣切ってやっていくしかないと。

*1)... Bluetoothの拡張仕様の一つで、極低電力で通信が可能なもの。従来の1/3程度の電力で動作することができ、ボタン電池一つで数年稼働することができるとされる。



もともとスマートハウスに興味があったので、その入り口を抑えるためのスマートロックという発想も面白いな、というのも最初のスタートとしてありました。

メンバーはもともと半分以上私の知り合いで、学生のときの知り合いだとか色々なつながりがあり、それこそこういったIoTみたいなところをやっていた元大手家電メーカーのメンバーもいるんですが、そういったメンバーを引っ張ってきて、彼らもこのアイディアをイケてると感じてくれて、プロジェクトがスタートした感じですね。

スピード感が勝負だと思っていましたし、発想からプロトタイプになるまでは半年くらいでした。幸い周囲にモノづくりをする人たちを応援する環境があったり、3Dプリンタなどもどこでも使えるような状況なので、プロトタイプ自体はすぐに出来上がりました。

私たちの方でコンセプトから設計、デザインまで全部やってしまって、その後は基本的に工場にお願いして、モノが届いてくるような状況です。最初の試作品を創る時間をどれだけ縮められるかというところは、モノづくりにおいてけっこう大きいと思いますが、設計図さえあれば、私たちのオフィスでも3Dプリンタを使ったり、アルミの削り出しも、このオフィスでできてしまうんですよ。こういう試作品自体は昔と比べてすごいスピードで仕上がってきていると思います。色んな経験を持っている人たちを集めてさえいれば、モノづくりの環境はすぐに整えられますね。

フォトシンスが目指すIoT


Akerunみたいなものは、大手メーカーが出せる商材ではないと思うんです。メーカーはサービスに何が求められているのかを考えるときに、モノというソリューションをベースに考えてしまうと思いますが、IoTはソフトウェアの開発をし切れないとあまり価値が生まれません。

鍵が開け閉めできてもユーザーはそんなに嬉しくなくて、システムと連携して初めて、これは便利だねという体験に繋がると思います。そこまで提供するにはシステム開発会社であるだけでなく、営業会社である必要もあって、地道にユーザーが求めていることを追及しなくてはいけません。

これまでのIoTもあまり個人的には面白くないというか、今までのM2Mと何が違うんだろうと思っていました。家電が制御できるとか、ビッグデータで省エネできますとかって、ワクワクしないというか。それによって、どんな便利なことが起き、どんなソフトウェアの開発ができるのか、ということを考えると、それこそ先ほどのスマート内覧システムのようにスマートフォンと内覧サービス、この2つがパッケージになることで強固なIoTサービスになりますし、ホテルの宿泊に関しても決済システムや予約システムと連携させて、部屋番号を割り振るっていうシステムを作り込み、Akerunとセットになることで初めて本当に便利なIoT商材になると思うんです。


これまでメーカーはモノを作って、それをどう制御できるか、いかに効率よく省エネして便利に操作するかっていうところに目がいっていたと思うんですが、IoTの会社として、私たちの会社にはソフトとモノづくりの両方のメンバーがいるので、Akerun+ソフトウェアを一つのパッケージとして販売することができることこそが、我々のIoTの形かなと思っています。

当然その結果、最終的にはモノではなくてソフトになる可能性もあります。
究極、僕らは鍵が不便だと感じてやっているので、鍵がなくなる、もっと言うとドアがなくなることが最良の課題解決です。そして実際にそちら側に振っていけるというか、課題に対して解決しにいくことを最優先に考えて、ソリューションがモノである必要はないとまで考えられるところが強みかなと思います。

今はAkerunに関連するwebサービスっていうのを色んな企業と協力しながら作っているフェーズで、そこに力を入れています。モノづくりとITを両立してできる会社ってすごい強いなということを肌で感じていて、技術系のメンバーもゲームやソーシャルメディア、マッチング系は作り飽きていたり、スマートフォンアプリで起業したいと思っても飽和状態で難しい状況だと思うんですね。なぜかというと、PCとかスマートフォンアプリは、限られたデバイスの中でソフトを作っていたから限界がきていたからだと思うんです。

なぜ、IoTがこれだけ注目されているかと言うと、ウェアラブルとかメガネを付けることによって、また全然違うビジネスができてくるからです。Akerunもその一つの例で、これってすごくシンプルで、サムターンを回すか、入退出履歴のメモリを持っていてログを取る、この2つしかやっていないんです。でも、この2つができることで先ほど言ったように人件費が減ったり、課題解決のソフトが無数にできていくんです。

化学オタクでした


僕は自然に恵まれた種子島で生まれ育って、そこでしてきた体験を守りたくて環境問題にはずっと興味を持っていました。小学校のときから宿題は理科研究しかしていませんでしたし、高校でも化学部に属するくらい化学オタクだったんです。



大学は筑波で放射線の基礎研究をしていたんですが、その成果が世の中に出るのってすごく遅くて、研究室のスピード感がすごく嫌だったんです。本当にぬるいんですよ。研究しながら、10年後20年後はすごいことになりそうだなと感じつつも、それが世の中を本当によくしていけるのかというビジョンが見えなくて。専門的なところにいけばいくほど、本当に世の中の役に立つんだろうかと自問自答し始めました。

そこから幼いころから関心を持ってきた環境問題に立ち返ると、環境問題って加害者と被害者の距離が離れているから起きていると思うんです。つまり僕らがこういう豊かな生活を送っている一方で東南アジアでは森林が伐採されて困っている人たちがいるかもしれない、未来の子供たちも困っているかもしれない。あまりにも距離が離れているから共感し得なくて環境問題が進んでいると考えていて、そういうところから変えていかないと研究も動かない。だから、最初に繋がるっていうところが重要だと思って、ソーシャルメディアをやっているガイアックスに入りました。

モノと人とが繋がれば、もっとパワフルに環境問題が良くなるかもしれないと思っています。いろんなビッグデータが貯まって人工知能AIが発達すると未来の子供たちと会話ができるようになるかもしれませんよね。そうなってくるとより広い視点で物事を考えられるようになってくると思うし、もっと効率的に動けるようになるでしょう。

理想は地球の反対側で苦しんでいる人がいたら、それに共感して自然に動けるような人間であることです。自分だけではなく、真の豊かさを追求できるよう色んなものを繋ぎたいと思っています。
Akerunは、ちょっとした入口にすぎないんです、まだまだ。



[取材後記]

IoTという言葉はずいぶん前からもてはやされてきたが、その言葉が連想させる理想と現実は長らくかけ離れてきたように思う。
Akerunの登場は、その理想を一気に手繰り寄せ、リアルな生活の利便性の向上を予感させ、これまでスマートフォンという小さなデバイスの中で繰り広げられてきたビジネス領域を一気に拡大させる可能性をヒシヒシと感じさせる。
日本のモノづくり復権の鍵も、IoTベンチャーが握っているのかもしれない。





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