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コラム

2015年10月21日

MVNO3社が語った格安SIM市場の今と拡大戦略 -MMD研究所主催 MVNO勉強会報告-

執筆者

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MMD研究所

MMD研究所は10月19日、「MVNO3社に聞く、格安SIMの現状と未来」と題した記者向け勉強会を開催しました。

今回、登壇いただいたのはOCN モバイルONEを提供するエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の岡本健太郎氏、BIGLOBE SIMを提供するビッグローブ株式会社の二宮可奈氏、mineoを提供する株式会社ケイ・オプティコムの津田和佳氏。モデレータは当研究所所長である吉本が務めました。

(左からOCNモバイルONE岡本氏、ビッグローブ二宮氏、mineo津田氏)



会場にはwebメディアや新聞記者、テレビ局、計40社以上にお集まりいただき、関心の高さを伺うことができました。



冒頭、吉本より20日にMMD研究所が発表した「2015年10月携帯端末購入に関する定点調査」から見える格安SIM市場の現状について発表しました。



当研究所で行っている定点調査からは、2013年以降、格安SIMをメインとするユーザーが堅調に推移してきていること、またその性年代別の内訳を見てみると、当初はITリテラシーが高いと言われる30代、40代男性の割合が多かったものの、今年10月の調査では、20代の男性、そして女性の比率が高くなってきていることが分かります。

しかし、まだまだスマートフォンユーザーのうち格安SIMをメインとしているユーザーの占める割合は3.9%にとどまっており、市場全体を盛り上げていくには、まだクリアすべき課題があるものと考えられます。

こうした現状をどう捉え、どう克服しようとしているのかを格安SIM事業者に聞き、市場全体を盛り上げる一助となれば、というのがこの会を主催した目的であり、願いでもありました。



吉本からのプレゼンに続き、各事業者からサービス等について説明いただいた後は、MMD研究所から設けた4つのテーマを軸にお話しいただきました。

①格安SIMを使う人はどんな人か


現状のユーザープロファイルについて聞くと、各社とも当研究所の調査結果からも出ている通り、やはりまだまだ30代40代男性ユーザーが多いとのことでした。また、BIGLOBE SIMでは、特に主婦層の女性ユーザーがわずかながら増加する傾向が見られ、ユーザーそれぞれかなり勉強して加入されている、とのお話もありました。

②格安SIM人口拡大には何が必要か


このテーマは①とも連動するところで、やはりITリテラシーが高くない層への積極的なリーチ、というのが各社に共通した課題であるようで、OCNモバイルONE岡本氏は、ITリテラシーが高くない層へのリアルな接触をどう増やすかが課題と話しました。OCNモバイルONEはDVD・CDのレンタル業を行うゲオホールディングスと業務提携し、ゲオの店頭に即日受渡カウンターを設置するなどの取り組みを開始していますが、こうした消費者とのリアルな接点を持つ他業種とのコラボを今後も進めていくようです。

BIGLOBE SIM二宮氏からは、「やはり若い層を取り込みたい」という発言があり、例えばコンテンツを大量に消費する若者のスマホライフにあわせ、大容量プランを設けるなど、若者を意識したサービスの充実に注力していきそうです。

mineo津田氏は「格安スマホ」という言葉が誤解を招いている現状があり、かといって「MVNO」という言葉もユーザーには分かりづらく、「他の言葉が出てきて欲しい」とのことでした。また、ベッキーさんや有吉さんを起用したテレビCMについて、mineoブランドの認知拡大には成功した一方、サービス内容が十分に伝え切れなかった側面があり、「安さ」以外の特徴をいかにリテラシーの低い層へ訴えていくか、が課題となっているようです。



③格安ケータイの端末はどう考えるか


格安SIM事業者として端末での差別化は考えているか、という質問に関しては、端末での差別化は難しく、やはりサービス面での差別化が重要と考えている、との回答でした。

mineo津田氏は端末調達の難しさについて、国内メーカーからは数十万台単位の発注が求められることもあり、手ごろな価格の海外の端末を揃えた方が、格安SIMユーザーの安さを求めるニーズに応えられるとの見解を示しました。

OCNモバイルONEはユーザーのニーズが多様であることから現時点ではオリジナル端末の調達は行わず、売り場と連携したセット販売を重視しているとのことでした。

④2016年はMVNOやケータイ市場、業界はどうなるか


今後の市場に関しては、業界全体での盛り上げ、安かろう悪かろうという消費者が持つ懸念の払拭とサポートの充実、各サービスの差別化などが市場拡大のポイントとして挙げられました。

また、OCNモバイルONEの岡本氏は今後の新規参入に関して、鈍化していくのではと予測、一方で有料会員を囲っていたり、消費者とのリアルな接点を多数持つサービスが参入すれば成長できる可能性があるのでは、と指摘しました。





今回、3社から出た課題や今後取り組もうとしている方向性は、他の多くのMVNO事業者に共通するものではないかと思われます。奇しくもこの日、総務省では安倍首相の発言を受け、携帯電話料金の引き下げ策を検討する有識者会議の初会合が開かれていました。mineoの津田氏は総務省など第三者的立場からの後押しも必要とおっしゃっていましたが、今後この市場を一層盛り上げていくため、MMD研究所も引き続き様々な調査、イベントを実施していきたいと思います。

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