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2015年10月27日

Vol.44 MVNOに新たな選択肢 スマホを使うだけで寄付ができるアイストリームの支援SIMとは?

執筆者

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MMD研究所

今年7月、ユニークな特徴を備えた格安SIMの販売が開始された。その名も「ファンダム支援SIM」。今年5月にSIMロックが解除されてから、その安さを訴求した格安SIMが注目されているが、一層の市場拡大のためには価格面だけでなく特徴を持ったサービスの充実が求められている。ファンダム支援SIMの登場は、これまで登場している格安SIMとは一線を画すコンセプトを持つものだ。
今回はファンダム支援SIMを提供するアイストリーム株式会社 代表取締役、谷島伸幸氏にお話を伺った。





----ファンダム支援SIMの特徴を教えてください。


ユーザーの使い勝手の面から言うと、ユーザーがいつでも自由に必要な利用量に応じてデータ利用量を設定することができる点と、グループ管理が手軽でデータのシェアも自由にできるため、非常に経済的な運用ができる点が特徴です。





シミュレーション機能というものがあって、ユーザーはこのシミュレーションに基づいてリミッターを設定することができます。例えばチャットは何通くらい使いたい、Webページは何ページくらい閲覧したい、動画は何分見たい、電話は何分したい、ということを細かく設定することで、月額料金のシミュレーションができるようになっています。

このシミュレーションに基づいて上限を設定しますが、この上限もいつでも変更可能で、実際のデータ利用量がこの上限に達しなかった場合にお支払いいただくのは使った分だけです。また、設定したリミッターに近づいたとき、そしてリミッターを超えたときにはメールで通知が送られてきます。

また、家族のグループを作れば、家族一人ひとりのSIMを管理することができて今、誰が何ギガバイト使える設定になっていて、その時点でどのくらい利用しているのか、などが一目瞭然です。

従来のキャリアのプランは実際のデータ利用量に関わらず月額いくらという形で固定になっていますが、我々のサービスではいつでもどんな時でも毎日でもデータ利用量の上限を変えることができるので、家計を預かる主婦の方には管理がしやすいと歓迎されています。

また、ファンダム支援SIMは19枚まで一括購入していただくことができ、それをグループで割り振りすることができるので、中小企業などでの運用にも便利です。たとえば通信料を多く使う営業部、あまり使わない技術部、経理部、といった形でグループを作っていただくと効率的な運用ができるかと思います。

もう一つの特徴としては、我々アイストリーム株式会社が「ファンダム支援SIM」に関する事業から得る純利益のうち「株主配当」に相当する部分を100%、NPO法人の支援に充てられる、という点が大きな特徴です。



----十分な利益が出ない場合というのも考えられますよね。



もちろん、我々も格安SIMだけで収益をだそうというわけではないんです。寄付先となるNPO法人が集まるプラットフォーム(ファンダムビレッジ)があり、そこから別途、支援金を募る仕組みもあります。



9月から運営を開始しているファンダムビレッジは社会支援団体が参加する村です。およそ1ヶ月で50弱の団体が手を上げてぜひ参加したいと言ってくださっていて、そういった団体を一つに集めることによって宣伝訴求効果を高め、ファンドレイジング*1)を行えるようにしていきます。Facebook、Twitterとの連携は当然として、アフィリエイト機能も付けて、ファンダムSIMユーザーからだけでなく企業からの支援も受けられるようになっていきます。各団体で独自の広告を自由にうっていただいて構わないですし、それに対して我々も貸し出し費用や年間費は全くいただきません。

*1)ファンドレイジング...NPOが行う財源獲得の総称



ファンダムSIMのユーザーはこの村に集まるNPO法人の中から支援したい団体を選んで寄付することができ、特定の団体を選ばなくても運営側でプールして均等に配分していくこともできます。これは我々の利益ではなく、NPOの代行として集めた募金ですという形でプールするものです。こうすることによってファンドビレッジに参加してくださるNPO法人に対して、寄付金が行き渡らないということはない仕組みになっています。

来年以降、ファンダムビレッジ内ではファンダムSIMを利用するNPO支援者の方たちからの団体を応援するコメントが掲載されたり、集まった支援金の額も掲載されます。また、マイページ上では、そのファンダムSIMユーザーがどれくらいの支援をしているか、ということが具体的に分かるような仕組みもできます。たとえば恵まれない子どもたちに給食を何杯、ワクチンを何本支援した計算になります、などですね。そういった形でファンダムSIMユーザーとNPO法人を繋げ、活動を盛り上げていきたいと思っています。また、将来的には認定されたNPO法人でなくても、我々の審査基準を満たした団体であれば参加いただけるようになります。



----なぜこのような仕組みを持った格安SIMサービスを提供することになったのでしょうか。



我々としては、SIMを売って利益を得るということ以上に、社会支援に対するリテラシーを高めていくことに軸を置いています。実は私はずっと外資系の企業に勤めていて、アメリカと日本の文化の違いを目の当たりにすることが多かったんですが、日本とアメリカでは寄付に対するマインドが根本的に全く違うんです。

日本での寄付は1兆円規模ですが、アメリカは22兆円規模です。そのくらい、同じ先進国であってもマインドが違います。これだけの違いは、いつも目に触れるものでないと払拭していけないのではないかという意識がありました。

資金調達の考え方として、支援者を三層に分けて考えるドーネーション・ピラミッドという概念があります。赤い羽根募金のように街頭に立って労働に比例して得る募金を裾野の部分と考え、これをいかに床上げするか、というのがNPO業界全体の課題としてあるんです。

そして、この床上げした真ん中の部分が何にあたるかというと、マンスリー募金なんです。一回参加していただいたら、そこから自動的、継続的に支援してもらう形です。今、それが一番簡単にできるものって何かと考えると、やはり誰もが持っているスマートフォンなんですよね。スマートフォンの通信料の一部というのは、一人ひとりの額は小さいかもしれないですが、積もっていけばかなりの量になります。

一方でドーネーション・ピラミッドの一番上は何かというと、年に一度くらいの大企業や、政府からの助成金にあたるんですけれども、ここも煩雑な申請をしなければならず、実績を作って時間をかけて信頼関係を築かなければいけない世界で、ハードルが非常に高いんです。

我々は、この上(企業)の層からも下(一般の生活者)の層からも働きかけることができるような仕組みを作っているわけですね。ファンダムSIMユーザーの利用料金からの支援、企業からの協賛、これらがマンスリーで継続的に続くような仕組みは、ファンダムビレッジを中心に今後ますます拡大させていく予定です。

こういった形でプラットフォームを育てていく一方で、ビジネスとしては株式会社の収益モデルを持ったBtoBの事業が鍵になっています。BtoBになると、そこにはIoTやM2Mがあって、拡張性のある世界が広がっているんですね。

先ほどお見せしたように、ファンダムSIMユーザーのマイページでは、グループ内の一人ひとりのSIMが管理、コントロールできます。そういった管理機能を充実させていくと、toB向けのダッシュボードができていきます。そこではユーザー情報が逐一可視化され、ネットワークのオペレーション画面が出来上がり、効率的な管理が可能になります。我々はこうしたtoCビジネス、toBビジネス、社会支援プラットフォーム、この3つを有機的に育てていこうとしている、ということです。



----格安SIMの課題として、ユーザーとの接点の確保がよく言われますが、ファンダム支援SIMの場合はいかがでしょうか。



社会支援に重点を置く大手以外の携帯ショップであったり、社会支援を念頭に置く企業さんとコラボしていく予定です。また、ファンダムビレッジに参加するNPO法人そのものが代理店機能を果たしてくださると思います。日々NPO法人のみなさんが開催されているセミナーや講演会で時間を設けてこういったサービスがあると訴求することもあります。

ただ、やはりまだまだ格安SIMに対する理解が深まっていないことも肌で感じるので、MMD研究所さんのようなところで、どんどん盛り上げていただきたいと思うところです。

----読者の皆さんにコメントなどあればお願いします。



三年後に数十万回線というところを目指していきます。ファンダムSIMを購入いただき、日本を潤す一員としてご協力いただければ幸いです。


[取材後記]

スマートフォンの利用料金に対する不満を抱えながらも現状の格安SIMユーザーはまだわずか3.9%に過ぎない。だからこそ、これから先、格安SIMへの理解が深まり、当たり前のように格安SIMへの乗り換えを考えるようになったとき、もともと高い料金に慣れた日本人は、どうせなら社会貢献につながる仕組みを選択しようと思うかもしれない。ファンダム支援SIMはそうした社会貢献システムや月額の安さだけでなく、データ通信の管理のしやすさ、という面でも秀逸なシステムだと感じた。これから格安SIMへの乗り換えを検討されている方はぜひ、このファンダム支援SIMも選択肢の一つとして考えてみてはいかがだろうか。

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