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Vol.43 エンジニア出身起業家が率いるトランスリミットはゲームアプリからシリコンバレーに挑む

インタビュー

日付:2015/9/17

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Vol.43 エンジニア出身起業家が率いるトランスリミットはゲームアプリからシリコンバレーに挑む

Vol.43 エンジニア出身起業家が率いるトランスリミットはゲームアプリからシリコンバレーに挑む

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広告を一切打たずにリリースからわずか1ヶ月で1,000万ダウンロードを突破し、ユーザーの約95%が海外ユーザーというユニークなゲームアプリを提供するベンチャー企業が渋谷にある。昨年、LINE Ventures株式会社が運用するゲームファンド「LINE Game Global Gateway」の出資先第一号に選ばれた株式会社トランスリミットである。
2014年5月に第一弾としてリリースした「Brain Wars」は小学生でも出来るような計算ゲームやパズルで世界中のプレイヤーと対戦することができるリアルタイム脳トレゲーム、
今年7月に第二弾としてリリースした「Brain Dots」は、様々なツールで線や図形を書き込み、赤と青の2つのボールをぶつけることでクリアするゲームだ。
国内では例を見ない勢いで伸び、世界中のユーザーを楽しませるトランスリミットは、2人のCTOがいるなど、国内では珍しい体制を敷いている。大ヒットアプリ誕生の背景と会社の理念を、代表取締役社長の高場大樹氏に伺った。






----昨年5月にリリースした『Brain Wars』は1,300万、今年7月にリリースした 『Brain Dots』は既に1,000万ダウンロードを突破しました。広告も一切打っていないとのことですが、秘訣は何でしょうか?



誰でも遊べるようなアプリにしたこと、が秘訣ですね。プロモーションは、苦手なんです(笑)

前職のサイバーエージェントで国内外の様々なサービスに携わった経験から普通に作ったら絶対に勝てないというのは身にしみていました。

なので、はじめから世界各国に広まるポテンシャルのあるものを目指してノンバーバルに拘り、説明しなくても誰もがすぐにルールを理解してプレイできるシンプルなアプリを作る、というところを強く意識していました。



面白いものを突き詰める、というのが一番大切なことだと思っています。面白いものと出会ったら他の人に勧めてくれるはずなので、簡単に勧められる仕組みも用意しています。

これまで一度も広告出向はしていませんが、スコアをSNSでシェアする仕組みであったり、フェイスブックアカウントでの登録を推奨してフレンド対戦を促したり、人が人を呼ぶ仕組み、というのは最初から強化しています。

結果的に、誰もが簡単に遊べて面白いから色んな方が認めてくれて、メディアの方にも取材いただきましたし、App StoreやGoogle Playもフィーチャーしてくれたことで、1,000万超というダウンロード数になったのだと思います。コンテンツ自体がおもしろければ、みんなが認めてくれ、どんどん広めてくれるんです。マーケティングって非常に大事ですけど、いいプロダクトを作るということが、最大のマーケティングだと思っています。

この市場ではゲームを作るのに1~3億円かけて、マーケティングコストに2~3億円かける、というのが常識になってきていますが、私たちスタートアップは、そんなコストはかけられない。だからこそ、どういった戦い方をするか、知恵を絞ってきたつもりです。

コストが先行しても、面白いものが作れなければ意味ないと思うんですよ。やっぱり核をしっかり構えることが大切で、その後にいろんなことを考える。それをどれだけ本気でやれるか、ではないでしょうか。

----世界で支持されるポテンシャルのあるアプリとはどのようなものでしょうか?



私たちは言語や文化など、国・地域によって常識の変わるものは極力排除したものを作っています。たとえば、美少女系のゲームを作るとしても、アメリカ人と日本人の美少女の感覚は違います。戦国ものを作ったとすると、日本では流行っても世界では流行らない可能性が高い。そういった文化依存のものは一切作らないと決めています。

でも、リリース前に色んな国の人にプレイしてもらって、そのリアクションを見る、というようなユーザテストはあまりしていないんです。どの国の人でも面白いだろうなと思えるものしか作らないようにしています。



直感的に遊ぶことができ、且つ自分が面白ければ、どの国の人でも面白いはず、という感覚ですね。なので、国によって好みが分かれるだろう、というものはまず作らないですし、そういったところは本当に気をつけながら作っています。

結局、面白いものに言葉はいらないんですよね。Flappy Birdなど、言葉がなくても世界に通用するゲームアプリがある、ということをどう捉えるか。たまたま流行っただけと思うのか、そういう要素があって流行ったと捉えるのかだと思います。

----そういったアプリをどのように作っているのでしょうか。



「Brain Wars」はトランスリミットを立ち上げて1つ目のプロダクトだったので、メンバー4人でのリリースでした。初期のゲームの内容は私自身が企画していましたね。

アップデートの度にミニゲームが1つずつ追加されるのですが、それは実装者に考えさせています。実装する人が面白いと思って実装しないと面白くならないと思うんです。

「Brain Dots」はローンチまで4ヶ月でした。最初の1ヶ月は2人でプロトタイプを作っていて、ある程度できたところでデザインを本格的に考え、面白いイメージが湧いたのでGOサインを出しました。そこから追加で3名アサインし全体感を作った後に全員で取り掛かりました。まだ小規模の会社ということもあり、攻めるときは全員で攻めに行きます。リリース日は決めますが、ズレますね。平気で1ヶ月とか。

スタッフは今20名ほどいますが、企画をする担当、という形で固定はしていません。随時アイディアを出していくような感じで、会議もしないです。急に思いついたものを話し合ったりして、実装ベースでいろいろ決めています。

新しいアプリを作るときにはいろんなものを作ります、面白いかどうかは別として、面白くなりそうだなというのを。作ってみてプロトタイプを見て、これこうやったら面白いだろうという改善を繰り返して仕上げていきます。

----トランスリミットはCTOダブル体制ですが、珍しいケースですね。



インターネットサービスは技術者が主役だと思っているんです。しかし国内のIT企業は技術者とのコミュニケーションがうまく取れずに、そうした人たちを無視した戦略を取りがちのように感じています。

でも世界のITの中心地と言えば、やはり圧倒的にシリコンバレーだと思いますが、そのレベルの高さやスケールを作っているのは、エンジニア出身の方々です。Facebook、Twitter、Google、Yahoo、名だたるIT企業の創業者の中には必ずエンジニアがいるんですよ。むしろエンジニアだけでスタートしたような会社が多くて、エンジニアが創業者であり今でもトップであり、という会社がすごく多い。

それに対して日本には、エンジニア出身のトップって非常に少ないですよね。やはりビジネスとしてインターネットサービスを作っているケースが多くて、そういうところに違いがあるんじゃないかと思っています。



こうした課題意識から、エンジニアが主役の会社を作ろうというのは学生のときから考えていて、そのために自分自身がまずエンジニアとしての力を付けなくてはいけないと考えてサイバーエージェントに入社したんです。ハイブリッドですよ(笑)経営と技術、両方のことを分かるというか。

だからこそ、ゲーム事業というのは確かに、100個売って1個当たれば成功するビジネスですが、私はそれをしたくないと思っています。誰でも、99個を作るエンジニアにはなりたくないですよね。いいものを作って確実に成功するビジネスしかやりたくないんです。

技術者の意思を尊重し、1つのアプリに拘り抜くということが、正直、正解なのか否かは分からないですが、日本でビジネスマンの発想を中心に作ったIT産業が、結果論ですが米国の100分の1以下の規模に留まっているというのも事実ですから。

----思考がグローバルですよね。



割と小さいときから何かを考えるときに世界を意識していた気がしますね。日本ではこうだけど世界ではこうだっていうのは。たいした理由はないんですが、世界に出て行かないとこれからダメだっていうことを、深く心に刻んでいます。どう考えても日本は人口が減っていきますし、超高齢化社会になります。日本国内だけで考えていると、どんどん縮小傾向になっていくので、海外から収益を稼げる企業をつくらないといけないと思っています。

----では、将来の展望を教えてください。



「Brain Wars」も「Brain Dots」も1000万ダウンロードを突破して国内では爆速だと言われていますが、我々が目指しているのは世界なので、現状に満足していません。Angry Birdsなんかは全世界で20億ダウンロードを突破していますから、そのレイヤーに早くいきたいです。

そのために、昨年決まったLINE向けの新規アプリを作っています*1)。まだプロトタイプで模索中ですが、ここは確実に当てていきたいですね。リリース時期は未定ですが、次の僕らのビッグプロジェクトとして気合入れて作っています。

*1)...トランスリミットは昨年、LINE Venturesが運用するゲームファンド「LINE Game Global Gateway」からの資金調達および業務提携を行った。



ただ、そもそもスマートフォンゲームアプリは事業拡大の布石と考えています。会社としてはゲームだけを作るのではなく、ゲームを主軸としながら別の事業にもどんどん参入していきたいと思っています。


[取材後記]

日本のIT産業が世界で戦っていく上で、「非言語」という要素は大きなヒントであり、トランスリミットはLINEとともに、その先陣を切るベンチャー企業となるだろう。一方で、日本の技術者を中心とした組織が企業としてどこまで成長できるのか、極限までシンプルに要素をそぎ落とされたゲームアプリにおいて安定したマネタイズは可能なのか、課題も少なくない。始まったばかりの壮大なチャレンジを応援したい。


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