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【前編】NHK公式アプリ「プロフェッショナル 私の流儀」が狙うTV番組の新しい価値提案とは?

インタビュー

日付:2016/2/15

執筆者:佐々木 怜

【前編】NHK公式アプリ「プロフェッショナル 私の流儀」が狙うTV番組の新しい価値提案とは?

【前編】NHK公式アプリ「プロフェッショナル 私の流儀」が狙うTV番組の新しい価値提案とは?

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様々な分野の第一線で活躍中のプロの「仕事」を徹底的に掘り下げる人気ドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK総合毎週月曜日夜10時~放送)。そのオリジナルムービーが作れるNHK公式アプリ「プロフェッショナル 私の流儀」が、リリースから約1か月で80万ダウンロードを突破。その誕生からマーケティング戦略、そして今後の展望について、NHK制作局 企画・開発ディレクターの小国さんに話を伺ってきた。



「10周年だから何か盛り上げて!」それがはじまりでした


----まず、小国さんがこれまで取り組んできた番組やプロジェクトを教えてください。


ディレクターとして「クローズアップ現代」などの情報番組や「プロフェッショナル 仕事の流儀」「ドキュメント72時間」といったドキュメンタリー番組の制作に関わってきました。
現在は、「所さん!大変ですよ」の番組デスク。そのかたわら、大型番組「NHKスペシャル」や福祉番組「ハートネットTV」などNHK内の様々な番組を“クライアント”として、プロモーションや2次展開、ブランディングの相談を受ける、“コンテンツ・プロデュース”を担当しています。これは番組を制作する部局内に、社内リソースを駆使して、企画から運用まで手がける、いわばハブ的な役割を作れればと思い、1年半ほど前からやり始めたものです。
その動きの中で、「プロフェッショナル仕事の流儀」のプロデューサーから「10周年なんだけど、何か企画ない?」と声をかけてもらったのがきっかけで、今回のアプリが誕生しました。

----「プロフェッショナル 仕事の流儀」のプロデューサーからは、アプリや、WEB上で何か仕掛けを・・など何か具体的なオーダーはあったのですか?


いや、アプリどころかWEBでという指定もなく「10周年だから何か盛り上げて!」というものでした。
スタートは、「10周年だから、何かしたい」というただそれだけでしたね。

----では、そこから一人で練り上げて、アプリがいけるかなと企画していったと。


実は、元々僕がプロフェッショナル班にいた4年前に、上司に提案した企画がベースとなっています。
ただ、その時は形が違っていて「プロフェッショナル パパ・ママの流儀」というタイトルで、一番身近にいるプロってお父さん、お母さんだよね、それを可視化したいっていうコンセプトのものでした。

例えば小学生が自分のお父さん、お母さんの職場へ社会科見学に一日行って、「僕のお父さん、お母さんの一番大事にしている流儀はコレです」って見つけてもらい、その流儀とともに働いているパパやママの写真を番組サイトに投稿してもらいます。投稿されたものを日本地図上にマッピングして、「日本中にはプロがいっぱいいるね」っていうのを可視化するという流れをイメージしていました。

というのも、プロフェッショナル(仕事の流儀)って本当に業界でトップオブトップの方を紹介する番組なので、見ている方からすると、ちょっと遠い存在というか、「いや俺、宮崎駿のようにはなれないし」とか「(どれだけがんばっても)さすがにイチローは無理でしょ」とか距離を感じてしまうという声も聞いていたんですね。番組を作っている僕たちでさえ、一瞬でも気を緩めればそう感じる時もあるくらいなので、視聴者にプロフェッショナル(仕事の流儀)が遠いって思われたら嫌だなと、そんな経緯からもっと身近にプロを感じられるという企画を提案していました。

ただ、当時の僕はプロフェッショナル班のディレクターだったので、上司からは「そういう企画もいつか出来たらいいんだけど、早く来月の枠を埋めてね」と言われてしまって、残念ながら実現しませんでした(笑)
でもその後も、自分の中で企画はずっと温めていて、プロフェッショナル(仕事の流儀)から離れた後も、やっぱりこの番組にはすごい価値があると思っていたので、今回の話をもらった時には、すぐに「はい、これでどうでしょう!」という感じで企画を提案しました。4年前は、テクノロジーがまだあまり進んでいなかったし、アプリで実現するにしてもあんまりすごい事ができないかもと思っていましたが、今回、オファーをいただいた時には、このプロジェクトの前に福祉番組「ハートネットTV」のある企画で、WEBサービスの企画・開発をしているDigiBookという会社と組んで仕事をして、アプリの可能性についていろいろ教えて頂いていたので、アプリの企画を提案したという経緯があります。



特番に間に合わなければ、全てが瓦解する


----番組10周年に合わせて、1月に綺麗にリリースされていましたが、こういったプロジェクトは着工からどのくらいの期間を経てリリースされるものなのでしょうか。


去年の7月にオファーをもらい、すぐに提案を書きプレゼンをして、プロデューサーからは「やろう!」とOKをもらいました。そこから社内を駆け回って、各所に提案をして、社内調整が終わったのが11月過ぎでした。

そこから「DigiBookさん、大至急で作ってください」と頼んだら、「ええっ、リリースまで1か月半ですか!?」と驚かれました(笑)。普通は3か月かけてもできるかどうか、というものだったのですが、DigiBookの野村絵里奈プロデューサーが「企画とディレクションがしっかりしているから大丈夫、作れます!」って断言してくれたのは本当にありがたかったです。アプリの場合、特にApp Storeは審査に時間がかかるので、「実際に手を動かせたのは26日でした」と笑っていました。そんなこんなで、なんとか1月1日にリリースできたというわけです。

----そんな激動のスケジュールで生まれたのですね。


もう本当にギリギリでした。1月4日にプロフェッショナルの10周年特番が決まっていたので、全てのPRリソースはその日に集中させようと思っていました。逆に、そこまでにアプリのリリースが間に合わないと全てが瓦解するので、本当に間に合ってよかったなと。

----番組の知名度や期待感も背景にあると思いますが、多くのメディアさんが実際にアプリを使って記事を書かれていたように思います。こういったプロモート活動も手がけられたのでしょうか。


一番大きかったのは、App Storeのトップページの新着枠に載せて頂いたことです。それを目にされたメディアの方が次々と記事にしてくださったのかなと思います。ユーザーの皆さんも正月という事もあり、スマホをよく見ていて、そこからどんどんダウンロードしてくださって、ランキングもみるみるうちに上位にあがっていきました。こちらは特番のある1月4日に向けては色々仕込んでいましたが、リリースから3日間のこの動きについては、本当に予想外で「うわ~」って驚きました(笑)

軸にしていた1月4日については、まずNHKの朝の人気番組の一つ「あさイチ」の中で有働由美子アナウンサーにアプリを紹介してもらいました。
有働アナウンサーは、インターネット上でよく話題になる方でして、番組放送中につけまつげが落ちただけで、Yahoo!トピにあがるという(笑)。そういった事もあるので、有働アナウンサーはいわば、世の中の関心事とも言える、NHKの“キラーコンテンツ”ともいえる存在だと思っていました。なので、事前に有働アナウンサーにはアプリで動画を作っておいてもらって、その動画内容も含めて番組の中でアプリを紹介してもらいました。

やはり自身が体験していると、紹介するときの言葉もちゃんと自分の言葉で話してくれるもの。そうすると説得力が全然違います。あさイチの放送中に、数千単位で一気にドーンとダウンロードが跳ねました。
そして夜には、プロフェッショナルの特番です。そこでもたっぷり紹介しました。さらに、その裏ではプロフェッショナル(仕事の流儀)10周年の「同窓会」という位置づけでニコ生中継を放送しました。これまでの歴代プロデューサーと、かつて番組のMCを務めていた茂木健一郎さんと住吉美紀さんが一堂に会して、プロフェッショナルの10周年特番を見ながら各々の思い出をしゃべりまくり、特番終了後、みんなで1時間アプリで遊びまくるという内容でした。

その日は1日で7万を超えるダウンロード数を記録。やっぱり放送って強いんだなあって思いましたね。その後も、たくさんの記者やブロガーの方が実際にアプリを使ったうえで記事を書いてくださったり、ユーチューバーの方が続々と動画を作ってくれていました。WEB以外でも雑誌や新聞にも取り上げて頂いていて、本当にありがたかったです。

公式がパロディーを公認したっていいじゃないか

----ちなみにアイコンを作るときに、何かこだわったことはありますか?


アイコンはとにかく公式感にこだわりました。というのも、実はプロフェッショナル(仕事の流儀)って、凄くパロディーされるんです。民放さんの番組をはじめ、身近なところでは、結婚式でよくパロディーされています。僕たちも同僚の結婚式では「結婚の流儀」って動画を作ったりしていました(笑)

そもそも、なぜパロディーが多いのかというと、型がしっかりしている番組だからだと思っています。まず黒バックに白文字で「流儀」がポーンと出てきて、次に印象的な音楽とロゴが出てきて、というカッチリした流れが高い認知度につながっているのかなと。「私の流儀」と書いてあるので、このアプリもパロディーではあるんですが、とにかく本物っぽさというか、公式感みたいなのは出したいなと思って、ロゴやフォーマットなどもとにかくこだわりました。

----今のお話を聞いて改めて思いましたが、手軽にパロディーがしやすいっていうはありますよね。


そうなんです、やっぱり型があるっていうのはいいなと。プロジェクトXなんかもそうですが、中島みゆきさんの音楽がながれてくれば、「ああーこれだな」っていうのがあって。

----となるとやはり、小国さんが身近なパロディーというのを肌で感じていたので、今回のアプリもユーザーが、パロディーに使ってくれるかなという期待もありましたか。


はい、ありました。実はウィキペディアでプロフェッショナル(仕事の流儀)を見てみると、そこにはパロディーの項目が元々あるぐらい、パロディーをされていて、下手するとそちらのほうが視聴率を取れたりするのです、悔しいですが(笑)だから、元々ニーズはあるだろうなとは思っていまして、後はそれをどう具現化してあげるかというところでしたね。

それとやっぱり一番大きかったのは、MixChannelやFacebookで自分を素直に表現するっていうのが当たり前になってきている空気感ですね。その上でこれだけパロディーされているのだから、公式がパロディーを公認して良いじゃないって発想もありました。


このアプリが家族のコミュニケーションツールになっている

----数年前から暖めてきた企画が実現できたというのは、やはり満足感がありますか?


やっぱりありますね。勿論これだけダウンロードされてたくさんの方に使って頂いているのは嬉しいのですが、僕たちはこれまでアプリを作ったことがないので、ダウンロード数が凄いかどうかというのは、今一つピンとこないんです。ただ、お正月にランクがどんどんあがっていき、最高で2位(総合・無料)にまであがりまして、その過程でTwitter上のタイムラインでこのアプリを使ってみたって声がどんどんあがってきました。それを見ていたら、家族みんなで撮り合って「爆笑した」というのが流れていてびっくりしました。
というのも、そもそもこの番組ってあんまり爆笑するような番組ではないんですよね。なんか「いじられてる」っていう実感というか、もの凄く身近に感じてもらえているという空気を感じました。

他にも、お父さんが子どもを撮って遊んでいますとか、このアプリが家族のコミュニケーションツールになっているという声がたくさん出てきたんです。だからダウンロード数というのも勿論嬉しいのですが、このアプリが全く新しいコミュニケーションツールとなった事が、本当に嬉しかったです。

そのあたりを狙って設定していた訳ではなかったのですが、アプリを出した時期も結果的にすごくよかったなと。みなさん比較的時間があって、家族がそろいやすいお正月にリリースして、そういう風なコミュニケーションが生まれたっていう意外性と達成感というのは物凄くありました。

番組も10年続くと、金属疲労は起きてくる

----依頼側の番組プロデューサーもやはり同じ気持ちでしょうか?


はい、そうだと思います。今、番組にはプロデューサーが二人いるのですが、二人とも前のめりになって色々な部署に同行してくれて、難しい交渉をいくつも突破してくれました。ちなみに今アプリのサンプルムービーに出てくれているのが、そのプロデューサーの一人です(笑)。元々二人ともプロフェッショナルのディレクターでした。僕にとっては先輩ですが、同じ釜の飯を食っていた仲だったので、「もうこれみんなでやろうぜ!」っていう気持ちでした。実際、番組も10年続くと、少しずつ金属疲労は起きてくるもので、二人にも何かを変えたいという思いはありましたから、そこは私も同じ気持ちを持って、三人で一緒に動いてこれました。だから、もしその質問を聞いたら、きっと同じ気持ちだと言ってくれると思います。【後編に続く】
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この記事の執筆者

佐々木 怜(ササキ レイ)

佐々木 怜(ササキ レイ)

MMD研究所 編集部員

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