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【後編】NHK公式アプリ「プロフェッショナル 私の流儀」が狙うTV番組の新しい価値提案とは?

インタビュー

日付:2016/2/16

執筆者:佐々木 怜

【後編】NHK公式アプリ「プロフェッショナル 私の流儀」が狙うTV番組の新しい価値提案とは?

【後編】NHK公式アプリ「プロフェッショナル 私の流儀」が狙うTV番組の新しい価値提案とは?

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コミュニケーションツールとして新しい価値を提案する


----本日お邪魔する前に、アプリのランキングを見てきましたが、教育のカテゴリで2位という事で、現在多くの方に利用されていますが、このアプリを使っての今後の展望などあれば教えてください。


このアプリって先ほどもお伝えしたように、コミュニケーションツールだと思っていまして、ダウンロードされてよかったねということではなく、このアプリを通してこれまで番組と距離の離れていた方とどのようにコミュニケーションをするかが鍵だと思っています。たとえば、今やろうとしているのは、「このアプリを持っている人はディレクターです」つまり、「みなさんはプロフェッショナルの“アプリディレクター”です」と捉えてみる。どういうことかと言うと、このアプリを使えば、自分を撮ってプロフェッショナルになれるし、誰かを撮る事でその人をプロフェッショナルにできるということですよね。
そこで、こちらからみなさんにいろいろお題を出すと。たとえば、2月でしたら、バレンタインがあるから、みなさんの「告白の流儀」を教えてくださいってやると、こんな告白が~というような投稿が若い人達からくるかなと。今も10代から30代の方が多く使っているのですが、(こういうお題を提供することで)もっと若い人たちが楽しんでくれるコミュニケーションツールになるんじゃないかと思っています。
※インタビューは1月末に実施。
アプリ特設サイトURL http://www.nhk.or.jp/professional/apps/index.html

あと、まだこれは正式にオーソライズされていないのですが、アプリで番組を作るっていう新しいスキームにチャレンジしてみようかなと。これも同じようにお題を出すのですが、例えば「3.11私たちのプロフェッショナル」。あの日から5年が経ちますが、震災の記憶というものがすでに風化しつつあるのではという声も少なからずあります。そこで、自分なりに胸に刻んでいる流儀みたいなものを教えてくださいって募集したいと思っているんです。その流儀は「東北のお酒しか飲みません」でも「節電をしています!」でもいいのです。あるいは「あのとき灯油がなくて、それを一生懸命運んでくれたあの人が私にとってのプロです」とか、「被災地で5年間NPO活動をしています」というのもプロフェッショナルだと思います。そうした流儀動画を投稿してもらって、それをプロフェッショナルのサイト上でアルバムのようにまとめてみたり、もっと僕らが深く知りたいと思うような投稿があれば、追加取材をしてミニ番組としてテレビ放送してみたいです。それ以外にも様々なテーマで、アプリとウェブと放送というものがうまく回るような仕組みにチャレンジしたいなと。

今アプリは、70万ダウンロード(※2月14日時点で85万ダウンロード)されていまして、たくさんの方が使ってくれています。遊びで使ってくれているのも勿論嬉しいのですが、それだけではなく、せっかくひとつ繋がれたんだから、もっと視聴者と一緒にコ・クリエイションみたいなこともやりたいなと動いています。ですから、何ヶ月かに一度大きなテーマを投げかけながら、ユーザーを巻き込んでお祭り騒ぎをしたいなと思っています。


私の流儀が就活に?


また、番組とはまったく違う展開でいうと、大学のキャリア教育で使われはじめています。大学の担当者の方によれば、実はこのアプリは「就活」に使えるというのです。どういうことかというと、「流儀」って自己分析ができていないとなかなか出てこないんですよね。なんか「フワっとがんばる、俺がんばる」って感じだと、流儀にならないんです、「がんばるってどうやって?」みたいな(笑)

やっぱり、かつてプロフェッショナルの番組に出演してくれた方はみんなそうなのですが、「流儀」って取材している中で、じわ~ってにじみ出てくるものだと思っていて。この人はこういう生き方をしてきたから、こういう流儀なんだなってことがだんだんこちらに伝わってくるんです。やっぱりプロは自己分析がしっかりできているので、最終的には「流儀」が強い言葉になるんですね。

これを大学生におきかえると、流儀動画が作れれば、就活でエントリーシートがバッと書けちゃうということになるんだそうです。「僕のPRポイントはココです」みたいな。このアプリは1分弱の動画ですから、自分が一番輝いている場面ってなんだろうって考えると、バイトかもしれないし、サークルかもしれないし、幼い子の面倒をみているときかもしれないし、いろいろあって迷うだろうけど、動画の尺が短いから相当に絞らなければいけない。さらにその中から、自分の大事にする流儀をひねり出す。そういったことを考えたり、煮詰めたりしていくと、確かにエントリーシートにも使えそうですよね。動画を見ればこいつってこういうヤツなんだって一発でわかってもらえるし、自分のことを伝える訓練になるって事で大学から話をもらいました。

----着眼点がいいですね。


小国:ですよね。実は僕たちもまず学生にアプリを使ってもらいたいと思っていました。このアプリのカテゴリを「教育」にしたのは、高校・大学生の就活や小中学生の社会科見学といった教育の現場で使ってほしいっていう気持ちがあり、最初からカテゴリは教育で行こうと決めていました。
そういう思いもあったので、今実際にキャリア教育に熱心な大学と一緒に、アプリの使い方についてあれやこれやとひざを突き合わせて考えられるのは本当に嬉しいことです。

テレビはオワコン?テレビの未来は?


----(アプリとウェブと放送が回るようにというくだりで)既に先ほど半分くらいお答えを頂いているのですが、最後の質問です。若者のテレビ離れが進んでいると言われています。しかし一方でスマートフォンを触りながらテレビを視聴するようなスタイルも増えていると言われる中、テレビとスマートフォンというメディアの連携などはどのように考えられていますでしょうか。


ここからは非常に個人的な考えですが、テレビが「オワコン」だとは、ここ最近ずっと言われていて、僕たちもなんとかテレビを見てほしいとは思っています。ただ、言ってしまえば、これはデバイスの問題に集約されるのかなと感じています。NHKはコンテンツメーカーとしてはしっかりとしたものをまだ作れていると思っていますし、例えばTwitterを見ても、みなさんつぶやいていらっしゃるのは、意外とテレビのことが多かったりします。

YouTubeのように、誰でも映像コンテンツを発信できる時代ではあるのも事実ですが、他方、プロでないと作れない、大規模な予算や取材力がないと作れないコンテンツが支持されているのも事実です。そう考えると、最終的にはより「コンテンツ」の中身と出し方が重要になってくるのかなと思います。それを「どこで」、「何で」見るかという点で、ある人はわかりやすいテレビというデバイスで見るでしょうし、通勤途中にスマホで見る方もいる。結局のところデバイスに最適なコンテンツをちゃんと作りだせれば、テレビにこだわる事もないのかもしれないなと。近い将来、全録画が当たり前になると思うのですが、そうなると視聴率より再生回数が基準になってくるような気がします。ただ、それはまだもう少しだけ先の話なので、今々で言うと、スマホ、テレビ、WEBの役割をきちんと見極めていくのが大事なのかなと。

テレビの消費形態というのは特殊で、例えばプロフェッショナル(仕事の流儀)だったら、録画を除くと、月曜日夜10時に1chをつけなければ見ることができないわけです。いわば、点の消費、もっと言えば極小の消費だと思っています。テレビは消費形態が極めて特殊で、もの凄く消費されやすいのです。例えばNHKでは、(プロフェッショナル 仕事の流儀を)もう一度見ようと思えば、再放送とオンデマンドしか手段がなく、視聴者にはやはり障壁がある。だからそこにだけぶら下がって放送を続けていても、この番組の価値は生かしきれないなと思います。
これは本当にもったいないことだなと。例えばプロフェッショナル(仕事の流儀)であれば、過去に出演してくれた第一線のプロ300人と今も気さくに連絡を取れる間柄にあり、番組の枠を超えてイベントや講演などやろうと思ったら、何かとんでもない大きな仕掛けができるかもしれない。でも、制作する僕たちがテレビでの放送だけを考えていたら、それっきりで終わってしまう。本当は凄く色々な価値やポテンシャルがあるのに、それはもったいないなと。

でも例えばWEBをきちんと活用すれば、テレビとは違って情報がストックされますし、ユーザーは能動的に24時間アクセスできるわけです。さらに、WEBには時間尺という概念がないので、テレビでは載せられなかった情報もふんだんに盛り込める。だから、たとえ番組を見逃していても、WEBにアクセスしてくれれば、「あーこういう番組の価値があるんだ」って気がついてくれるかもしれない。
そして、実は番組の持つ価値をもっとより顕在化できると思ったのがアプリなのです。アプリは、教育とかそういった分野で、直接ニーズに刺さるなと。なんというかマス・コミニケーションって難しくて、NHKから見ればBtoCですが、視聴者の求めているものとかが意外と見えなかったり、温度感がわからなかったりするのです。その点、今回の大学の話というのは、NHKから見ればBtoBですよね。大学が困っている事が明確にあって、たとえば「キャリア教育で学生に刺さるものが欲しいけど見つからない」とか困っている事が明確にある。その課題に対して、このアプリがど真ん中だったから使ってみたいと思って頂けたのかなと。

これまでは、フワッと「プロフェッショナルっておもろいでんねん~」って紹介していたものが、こういう価値があるんですってはっきりと提示できたのがよかったのかなと思います。アプリは番組の持つ価値をぎゅ~っと凝縮して作ったものなので、より価値が伝わりやすかったんじゃないかと思っています。

----価値を再定義して、別の形で発信するイメージですかね。


そうですね、NHKには色々な形の価値があると思っていますが、まだまだそのポテンシャルに僕をはじめNHK自身が気づいていないかもしれません。なので、「NHKの価値をしゃぶりつくして、社会に還元したい」ってのが個人的な目標です。
そもそもテレビだったり、WEBだったりは、それぞれのツールには得意不得意な部分があるじゃないですか。よく例えられますが、電車で旅行に行くのか、車で旅行に行くのかっていうのに近いですよね。電車ってレールがあって一回乗ってしまうとそこから見える景色は電車任せになってしまうじゃないですか。テレビも一緒で、いったん始まってしまえば、そこに映る番組(車窓)は変えられないのですよね。で、車で旅行するっていうのはWEBに似ていて、自分でどこに行きたいっていうのが選べるじゃないですか。でも、車がすごいとか、電車が優れているとかそうわけではなくて、それぞれの利点っていうのがお互いあるわけで。

ですので、テレビ、WEB、スマホの役割をきちんと見つけて、ぐるぐるまわしていくという、この三角形を作れているかって事は意識しています。役割がそれぞれ違うことを理解して、そのいい所を高めあって、悪いところを補っていければいいのかなと思っています。だから、僕自身はあまりテレビにはこだわっていません。テレビも社会の中にあるひとつのツールで、その価値をどういうところで出せるか、その結果視聴者がどう喜んでくれるかっていうところに考え方をシフトしていければいいのかなと思っています。勿論できることできないこと、色々な制約がありますが、こういうアプリみたいなチャレンジは、やってみてよかったなと思っています。


[編集後記】

様々な分野の第一線で活躍中のプロの「仕事」を徹底的に掘り下げる人物ドキュメンタリー「プロフェッショナル 仕事の流儀」。インタビューの端々で出演される方に勝るとも劣らないプロ魂をもった職人達が番組に関わっていることが伺えた。
そして番組の新しい価値を提案するコミュニケーションツールとしての「プロフェッショナル 私の流儀」もまた、
それ以上に自身の流儀を持ったプロが企画したアプリである。最初は控えめに話す小国さんだったが、徐々に言葉に力がこもるその姿は、小国さん自身がおっしゃっていた「流儀は、ジワーってにじみ出てくるものなんです」という言葉そのものを体現するかのようだった。今後の展開に期待したい。


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この記事の執筆者

佐々木 怜(ササキ レイ)

佐々木 怜(ササキ レイ)

MMD研究所 編集部員

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