インタビュー
2014年8月26日
Vol.23 プラスワン・マーケティングが格安スマートフォン市場に参入した3つの理由
昨年より、低料金で利用できるデータ通信専用の通信サービスが注目を集めている。
最近では大手家電量販店などが格安スマートフォン市場に参入するというニュースが報じられている。
今回はいち早くSIMフリー・格安スマートフォンという市場に目を付け事業を展開し、「freetel」というキャリアのスマートフォンより低価格かつSIMフリースマートフォン端末を販売したプラスワン・マーケティング株式会社 取締役 大仲 泰弘氏に話を伺った。
「freetel」を企画した背景を教えてください。
SIMフリースマートフォン端末「freetel」を作った理由は大きくわけて3つあります。まず1つ目がSIMフリー・格安スマートフォンという市場に非常に魅力を感じました。
私と弊社代表の増田はプラスワン・マーケティング株式会社を立ち上げる前は外資系メーカーでスマートフォン事業に携わっていました。
業務を行う中で、海外の通信事業と日本のそれが大きく違うことを知り、逆にこのSIMフリー・格安スマートフォンという市場を構築できれば、よりエンドユーザーにメリットのある提案ができると考えました。
海外ではコンビニでSIMカードが低価格で売られていて、スマートフォン自体も端末だけで購入することができます。
しかし日本では、大手キャリア3社でこの市場をほぼ掌握しており、SIMカードとスマートフォンはセットでないと購入できないような市場になっています。しかも、スマートフォンにはSIMロックという特別な仕様になっており、購入したキャリアのSIMカードしか使えないようになっています。
今でこそ低価格のSIMカードがたくさんの会社から発売されるようになり群雄割拠になっていますが、数年前というと1~2社くらいが販売している程度でした。
それと、SIMフリースマートフォンも、最近になってAndroidやiPhoneのSIMフリー版が発売されるということで話題にはなってきましたが、これまた数年前は端末もほとんどありませんでした。
ここまでお話をすればお分かりと思いますが、海外に比べて日本はかなり自由度が少ない文化になっていて、私たちはこの現状を打破したいと思いました。
このSIMフリー・格安スマートフォンの市場を拡大すれば2つの大きなメリットがあります。1つは「通信費の削減」、もう1つは「法人での利用シーンの広がり」です。
世界的に見て日本の通信料って高いんですよね。その要因は提供されている通信費用が高いだけではなく、スマートフォンの値段の高さもその要因の一つです。
クアッドコア、今度はオクタコアが出てきて、どんどん刷新してハイスピード、ハイスペックのものをお客様にどんどん提供していくとおのずと通信料が上がってしまうようになってしまっているのが現状です。
実質0円などの販売が普通になっていますが、その実その端末の費用は月々の通信費の中に組み込まれていて、お客様に請求する科目が違うだけなんです。
では、本当に今販売されているスマートフォンのスペックはみんなが必要としているのか?
たとえば、私の両親にスマートフォンをプレゼントしたのですが、LTEの速度使っているのに電話とメールとLINEしか使っていないのです。LINEってLTEの速度が必要なのでしょうか?答えは否です。
LTE速度のパケット通信量は7GBが上限ですが、7GBはどれくらい使ったら超えるのかということも私の両親をはじめ多くの方が知らずに利用していると思うんです。
実際私もいろいろ実験してみましたが、7GBを超えようと思ったらYouTubeのような動画サイトなどで動画を視聴しないとなかなか超えない容量なんですよ。逆にいうと動画をスマートフォンで見ない、また動画を見るときはWi-Fiを使う人には全く必要のない容量ですよね。
2014年4月から増税になり、消費者は一つの商品を購入することに慎重になっている中で、年間携帯電話代に40万~50万円支払っているところに疑問を持っていないということに、疑問を持つべきだと思っています。
キャリアモデルプランですと年間22万円くらいかかるものが、弊社のSIMフリー端末と低価格SIMカードを使えば4~5万円で済むのです。
海外では端末を選んだ後にSIM売り場へ行って自分の好きなSIMを選んでセットして使っている。だからいろんな使い方ができるのです。プリペイド方式もあれば月額方式もあります。
2つ目のメリットは「法人での利用シーンの広がり」です。
法人の取引先の方々からはよくスマートフォン端末だけ欲しいとよく言われます。SIMカードはいらない、Wi-Fiを使って、Bluetoothを使ってなどと色々なニーズが法人にはあります。
国内ではスマートフォン端末を手に入れるにはSIMカードも一緒に契約しないといけないという問題がありますが、今は弊社のようなメーカーが存在しますので、そんな心配はありません。
もともと法人向けに提供することを考えていたとおっしゃっていましたが、それはデュアルSIMに対応するという企画段階に紐付いているのでしょうか?
そうですね、海外出張の多いビジネスマン向けに対応できるようにデュアルSIMにしようということになったのです。一つは国内用、もう一つは海外用のSIMに対応していますので、海外のSIMを挿したまま日本からの通知もキャッチできます。そもそも海外で売っている端末はデュアルSIMのほうが本当は多いのです。
製品開発の上でこだわった点は何でしょうか?
中国のシンセンという所があるのですが、そこは少し歩くと携帯電話にまつわるいろんな工場が数えきれないくらいあり、携帯電話端末を作って欲しいと言えばすぐに作れるのです。しかし、日本で販売するに堪えうる品質を維持出来る工場がそこにあるかが一番の問題なんです。品質を維持出来る工場を探し出すとなると5%あるかどうかってところなんです。
世界からみると日本企業の要望は一番面倒くさいといわれています。品質にうるさい国だ、ああだこうだと・・・でも、だからこそ日本の製品は壊れにくい、品質で1歩世界をリードしていることを私は誇るべきところだと思っています。だからこそ、その品質を維持できる工場を探し出すのがまず大変なんです。数百の工場を視察しようやく今の工場に辿り着きました。
また、我々は国内の大手メーカーで実績を積んだエキスパートの方に顧問をお願いしました。工場視察と同じくらい国内で我々の事業を手伝ってくださる方を探しました。
国内の大手メーカーで品質管理の本部長をされている方やスマートフォンのエンジニアをしていた方々や大先輩方に、日本で通信料を安くしたいんだということや市場を開拓したいということをお話ししたところ、おもしろいということで自分たちが持っている各社で築き上げたノウハウを活用してくれということでその方々と一緒に中国に行き、彼らの監視のもと工場をラインからひとつひとつ見て行ってここにしようというのを探しました。
スマートフォンで重要なのはスペックだけではなく、ファームウェアというアプリケーションを動かすシステムがあって、それをチューンナップがどれだけできているか、またどれだけスペックが高いものでも、ファームウェアの品質がよくないとスマートフォンでは成り立たないものです。
バージョンアップするごとにお音声品質も良くなっていて、弊社の場合VoIPもテストの中に入っていて、「Skype」や「050Plus」や「SMARTalk」などテストの中に入れて、繋がるか、音声が聞こえるかということをテストしています。
VoIPのアプリケーションによって仕様が全部違うので、仕様に合わせたチューンナップをしなければいけないのです。SIMフリーの端末だとデータオンリーでSIMを使う人が多いので、電話したいとなった時に、VoIPしかないですよね。
よく使われているVoIPのチューンナップはしておかないとダメだよねということを発売当初より話していて、ずっとチューンナップをしています。なので、お客様より通話品質はご好評いただいています。
御社のターゲット層を教えてください。
「freetel」を使って欲しいと思っているのは30代~40代の既婚者で、子どもが小学生高学年から中学生のお子さんをお持ちの方々です。小中高生のお子さんはスマートフォンに興味を持ち、欲しがっています。家計がだんだん子供の通信費がかかってくるようになってきて、例えば小中高生のお子さんが2人いる家庭にiPhone5を持たせると考えたときに年間何十万とかかります。通信料を安くして、家計を助けたいという思いからこの市場に参入したので、使って欲しい方となると主婦層ではないかなと思っています。しかし、4月の増税以来、多くの方が通信費を見直そうという意識も高まってきます。だんだん主婦の方々も気づき始めてきて、通信費を抑えるために弊社の製品を子供のために2台購入したという声もいただいていています。なので、少しずつではありますがターゲットとしている主婦層に広がっていると思いますが、これからが勝負だと思っています。
今後、御社製品の購入を検討されている方に対してメッセージなどありましたらお願いします。
弊社の製品がお客様に評価いただいていることが3つありまして、1つ目が高品質、2つ目が低価格、3つ目はサポートが手厚いということです。サポートが手厚いとはどういったことでしょうか?具体的に教えていただけますか?
例えば、製品の使い方がわからない、不安だと感じる方がいらっしゃいますよね。弊社ではコールセンターの他、メールでもサポート対応しています。それ以外では弊社の代表の増田が「freetelブログ」を開設していて、ほぼ毎日更新しています。ブログにコメント欄があるのですが、コメントには全て増田本人が返信しています。
freetelの公式Twitter、2ちゃんねるでも回答しているんですよ。
4月からはSkypeに「freetel」のショップアカウントを開設し、そこにアクセスしてもらえればリアルタイムで返答致します。わからないことがあればチャット、メールなりSNSなどいろんな方法でお問い合わせしていただければ24時間以内に返信します。出来る限り返答することをポリシーとしていますので、弊社の製品を検討しているかたには納得していただいてからご購入してもらえればと思います。
「freetel」の端末以外の質問が来てもできる限り答えるようにしています。というのも、メーカーが一番大事にしなくてはいけないのはお客さんであって、販売してからだと私は思っています。
やはり自社の製品を買ってくれて快適に使えるまでがメーカーとお客さんの付き合いだと思っていて、それをやることによって次に弊社が新しい端末を出したときにここのメーカー良かったなっていうふうに繋がっていくような感じになっていければいいなという思いでやっています。
このような地道な活動を通じて、あらゆるニーズに対してできる限りこたえていこうとスタンスです。大きな会社ではないので自分たちで出来ることはとにかくお客さんに喜んでもらえるような施策をとっています。
最後に、今後はどのような展開を予定していますか?
先日プレスリリースでもご案内させていただいたのですが、最新モデルとして「freetel LTE XM(フリーテル LTE XM)」を2014年8月29日に発売する予定です。低価格だけではなく、機能面、LTEに対応したハイスペックモデルでこれまでにはない高性能モデルに仕上げました。[取材後記]
2014年に入ってから各社が格安SIMや格安スマートフォン端末事業に参入した。
格安スマートフォンといえば、不動産賃貸仲介のエイブルがフリービットと提携し、スマートフォン販売に乗り出すと先日発表したのが記憶に新しい。
インタビューを通じて感じたことは「freetel」を世の中にリリースするまで、工場探しから始め何百という工場を視察し、何から何まで自分たちで築いたからこそ、販売後の消費者を一番大事にしなくてはいけないと感じ、その経験からリアルタイムで返信するという手厚いユーザーサポートが生まれたのだろう。
まだ駆け出しの企業だから手厚いサービスが出来るのもまた事実だ、しかし、彼らの最大の武器は消費者の目線で物事を考えていることだろう。
スマートフォンの価格と通信料を安くして、家計を助けたいという思いからこの事業に参入した彼らと今後のシェアに注目していきたい。
セノオ アキコ(セノオ アキコ)
MMD研究所 編集部員