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インタビュー

2014年8月5日

Vol.22 カジュアルモバイルゲームの“王道”を目指すKing Japan「キャンディークラッシュ」から学ぶマーケティング戦略

Kingという会社を知らなくてもキャンディークラッシュを遊んだり、V6の岡田くんが出ているCMと言えば知っている人が多いだろう。数年前までの国内のモバイルゲームは国内ゲーム会社で競い合っていたが、スマートフォンのネイティブアプリが主流になった今、世界で人気の海外ゲームアプリがTVCMを含めた大規模プロモーションでユーザーから大きな支持を集めている。そして今年、日本でいち早く人気になったキャンディークラッシュを手掛けるKing社が日本に拠点を作った。King Japanの役割やTVCMのプロモーション戦略について代表を務める枝廣憲氏に話を伺いました。



Kingという会社について教えてください。


Kingは本国をヨーロッパに置いていて総社員は800人以上います。ゲームのスタジオメンバーはスモールチームでフットワークよく制作し、企画していく体制が根付いています。

当社はもともとウェブでゲームを作っていた会社で、Facebookで「Bubble Witch Saga」というコンテンツを出したことがきっかけで、今の会社の規模に至る道筋ができました。

その後キャンディークラッシュを出した頃から代表のリカルドがモバイルのほうに事業をシフトしていくほうがチャンスは大きいのではないかということで、モバイルに対してのアプローチをしました。そのことから他社より少し早くモバイルに手掛けたことでKingがグローバルで認知されているきっかけになったと理解しています。

社の雰囲気はファミリーに近い感じで組織だってなく、皆がとても楽しんで仕事しています。縦割りの組織というよりかは本当にフラットな感じですね。

キャンディークラッシュの開発チームはストックホルムにありますが、ストックホルムに限らずいろんなところに拠点があります。本社機能という意味ではロンドンにありますが、サポートチームがバルセロナにあったりして、僕らの中で本国は「ヨーロッパ」っていう感じですね。

ヨーロッパって僕たち日本人が思うより国と国が近いんですよね。イギリスからストックホルムまで2時間、イタリア、スペインだったら1時間ちょっとで行けたりするので、私たちが名古屋や大阪に行くのと変わらないくらい。僕らが思う新幹線は彼らにとって飛行機。安いですよね。1万2万円くらいの値段で往復出来てしまうんですから。


日本オフィスは3人でやっているのですが、本国のメンバーの手を借りたりすることはありますし、キャンディークラッシュの開発チームはやはりヨーロッパにあるのでその連中と直接話をするのは2か月に1回くらいのペースですかね。

また、全社員が集まって半期一度の振り返りやワークショップ、今後の事業に対しての意見交換をしたりするイベントがあります。

社風で分りやすいエピソードとして、イベントのウェルカムスピーチをする為に代表のリカルドが登場した瞬間、社員メンバーがPharrell Williamsの「HAPPY」を歌うフラッシュモブを始めたら、代表も含めて皆で踊るというようなノリがあります(笑)

(イベントの)映像を観ましたが、凄く楽しそうな会社チームですね。


学生のノリというよりかは大人のノリですよね。代表のリカルドは40代後半の年齢です。CMOのアレックスはマイクロソフトでマーケティングの責任者をやっていたり、若いフレキシビリティと経験則持った方がいるので僕もそこにいてすごく勉強になっています。

またカジュアルエンターテインメントを地で行っているような凄く自分たちが面白いと思うことをやろうという発想があって、仕事も楽しんでやろうというスタンスです。

本国に日本人の社員もいらっしゃるのですか?


日本人も何名か在籍しています。日本人に限らずアジアの方はたくさん在籍しています。語学力でいうと日本はまだ勝てないなという感じがしますね。中国、韓国の方すごく多いですからね。社内の共通言語は英語で、King japanに関しては日本なので日本語で話しています。


チームでプロダクトを作っていくと伺いましたが、試作後からの完成までのプロセスはどうなっているのですか?


Kingのゲームファンがいますので、コンテンツをある程度作った段階でデモプレイをユーザーさんにしていただきます。キャンディークラッシュは世界で約9千600万人のデイリーアクティブユーザーがいます。
私が以前に国内のソーシャルゲームの会社にいましたが、規模の違いを感じましたね。規模があるとこういうことができるんだと感じました。

日本語のローカライズとかはどこでされているのですか?


日本でやっています。どのコンテンツを日本に持ってくるかとか、僕らのところで最終決めさせていただいて、どの角度からどのユーザーに対してマーケティングを仕掛けていくという戦略設計をしています。

日本に進出というのはやはり日本のマーケットが大きい存在だったということでしょうか?


そうですね、当時オフィシャルに出たいくつかのリサーチ会社の発表で日本が世界で一番大きいモバイルマーケットと言われたこともそうですし、何よりもデバイスの普及状況やユーザーのゲームに対しての親和性だったりとか非常に高い国だったのでKingとして事業を拡大していくのが自然の流れだったのではないかととらえています。

日本って難しいですよね。日本独特の文化があり、モバイルはモバイルで独特の文化がまたあって、文化、風習どれをとっても日本っていう国は特殊なんだなっていうのを感じました。

日本人で日本のマーケットとゲームを理解してマーケティングを仕掛けていくみたいなところって外国の企業って苦労されていますよね。

そんな中でキャンディークラッシュに関しては凄くプレイしている人が多かったし僕が好きだったので、これはいけるんじゃないかと思っていました。外から見ていてですけどね。
Kingにジョインする前はキャンディークラッシュに対してあーしたらいいのに、こうしたらいいのにって思うことがあったのですが、幸か不幸か今はこの会社にジョインすることになって今チャレンジできていることが仕事として充実しています。


ジョインするきっかけはどこにあったのですか?


去年前職の関係でグローバルのマーケティングを見よということでサンフランシスコに移り住んだのですが、それが僕の初めて海外に移り住んだ経験になります。そんな浅い経験で海外を語るなと自分自身でも思うのですが、そんな中でKingとの関係もできましたし、サンフランシスコにいる現地にいるグローバルITカンパニーの連中と接することができたわけです。FacebookやApple、GoogleやTwitter、はたまたスタートアップベンチャーであっという間に形を成していったTumblrなどゲームにとどまらず刺激を受けました。

一方で日本の鎖国文化というか、日本とういうマーケットがいかに欧米人に理解し難いこととか、そもそも理解する気がないんじゃないかっていうくらいわかり難い訳ですよ。そんな状況で自分ができることないのかなって思っていて、特にキャンディークラッシュでチャンスがあったらなと思っていたら、いいタイミングでKingという会社が日本のオフィスを始めるということで、それがうまく合致したところです。
何がキッカケになるかなんてわからないですよね。

結局はサンフランシスコに行ったということが大きなキッカケなんでしょうね。
サンフランシスコに行くとなったタイミングは僕にとって大きな決断で、海外に住んだことがなかったので英語もろくに話せませんでした。1か月半英語漬けの生活をして、それからサンフランシスコに飛んだのですが、そんなもんじゃ当然ですが英語が通じないんですよ。

サンドウィッチのサブウェイってあるじゃないですか。あれを買うまでが大変なんですよ(笑)。例えばレタスだとサニーレタスがあり、それに似たレタスの名前がわからないし、オリーブも8種類くらいあって同じ緑にしかみえないので、どうしたものかといろいろ試行錯誤した結果、サブウェイで自然に会話ができるようになりました。渡米前は清水の舞台から飛び降りるくらいの想いで行ったのですが、いざ行ってみるといろいろありがたい経験ができて感謝しています。


King Japanの立ち上げとしては日本市場をより普及させていくということでしょうか?


そうですね、Kingは今180以上コンテンツがあって200以上の国に展開しているのですが、その中でアメリカ、イギリスなどグローバルで成功しているコンテンツもあれば、そうなっていなくても日本の市場に合っているものがあるかもしれないので、そんな中でピックアップしたのが「パパピンボール」ですね。少し遊び方が違うものも持ってきたいと思っています。

日本では3コンテンツを現在展開しているのですが、明言はできないですが年内に2~3つは最低でも展開していきたいと思っています。

たくさんコンテンツがある中で日本市場に合う合わない基準というのはどういうところで判断されているのでしょうか?


Kingのコンテンツはコアゲーマーのユーザーが楽しんでいただくのはもちろん分かると思うのですが、一方で広く大衆一般の人に楽しんでいただくところもあるのでゲーマーの方々にプレイしてもらうって判断してもらうということはしていなくて、ちょっと友達がやってみて面白いと思うかという基準で判断をしたいと思っています。

対象年齢がすごく広いゲーム設定ですよね。愛くるしいキャラクターも含めて。あのデザインテイストはなかなか国内ゲームデベロッパーでは作れないと思います。


普遍的な面白さがあると思います。結局モバイルでやるゲームなので、半分暇つぶし的なところもあるので1~2分やってすぐ止められるコンテンツスタイルって今までのゲームスタイルとは違うのかなと思っています。

社内の標語というかスローガンで「Bitesize Brilliance」といのがありまして、対極にあるのがレストランでステーキだとすると、僕らはポケットにしまってあるチューインガムみたいなカジュアルでさっと口に入れてパッと美味しいって感じる存在でいたいと思っています。カジュアルゲームってシンプルがゆえに難しいし奥深いので他社さんと差別化できるポイントだと思っています。当社の開発メンバーはゲームや遊びに対する探究心はめちゃくちゃ強いです。欧米文化というか休みの時も家で休まず長期休暇をとって旅行するなど仕事もバケーションもとことん楽しんでいますね。


国内のプロモーション活動についてお聞きします。一番意識されていることは何ですか。


意識していることは“王道”でありたいと思っていることです。
国内のモバイルゲームはカードバトルゲームやパズルゲームを含めて長くそれこそ中毒性をもって遊ばなければならないコアなゲームが主流だったと思います。カジュアルエンターテインメントというかシンプルパズルゲームというもののブームが来そうでこなかった。もっと簡単に遊んでもらえるコンテンツがあってもいいんじゃないかって思っていて、その1つの市場を作るという意味でちゃんと堂々と顔を作ってあげたいなというところや意図があってTVCMを展開しましたし、誰もが知っていて人気の岡田准一さんにお願いをしました。

私が昨年Kingにジョインする前ですが、既にキャンディークラッシュのCM放映があり一定の評価をいただきユーザーが増えたのですが、一方でキャンディークラッシュを知らない人がまだまだいることが分かったのでスタンダードにしてあげたいなという思いが強くありましたので、CMのテイストを岡田さんの起用を含めて変えました。

確かに前回の多部未華子さんのキャンディが落ちてくるPOPな感じから、今回は白黒のイメージでストーリー性がある内容に大きく変わりましたね。俳優の遠藤憲一さんのキャラクターも意外でした。


CMを流したのは2014年4月~5月の期間になるのですがCM総合研究所によるとモバイルコンテンツ事業の中で5月の好感度が1位だったと聞いています。CM総合研究所さんが驚いて飛び込んできて「こんなことは今までなかった」とおっしゃっていたことがとても印象に残っています。

モバイルコンテンツのCMで長い間流している会社がたくさんあって、ゲーム性を中心とした内容でゲームをやっている場面を想像させる場面のCMがほとんどの中、キャンディークラッシュのCMはストーリー性が高く新鮮なCMだという声をいただきました。

キャンディークラッシュって男性女性はもちろん年配から若手まで年齢は問わないコンテンツなので、岡田さんというキャラクターはかなり立つので女性受けはすると思っていまして、一方でちょっとした面白さを伝えたいなと思っていて、そんな中で僕が信頼するクリエイターの方からモノクロという提案をいただいたので、迷わずその内容で進めていきました。

ゲームの運用の場合、数値をこうしたらユーザーがこう反応するんじゃないかとパラメーターを調整したりするんですけど、マーケティングはまた違った難しさがあって、こういう方が遊んでくれるんじゃないかと想像して、この方達にはこういう表現がいいんじゃないかと想像して、じゃあ実際どうしようかと交渉ごとがありますよね。キャスティングやメディア出稿量に対しての金額をどうするかなど。マーケティングもコンテンツの一部で、コンテンツの顔を作るという意味ではユーザーの心理を予想して作る必要があります。Kingはマーケティングをすごく大事にしている会社です。


枝廣さんは電通出身で、SAPも経験されています。スマートフォンゲームのプロモーションでTVCMを展開する企業が増えています。是非、そのタイミングやTVCMを打つ場合のアドバイスをお願いします。


そうですね、僕の中で“ここ”っていう数字はあるのですが、それは差し控えさせてください(笑)。ただ、前提としてあるのは、一般的にされていておかしくないコンテンツなのかターゲットがニッチなのかというのはあります。

TVってそれこそ多くの人に知っていただくので、ターゲットを絞ったコンテンツの場合は逆効果になったりする場合があります。例えば「艦コレ」などの萌え系コンテンツはプロモーションをひとつ間違えるとユーザーにノイズが入る場合があります。そのコンテンツの楽しみ方が分らない方が入ってきて遊んでしまうと荒れてしまうんですよね。

一方でTVCMをやってこそアプローチできるユーザーがいて、ある程度兆しが見えてきた段階で踏み込んでいくべきと私は思っています。

ある一定の時期まではモバイル広告でユーザーを集め、スタンダードを狙える時にTVCMを打つのが1つの方法ですね。TVCMの瞬発力はすごいです。その分コストもすごいですけど(笑)

ちなみにヨーロッパではどのようなプロモーション方法をとっているのでしょうか。


世界のプロモーションで見ると日本人が特殊なんですよね。TVを視聴する習慣が非常に強く、その中でもチャンネル数が限られている国ってなかなかなくて、日本と韓国ぐらいなんですよね。

アメリカやヨーロッパに行くとケーブルテレビが普及しているのでスポーツ好きはスポーツ番組、旅が好きなら旅番組といったチャンネルを購読するのかを選ぶので日本のTVCMの特徴と全然違います。海外の方がセグメントされている分、ターゲットに当てやすいですが、獲得するためのリーチ単価が高い傾向があります。

ただ、これだけモバイルコンテンツがグローバルに一般化してくるとマスの力が必要なタイミングに差し掛かってきていて、日本に限らず海外でもTVCMを展開しています。世界的にも他社を含めてTVCMは増加傾向にありますね。

実は8月1日から「ファームヒーロー」というコンテンツのTVCMが始まりました。
木村カエラさんを起用させていただき、カエラさんがファームヒーローに夢中になっている様子を描いているCMです。
一人でも多くの人に「ファームヒーロー」を知ってもらい、そしてプレイしていただけたらいいなという想いが伝わると嬉しいです。

ファームヒーローCM 「Farm」篇1




ファームヒーローCM 「Farm」篇2





日本を含めて世界中でキャンディークラッシュが人気の理由は何だと思いますか。


凄くユーザーにとって負荷が少ないんだと思います。時間を選ばないし、場所も選ばない。それこそトイレの待ち時間や飛行機の中でもできたりする、課金部分もライトですし、友達に凄く紹介しやすいコンテンツだと思います。コアなゲームだと少し紹介し難い面があったり、課金しないとゲームが進めないこともあると思いますが、キャンディークラッシュは遊んでいる人にとってネガティブな意見が生まれないというのは凄くいいです。


最後になりますが、枝廣さんが注目している企業やアプリを教えて下さい。。


フィンランドのコンテンツ会社である「Toca Boca」は気になりますね。教育系のアプリを作っている会社なんですが、もの凄くダウンロード数を持っていますし、日本の中でもゲームをするってことがネガティブにとらえられてしまうことがあったりするのですが、モバイルコンテンツというのは教育産業だったり、教育から次の世代の言語学者につながったりするので、試金石として「Toca Boca」という会社が世界で成功しているので注目しています。

知育アプリみたいなものが普及してくると、モバイルコンテンツがより一般化していくのかなと思っているので楽しみですね。Toca Boca社も日本人採用すればいいのにって思います。なかなか来ないですよね(笑)。日本でタブレットがもう少し普及したら変わるのかな。幼児や子供向けアプリはスクリーンが大きいほうがいいですからね。

[取材後記]

インタビューの中で枝廣さんが「Kingの社風を理解するのにこれを観るのが一番早いです」と社内向けの動画をみせて頂いた。文中にも記載していますが、経営陣もスタッフもKing社で働くことを、ゲームに関わることを楽しんでいることが伝わってきた。シリコンバレーのITベンチャーのように自由闊達で一人ひとりがプロ集団といった感じだ。

日本国内は世界NO.1のスマホゲーム消費大国である。あの任天堂もモバイル参入を発表した。パズドラやモンストのようにやり込んでハマるゲームを作るのは変わらず強いし、LINEが国内5000万人の規模を活かしカジュアルゲームで躍進している。その中でKingや「クラッシュ・オブ・クラン」のSuper cell社など世界で人気のアプリゲームが日本に進出・提携する状況は市場がより活性化し、成長していくと思う。

今回のインタビューでTVCMの話は多くの同業者に参考になったと思う。広告業界ではモバイル広告が広告メディアとして成長を牽引しているが、モバイル企業がTVを中心に広告主としても重要なクライアントになり、ますます広告業界を盛り上げることだろう。




King Japan
http://jp.king.com/

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