トップページ

 > 

インタビュー

 > 

Vol.20 エプソンのスマートグラスMOVERIO(モベリオ)「BT-200」から感じたGoogle Glassとは違うウェアラブル端末の可能性

インタビュー

日付:2014/3/24

執筆者:吉本 浩司

Vol.20 エプソンのスマートグラスMOVERIO(モベリオ)「BT-200」から感じたGoogle Glassとは違うウェアラブル端末の可能性

Vol.20 エプソンのスマートグラスMOVERIO(モベリオ)「BT-200」から感じたGoogle Glassとは違うウェアラブル端末の可能性

TAG:

このエントリーをはてなブックマークに追加

Google GlassやiWatchなどウェアラブル端末が話題になっている。スマートフォン同様にアップルやグーグルなど北米主導で進みそうなウェアラブル分野だが、グーグルのセルゲイ・ブリンが2012年5月にサンフランシスコのFoundation Fighting BlindnessでGoogle Glassを初披露した半年前、エプソンがスマートグラスMOVERIO (モベリオ)「BT-100」を発売していた。

「BT-100」は重量(ヘッドセット部)が240gと重く、昔のSF映画に出てきそうなデザインだったが、「BT-100」の後継機種としてMOVERIO 「BT-200」が5月29日に発売される発表があった。

世界屈指のプロジェクション技術とセンサー技術を要するエプソンのウェアラブル端末の可能性を探りに「MOVERIO BT-200」の販売元であるエプソン販売株式会社 販売促進本部VP MD部 部長の柳田貴之氏に話を伺いました。(※役職名は取材時のものになります。)



MOVERIO 「BT-200」は「BT-100」の後継機種ですが、何が進化したのでしょうか?


「BT-100」を発売したのが3年前の2011年です。当社の映像分野の技術を応用し、当時、他社から発売されていた、いわゆる「ヘッドマウントディスプレイ」とは異なり、視界を遮断することなく現実の世界に映像がオーバーレイする形にしました。シースルーモバイルビューアーと呼んでおり、いつでもどこでも大画面で映像、音楽、WEBを楽しめる、新しい楽しみを提案してまいりました。
MOVERIO「BT-200」
「BT-100」を発表した当時、非常に話題になりましたが、ヘッドセット部の重さが240gほどありました。そこからできるだけ小型化、軽量化し、より実用性を高めたのが「BT-200」です。重さはヘッドセットの部分で88gと大きく軽量化しました。また、HDMI接続用アダプター「ワイヤレスミラーリングアダプター」を同梱した「BT-200AV」も同時に発売するのですが、ワイヤレスミラーリングアダプターを使って、Blu-ray/DVDレコーダーの映像などを楽しんでいただくことができます。

そして、Wi-Fiやテザリングによるネットワーク接続できる機能を有していますので、情報端末として活用することができます。

もちろん、前回同様に両眼でシースルータイプです。液晶の明るさは約2倍になりました。3D映像もはっきりと楽しむことができます。
そして何よりハンズフリーという特長を活かすことで、ビジネス業務用途(BtoB)においても活用の幅が広がると考えています。

エプソン販売株式会社 販売促進本部VP MD部 部長の柳田貴之氏
「パーソナルシアターとしての映像端末」で、「インターネットの情報端末」として、そして「ビジネスの業務利用」で活用していただく。この3つの利用を中心に意識し、幅広いお客様に訴求したいと思っています。


「BT-100」が2011年の発売ですが、当初からメガネ型を意識されていたのですか?


エプソンはプリンターやプロジェクターなど多くの製品を手がけていますが、最近では、ウェアラブル分野を新規領域・強化領域として取り組んでいます。MOVERIOは、映像分野でのウェアラブル製品ということでメガネ型を意識していました。まや、このほかにもランナー向けのGPS機能を搭載した情報端末「WristableGPS」(※1)(腕時計型)やゴルフスイングの計測・解析ができる「ゴルフ解析システム(M-Tracer)」(※2)(ゴルフクラブのグリップに装着)など、さまざまな形状のウェアラブル製品を開発・発表しています。

※1・・・「WristableGPS」。国産準天頂衛星「みちびき」にも対応。GPS機能稼働時間30時間を実現し、ランニング時の距離、スピード、ラップなどを精微に計測することが可能。計測したデータは、ウェブアプリにPCでアップロードし、軌跡の地図表示や速度・距離のグラフ化など管理することができる。

※2・・・製品名は「M-Tracer For Golf」。エプソンが自社開発した高性能小型・軽量センサー(慣性計測ユニット(I M U)を搭載し、スイング解析、インパクト解析、スピード解析、シャフト回転解析、テンポ解析などのゴルフスイングを正確に計測できる装着型製品。



前回の「BT-100」を購入した顧客はどんな方が多かったのでしょうか?


ほとんどがコンシューマのお客さまでした。特にパーソナルシアターの愛好家の方が多かったように思われます。ですから、今回の製品もまず注力したのがパーソナルシアターとして映像をお楽しみ頂く機能の強化です。ヘッドセットの軽量化、フレキシブルノーズパッドやイヤーフックを採用して装着性を向上しました。サウンドも「Dolby Digital Plus」を採用しています。画面の明るさを約2倍にし、より画面がハッキリと映るように付属で2種類のシェードグラスを用意しました。まずは映像を楽しんでいただきたいですね。

MOVERIO「BT-200」を操作中
そしてデザインもスタイリッシュになりましたので、家の中だけでなく、長距離移動の飛行機や新幹線など(※3)、外出先でも違和感無く装着して楽しんでいただけると思っています。
また、Android4.0プラットフォームを採用し、GPS機能や各種センサーを備えていますので、WEBブラウジングはもちろんのこと、地図アプリやゲームアプリも楽しむことが可能となります。さらに、そうした体験を通じてビジネス利用に繋がる様々な活用ツールになりえると確信しています。

※3・・・航空機や病院など電波の使用を禁止された区域に本機を持ち込むときは無線LAN機能の電波を停止するか電源を切る必要があります。



スマートフォンもコンシューマからエンタープライズまで幅広い利用が進んでいます。MOVERIO 「BT-200」は更に様々な利用シーンがイメージできますね。


我々はスマートグラスというハードを提供しますが、使い方や利用方法は自由な発想で使って頂きたいです。前回からハード面の改良をおこないましたが、MOVERIO 「BT-200」は情報端末ですので、ソフトウェア開発環境にも力をいれていきます。

今回、MOVERIO 「BT-200」専用アプリストアである「MOVERIO Apps Market」を用意する予定です。発売日の5月29日には30種類ぐらいのアプリを公開したいと思っています。情報端末として楽しんでいただくためには豊富なアプリケーションが欠かせません。そこで「日本Androidの会」の皆様方にもお力添えをいただき、ハッカソンイベント(※4)を開催してもらい、アプリ開発にトライしてもらっています。

また、新しい取組みでいうと1月31日から2月11日まで、東京パフォーマンスドールの公演で「MOVERIO」を使ったAR公演(※5)を行いました。
これは、「BT-200」を装着することで、3Dオブジェクトや字幕を舞台シーンの実視野に重ね合わせて鑑賞することができるというものです。まだまだ実験段階ですが、ライブ会場や映画館で「MOVERIO」を装着してもらうBtoBtoCの取組みも面白い可能性があると思っています。

※4・・・スマートグラス ハッカソンと題して日本Androidの会がハッカソンを開催。3月21日に開催される年2回のAndroidの祭典ABC(Android Bazaar and Conference)で最終審査がおこなわれる模様。
「ABC 2014 Spring 」http://www.android-group.jp/conference/abc2014s/

※5・・・公演名は「東京パフォーマンスドール PLAY×LIVE 『1×0』」。2014年6月まで予定されている。会場はCBGKシブゲキ!! MOVERIOは「HMDシート」で貸与される。



特定の環境利用、設備利用としてBtoBtoCの分野は面白い活用が期待できますね。


2月22日と23日、3月1日と2日に奈良の明日香村の石舞台古墳で「古墳バーチャルガイド」と題したARの実証実験を行いました。「BT-200」を装着していただき、会場内に設置されたARマーカー画像を認識すると、石舞台古墳にちなむCGキャラが出現し、飛び出す3D映像や、360度視点でのパノラマ全方位映像を交えて解説をみる体験ができるものです。


映像の投射ですが、どれぐらいの画面で見えるのでしょうか?


2.5m先で40インチ、20mぐらいに視点を置いていただくとだいたい320型位になります。文字もクリアにみえる解像度になっています。
「BT-200」の投射

開発で一番苦労した点はどこですか?


やはり、小型軽量化と明るさですね。エプソン独自の、センサー技術や小型化する技術、プロジェクターなどの光学技術の融合が活かせていると思います。


バッテリーはどうなのでしょうか?


リチウムポリマーバッテリーで連続6時間稼働できます。電源はUSBから供給します。micro USBはスマートフォンのようなコントローラに装着し、ヘッドセットとケーブルで繋ぎます。コントローラはトラックパッドを採用しているので、直感的に簡単に操作いただけると思います。また、Bluetooth接続に対応していますので、Bluetooth対応のキーボードやマウスなどと接続可能です。micro SD/SDHCカードスロットも搭載しています。

「BT-200」の苦労点を話すエプソン販売の柳田部長

ヘッドセット部分には、主にQRコードなどを読み取るためのカメラ(30万画素)が付いていますが、このほかどのようなセンサーが付いていますか?


カメラ以外にも、加速度センサーや地磁気センサー、ジャイロセンサーを搭載しています。また、コントローラ部にはGPS機能も搭載しています。AR技術もそうですが、アプリケーションによって「BT-200」の活用シーンの広がりを持たせることが可能です。


Google Glassやソニーの3D対応ヘッドマウントディスプレイ「HMZ」シリーズなど他社との差別化はどのようにお考えでしょうか?


当然、競合他社との比較はでてくると思っています。ワールドワイドにおいては、通信ネットワークのグラス型ウェアラブル端末としてGoogle Glassが話題になっていますが、彼らは単眼で非常に解像度の高いカメラ(※6)を搭載しているなど、細かい点で使用目的が異なってくると思いますので、単純比較は難しいです。
ただし、競合商品が多いほど、この「スマートグラス」の市場は拡大していくと思いますので、エプソンも負けないように取り組んでまいります。

ヘッドマウントディスプレイにおいては、ソニーさんが、まずは競合製品となりますが、完全に目を覆うクローズドな製品ですので、映像やゲームなどの使用に限られると考えています。これに対して、MOVERIOはシースルータイプのため屋外での活用が可能であり、強みと考えています。

わたくしどもとしましては、グーグルさんやソニーさんとは違う特長を活かして、これら2社の製品を包括した幅広い用途に利用できると思っています。ですから、プロモーションアプローチは様々ございますが、改めてエプソンが提唱する3つのシーン「映像を楽しむ」「通信ネットワークで情報を取り扱う」「ビジネスの業務利用で役に立つ」、この3つの可能性を強く打ち出してまいります。

※6・・・Google Glassのカメラは静止画500万画素、動画720pHDビデオ録画機能がある。


Google Glassとは違う点を柳田部長は強調

Google Glassは米国で約1700ドル(本体1500ドル+オプション)、ソニーのHMZ-T3Wも定価で約10万円(店頭価格は約8万円ほど)ですが、MOVERIO 「BT-200」は店頭価格で7万円前後になるようですね。(「BT-200AV」は9万円前後)


この製品は、新しいライフスタイルを提案できる新分野の商品と考えています。この手の情報端末として、まずは適切な価格帯とは考えています。また、視聴制限として中学生以上の方から利用いただくことになりますが、是非、教育現場で導入いただくなどして、若い人に使って頂き、新しい使い方をしてもらいたいですね。


日本での発売は5月29日
とのことですが、日本市場と世界市場をどのように捉えているのでしょうか。(「BT-200AV」は9万円前後)


今回、まず先行して1月6日(現地時間)に米ラスベガスで開催している家電見本市CES 2014で発表しました。CESでは海外のSIerと組んでBtoBを意識した展示内容にし、ビジネス利用を全面に出すプロモーションをしています。一方、日本においては、まずはパーソナルシアターとして前機種と同様に個人で映像を楽しむ視点をしっかり伝えていきたいですね。販売についてはアメリカ、そして5月29日の日本、その後、各国で順次発売していく予定です。


最後に、MMD研究所には多くのアプリベンダーやベンチャー企業、個人の開発者の方が会員になっています。「MOVERIO」の可能性を拡大する為にも、さまざまなアプリケーションが出てくることが望ましいと思いますので、開発者の方にメッセージをお願いします。


スタート時は30種類ぐらいのアプリでスタートしますが、どんどん外部からのアプリの参加を募集しています。また、3月4日には開発者向けのサイトをオープンしました。(※7) 興味をもっていただいた方にID/PASSを発行し、「MOVERIO」のSDKを提供します。ベースがAndroidですので、多くの開発者の方の参加を期待しています。特にコンシューマ向けのゲームやユーティリティアプリは大歓迎ですね。

さらに、BtoBでは想定されるビジネス業務支援の状況に応じたアプリ開発になると思いますので、エンタープライズのアプリケーション開発が得意なSIerさんやベンダーさんにお声掛けしたいと考えています。従来からのシースルータイプやハンズフリー、連続6時間稼働に加えて、今回は各種センサーやGPS機能を装備していることから、特にBtoBやBtoBtoCの分野に大きな可能性を感じています。

終始、穏やかな語り口調の柳田部長
今後、多くのウェアラブル製品が世の中に出てくると思いますが、エプソンはセンサー技術、プロジェクション技術、プリンティング技術などコア技術を使った製品を生み出してまいります。それがお客様にとって価値があることを大切にしています。その中において、MOVERIO「BT-200」は非常に可能性のある商品として楽しみにして頂きたいですね。

※7・・・3月4日に「MOVERIO BT-200」専用アプリを開発するデベロッパー向けのサイト「MOVERIO Developer Site」が仮公開されました。詳しくは下記のサイトからアクセス下さい。
MOVERIO Developer Site



[取材後記]

取材の最後にMOVERIO 「BT-200」をかけ、映像を楽しませて頂いた。シースルーなので背後は当然そのままの風景で、その間の空間に映像画面のレイヤーが出現する。非常に美しい画面で、背景が明るい場所は若干、光で色が見えづらくなるが、手をかざして影を作るとすぐにハッキリ映像が見える。もちろん、付属のシェードグラスだと映像はクリアに観える。同席頂いたエプソン販売の岡本さんから「真っ暗な部屋で体験すると映像だけが浮かんで不思議な体験ができますよ」と教えて貰った。

実際の空間に映像を出現できるため、医療カルテや精密図面、インストラクターの映像、レシピなど様々な現実世界を映像でサポートできそうである。個人的には流行っているリアル脱出ゲームと「MOVERIO BT-200」がコラボし、よりリアル&バーチャルなゲーム体験が楽しめそうと感じました。(ただし、個人使用において「歩きながら」や「車の運転や料理をしながら」などの危険を伴う使用は禁止をアナウンスしている。)

この手の新しいガジェットや端末は、まずは体験しなければ始まらない。是非、欲しいと感じた方やアプリ開発者の方はエプソンのショールームや発売日である5月29日以降の家電量販店で実際に体験してみて欲しい。


取材協力頂いたエプソン販売の柳田部長と岡本さん

MOVERIO公式サイト


※スマートグラスMOVERIO(モベリオ)『BT-200AV』、『BT-200』発売日延期のお知らせ
このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事の執筆者

吉本 浩司(ヨシモト コウジ)

吉本 浩司(ヨシモト コウジ)
facebook https://www.facebook.com/koji.yoshimoto

MMD研究所 編集長
MMDLabo株式会社 代表取締役

あわせて読みたい記事:

登録すると、より詳細な調査結果を掲載した
ファイルがダウンロードできます!

新着記事

pagetop