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コラム

2026年1月29日

「人手不足だからAI」だけでは現場は救われない? コールセンター調査で見えた“構造的な難しさ”と“人とAIの新しい協業”

人手不足が常態化し、顧客からの要求レベルも高まる昨今のコールセンター。今回の調査結果からも、多くのセンターが「オペレーターの採用難」「育成」「品質維持の試行錯誤」という三重苦に直面している実態が浮き彫りになりました。
 
本コラムでは、定量データだけでは見えにくい「現場の苦悩」の正体に迫るとともに、数多くのコンタクトセンター支援を手掛ける株式会社PKSHA Technology(東京都文京区、以下PKSHA)の専門家解説を交え、今、現場で何が起きているのか、そしてどうすればこの状況を打破できるのかを紐解きます。

【株式会社PKSHA Technologyについて】

PKSHA Technologyは、「未来のソフトウエアを形にする」というミッションを基に研究開発・ソフトウエアの社会への提供を行い、「人とソフトウエアの共進化」というビジョンのもと、個の多様性が輝く社会を目指し、アルゴリズムソリューションを展開しています。
今回の調査は、人手不足やAI化などの変化にさらされているコールセンターで、オペレーターや管理者が直面する現状や課題を浮き彫りにする目的で企画されました。

目次

1. 定性調査から見える“課題の真髄”
  ■ 「育成したい」のに「電話を取るしかない」ジレンマ
  ■ ベテラン頼みの綱渡り

2. 現場は、課題とどう向き合っているのか?

3. なぜ、こうした課題が起き続けるのか?
  ■ 「人」に残ったのは、難易度の高い対応ばかり
  ■ アナログな「指導」と「実務」の乖離

4. 課題解決のために本当に必要な視点とは?
  ■ 「忘れる」人間を、AIがリアルタイムで支える
  ■ 「隣に専属のSVがいる」安心感を作る

5. 次の一手として考えるべきこと

 

1.  定性調査から見える“課題の真髄”

定量調査では「オペレーターの育成」「カスタマーハラスメント対策」「マニュアルやナレッジの整備・更新などが不十分」が課題の上位に挙がりましたが、現場の管理者(以下、SV)やリーダー層へのインタビューからは、より切実な「構造的な改善の必要性」が見えてきました。

「育成したい」のに「電話を取るしかない」ジレンマ

現場の声で際立ったのは、「やるべきことは分かっているが、物理的に手が回らない」という悲鳴です。本来、SVやリーダーの役割は、オペレーターのモニタリングや指導、マニュアルの整備です。しかし、人手不足があまりに深刻なため、管理者自身がプレイヤーとして受電業務に忙殺されているのが現実です。

ベテラン頼みの綱渡り

また、インタビューからは「オペレーターの高齢化」や「ベテランの暗黙知への依存」も指摘されています。「新人を入れても、膨大な知識と複雑な感情対応についていけず定着しない。結局、残っているベテランだけで現場を回している」――そんな“綱渡り”の状態が、多くの現場の真髄と言えます。

 

2.  現場は、課題とどう向き合っているのか?

では、現場はこの状況にどう対処しているのでしょうか。調査からは、現場の懸命な努力と、その限界が見えてきました。
PKSHAによると、SVがオペレーターの通話履歴からスキル評価をできるのは、「月に2~3件程度」というケースも珍しくありません。本来ならリアルタイムで行うべき指導が、1ヶ月前のログを聞き直して行う形になり、指導の効果が薄れています。今回の調査でも、QA活動の効果を実感している割合は3割程度にとどまっています。

※より詳細なデータはPKSHAのサイトよりダウンロードできます

有人対応に追われている状況から、ナレッジ整備、マニュアルやQ&Aの更新を行う時間が取れない―― 結果として、古い情報のまま対応せざるを得なかったり、業務時間外に対応したりと、現場の負荷を高める要因になっています。
「本当は一人ひとりに寄り添った指導をしたい」「最新のナレッジを届けたい」。 そう願いながらも、目の前のコールを捌くことだけで一日が終わってしまう。これが現場のリアルな対処状況です。

 

3.  なぜ、こうした課題が起き続けるのか?

なぜ、これほど努力しても課題は解決しないのでしょうか。PKSHAの専門家は、コールセンターが抱える「業務の変質」と「構造的なミスマッチ」を指摘します。

 「人」に残ったのは、難易度の高い対応ばかり

チャットボットやIVR(自動音声応答)の導入が進んだことで、簡単な問い合わせは自動化されつつあります。これは一見良いことですが、結果として「有人対応には、複雑で解決困難な案件や、感情的な対応が必要な案件だけが濃縮されて残る」という現象が起きています。 今回の調査で、8割以上が「人でなければ解決できない問い合わせがある」と回答した事実は、有人対応の価値が今後も失われないことを示していると言えるでしょう。

※より詳細なデータはPKSHAのサイトよりダウンロードできます

「急いでいる」「怒っている」「自分でも何が分からないかが分からない」といった、感情面への配慮や、状況に応じた判断を求められる高度なコミュニケーション能力、瞬発力が必要な対応ばかりが、限られた人数のオペレーターに押し寄せているのです。

 アナログな「指導」と「実務」の乖離

PKSHAは「オペレーターの指導」にも問題を提起しています。

「SVが月数百件のコールのうち、数件だけを聞いてオペレーターを指導するのでは、どうしても限界があります。しかもそれは『過去の通話』です。しかも指導は月に1~2回、かなり前の事例をもとに実施されます。これではオペレーターが納得感や育成の充実度を感じにくい」(PKSHAインタビューより)

過去のデータを元にしたアナログな指導モデルが、リアルタイム性を求められる現在の難易度の高い応対現場に追いついていない。これが、課題が慢性化する構造的な要因です。

 

4.  課題解決のために本当に必要な視点とは?

この構造的な課題を解決するために、私たちはどう発想転換すべきなのでしょうか。 PKSHAは、単なる「自動化(人の代替)」ではなく、「人とAIの協業(人の支援)」こそが鍵だと語ります。

「忘れる」人間を、AIがリアルタイムで支える

解決の方向性は、「人が苦手にしていることをAIに任せ、人が得意なことに集中する」という役割分担の再定義です。

AIの役割: 膨大なマニュアルから、今必要な回答を瞬時に提示する。会話内容をリアルタイムで解析し、「次はこう返すべき」とナビゲートする。事務作業やログの要約を自動化する。

人の役割: AIが提示した情報を元に、お客様の感情に寄り添って伝える。複雑な文脈を読み解き、最終的な判断を下す。

「隣に専属のSVがいる」安心感を作る

PKSHAが描く未来は、AIが「一人ひとりのオペレーターの隣に座る、専属のスーパーバイザー」になる姿です。オペレーターが知識不足でお客様を待たせてしまうときに、正しい情報を提示したり、怒られたときにすぐ察知して人のSVに助けを求めるなど、先回りした支援を提供するこれにより、経験の浅いオペレーターでも、ベテランに近い品質で、安心して応対ができるようになります。

「AIが全部を変えるわけではありません。正しい情報の検索や事務作業はAIに任せ、人は『感情に合わせた応対』という、人でなければできない価値提供に集中する。このハイブリッドな環境を作ることが、持続可能なセンター運営への唯一の道です」(PKSHA インタビューより)

 

5.  次の一手として考えるべきこと

今回の調査と専門家の解説から見えてきたのは、「人の頑張りだけで品質を維持する時代は終わった」という事実です。今日から見直すべきは、以下の2点です。

  • 応対スキルを高める事前・事後の育成活動
  • 「応対中のリアルタイム支援」の両面でAIによるSV・オペレーター業務の補完を行うこと

「人手不足だからAIで自動化する」という0か1かの議論ではなく、「今のメンバーが長く活躍し、疲弊せずに高いパフォーマンスを出すために、AIによる品質管理(AIQA)を“頼れる同僚”としてどう現場に迎え入れるか」。この視点の転換こそが、課題解決に向けた最初の一歩となるでしょう。

本コラムでご紹介した調査結果の詳細な数値データや、記事には載せきれなかった現場の「生のコメント」を網羅したレポートを無料で公開しています。

  • 他社のコールセンターが抱える具体的な課題数値
  • SV・オペレーターの本音(自由回答)
  • PKSHAによる詳細な分析と改善アプローチ

自社のセンターが抱える課題の「現在地」を知るための指標として、また社内での改善提案の裏付け資料として、ぜひご活用ください。

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