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Vol.40 シニア女性がITで輝くために、ラストワンマイルを埋める フィフティ・プラス・ベンチャーズ株式会社

インタビュー

日付:2015/6/24

執筆者:

Vol.40 シニア女性がITで輝くために、ラストワンマイルを埋める フィフティ・プラス・ベンチャーズ株式会社

Vol.40 シニア女性がITで輝くために、ラストワンマイルを埋める フィフティ・プラス・ベンチャーズ株式会社

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シニア女性から圧倒的な支持を得て定期購読者数20万人を誇る雑誌がいきいき株式会社から発行されている『いきいき』だ。そして、「50代からの生きかた・暮らしかたを提案・応援する」という理念を持つ同社の新規事業開発室から生まれたシニア女性に特化したSNS『いきクル』事業などを継承して設立されたのが『フィフティ・プラス・ベンチャーズ株式会社』である。今年2月、このフィフティ・プラス・ベンチャーズはSIMカードとタブレットのセット販売を開始した。
今回は、シニア女性とITを繋ぐユニークな事業を展開するフィフティ・プラス・ベンチャーズ株式会社で『いきクル』事業の責任者を務める川田修平氏にお話を伺った。



シニア女性が求めていた「交流」


SNSである『いきクル』を開発したきっかけは、いきいき株式会社の中で新規事業を作ろうという動きの中で調査をしたことでした。その調査結果から高齢女性が望んでいるものの中に「交流」という言葉が多く挙がっていて、これを何か仕組み化できないか、という発想がそもそもの事業の種になっています。

弊社としてもチャレンジングな試みだったので、2012年の1月にフェイスブックのグループ機能を使って小さく実験を始めました。『いきいき』誌面でモニターを募集した時点で200名ほどの応募があり、最終的にはグループに400~500名くらいのお客様が集まりました。

左)雑誌『いきいき』  右)SNS『いきクル』


2013年の1月まで、およそ1年間そうした実験を行い予想以上に会員が集まったことを受けて、それなりのニーズがありそうだからオリジナルのプラットフォームを作ろうという判断に至りました。オープンしたのが2013年の9月で、現在の会員数は3万人弱です。

当初フェイスブックを使ったのは、そもそもシニア女性の中にSNSを使いたいというニーズがあるのか、ということが我々にも分からなかったからです。大きな投資をする前に、まずは簡易的にスモールスタートができるものということで、フェイスブックのグループ機能を使いました。

もちろん、そもそも会員登録などのハードルを越えられるのか、というような課題がありましたが、ある程度フォローすればそのハードルをクリアすることができ、一旦登録をすれば、その中で非常に活発なコミュニケーションが行われる、ということが分かりました。

我々がターゲットとするアクティブで前向き、そして好奇心の強いシニア女性というセグメントと非常に合致したグループができ、これをもっと大きくしていきたいし、できるだろうという判断ができたことが、『いきクル』というオリジナルSNS開発につながりましたね。

ユーザーさんからの反応として興味深かったのは、安心・安全面への要望が多かったことです。インターネットやSNSをやってみたいけれども怖い、不安だというような声が多かったです。それは正しい使い方が分からないというのと、オレオレ詐欺のような詐欺の被害に遭ってしまうのではないか、という不安でした。

実際に話を聞いてみると、過去にブログをやっていた時に知らない人からの書き込みがあって、リンクを押したらお墓を販売するようなサイトに誘導された経験を持つ方もいて、安心安全な環境の中でインターネットを楽しみたいというニーズが多かったんですね。今、そういった不安を抱かせることなくサービスを提供できているのは、長年『いきいき』という雑誌を通じてコミュニケーションをとってきた我々だからこそ、という部分も大きいかなと思います。

実際、社員でも登録・ログインしないと見られないくらい安全面には気を使っています。登録は実名でしていただき、我々の方で登録されたお客様をチェックします。住所が存在するかを確認するためにハガキを送り、届かなければ退会という形になって、基本的には男性会員や法人などは排除します。




やはり若者向けのサービスとは違って、自分がユーザーとして考えても気が回らない部分がたくさんあります。安心安全というところも、自分がユーザーだったら気にしない、非常に些細な部分もすごく気にされる方が多いというのは発見というか違いとして興味深かったところですね。

シニア女性向けタブレット販売の背景



タブレット販売は、『いきクル』への流入状況を見て判断しました。PC6割、スマホ2割、タブレット2割という割合ですね。私が前に携わっていた若者向けのサイトだと、スマホ8割、PC15%、タブレット5%という感じだったので、それと比較するとかなりタブレットが使われているという体感がありました。あとは文字が小さいと見えないというのもあるので、お客様にはタブレットのほうが安心してお使いいただけるのではないかとも考えました。

我々のタブレットの特徴は格安SIMを使うので通信料が安いというのが1つ。それから機能面でも独自のメニューを作っています。LINEなどよく使うであろうアプリをプリセットして、必要なものがすでにセットされている状態でお渡しします。アイコンの大きさも通常より大きくした、独自の画面を作って提供しています。プリセットのアプリはお客様へのヒアリングの結果、こういうのが欲しいという意見が多かったものです。


タブレットホーム画面



今年の4月にモニター販売という形で募集をしたところ、それなりの人数が集まって「挑戦してみたいわ」というようなコメントも多数いただきました。

このタブレットでも、想定していないことがたくさん起きました。たとえば、電源の入れ方が分からない、毎回電源を落としてしまう、またタブレットとセットでスタイラスペンなどのアクセサリーも販売する予定なのですが、やはりこれも説明がないと、使い方すら分からなくて消しゴムだと思われてしまったりします。

いかにUIを工夫したところで、また電話サポートを設けたところで、一人でマスターしてもらうには限界があるということを改めて痛感しました。

そこで、我々としてはダイレクト販売も行いますが、特徴として出そうとしているのは、説明会をセットにした販売です。本格販売を開始する7月から全国を回っていきます。説明会に来ていただいて手に持ち、ある程度動かせるところまで、手厚いサポートをしていこうと思っています。

たとえば、最低限LINEを使って問い合わせをする、というところまでは出来るようになってもらおうと考えています。スクリーンショットを撮り、それをLINEでサポートチームに送ってもらう、というところまでは説明会のときにしっかりできるようにしてもらおうという目標です。

もちろん電話サポートも行いますが、電話だと工数もかかりますし、時間のコントロールができない。でもLINEであれば、実際にトラブルが起きている画面を理解しながらコミュニケーションが取れるので、サポートとしての質を上げられ、且つ我々の効率も良くなります。

料金設定も、そうしたサポートを含めて設定しています。通信料+サポートサービス・保証も含めて月額2770円。端末(NEC製Lavie Tab S)は4万円です。スマホだと通信料だけで月々6000~7000円になりますよね。そうなると年金だけで生活されている方には負担になってしまうと。中間のゾーンというのがあると我々は思っていて、そこが価格設定においてはポイントかなと思います。


課題としては、SNSにしてもタブレットにしても、お客様のITリテラシーをどう埋めるかというところが重要なので、そこをどういう仕組みでやるのかというところですね。

たとえばメニューのアイコンも横線3本だけで私たちは直感的に分かるじゃないですか。でも、シニアの方々はやはりそうはいかないんです。体感的に当たり前に分かってしまっている身からすると、そこのギャップをいかに埋めるかが非常に大切なところだなと。さきほど言った電源を落としてしまう、というのもそうなんですけれども、世の中のこういったデジタルサービス自体が若い人だったりビジネスマンをターゲットに作られていますよね。でも、シニアの女性が活用できるもの、したいと思ってらっしゃるものもたくさんあるので、そうした世の中にできてしまった当たり前とのギャップを埋める作業を丁寧にしているところです。

こうしたことは、『いきクル』のオフ会を通じて月に数十人に会っているので、そういった機会を通じて言葉として得られるものもありますし、所作を見てこんな使い方するんだ、というのを見て学ぶこともあります。日々のコミュニケーションを通した観察からプロダクト開発にフィードバックできることは非常に多いですね。

フィフティ・プラス・ベンチャーズが目指すもの


『いきクル』は現時点でもお客様と顔が見えるくらいの距離感を作り出すツールとして機能しているかなと感じています。『いきクル』でアクティブなユーザーというのは、『いきいき』で購入している金額も多い傾向にあって、雑誌の定期購読の継続率も高いユーザーが多いんです。

実は、社員の日記のようなものを公開していて、「通販カタログのこのカテゴリを担当している○○です」というような形でコミュニケーションをとっています。もちろん、「この商品オススメです!」というような投稿は絶対にしないルールですが、こうしたコミュニケーションが、安心して購買していただける環境づくりに役立っているようにも思いますね。

雑誌は、市場全体が縮小傾向にあります。その中で、『いきいき』のコアなメンバーが『いきクル』に参加している割合が多いという事実や、ネットユーザーがどんどん増えていく時流もあるので、雑誌『いきいき』への定着率を挙げることを目標にSNSである『いきクル』を運営すると同時に、新しいお客様に『いきいき』の世界に入っていただくきっかけとなるようなチャネルにしていきたいです。

ビジョンというところでいうと全社の思想につながりますけれども、SNSやタブレットを使いこなすことでポジティブな情報、知らなかった考え方に触れ、シニア女性がよりよい自分になるための出逢いをサポートする、というところになります。

ただ、『いきクル』のお客様の平均年齢が63歳、『いきいき』読者の平均年齢は67,8歳となっていて、正直、SNSに対する高齢層の反応というのは思った以上によくはありませんでした。何か使ってやりたいなという気持ちはあるけれども、やり方がわからない、息子も教えてくれないし、店舗に行っても教えてくれる人もいるけれども煙たがられることもある、という理由で心理的なハードルが存在しているのも確かなんです。

シニア女性がITを使いこなすには、まだまだかなりのハードルがあるという認識の下、そこのラストワンマイルを埋めるサービスを提供する、これが我々のやるべきドメインだと思っています。


[取材後記]

今回、川田氏のお話を伺っていて、やはりシニア層のデジタルシフトの壁は厚く高いように感じた。その中で『いきクル』がうまくいっているポイントは、ターゲットのニーズを汲み取ろうとする細やかなリサーチと、「信用」ではないだろうか。イオンスマホがシニアからの支持を得て格安スマホ市場が活性化されていった例もある。企業側がいかにフォローを厭わず積極的にアプローチしていけるかが、シニアという未開市場を広げていく上でのポイントになるのではないだろうか。

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