コラム
2016年3月15日
第2回MMD研究所主宰「MVNO勉強会」/女性普及の鍵は?
MMD研究所は3月2日「MVNO3社に聞く、格安SIMの女性利用の拡大について」と題したメディア向け勉強会を開催しました。こちらは昨年のイベントに続いて2回目の開催になります。
前回の開催は奇しくも総務省のタスクフォース発表日と重なる形での開催となりました。総務省からも料金適正化についてコメントがありましたが、消費者にとってMVNOという選択肢がより身近になること、そしてそれが市場活性化につながること、それが当研究所の願いであり、その市場活性化には女性への普及が鍵となるだろうという当研究所の仮説が、今回の勉強会のテーマにつながっています。
今回、登壇いただいたのはOCNモバイルONEを提供するエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の岡本健太郎氏、BIGLOBE SIMを提供するビックローブ株式会社の河口清華氏、mineoを提供する株式会社ケイ・オプティコムの津田和佳氏。モデレーターはMMD研究所所長である吉本が努めました。
会場には前回同様多くのメディア関係の方にお集まりいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
冒頭、吉本より直近で行った2016年1月「格安SIM利用時意識調査」から見て取れる現状を説明しつつ、ユーザーの半数が2015年から使い始めた層であること、アーリーアダプダー層(検討者)の獲得が鍵であり、その中でも女性は、音声通話つきプランを利用したいわゆる「メイン利用」が多いことなどを説明いたしました。
同調査のファネル分析結果を見てみると、格安SIMの認知度は76.5%といよいよ8割近い人が、その存在についてはなんとなく聞いたことがあるという高い認知度になってきているものの、サービス認知で約半分に、利用検討で更にその半分以下に、利用経験・継続利用で最終的には約7%まで落ちてきます。この落ち幅が大きいところには、それぞれ事業者の課題が潜んでいる事が推測されますが、今回はMVNO3社から見た「次の顧客」=検討者にフォーカスをあて、各社の概況と、検討者に選んでもらう為の今後の取り組みについて発表していただきました。
BICモバイルONEでは、契約に関わる不安要素を取り除く為、WEBコンテンツでの「はじめてガイド」の開設をはじめとして、ユーザーとのコミュニケーション強化を図っていくことや、ニーズに合わせたサービス・販売方法(例えば、端末含めたオールインワン販売)の提供を進めていく事が発表され、BIGLOBE SIMでは、8万箇所に設置されたWi-Fiスポットの利便性を説きつつ、一方でIOTプロダクトであるBL-01というBtoB向けの企業向け開発キットの事例(会津若松市での道路の塗装情報の計測)など、今後の新しい可能性についても言及していました。
最後にmineoからは、「Fun with Fans」を合言葉に便利に楽しく面白いサービスをユーザーと共に作っていく方針が発表され、その事例としてmineoで運営しているコミュニティサイト「マイネ王」では、日々ユーザー同士で活発にコミュニケーションがとられていること、そしてそこでは、良い発言に対して通信パケットを送る「チップ」や、使わなくなったパケットをシェアする「フリータンク」など他のサービスとは一線を画するサービスを展開している現状が発表されました。
各社からそれぞれご説明いただいた後は、MMD研究所から用意した4つのテーマを軸にお話いただきました。
mineoからは30~40代のビジネスマンが特に多いこと、その事により通勤、昼休みに通信のピークが来ている事が挙げられましたが、最近では夕方以降の利用が増えつつあることにも言及されていました。これは最近リリースした大容量プランなどの利用者が増加した事で、ユーザーの利用方法が多様化してきていると予想されていました。これを受けmineoでは、今ではリテラシーの高い方が、「お得に」「賢く」使うケースが多かったが、契約者が増加する中で、今後は色々な使い方をするユーザーが入ってくる事が予想されるため、一層品質の担保に力を入れていくという話がありました。
非常に印象的だったエピソードは、「質問の半分はサービスの内容に関する事。実はHPに書いてあるんですけどね」「我々が大丈夫ですよ!と言っても信じられないのかもしれませんね。」というものでした。
ここには、ユーザーの不安というものが如実に現れていて、「HPに書いてあるけど、ホントかな・・?」「2000円て書いてあるけど、ちゃんと2000円で済むんだよね?」といった、「安心して契約したい」ユーザーの念押し・不安が、ひしひしと感じられました。
弊社の調査では選んだ理由として、常に「低価格」が上位にきますが、必ずしも最低価格のものだけが選ばれているわけではない結果を見ても、ユーザーを(契約にいたらせる)最後の一押しには、価格以外の要素も含まれていることでしょう。
先のグループインタビューでも、女性から挙がっていた「不安」の声ですが、事業者側でもそれは既に認識していることがわかりました。問い合わせの声を吸い上げる中で、今後はMNPをFace to Faceでやりたいという声が増えていく手ごたえも感じているようです。まだ女性は早いのでは?という声もありましたし、事実まだ男女半々には程遠いユーザー分布ではありますが、ライフステージが変わり目の来月も間違いなく多くのユーザーがMNPを検討する中、MVNOもその選択肢のひとつに入れるのではないでしょうか。
そして、各社の様々な不安を取り除く施策が功を奏し、来年の変わり目の頃には、数多くの女性がMVNOへのMNPを検討している光景が見られると思っています。2016年上半期まずは、イノベーター層への浸透を楽しみにしたいと思います。
前回の開催は奇しくも総務省のタスクフォース発表日と重なる形での開催となりました。総務省からも料金適正化についてコメントがありましたが、消費者にとってMVNOという選択肢がより身近になること、そしてそれが市場活性化につながること、それが当研究所の願いであり、その市場活性化には女性への普及が鍵となるだろうという当研究所の仮説が、今回の勉強会のテーマにつながっています。
今回、登壇いただいたのはOCNモバイルONEを提供するエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の岡本健太郎氏、BIGLOBE SIMを提供するビックローブ株式会社の河口清華氏、mineoを提供する株式会社ケイ・オプティコムの津田和佳氏。モデレーターはMMD研究所所長である吉本が努めました。
会場には前回同様多くのメディア関係の方にお集まりいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
冒頭、吉本より直近で行った2016年1月「格安SIM利用時意識調査」から見て取れる現状を説明しつつ、ユーザーの半数が2015年から使い始めた層であること、アーリーアダプダー層(検討者)の獲得が鍵であり、その中でも女性は、音声通話つきプランを利用したいわゆる「メイン利用」が多いことなどを説明いたしました。
同調査のファネル分析結果を見てみると、格安SIMの認知度は76.5%といよいよ8割近い人が、その存在についてはなんとなく聞いたことがあるという高い認知度になってきているものの、サービス認知で約半分に、利用検討で更にその半分以下に、利用経験・継続利用で最終的には約7%まで落ちてきます。この落ち幅が大きいところには、それぞれ事業者の課題が潜んでいる事が推測されますが、今回はMVNO3社から見た「次の顧客」=検討者にフォーカスをあて、各社の概況と、検討者に選んでもらう為の今後の取り組みについて発表していただきました。
BICモバイルONEでは、契約に関わる不安要素を取り除く為、WEBコンテンツでの「はじめてガイド」の開設をはじめとして、ユーザーとのコミュニケーション強化を図っていくことや、ニーズに合わせたサービス・販売方法(例えば、端末含めたオールインワン販売)の提供を進めていく事が発表され、BIGLOBE SIMでは、8万箇所に設置されたWi-Fiスポットの利便性を説きつつ、一方でIOTプロダクトであるBL-01というBtoB向けの企業向け開発キットの事例(会津若松市での道路の塗装情報の計測)など、今後の新しい可能性についても言及していました。
最後にmineoからは、「Fun with Fans」を合言葉に便利に楽しく面白いサービスをユーザーと共に作っていく方針が発表され、その事例としてmineoで運営しているコミュニティサイト「マイネ王」では、日々ユーザー同士で活発にコミュニケーションがとられていること、そしてそこでは、良い発言に対して通信パケットを送る「チップ」や、使わなくなったパケットをシェアする「フリータンク」など他のサービスとは一線を画するサービスを展開している現状が発表されました。
各社からそれぞれご説明いただいた後は、MMD研究所から用意した4つのテーマを軸にお話いただきました。
①スマホ料金の通信、端末の適正金額は?
利用者が無駄なく使えるような工夫(デイリープランなど)や端末代を値引いたり、一括払いの負担を軽減する端末との値引き・割賦販売は引き続きやっていくという話が出る一方で、(値下げ競争が激化する昨今ですが)現状の料金帯が下げ止まりではないかという見解も出ました。②自社サービスの利用者の利用の特徴は?価格やサービスなど検討者への訴求は何が必要?
BICモバイルONEでは、プロバイダへの安心感を求められているのではとの見解があり、実際2割のユーザーが「OCN光」とのセット割に加入している事例が出され、BIGLOBE SIMでは「家族シェア」で選んだという声の大きさに手ごたえを感じているというお話もありました。また、サービスの特徴として通話パックや、大容量プラン、豊富なWi-Fi設備について言及するも、(ITに)詳しい方には、響いても、果たして女性に(その利便性・メッセージが)届くのか・・という点は同時に課題として認識されているようでした。mineoからは30~40代のビジネスマンが特に多いこと、その事により通勤、昼休みに通信のピークが来ている事が挙げられましたが、最近では夕方以降の利用が増えつつあることにも言及されていました。これは最近リリースした大容量プランなどの利用者が増加した事で、ユーザーの利用方法が多様化してきていると予想されていました。これを受けmineoでは、今ではリテラシーの高い方が、「お得に」「賢く」使うケースが多かったが、契約者が増加する中で、今後は色々な使い方をするユーザーが入ってくる事が予想されるため、一層品質の担保に力を入れていくという話がありました。
③利用者や申込み検討者からの質問は何が多い?検討者に向けてどんなコミュニケーションが良い?
各社から挙がってくるのは、「理解不足」「不安」にまつわる話がほとんどでした。非常に印象的だったエピソードは、「質問の半分はサービスの内容に関する事。実はHPに書いてあるんですけどね」「我々が大丈夫ですよ!と言っても信じられないのかもしれませんね。」というものでした。
ここには、ユーザーの不安というものが如実に現れていて、「HPに書いてあるけど、ホントかな・・?」「2000円て書いてあるけど、ちゃんと2000円で済むんだよね?」といった、「安心して契約したい」ユーザーの念押し・不安が、ひしひしと感じられました。
④どんな理由や魅力を感じて契約したのか?
BICモバイルONEとBIGLOBE SIMでは、インターネット固定回線を長いことやってきたブランド・安心感を例に挙げ、mineoでは斬新なサービスやマルチキャリアがウケているのではと回答がありました。弊社の調査では選んだ理由として、常に「低価格」が上位にきますが、必ずしも最低価格のものだけが選ばれているわけではない結果を見ても、ユーザーを(契約にいたらせる)最後の一押しには、価格以外の要素も含まれていることでしょう。
先のグループインタビューでも、女性から挙がっていた「不安」の声ですが、事業者側でもそれは既に認識していることがわかりました。問い合わせの声を吸い上げる中で、今後はMNPをFace to Faceでやりたいという声が増えていく手ごたえも感じているようです。まだ女性は早いのでは?という声もありましたし、事実まだ男女半々には程遠いユーザー分布ではありますが、ライフステージが変わり目の来月も間違いなく多くのユーザーがMNPを検討する中、MVNOもその選択肢のひとつに入れるのではないでしょうか。
そして、各社の様々な不安を取り除く施策が功を奏し、来年の変わり目の頃には、数多くの女性がMVNOへのMNPを検討している光景が見られると思っています。2016年上半期まずは、イノベーター層への浸透を楽しみにしたいと思います。
この記事の執筆者
佐々木 怜(ササキ レイ)
MMD研究所 編集部員