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インタビュー

2014年11月13日

Vol.26『Antenna』が提案するスマホ時代の新たな広告と、広告のその先

昨今注目を集めるキュレ―ションアプリ。中でも女性からの支持が厚いのがAntennaだ。そのダウンロード数は400万を突破、提携メディアは300以上、そして中をのぞいてみれば、当たり前のようにナショナルクライアントの広告が溶け込み、多いものでは数百万のPV数をたたき出している。
メディアとして全てのステークホルダーから支持されるAntenna。今回はそんなAntennaを運営するグライダーアソシエイツ代表取締役社長CEO杉本 哲哉氏と同社取締役荒川 徹氏に話を伺った。



杉本氏>ちなみに、今うちニュースカテゴリにアプリを置いていなくて、今日実は記念すべき日で、エンタメで1位に・・・おめでとうございます!!!(拍手)


“ニュース”ではなく“エンタメ”を選んだのは消費者インサイトを掴みたかったから


杉本氏>Antennaをサービスインした経緯からなんですが、当たり前なんですけど本当に過去、いちいち色々なサービスを立ち上げるたびに、全く同じことを考えている人が日本の中にも世界にも必ずいて、あと半年遅かったらとか、逆に1年早かったらとか、いろいろ思うところのあるスタートだったんですけど。僕らがAntennaを始めるずいぶん前、って言っても1年ちょいだと思うんですけど、Flipboard(※1)が世界でサービスを始めていて、日本では日本語のサービスにちゃんとローカライズしていたというよりは、いわゆるRSSビューアとしてFlipboardが来ていて、割とエッジの効いた人たちがこれっていいよねとか、ページめくり斬新だよねって言ってるくらいの状況だったんです。それが2010年くらい。

一方で僕は、マーケティングリサーチ、ネットリサーチをやっているマクロミルっていう会社をやっていて、そこで普段はマーケティングのお手伝いをしています。パネルを抱えながらマーケティングリサーチをするというのがマクロミルのビジネスなわけですが、その頃、ただメールでパネルとコミュニケーション取るだけだと消費者の興味関心を完全に把握することができない時代に入ったなっていう風にちょうど思っていた時だったんです。

あとスマホが相当、普及していくだろうということが予想できたので、まさにモバイルの消費者ともっとコミュニケーション取れる方法ないかなって考えていました。その時に、全然関係ないところでFlipboardを空港で使っていたんですけど、こういうニュースを、何のニュースを見て何のニュースを見ないとか、このニュースを見た人はこのニュースにも関心があるとかっていうのは人の内面を映してるんじゃないかっていう風に考えたんです。インサイトっていうか。

僕らとかFacebook広告のロジックもそうなんですけど、どっちかっていうと表面的なその人のスペックにとらわれちゃうんですよね、男女っていうのは最たるものだし、どこどこに住んでるとか、どこどこの学校出身だとか。ただアンケートをやっていくと意外とそういうことって関係ないんですよ。日大出身だからって同じスポーツが好きなわけじゃないし、横浜に住んでるからってみんなが海が好きなわけじゃないじゃないですか。だからその内面を理解することがマーケティング的には大事なんだなと思ってたときにFlipboardを個人的に見ていて、こんな風に色んな媒体のニュースっていうのがページに一同に会して、自由にレイアウトできたりコラージュできたり、誰がこのニュースを見たとか見なかったとかいうのが全部つかめるようになったらマーケティングに使えるかもなって思ったのが最初のきっかけでした。

最初は、(スマートニュースの)藤村さんには藤村さんの考え方があるだろうし、(グノシーの)福島くんには福島くんの考え方があるんだろうけど、僕らはインターネットにおけるマーケティングリサーチに関しては世界で一番リサーチしていると、自信を持って言える。ただお客さん、例えばサントリーさんとかアサヒビールさんとか本田技研さんとか、マクロミルのお客さんて、東京に住んでいる人だけに売りたいとかってないじゃないですか。それよりはプリウスに乗っている人にFIT3を売りたい。じゃあプリウス買う人ってどういう人なんだろうか。エコに興味があるって、ほとんどの人が興味ありますよね。だから男とか女とか老若って関係ないじゃないですか。その時に、エクストラコストを払ってでもハイブリッドカーを買う人ってどういう人なんだろうみたいなところを我々は生業にしていたので、それに加えて、提供する情報の中での反応と何か連関性はないだろうかと思ったのが最初。これがむちゃくちゃキッカケです。



最初はそこからスタートして、じゃあどんなニュースとか情報を、アットランダムに見せて反応を見たらいいんだろうかと思って試し始めたんです。たとえば「小学館のDIMEっていうの読んでますか」っていうのも聞いてたし、よく例に出すんですけど、セウォル号が沈没したと、これに興味ありますかありませんかと、みんな興味あったんですよ。だから参考にならないっていうことが分かった。御嶽山が噴火して何人が現状亡くなっていると分かった。これってどこの土地に住んでいる人が興味があって、無いとかってないじゃないですか。日本人だったら、あれってどうなったんだろうって思いますよね。

いわゆるグノシーさんとかスマートニュースさんが今集めているような、いわゆる時事ニュースを届けてても、将来的に僕らが考えるマーケティングデータにはつながらない。もっと趣味性が強いというか、ライフスタイルとかファッションとか、ラグジュアリーとか、音楽とか我々がいま集めているコンテンツの中心はそこにあるんですけど、そういったところに最初声をかけ始めて、47媒体が集まって賛同者が出たんですよね。最初から文藝春秋さんのクレアっていう強いブランドですけど、クレアとか、ウェブマガジンのOPENERSとか、そういうところっていうのが賛同してくれて、RSSで受けることになったんです。

(※1)Flipboard...自分の好きなニュース記事や写真・動画を集め、オリジナルの雑誌を作り、シェアすることもできるアプリ。



CGMが発達したからこそ、本物のチカラを持つ昔からのメディアが大事


もう一つ、Flipboardが示したものというか提案した内容はけっこう大きいと思っていて。記事がどんどんデジタル化されていったじゃないですか、新聞、雑誌もそうですよね。そうすると一個一個の記事がピースで切り出せるようになっていったっていうことに他ならない。そうするとiTunesが提案したようなコンピレーションができるようになってくるので、実際に本屋で立ち読みしているようなことがweb上、iPadとかでも簡単にできるようになってくるなっていう風に誰でも思うじゃないですか。ただ版権の問題とか、そんな簡単じゃないだろうなと。音楽だってジョブズじゃなかったら、たぶんああいうことはできなかったと思うけど、そのあとTVとかにも進出していった。テレビ番組とかは事実上、ハードディスクとかに録画したらチャンネルとかって気にしないですよね。だからチャンネルなんて視聴者は気にしてなくて、やっぱりコンテンツとか出演している人が誰だとかで見てるわけですが、記事っていうのもおそらくそうなるんじゃないかと思っていて。

あまりにそれを強く言いすぎるとセンセーショナルになるんですけど、僕らは雑誌とかテレビとか既存のマスメディアの力が弱体化したとか、意味がないなんて一回も言ったことはなくて、本物はそこにあると思ってるんです。テレビの制作者は、ネット動画の製作者より全然撮影力とか取材力・アナウンス力を持っているし、雑誌の記事もそうですよね。本物のカメラマンとか、記事を書くライターとかは、まだ昔からの4マスの中にいると思ってるんですよ。そうした本物に触れる機会っていうのが減ったなっていうのも、そのころの僕の実感値だったんです。

CGMが発達してYouTubeとかPinterestとか、にぎやかにはなるんだけど、つまんない動画もいっぱいあるし、そこに書いてあることの真贋を見極めるのが困るくらいの記事も多いじゃないですか。なので、昔“朝日に書いてあった”とか、“NHKで言ってる”っていうのは一定程度の力を持っていた。そういう力を持っていたものを、効率よく一画面に集めることが技術的にできるんだったら是非やってみたいと。

スマホ時代、企業が安心して消費者にリーチできる場を創るために


最後に、スマホってたぶん今回出てきたiPhone、あれが女性も含めて大きさの限界だと思うんですよね。そうなってくると、その5インチとか5.2インチとかっていうのは男女含めて片手で使える限界ギリギリだとすると、一番下を占有するバナー広告であるとか上からダーっと降りてくるとか、いろんなこと手を変え品を変えやってくるんだけど、基本的には小さいディスプレイを阻害するというか、侵害しますよね。やっぱり皆5,4,3,2,って待っててパッとスキップするとか、どこに×っていうボタンがあるのか探してて、広告なんか全然見てないって、消費者としての実感があったわけですよ。

一番見られているディスプレイっていうのがテレビでもラジオでもなく、新聞もみんな読んでなくて、雑誌も読んでないっていうことが数字で出てくると、ナショナルクライアントからしたら、どこに広告打っていいか分からない。マクロミルのお客さんは取引窓口でいったら7000社とかあるんですけど、その多くがナショナルクライアントでTVで広告打ったり新聞で広告打っているようなお客さん。そういうところってTVは見なくなった、新聞も雑誌も見なくなった、そしたら山手線に広告打つしかないじゃないですか、でもそれでは絶対にリーチしない。でもみんな、なんかから情報見てるよね、なんか一日見てるよねって全部これ(スマホ)なんですよね。

だったら、やっぱりそこに広告打たないと、あるいは商品の訴求をしていかないと広告できないのに、広告のバリエーションがテキスト広告かグーグルのアドワーズかバナーか、YouTubeのみんながカウントダウン待ってる動画か。そうすると広告って本当にみんながウェルカムなのかとか、ちゃんとそんなことで商品の良さとかを訴求できるんだろうかと、マクロミルの立場からするとお客さんのマーケティングとか広告に寄り添っていかなきゃいけなかったのでこれでこの先に未来があるのかと思って、その時にあのUIを思いついたんです。今でこそ、スマホメディアに真似されることも増えてきたけど(笑)

Q今、Antennaの中には当たり前のようにナショナルクライアントの広告が溶け込んでいますが、名だたる企業から支持される理由はなんでしょうか?





荒川氏>やっぱりスマホで何かしらしたかったんだけれども出来なかったというお客様が本当に多かったという風に感じています。春先からこの「スマホブランディングメディア」ということで、Antenna単体というよりはマスプロモーションを色々やられているけれども、スマホで更にプラス出来なかったというお客様が多かったんです。

杉本氏>「マスプロモーション効果を拡張するスマホブランディングメディア」っていうものをキャッチフレーズにやっているんですよね。今ヤクルトさんとかCM打ったりしてるんですけど、他にも動画がいっぱい流れています。当然、テレビに流すのは大切で、テレビで流すつもりで作ってるから、あれだけの予算をかけてハイクオリティなCMを作るじゃないですか。ネットだけで流そうと思ってるCMってあそこまで予算かけないですよ。だからつまらない動画CMになっちゃうんだけど、テレビだけだと届かない層がある、なのでテレビに広告打つときにはAntennaにも打つっていう習慣をお客さんにはつけてもらいたいなと思っていて。15秒のCMだけだとイメージしか伝えられなくて、競合製品との差別化ポイントは何だとか、新製品によって変えたい世界観についてみんなが分かるような説明は難しいなと。

Antennaはそこをきちんと、その先っていうのがスマホの中で展開できるので、割りと美容器具だとか家電製品とかにはすごく向いているという風に思っています。今やっていることというのは、色んな実験の要素も入っているんですけど、山手線のトレインチャンネルをそのまま流したりもしていて、スマホってやっぱりスピーカーで聞けるシチュエーションって少ないじゃないですか。みんながイヤホンしているわけでもないので、トレインチャンネルが持っている字幕の考え方というのはすごくスマホのCMには向いてるんですよね。もともと、そういうコンテンツがあるんだったら、ほとんどテレビと同等のクオリティで字幕だけがついている状態にすることができるんです。



グライダーっていう名前はすごく不謹慎な名前で、ただで飛ぶっていう、風ってタダじゃないですか。なので最初はフィードを許可してくれているコンテンツで我々の飛行機が飛ばさせてもらっているというイメージだったんですけど、だんだん数が多くなってユーザーも今400万を超えてきて、グライダーなんでっていうのは簡単に言えなくなってきている。だから、Antennaのブランドイメージには、すっごい気を使っています。

今、改めて我々は、スマホにしっかりナショナルクライアントのブランディングができる、ナショナルクライアントがブランドロゴを打ってもいいって安心してブランド広告を出せるメディアを作りたいって思っています。2年前にはap bankのフェスにも協賛しているし、音楽イベントだけじゃなくて女の子が集まるイベントとか、J-WAVEさんとタイアップして六本木ヒルズでイベントやったりとか、大人が安心して、変なことにならないような、危なっかしいメディアじゃなくて、そこだったら出していいんじゃないかとか、いい消費者が取れるんじゃないかみたいな場に自分たちがならなきゃいけないと思っているので、そこについてはメチャクチャ神経払ってます。ローンチ前からこの世界観でいきたいと思って、オフィスも人も何も全部、その世界観にのっとって集めています。

Antennaはユーザーの人生を、毎日を、豊かにするところに特化する


荒川氏>CMの記者会見とかを取材している専門の会社があって、その記事内容が面白かったりするんです。今回のCMの狙いはこういうものらしい、とか。そういうものも出来たCMのそばにあったりすると、そんなこと普段知らなくてCMみんな見ると思うんですけど、だから企業はこの人を採用していて、こんなキャラクターが出てきたんだというのが、情報として普通に見れるんじゃないかと思っていて。
今、世の中的に当たり前になっているものをアンテナのUIに流すことでまた違う景色になって消費者に楽しんでもらえるというところは、今いろいろご相談もらって確かにこういうことできますね、ということが多いんですけれども、もっとこっちからも仕掛けていきたいというのは思うところですね。

杉本氏>今後、ありとあらゆるテレビCMと映画のトレーラーとミュージックビデオがAntennaにアーカイブされているようにします。金曜日にAntennaを見ていれば、この映画週末見に行こうとか決められて、CMを見ていれば、ある程度世相っていうのは反映されているので。テレビで今何が起こっているか、ラジオで、世の中で今何が起こっているか、我々が決めているライフスタイル、その範疇で何があるかというのをAntennaを見ていれば大抵のことは分かるというくらいにしたいと思っています。それを踏まえて、週末にどうするかとか、彼氏と相談するかとか、欲しいものを買おうとか、自分探しの旅行に行こうとか、全部Antennaで出来るようにしたい。

僕らは、仮に内閣総辞職とかあったとするでしょ、そしたらスマートニュースはいち早くそれを速報しなきゃと、Yahoo!もグノシーもそう思うかもしれない。でも僕らはそれはそういう会社があるんだったら、もうそういう専門に任せようと思うんです。
僕らは人生を、毎日を豊かにするとか、そういうところに特化しようという風に決めています。だからエンタメを。そっち情報もみんな求めてるから。

ちなみにですね、日曜の夜の8時から『Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING』っていう新しい番組をJ-WAVEで始めたんですよ1時間で。音楽トリップ番組というか、Antennaからオマージュっていうか、Antennaが取り上げている世界の絶景とか、日本も例外ではないんですけど、そこをイメージした音楽とか。音楽からイメージされた写真とかっていうのとコラボできるような番組をスタートしているので是非聞いてください、いい番組なんで。車でドライブする時とか最高なんで!


[取材後記]

日差しが心地よく降り注ぐガラス張りの会議室で、和やかに始まった今回のインタビュー。
印象的だったのは「クライアントが安心して広告を打てる場を創りたい」という言葉でした。インターネットの登場によって繋がり、広がり過ぎた世界の中では企業だけでなく、みんながそんな場を求めていたのかもしれません。
今後、Antennaがハブとなり、メディア・企業・ユーザーの体験をどこまで高めてくれるのか。ユーザーの一人として、とても楽しみです。





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