インタビュー
2013年5月28日
Vol.18 オンキヨーのタブレット端末市場参入の理由 Appleとは異なる戦略で展開する
執筆者
オンキヨーデジタルソリューションズ株式会社は、3月8日よりAndroidタブレット「SlatePad」6機種を発売しました。
今回MMD研究所は、タブレット端末市場に参入したきっかけ、取り組みについてオンキヨー株式会社 取締役、兼オンキヨーデジタルソリューションズ株式会社 社長 菅 正雄氏に話を伺いました。(所属・役職はインタビュー当時)
オンキヨー株式会社 取締役、兼オンキヨーデジタルソリューションズ株式会社 社長 菅 正雄氏
(所属・役職はインタビュー当時)
----オンキヨーと言えばオーディオ機器というイメージがあるのですが、スレートタブレットの販売までの経緯を教えてください。
発売までの経緯として、オンキヨーは、2008年にパソコンメーカーのソーテックを買収しました。その時の目玉製品として、ネットブックを考えていたのですが、残念ながら他社に一番乗りをされてしまい、悔しい思いをしました。そこで、次のヒット商品は何かと探っていたところ、2010年にAppleからiPadが発売されました。
この製品を見た時に、デスクトップPCからノートブックPCが生まれたときのような興奮を覚えました。
すなわちノートブックPCは、単にデスクトップPCの形を小さくしただけでなく、コンピューティングパワーをいつでもどこでも使えるようにすることで、新しいマーケットを切り拓きました。
同様に、ノートブックPCからキーボードを取り除いてタッチパネルを搭載したタブレットがノートブックPCのシェアを奪うわけではなく、新たに大きな市場を生み出すと直感しました。
そう思った理由は、PCのキーボードやマウスの操作に馴染みがなく、不便という方もいますが、タッチパネルというのは、銀行のATMや電車の切符売り場など、生活の様々な場面で使用されています。タッチパネルは便利で、誰でも使えるように教育されているので、馴染みやすいからです。
若い人からお年寄りまで使いやすいのはタッチ操作であると考えたわけです。
そこで、ノートブックPC開発のリソースをタブレット開発に移行しました。すでに、Apple社が個人向けには大きくシェアをとっているので、私達はまだ普及していない分野、特に企業での普及を目指すことにしました。
過去の歴史からノートブックPCの普及は個人の浸透の前に、企業での浸透が早かったことを考慮して、今回のタブレットも企業から普及が進み、個人に流れると思っています。
そのため、今回Android タブレットを6機種、一気にリリースしました。
----なぜ6機種もの端末を一度にリリースしたのでしょうか。
マーケットが非常に大きく、しかも急激に伸びているので、正直、リリースしてみないとどのサイズに需要があって売れるかは、我々が頭でいくら考えてもわからないと思ったからです。最適なサイズは買いたい人に選んでもらう。そういった考えからエントリーモデルの7インチタイプ2機種を始め、8インチタイプ1機種、9.7インチタイプ2機種、そして、10.1インチタイプ1機種と計6機種をリリースしました。
それぞれのサイズには、意味があり、外でも使える7インチタイプと、iPadminiとほぼ同じサイズの8インチタイプ、iPadと同じサイズで、Android端末を使いたいと考えている方へ向けての9.7インチタイプ。こちらの端末については、Retina?ディスプレイ相当解像度の液晶パネルを採用したものと通常の解像度のディスプレイのもの、2機種をリリースしています。
たとえば、高解像度の一眼レフカメラで撮影した写真を通常の解像度で表示しても魅力的な写真になりません。一眼レフカメラの普及状況を考えると、こういった高画質ディスプレイ端末のニーズがある筈だという、試験的な試みです。実際、よく売れています。そして、業務端末としての利用も想定した10.1インチタイプというラインナップになっています。
----iPadのシェアが非常に高いタブレット市場ですが、どのように差別化を考えていますでしょうか。
現在のところApple社の製品はほとんど持ち運びを想定したモバイル端末です。Apple社は持ち運べないような大型のタブレットやデジタルサイネージのような製品は販売していません。国内外問わず、タブレットというと多くの競合他社はApple社がどのような製品をリリースするか?といったことばかり追っている状態なので、どの企業もAppleのコンセプトとよく似たタブレットを販売しているように思えます。
あのマイクロソフトですら、Apple社を意識して、個人向けタブレット端末の販売を始めました。
そういった現状の中、弊社はApple社が販売していないサイズのタブレットも含めて、様々なサイズで新たなマーケット、特に企業利用領域でのニーズを掘り起こしたいと考えています。
基幹システムとの連携やセキュリティーなどを考えるとWindowsが便利ではありますが、今回発売したタブレットに搭載されているAndroidはクローズドシステムや低コストを追求した業務用の専用端末として断然有利です。そういった点から、業種別端末に焦点を当てた端末開発を行なっていきたいですね。
我々は商品を販売する前にある程度ユーザーの需要などを想定していますが、実際は想定していない場所や用途での利用が圧倒的に多いです。
私たちがユーザーやシステム開発の方に対して用途を決めるのではなく、どのように製品を使っているか見学をさせてもらったり、用途をフィードバックしてもらったりするなど、情報あつめ、気が付いたことを掘り下げて、その用途に合わせた製品やアクセサリー製品を提供することで差別化を図っていきたいと考えています。
----参考になったユーザー導入事例がありましたら紹介していただけますか?
今回発売したタブレットについてはこれからなので、Windowsを搭載した21.5型ワイドフルHD液晶ディスプレイのスレートPC「TW21A-B36」の事例をご紹介しましょう。
弊社のECサイトでTW21A-B36を複数台購入される方が何人かいらっしゃいまして、どのような方が複数台購入をしているか調査したところ、そのうちの一人は個人経営をしている歯科医院のお医者様でした。
早速、その先生にアポをとり、訪問してどのように利用しておられるのか見せていただきました。歯を治療する診療台の前に21.5インチのスレートPCを取り付け、患者さんにこれからこういう治療をするという説明をスレートPCの画面を見せながら行っていました。
画面をタッチしてカルテやレントゲン写真を拡大することができるので、患者さんへの説明が非常に分かりやすくなるんですね。
大きい画面なので新しい治療器を入れたのかと間違われる患者さんもいらっしゃったようです。
その歯科医の先生に「こういう大画面のPC端末を待っていました。すごくいい製品を出してくれました」と感謝の言葉を頂き、本当に感激いたしました。
貴重なユーザーの声を聴くことが出来きたのと同時に、弊社も非常に参考になる使い方を拝見することができました。
----御社の端末をどのような企業での利用して欲しいでしょうか?
様々な企業様に導入してほしいのですが、その中に不動産企業などがあります。例えば、マンション全室にタブレットを設置して、地域の情報や各部屋の情報(使用電力の見える化)などをいつでも見えるようにしたり、近所のお店のチラシなどをタブレットに配信して利用してもらいたいと考えています。
また、今回の歯科医院のように、患者さんの情報を見やすく伝えるなど、医療の現場でもぜひ利用してほしいですね。
----今後の展望を教えてください。
我々はハードウェアを売るのが商売なので、「こういう使い方が出来ますよ」という使い方の提案というのはもちろん大事なことであり、行なっていく必要があると考えています。
ただ、先ほども述べたとおり、弊社だけでいくら考えてもわからないので、様々な方に使って頂き、ニーズを見つけて、役に立つ端末を提供していきたいと考えています。
今まで専用端末を使っていたシーンやPCなどが使用されていなかったシーンに、導入してもらえるようにしてきいたいですね。
【会社】オンキヨーデジタルソリューションズ株式会社
【サービス】スレートパッド
今回MMD研究所は、タブレット端末市場に参入したきっかけ、取り組みについてオンキヨー株式会社 取締役、兼オンキヨーデジタルソリューションズ株式会社 社長 菅 正雄氏に話を伺いました。(所属・役職はインタビュー当時)
オンキヨー株式会社 取締役、兼オンキヨーデジタルソリューションズ株式会社 社長 菅 正雄氏
(所属・役職はインタビュー当時)
----オンキヨーと言えばオーディオ機器というイメージがあるのですが、スレートタブレットの販売までの経緯を教えてください。
発売までの経緯として、オンキヨーは、2008年にパソコンメーカーのソーテックを買収しました。その時の目玉製品として、ネットブックを考えていたのですが、残念ながら他社に一番乗りをされてしまい、悔しい思いをしました。そこで、次のヒット商品は何かと探っていたところ、2010年にAppleからiPadが発売されました。
この製品を見た時に、デスクトップPCからノートブックPCが生まれたときのような興奮を覚えました。
すなわちノートブックPCは、単にデスクトップPCの形を小さくしただけでなく、コンピューティングパワーをいつでもどこでも使えるようにすることで、新しいマーケットを切り拓きました。
同様に、ノートブックPCからキーボードを取り除いてタッチパネルを搭載したタブレットがノートブックPCのシェアを奪うわけではなく、新たに大きな市場を生み出すと直感しました。
そう思った理由は、PCのキーボードやマウスの操作に馴染みがなく、不便という方もいますが、タッチパネルというのは、銀行のATMや電車の切符売り場など、生活の様々な場面で使用されています。タッチパネルは便利で、誰でも使えるように教育されているので、馴染みやすいからです。
若い人からお年寄りまで使いやすいのはタッチ操作であると考えたわけです。
そこで、ノートブックPC開発のリソースをタブレット開発に移行しました。すでに、Apple社が個人向けには大きくシェアをとっているので、私達はまだ普及していない分野、特に企業での普及を目指すことにしました。
過去の歴史からノートブックPCの普及は個人の浸透の前に、企業での浸透が早かったことを考慮して、今回のタブレットも企業から普及が進み、個人に流れると思っています。
そのため、今回Android タブレットを6機種、一気にリリースしました。
----なぜ6機種もの端末を一度にリリースしたのでしょうか。
マーケットが非常に大きく、しかも急激に伸びているので、正直、リリースしてみないとどのサイズに需要があって売れるかは、我々が頭でいくら考えてもわからないと思ったからです。最適なサイズは買いたい人に選んでもらう。そういった考えからエントリーモデルの7インチタイプ2機種を始め、8インチタイプ1機種、9.7インチタイプ2機種、そして、10.1インチタイプ1機種と計6機種をリリースしました。
それぞれのサイズには、意味があり、外でも使える7インチタイプと、iPadminiとほぼ同じサイズの8インチタイプ、iPadと同じサイズで、Android端末を使いたいと考えている方へ向けての9.7インチタイプ。こちらの端末については、Retina?ディスプレイ相当解像度の液晶パネルを採用したものと通常の解像度のディスプレイのもの、2機種をリリースしています。
たとえば、高解像度の一眼レフカメラで撮影した写真を通常の解像度で表示しても魅力的な写真になりません。一眼レフカメラの普及状況を考えると、こういった高画質ディスプレイ端末のニーズがある筈だという、試験的な試みです。実際、よく売れています。そして、業務端末としての利用も想定した10.1インチタイプというラインナップになっています。
----iPadのシェアが非常に高いタブレット市場ですが、どのように差別化を考えていますでしょうか。
現在のところApple社の製品はほとんど持ち運びを想定したモバイル端末です。Apple社は持ち運べないような大型のタブレットやデジタルサイネージのような製品は販売していません。国内外問わず、タブレットというと多くの競合他社はApple社がどのような製品をリリースするか?といったことばかり追っている状態なので、どの企業もAppleのコンセプトとよく似たタブレットを販売しているように思えます。
あのマイクロソフトですら、Apple社を意識して、個人向けタブレット端末の販売を始めました。
そういった現状の中、弊社はApple社が販売していないサイズのタブレットも含めて、様々なサイズで新たなマーケット、特に企業利用領域でのニーズを掘り起こしたいと考えています。
基幹システムとの連携やセキュリティーなどを考えるとWindowsが便利ではありますが、今回発売したタブレットに搭載されているAndroidはクローズドシステムや低コストを追求した業務用の専用端末として断然有利です。そういった点から、業種別端末に焦点を当てた端末開発を行なっていきたいですね。
我々は商品を販売する前にある程度ユーザーの需要などを想定していますが、実際は想定していない場所や用途での利用が圧倒的に多いです。
私たちがユーザーやシステム開発の方に対して用途を決めるのではなく、どのように製品を使っているか見学をさせてもらったり、用途をフィードバックしてもらったりするなど、情報あつめ、気が付いたことを掘り下げて、その用途に合わせた製品やアクセサリー製品を提供することで差別化を図っていきたいと考えています。
----参考になったユーザー導入事例がありましたら紹介していただけますか?
今回発売したタブレットについてはこれからなので、Windowsを搭載した21.5型ワイドフルHD液晶ディスプレイのスレートPC「TW21A-B36」の事例をご紹介しましょう。
弊社のECサイトでTW21A-B36を複数台購入される方が何人かいらっしゃいまして、どのような方が複数台購入をしているか調査したところ、そのうちの一人は個人経営をしている歯科医院のお医者様でした。
早速、その先生にアポをとり、訪問してどのように利用しておられるのか見せていただきました。歯を治療する診療台の前に21.5インチのスレートPCを取り付け、患者さんにこれからこういう治療をするという説明をスレートPCの画面を見せながら行っていました。
画面をタッチしてカルテやレントゲン写真を拡大することができるので、患者さんへの説明が非常に分かりやすくなるんですね。
大きい画面なので新しい治療器を入れたのかと間違われる患者さんもいらっしゃったようです。
その歯科医の先生に「こういう大画面のPC端末を待っていました。すごくいい製品を出してくれました」と感謝の言葉を頂き、本当に感激いたしました。
貴重なユーザーの声を聴くことが出来きたのと同時に、弊社も非常に参考になる使い方を拝見することができました。
----御社の端末をどのような企業での利用して欲しいでしょうか?
様々な企業様に導入してほしいのですが、その中に不動産企業などがあります。例えば、マンション全室にタブレットを設置して、地域の情報や各部屋の情報(使用電力の見える化)などをいつでも見えるようにしたり、近所のお店のチラシなどをタブレットに配信して利用してもらいたいと考えています。
また、今回の歯科医院のように、患者さんの情報を見やすく伝えるなど、医療の現場でもぜひ利用してほしいですね。
----今後の展望を教えてください。
我々はハードウェアを売るのが商売なので、「こういう使い方が出来ますよ」という使い方の提案というのはもちろん大事なことであり、行なっていく必要があると考えています。
ただ、先ほども述べたとおり、弊社だけでいくら考えてもわからないので、様々な方に使って頂き、ニーズを見つけて、役に立つ端末を提供していきたいと考えています。
今まで専用端末を使っていたシーンやPCなどが使用されていなかったシーンに、導入してもらえるようにしてきいたいですね。
【会社】オンキヨーデジタルソリューションズ株式会社
【サービス】スレートパッド
この記事の執筆者
吉本 浩司(ヨシモト コウジ)
MMD研究所 編集長
MMDLabo株式会社 代表取締役