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Vol.17 キングジム デジアナ文具ヒットの理由は過去の成功体験からなる「徹底した商品の作り込み」

インタビュー

日付:2013/4/10

執筆者:吉本 浩司

Vol.17 キングジム デジアナ文具ヒットの理由は過去の成功体験からなる「徹底した商品の作り込み」

Vol.17 キングジム デジアナ文具ヒットの理由は過去の成功体験からなる「徹底した商品の作り込み」

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新年度を迎え、多くのビジネスパーソンが仕事で使う文具を新調したのではないでしょうか。昨今では、デジタル文具や、デジタルとアナログを融合させたいわゆるデジアナ文具も流行し、利用しているビジネスパーソンも多いと思います。今回MMD研究所は、そんなデジタル・デジアナ文具で数多くの商品をヒットさせている企業、株式会社キングジムに訪問し、開発本部副本部長の亀田登信氏に商品企画の思想や理念、マーケティングに対する考え方を伺ってきました。


企業インタビュー

株式会社キングジム 開発本部副本部長 亀田 登信氏







----最初に、亀田さんの経歴と現在のお仕事について教えてください。
私は新卒で当社に入社以来、ずっと開発業務に携わってきました。
私の所属する開発本部は、ファイルや電子製品の開発実務を担当する部門や、デザイン・マーケティングを担当する部門、主に電子製品の設計を担当する部門などで構成されており、商品の企画からローンチするまでの全般を担っています。
現在、私はこの開発本部の副本部長をしています。

キングジムはもともと、法人向けファイルの専業メーカーでしたので、入社当時は、開発部門イコール「キングファイル」の商品開発をする部門でした。しかし当時は、「OA化が進めばペーパレスの時代が来る」と言われ始めた頃であり、当社もこのままファイルだけを製造していては、そのうち衰退してしまうのではないかという危機感が強まっていました。そこで、新しく電子製品の開発にチャレンジすることになり、私も入社2年目から、電子製品の企画・開発を担当することになりました。
ファイル専業で、文具流通での取り扱い率が非常に高かった当社としては、新しい電子製品もこの強みを活かせるものでなければならず、試行錯誤の結果誕生したのが、ラベルライター「テプラ」です。この「テプラ」がヒットしたことで、現在、当社の売り上げ比率は、「ファイル」と「テプラ」で半々ほどになっています。
企業インタビュー


----売上の半分がテプラってすごいですね。テプラが貴社の代表的な製品になった要因は何ですか?
「テプラ」発売当初は、「キングファイルのタイトルをつける」という用途で流通にも市場にもすぐに受け入れられました。
しかし、このような「ファイルのタイトル付け」に留まらず、さらに広い用途でお使いいただけるように、消耗品であるテープカートリッジの種類を増やし、ユーザーが得られるアウトプットの幅を広げていったことが、広く普及した要因であると思っています。当初は、白や色付きのラベルだけであったテープカートリッジのラインアップですが、現在ではマグネットシートのラベルやアイロンで布地に転写ができるテープ、りぼんに印字できるテープなども揃えています。そして、これらの新しいテープカートリッジのほとんどは、20年前に購入した「テプラ」本体に入れても使うことができます。

通常の商品ですと、本体の機能が進化する過程で消耗品の形態も変わってしまうことが多いですよね。フルモデルチェンジする方が楽だと思うのですが、ここが文具メーカーの発想なのでしょうか、ご購入いただいた商品をいかに長く愛用していただけるかということを念頭に企画してきたことが、結果的に多くの企業に使っていただき、国内のシェアトップを維持することが出来たのではないかと思います。

----次に、デジタルメモ「ポメラ」について聞かせてください。失礼かもしれませんが、ポメラってノートパソコンがあれば特に必要ないように思うのですが、どのような意図で開発されたのでしょうか?
「ポメラ」は、ノートパソコンのほんの一部のベネフィットを切り出し、その使い勝手を究極まで高めた商品です。
企業インタビュー


例えば、社内会議やお客様との打合せの時、ノートパソコンを使ってメモを取る人がいらっしゃいますよね。しかし、ただテキストを打ちたいだけなのに、重いノートパソコンを持ち歩かなければなりませんし、起動も遅く、バッテリーの心配もあります。中には規則によってパソコンの持ち出しが禁じられている企業もあると思います。
そこで、ノートパソコンから「テキストを打つ」というベネフィットだけを切り出し、小型軽量で持ち歩きしやすく、乾電池で長時間駆動し、スイッチを押してから2秒で立ち上がるので快適に仕事が出来る商品、それが「ポメラ」なんです。

また、商品の持つ能力を、誰でも100%近く使いこなせるというのも、大きな特長です。
例えば、ペンを購入した場合、書くことを目的としているものなので、文字が書ければ100%のパフォーマンスが発揮できていることになります。しかしパソコンの場合、持っている機能の半分、人によっては10%くらいしか実際に使いこなせていというのが現状ではないでしょうか。その点、「ポメラ」はテキストを入力するという単機能なので、ペン同様に誰でも100%近くのパフォーマンスを発揮することができます。
もちろん、ターゲットを絞っている製品なので、万人に受けるものではないです。しかし、多くのメディアに取り上げていただいているのは、ターゲットを絞り、切り口が思い切っているからなのだと思います。

----商品開発の際に設けているルールはありますか?
特にルールは設けていません。思いついたアイデアや考えた事を、みんなで話して自由に進めてもらうようにしています。組織上は開発本部の中に「部」や「課」がありますが、そのような垣根は関係なく、そのアイデアを面白い、と感じたメンバーが自由に検討できるようにしています。そして開発担当に必ず指示するのは、徹底的に「作り込む」ようにということです。

また、当社は「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」という経営理念があります。
ルールというわけではありませんが、新商品開発をするときには他社の商品の真似はしないということを、開発担当者全員が意識していますね。他社でこの商品が売れているから、うちでもやりましょうということはありません。

他に特長的なのは、市場調査をしないということでしょうか。社長の宮本は、「市場調査をするなら、さっさと商品を作って発売するように」と言います。事前調査に時間をかけてあれこれ悩むより、早く商品を出せば、答えは市場がすぐ教えてくれると。特に私たちの作る新規概念の商品は、調査結果と実際の販売状況が大きく異なることが多いですから。


----先程「作り込む」というお話が出ましたが、具体的にはどのようなことでしょうか?
具体的には、開発者が思い残すことなく、細部の仕様まで徹底的にこだわりぬいて開発をするこということです。
しっかり作り込まれているものって、ターゲット以外の人には見向きもされないのですが、「このような商品が欲しかった」というユーザーからは、熱烈な支持が得られるのです。
逆に、コンセプトはよかったものの、作り込みが足りなかったことが理由で商品が売れなかったときの悔しさって計り知れないものなんですよ。

若手社員は「ポメラ」や「ショットノート」の開発から発売までの経緯や成功事例を見ているので、思いっきり開発にのめり込むことが出来ると思うんです。
企業インタビュー

----どのような発想で商品企画が始まるのでしょうか?
「こんなものがあればおもしろいな」とか、「こんなのがあれば便利だな」っていうレベルで始まるものもあります。
また、「こういう思想で製品を作ってみたいと思います」ということから始まることもありますね。後者の代表が「ショットノート」です。
企業インタビュー

「ショットノート」は、手書きのメモを、専用アプリをインストールしたスマートフォンで撮影することで、自動でゆがみや色が補正されてデジタル化できるというノートです。

スマートフォンが一般的になってきて、アプリで様々なことができるようになっていますが、一方でいわゆる「アナログの文房具」が使われなくなるか、といったらそんなことはない、と考えています。スマートフォンを使いながらアナログのメモ帳も併用する、という使い方が一般的です。
そのため、スマートフォンが一般的に普及している環境で、アナログの文房具はどのように形を変えるべきなのか、という考えのもと開発されたのが「ショットノート」です。

アナログのメモ帳の特長である手軽さは残したまま、欠点である検索性や保存性の悪さをデジタル化で補う、しかし、デジタル化するに際しての手間を徹底的に減らさないと、結局は面倒が増えただけで、誰も使わないものになってしまいます。そこで、ちょうど普及してきたスマートフォンを活用し、手軽に撮影するだけで簡単にデジタル化できるというコンセプトで開発されました。
その結果、スマートフォンを活用する「デジアナ文具」の元祖として、高い評価を受けています。
「ショットノート」は個人で購入され利用されている方も多くいらっしゃるのですが、企業がノベルティとして配ることもあるという話をよく聞きます。価格の面でもそうですが、元祖であり一番普及していることが評価されているのではないかと思います。

----今後の展望を教えてください。
「ポメラ」のようなデジタル製品、ファイルのようなアナログ製品、または「ショットノート」のようなデジアナ製品、こうしたカテゴリーで区切った発想はしないつもりです。むしろカテゴリーにとらわれずに、人が使いやすいと思うもの、わかりやすいと思うものを提供し、新たなカテゴリーを作り続けていきたいと思っています。


企業インタビュー

【会社】株式会社キングジム

【サービス】デジタルポメラ
      ショットノート
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この記事の執筆者

吉本 浩司(ヨシモト コウジ)

吉本 浩司(ヨシモト コウジ)
facebook https://www.facebook.com/koji.yoshimoto

MMD研究所 編集長
MMDLabo株式会社 代表取締役

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